ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は天国への扉を静かに開く-2

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
自室で、その腕に赤ん坊を抱いている男と向かい合い、ルイズは胸を張った。
出来るだけ自分の大きく見せようと、無駄な努力だが。
召喚してすぐ怒鳴られ、その声に当てられて迂闊にも動けなくなってしまったのだから。
けれど不思議と男に対する反感は少なかった。
ワケもわからず怒鳴った男だというのに、平民で使い魔だというのに。
男は自分の名を『岸辺 露伴』と名乗った。
そして抱いている赤ん坊の名は『静・ジョースター』と言うらしい。
露伴の歳は20、職業は作家を生業としている。
静は実の子ではなく、知人の子供を一時的に借り受けてた状態らしい。
そのため、その静だけでも先に返さなければならない、返す方法を優先的に探して欲しい。
露伴はそうルイズに告げた。


「要するにあのキスでぼくは君の使い魔になったというわけか」
「……そうよ」
「そしてこの左手が使い魔のルーンと言うことか」
「そうよ」
「なるほど……。それはわかった。ではこちらの話を聞いて貰えるおうか」
「……まぁ、良いけど、何よ」
尊大気味な露伴の口調にルイズは逡巡したが、そのまま促した。
「コレ、見えるかい」
そう言って露伴は右手を出す。
「コレ………って………右手がどうかしたの?」
見えていない、その事実を確認すると露伴は己のスタンド『ヘブンズ・ドアー』を引っ込める。
『魔法』という概念がどう言ったモノなのか不明瞭だったが、スタンドはスタンド使いでないと見えないというルールがある以上、ルイズがスタンド使いでないことは明確だ。
最も、魔法が使えないルイズを魔法使いと呼んで良い物かどうかは露伴には判断付かなかったが、自分でそう思っているならば、追究することでもない。
下手に訊いてなぜルイズが魔法を使えないのか、その事実を知っている理由を問われた場合も説明が面倒になる。
黙して語らず、沈黙は金。とりあえず他の魔法使いの前でも確認してみよう、
(『ヘブンズ・ドアー』は仗助や康一くんにあって成長したスタンドだからな)
かつては自分の書いた漫画を見た相手、波長の合う相手にしか使えなかったスタンドだが、成長した今となってはたとえ相手が誰であろうとも使用できるまでに成長している。
野良猫や野良犬に試したこともあるがきちんと効果は発動した。『知性』のある生き物なら人間以外にも使える事が判明している。
「……見えていないならいい」
「???何よどういう事よ。ちゃんと説明しなさい。使い魔なんだから」
ルイズの言葉を無視し、露伴はその腕に抱いた静をあやしはじめる。
ほほをこちょこちょとすると、くすぐったそうにしながらも嬉しそうに笑う。
その笑顔に、露伴のほほもほころぶのをルイズは見た。
そのため、露伴がなんのために右腕を出して、何を見えていないのかと言うことを追究するのをやめてしまう。


「ところで……ロハン。さっきその子を早く返したいと言ってたわね。あなたどこから来たの? 返す方法って、普通に帰れないの?」
「信じるかどうかは君の勝手だが。実は僕らはこの世界の住人ではないのさ」
「……………は?」
あぁ、やっぱり信じていないな。そう思いつつロハンは続ける。
「信じるかどうかは君の判断に任せるとして。ぼくらがいたところではまず貴族とか平民と言った区別はあまり無い。まぁ、地域によってはあるが、今ではあまり一般的ではないね。それに魔法も使えないな」
「魔法が使えないのは……平民だからじゃ……」
「それに何より、元居たところでは月が一つしかないんでね」
「月が一つ? 嘘よ! そんなところがあるはず無いわ」
「あるかないかはさておき、信じる信じないは君の勝手だからどうでも良い。でもね、ぼくはともかくこの子は確実に帰さなきゃならない! その為にはなんとしても帰る方法を探してもらうぞ!」
強い口調で言う露伴にルイズは圧倒される。
完全に信じたわけではないが。赤ん坊だけでも先に返したいと言う露伴の姿勢には少なからず共感できる。
赤ん坊は無関係なのだ。
「………良いわ、とりあえず信じたつもりになってあげる」
「そうしてもらえると助かるよ」
ルイズの言葉に露伴は苦笑しながら応えた。
「それと、帰る方法も……そうね、その子を返したいって言うあんたの気持ちもわかるから調べてあげる。そのかわり……」
「あぁ、わかっているさ。寝床と食事を提供してもらうんだ。君の指示に従ってもいい」
妥協の混じった露伴の言葉にルイズの眉がピクリとつり上がるが、抑える。
(ふぅん……本に書いた一文が効果出ているようだな。この娘の性格では怒り出しても仕方ないと思っていたのだが)
そう露伴が思っているとはつゆ知らず、ルイズは使い魔の心得を切々と語りだした。
「使い魔は主人の目となり耳となる力があるんだけど。平民だからかしら。何も見えないわね」
そう言えばそんなことも描かれていたな、『使い魔の能力』だったか、読み飛ばしてしまったが。
他に何が書かれていたか思い出す前にルイズが次の言葉を紡ぐ。

