ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔-4

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匿名ユーザー

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学院長室は本塔の最上階にある。トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏は、白い口ひげと髪を揺らし、重厚なつくりのセコイアのテーブルにひじをつきながら、ミスタ・コルベールの報告をさもめんどくさそうに聞いていた。
「オールド・オスマン。あの『ロハン』という平民。私は危険だと考えます」
「彼は『不思議な能力』を持っています。どうやら、召喚時にミス・ヴァリエールの記憶を読んでいたように思えます」
「どういうことじゃ?」オスマンの目に、よぼよぼの年寄りとは思えない光がやどった。
このじじい、もとい、この老魔法使いはやるときはやるのである。
やらないときはミス・ロングビル相手のセクハラしかしないが。
「はい、彼が召喚されたとき、彼は空中に『人影のようなもの』を出現させていました。それを見たミス・ヴァリエールは、顔の部分が本のようにぱらぱらとめくれるようになって気絶していました。それをロハンが興奮したように読んでいました」
「おそらく、彼が出現させた『人影のようなもの』を見たら自分の記憶が体に書き込まれた本の状態になり、気絶するような能力なのでしょう」
「他の生徒に被害は?」
「いえ、生徒たちは遠巻きに見ていたので被害はありませんでした。私はとっさに目の前に炎を作り出して、炎を通した、『ゆがんだ人影の像』しかみていないので術にかかりませんでした」
「おぬしのことなんぞ聞いてないわい」
「…そして彼に浮かび上がったルーンですが、このルーンが現れました」
コルベールは『始祖ブリミルの使い魔たち』という本の挿絵のひとつをオスマン氏に指し示した。
「ふむ…『ガンダールブ』か。これはやっかいじゃのう」

ドアがノックされた。
「誰じゃ?」
扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた
「私です。オールド・オスマン」
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒たちがいます。
止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほどタチの悪い生き物はおらんわい。で、だれが暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・グラモン」
「相手は?」
「それがメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔のようです」
オスマン氏とコルベールが顔を見合わせる。
「ミス・ヴァリエールには使い魔が二人いたはずじゃが、いったいどちらかね?」
「ブチャラティと名乗る青年のほうです。教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
「アホか。たかが子供のけんかを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。ほうっておきなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく音が聞こえてきた。
コルベールはつばを飲み込んで、オスマン氏を促した。
「オールド・オスマン。彼の方も何か『能力』を持っている可能性があります」
「うむ」
オスマン氏が杖を振ると、壁にかかった大きな鏡に、
ヴェストリ広場の様子が映し出された。

「怪我したくなかったら、謝ってきなさい。今なら許してくれるかもよ」
ブチャラティに追いついたルイズが話しかける。
「いや、俺はこの『決闘』を受ける」
「なんでよ!あのね?平民は絶対メイジに勝てないし、あんたは怪我するわ。いえ、殺されてしまうわ!」
「大丈夫だルイズ。奴はオレを『殺そう』とは思っていない。
痛めつけるついでに『死んでしまってもかまわない』とは思っているようだが。
この差は大きい」
「それにだ。彼のような生意気なガキは一度痛い目を見なければならない。でないとゲスのような精神を持った大人になってしまう…」
ブチャラティは、まるで自分が必ず勝つかのように話している。
「そして、メイジに魔法の能力があるように、オレにも『スタンド』という能力がある。オレが完全敗北する可能性は非常に低いだろう」
「『スタ…ンド?』なんだねそれは…いったい」
ルイズがボケをかましている間にブチャラティは群集の環を通り抜けてギーシュと正対してしまっていた。
「もう!あんたなんて知らない!」

「とりあえず、逃げずにきたことは誉めてやろうじゃないか」
ギーシュは堂々と正対する男を見下すように言った。
(平民のくせに!僕の彼女を!そのルックスもイケメンな顔でぎろうなんてよ~~~!!
こいつはメチャゆるさんよなぁぁぁ~~!!)
ブチャラティのルックスがイケメンかどうかは意見の分かれるところだが、とにかくギーシュはこの『決闘』に貴族らしく勝つことで、モンモランシーに「ギーシュ様素敵!」と、再度自分にホレさせようとしていた。
「まずは名乗らせていただこう。僕はギーシュ・ド・グラモン。二つ名は『青銅』。
青銅のグラモンだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』でお相手するよ」
そういいながらギーシュが右手に持つバラの造花を振った。
花びらが一枚、中に待ったかと思うと、人間と同じくらいの甲冑に変化し、ギーシュとブチャラティの間に出現した。
「そして予告しよう!君は僕の『ワルキューレ』にボコボコにされ、剣をのど元に突きつけられた状態で『参った』という!」
ゴーレムをブチャラティに突進させる。
「まった」
ブチャラティの言葉にあわせて、ピタリとワルキューレを停止させる。
「なんだ?もう怖気づいたのか?フッ!これだから平民は!」
「いや違う。俺も名乗らせていただこう」

「オレはブローノブチャラティ。二つ名はない。
だからただ『ブチャラティ』と呼んでもらって結構だ」
なにを余裕ブッこいているんだ?この状況で?イカれてるのか?
いや、それよりも彼の隣に立つ亜人はいったいなんだ?いつからそこにいた?
「スタンドが見えるようだな…そしてオレも宣言しておこう!」
次の言葉で、ヴェストリの広場全体の雰囲気が凍りついた。
「決闘にはオレのスタンド『スティッキィ・フィンガーズ』が相手する。
こいつの能力は射程距離内ならばいくらでも開閉可能な『ジッパー』が取り付けられる。
それを利用して物を『切断』することも可能だ」
「そして、オレはこの『能力』で君の杖を右腕ごと切断し、『再起不能』…いや、魔法による『戦闘』を不可能にする!」

広場内が静まり返っている。
すでに最初に作ったワルキューレはバラバラにされ、破片が中に散乱している。
ゼィ…ゼィ…ハァ…ハァ
自分の呼吸がとても大きく聞こえる。
あの平民、なんと言った?『ジッパー』を取り付けられる?切断も可能?
そんなのアリかよ?反則だ!


「どうした?何もしてこないならこちらからいくぞ?」
突如『スティッキィ・フィンガーズ』が左手で僕に向かって一発ジャブを放った。
僕と『スティッキィ・フィンガーズ』(スタンドといってたな)は十歩ほどの距離が開いている。
通常ならば彼のスタンドのこぶしは僕にはヒットしない。…通常ならば、だ。
だが僕は見た!ジャブの瞬間、スタンドの右手が左腕の上腕二等筋をたたいたのを!
飛んでくる左腕!これは怖い!ケティ他生徒数名が失神しているのが目の端に映った。
大丈夫なのか?走りよって無事を確かめたいが…
今はこの『飛んでくる腕』を何とかしなければ!
「ウオォ!ワルキューレ!僕を防御しろ!」
目の前に二体目を召還する。腕は止まって地面に落ちたが、ワルキューレは胴体をきれいに真っぷたつにされていた。
「人間のような気配がほとんどないのがやっかいだが、オレの敵じゃあないな」
「まだ続けるか?マンモーニ?」

お…恐ろしいッ 僕は恐ろしい!!
何が怖いって、『貴族』の僕が平然と『平民』に向かって命乞いしそうなことだ!
むしろそうするべきだと心の声が叫んでいる!
「ま…」
参ったと叫びかけたとき、ふとモンモランシーの姿が目に映った。
彼女はハラハラした表情で見つめている。今にも倒れそうな表情だ。とても心配している。
ブチャラティでなく。『僕』をだ。
もし僕がここで降参したら、彼女はおそらく僕を幻滅するだろう。
そんなことよりも!
彼女自身に『男を見る目がない』ことを証明することになってしまう!
わがグラモン家には一人たりとも女性を不幸にしないのがわが家訓!
「わかったよ父上!『命を惜しむな、名を惜しめ』という言葉が!
『言葉』でなく『心』で理解できた!」
女性の名誉は!グラモン家にとって!命を張るほど重要なのだ!

「『ま…』、何だ?待ってほしいのか?」
ブチャラティが話しかけてくる。
「ああ。君のスタンド、『スティッキィ・フィンガーズ』といったっけな?
今の攻撃方法から見て、わかったことが二つある」
がんばれ、僕。声を震わせないように必死に努力する。
「一つ目は手の部分で触れないと『ジッパー』は取り付けられない。
そして、そいつの『射程距離』はかなり短い。
そうだな、2メイルか3メイルってところだろう」
「…なるほど、よく見ているな。だが、それがわかったところで勝算があるのか?」
「ああ、君を倒す方法を思いついた。やはり勝利するのはこの僕だ!」
ブチャラティに『左腕』を投げ返す。
「なかなかいい目をするようになったな…」

「僕の魔力では『ワルキューレ』は合計で7体しか作れないといったら、信じるか?」
「本当なんだ…君に2体ぶっ壊されたからあと『5体』しか召還できない」
「余裕のつもりか?ギーシュ?」
「『まさか』だろ?戦いの実力は君のほうが圧倒的に上だ」
「この宣言は賭けだ!自分をもっと追い込むための賭けだ!『死中の活』ってやつさ!」
「行くぞッ!ブチャラティ!」
今度は3体同時に召還する。
3体目をブチャラティの右に!
4体目をブチャラティの左に!
そして5体目を正面に!
それらを同時に攻撃させる!
「なかなかいい『覚悟』だが…実力が足りないな」
3体のワルキューレが、同時に『解体』されてゆく…

「こんなものか?これなら5体同時に召還すべきだな」
「いやッ、まだだ!」
正面のワルキューレの影から僕自身が突っ込む!
右手に杖を、左手に練成した剣を持ち、『フライ』の魔法で距離をつめる!二刀流だ!
「『ワルキューレ』はおとりか?」
「『スティッキィ・フィンガーズ』!」
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
僕が突きの形で押し込んでくる剣を、スタンドが細切れにしていく。
「ここまで近づいたぞッ!出ろッ『ワルキューレ』!」
「だが、遅い」
ギーシュの杖は、振り上げた右腕ごと、地面に落下した。

「これで、君は残りの2体も召還できなくなったわけだな」
『スティッキィ・フィンガーズ』の左足で、僕の右腕を踏みつけながら、ブチャラティが淡々と語りかけてきた。
「これは『賭け』だったんだ」
それに対して、ぼくはこう答える。
「『ワルキューレ』を作り出す準備は終わっていた。
『杖を振り下ろす動作』のほかはね…」
「そして、『腕ごと振り落としても魔法は発動するか』なんて誰も試したことはなかったからな…だが、僕は『賭けに勝った』ようだ」
「何だと?」
「『囮』は僕自身だッ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


6体目と、7体目。
ブチャラティとスティッキィ・フィンガーズ。

彼らの真後ろに発現させた『ワルキューレ』は、それぞれ、目標ののど元にレイピアを突きつけていた。

全魔法力を使い切ったせいか、意識が薄れてゆく…
バカな!決闘中だというのにッ…
「いや、『参った。』君のその根性。
正直見損なっていたよ。マジに恐れ入った…君は…」
なんだって?最後まで聞き取れずに、僕は無意識の底へと沈んでいった。

「ハッ!」
僕はベッドの上で気がついた。
「大丈夫?あなた気絶していたのよ?」
モンモランシーが傍らに座って僕の切断されたはずの右手を握っている。
「僕のケガはどうなったんだ?それに『決闘』はどうなった?」
「あなたの傷はブチャラティが完璧に直していたわ。
ううん、直したというより『元どおりにくっつけた』感じだったけど…
そして『決闘』は終わったわ。あの平民が『参った』といったの。
あなたはあの化け物使い魔に勝ったのよ!」
「違うな。モンモランシー。勝ったのは彼だ」
「彼は決闘直前に『スティッキィ・フィンガーズが相手する』といった…
そして、気がつかなかったのか?彼自身は決闘中『まったく動いてないんだ』…
彼は、最後まで『自分の決闘のルール』で闘った…」
「おそらく、ルール無用の『殺し合い』では僕はあっという間に殺されていただろう…
彼こそ貴族にふさわしい…
いや、平民とか貴族とかを超越する、何か『黄金の精神』を感じる…」
「モンモランシー…僕は彼のような「偉大な精神を持つ男」になれるだろうか…」
「ええ…あなたならきっとなれるわ」

「ところで…」
「なんだい?モンモランシー?」
「私の聞き違いかしら?教室のところで、
『ギーシュはケティと付き合っている』ような言葉が聞こえたのだけれど?」
なんというか、モンモン。君の笑顔はステキだけど、なんだか張り付いたようになっているのは気のせいかい?
「僕は君一筋だよ。モンモランシー」
「そんなことはわかっているわ。私のギーシュ」
パァン。僕の頬に紅葉模様ができる。
「ほかに浮気相手はいるの?」
「ちょっと。笑顔でたたくのはやめておくれよ」
パァン。「ほかに浮気相手はいるの?」
「ちょっと…」
パァン。「ほかに浮気相手はいるの?」
「ちょっ…」
パァン。「ほかに浮気相手はいるの?」
「ち」
パァン。「ほかに浮気相手はいるの?」
……

ルイズとブチャラティは昼食をとりに『アルヴィーズの食堂』に向かっていた。
「ケガがなかったのはよかったけど!せっかくなら勝ちなさいよね!」
ルイズは安心したのか、とたんに怒鳴りつけてくる。
「そんなに怒るなよ…
やつは思ったよりも根性のあるやつだったし…
何よりも少年をバラすのはオレの流儀に反するんでね…」
「何なのよまったく…
でもドットメイジとはいえあそこまで健闘したのは誉めてあげる。
今度町に行ったとき何かご褒美を買ってあげるわ」
「それはありがたい…」

アルヴィーズの食堂に二人ではいる。
「お疲れ様ですMr.ブチャラティ!」
…ギーシュがいた。背筋を伸ばしてこちらを見ている。
「さ、Mr.ブチャラティ、こちらへどうぞ!僕の隣へお座りください!」
「な、なんなのよ!人の使い魔にちょっかい出さないで!
彼のご飯は別に用意しているんだから!」
「ひょっとしてあの床においてある小汚しいのかい?ふざけるな!
Mr.ブチャラティを侮辱することはこのギーシュ・ド・グラモンが許さん!『決闘』だ!」
「まあまあ、落ち着け。二人とも」
争いを止めながらブチャラティは思った。
(な…なんだ?これは…展開が読めない…)


そのころ、大破した教室内では…
「……」
「なにッ!本名シャルロット!?北花壇警護騎士団!?スゴイぞこの子はッ」
きゅいきゅい!(お姉さまたちなにしてるの? 私もまぜてー)
掃除はゼェーンゼンはかどっていなかった。


「ところで、ギーシュ。君のワルキューレは杖がなくても動かせるのか?」
「!」
「ハハハ…動かせませんね…」
「詰めの甘いやつだな…」


勝敗の行方  当事者がどちらとも「自身の敗北」を主張したため、
         「引き分け」との見方が広がる。
ルイズ     ブチャラティを見直す。が、露伴に洗濯を『だが断るッ』されてヘコむ。
ブチャラティ  なぜか貴族の食事をGetする。
キュルケ    『私のダーリン』がブチャラティに確定。
ギーシュ    ルイズとの決闘は取りやめに。
          いやな顔をされたので呼び方を「ブチャラティさん」に改める。
モンモランシー ギーシュとよりを戻す。バカップルL5発動中。
ケティ     ブチャラティにちょっとだけときめく
タバサ     岸辺露伴に友情を抱いている。本にされたこと自体は気づいていない。
岸辺露伴    短編集『ブルーライトの少女』を執筆中。
マリコルヌ   知らね。

To Be Continued...




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