「次に、使い魔は主人の望むモノを見つけてくるのよ。宝石とか、秘薬とかね」
「無理だな。こちらの常識が判らない以上何がなんだか判断する術がぼくにはない」
「でしょうね。なら……使い魔は主人を守る存在なんだけど。その能力で敵から守るのが一番の役目! でも、無理そうね。平民じゃ」
『ヘブンズ・ドアー』が見えない時点で、メイジだろうがその命令に抗う術はないのだが、あえて説明する必要もないと判断する。
「そうだな……あいにくぼくには敵と『正面切って』戦ったりできるような能力はない」
「……強い幻獣なら、並大抵の敵には負けないけど……。仕方ないわね、あんたに出来そうなことをさせてあげる」
「と言うと、具体的に何を?」
「洗濯。掃除。その他雑用ね、それくらいならあんたにも出来るでしょ」
「それくらいで良いのか」
てっきり反発するかと思ってたルイズは意外に素直に引き受けた露伴に面食らったような表情をした。
「ん?どうした。君が言ったことだろう。引き受けると言ったんだが判らなかったか」
「ち、違うわよ。反抗するかと思っただけよ。それがすんなり……その……ごにょごにょ」
「食事と寝床を提供してもらうんだ。それくらいはしてやってもいい」
「ちょっと! さっきから聞いてて思ったんだけど。「やってもいい」とか、それがご主人様に対する言葉なの!?」

「当然だろう。ぼくらはわけもわからず呼び出されただけなんだ。従ってやるだけでも感謝して欲しいくらいだ」
「こっこここここ。このっ!!」
露伴の言いぐさに、ルイズの怒りが瞬間湯沸かし器のように沸騰する。
ところがそれに反応したのは露伴ではなく、その腕の中の静の方だった。
「オギャアアアアアアァアアァァ」
ルイズの大声にビックリしたのか、大声を上げて泣き出してしまったのだ。
「大声を出すな。赤ん坊がビックリするじゃないか。おーよしよし、すまないね乱暴なお姉ちゃんで」
両手であやしながら、露伴は扉を開けて外に出て行く。
「ちょっとどこへ行くのよ!」
「呼び出されて何も食べていないんだ。赤ん坊の食事も確保しなきゃ行けない。あいにくぼくは何食べさせたらいいかわからないからね、ちょっと厨房まで行ってくるよ」
露伴のその言葉を受けて、ルイズはしばし考える仕草をしていたが、おもむろにベッドから腰を上げた。
そして、テーブルに置いていたマントを羽織り、杖を取って露伴の隣に並んで歩く。
「仕方ないわね………その、赤ちゃんが泣いちゃったのは。ちょっとは私にも責任あるから、私からも厨房にお願いして上げるわ」


大泣きしていた静だったが、しばらく抱いてやると途端に笑い始めた。
赤ん坊の笑顔の可愛らしさに、それを見たルイズの顔にも笑みが浮かぶ。
(……このルイズの性格………近い将来に流行るかもしれない。ネタとして確保しておこう……)
露伴に対してはきつい口調で接していたが、赤ん坊ともなると柔らかくなるようだ。
それが相手に依って異なるモノなのか、それとも状況次第で露伴自身にも同じような対応をするのか。
それはとても興味深かったが。
とりあえず、ルイズに静を抱かせてみた。
再び泣き出してルイズが狼狽した、正直反応は非常にユカイだった


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー