ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-47 後編

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匿名ユーザー

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声のする方向に視線を向けたが、なにやら揉めている。
アニエスがコルベールに剣を突き付けているようで、中々の修羅場のようだ。
「さっきから何やってやがる。内輪揉めとか本気で勘弁しろよ。メンドクセぇ」
負傷や戦闘の疲れでかなりダルい。
最悪二人ともブン殴って終わらすかと思って近づいたのだが、どうも事はそう単純ではないらしい。

「貴様…何故わたしを助けようとした!
 あの時、女、子供も容赦なく焼き殺したお前が!今、わたしを助けるぐらいなら何故あの時故郷を焼いた!!」
アニエスのその言葉を聞いて思い当たる事はある。
リッシュモンはあの時殺ったが、あれは命令を出しただけだ。パッショーネで言うならボスの立場か。
当然、実行者。これもパッショーネに例えるなら暗殺チームが居るはずなのだが、それがコルベールか。と判断した。

「命令だった……」
「命令?リッシュモンのか!」
「そうだ。……疫病が発生し、焼かねば被害が広がると告げられた。仕方なく焼いた」
そんな二人のやり取りを聞いてプロシュートの眉が少し上がった。
どうも今の言い様が気に食わないのだが、とりあえずもう少し聞いてみる事にした。
「バカな…それはリッシュモンがでっちあげた嘘だ……!」
「……ああ、後になってわたしも知った。新教徒狩りと知り毎日罪の意識に苛まれた。メンヌヴィルの言ったとおりの事をわたしはやった」
「それで……それで軍を辞めたのか」
「そうだ…二度と炎を破壊の為に使わないと誓った」
「そんな事で…貴様が手にかけた人が…帰ってくると思っているのか?故郷と家族の仇討たせてもらうッ!」

アニエスが剣をコルベールの首に突き付けたが、それでもコルベールは動こうとはしない。
それを見てもプロシュートとしては止める理由も特には無い。
自身が恨みを買う立場だっただけに、復讐者に対しては
『殺れるもんなら殺ってみやがれ。ただし、死ぬ覚悟はしておけ』
である為に、抵抗する気が無いならそりゃあそいつの勝手だ。
という事で今の所邪魔する気は無いのだが、そうもいかないキュルケが割り込んできている。

「お願い、止めて!確かにコルベール先生はあなたの仇かもしれないけど
  今はあなたを助けようとしてくれたじゃない。それでも斬るっていうの?」
確かにあの時グレイトフル・デッドが割り込まなければ間違いなくコルベールは死んでいた。
そのせいか、アニエスの目に迷いが出始める。
「ぐ…ッ!だが…二十年前にわたしの故郷を焼いた事には変わりはない…ッ!こいつが…いくら後悔していようとだ」
そうは言うがかなり迷っているようで、切っ先が上がったり下がったりしている。
昔の仇と今の恩。どちらも天秤にかけるには重いが、それでも僅かに仇の方に傾いたようで剣を振り上げた。

と、そこにプレッシャーを撒き散らしながら、プロシュートが三人に近付く。
「おい」
「何だ!貴様も邪魔するつも…り」
アニエスが見た物は、問答無用で構えられている握り拳が飛んで来る様。
反射的に防御姿勢を取ったが、それはアニエスを捕らえる事なく……コルベールに突き刺さった。

「なな…何を…」
相変わらずの突拍子の無い行動を目にしたキュルケがどういう事態か理解できずに聞いてきたが
殴った方は、それを無視してコルベールの胸倉を掴んだ。

「さっきから黙って聞いてりゃ、何ふざけた事言ってやがるてめー…」
「な…わたしは何も…」
まだ何か言う前にもう一発追加で拳が入る。
「まだ分かんねーのか。さっき言ったな?仕方なくってよ。
  仕方なく?仕方なくだと?ナメんのも大概にしやがれ。知らなかったってのは良い…
 組織に属している以上、命令はあるからな…別にその事じゃあねぇ。
  だがッ!『罪の意識に苛まれた』だと?それじゃあ仮に疫病が発生してたってんなら仕方ないって事で済ませれる。そういう事だよな?おい」
暗殺チームの立場からすれば、『疫病』も『新教徒』も違いは無い。
殺るか、そうでないか。のどちらかでしかない。
結果は問題とはしていない。むしろ、その過程にある物が気に入らないのだ。
疫病だろうが、新教徒狩りだろうが、ダングルテールを滅ぼしたという結果に変わりは無い。
だが、こいつは疫病だったから仕方なく焼き、そして新教徒狩りと分かれば後悔したなどと言った。
暗殺任務において、『仕方なく』やった仕事などは一切無いだけに、余計に気に入らない。

「自分がしでかした事から逃げたんだよ…オメーは。
  請け負った仕事が偽物だったんなら、その時命令を出したヤツを殺るならすりゃあいいじゃあねーか。
 それもしないで、何が仕方なくだ。なぁにが罪の意識だ。大体オメー隊長だったんだろうが。部下はどうすんだよ。
  オレ達チームの他のヤツならッ!組織に裏切られとしても逃げたりはしねぇ!例え途中で仲間が何人死のうとも決してなッ!」
だからこそ、ホルマジオも、イルーゾォも、ペッシも、メローネも、ギアッチョも、リゾットも戦い死んでいった。
ボスがジョルノに倒されてさえいなければ、今頃は、イタリアで墓の下か潜伏生活というところだろう。

「それでも分からないってんのなら……」
言葉の温度が一層低くなり、次の言葉にキュルケとアニエスが凍りついた。
「……いっその事、ここで死ね。なに、オレに殺られるのも、そいつに殺られるのも大して違いはねぇ。この際だ、オレがブッ殺しといてやる」
絶対零度。さっきコルベールが発した、触れば火傷し燃え尽きるような感じとは全く違う雰囲気。
暗殺という汚れ仕事に従事し、対象が誰であろうと躊躇しないという全てを凍らす冷徹極まりない声。

コルベールもそういう物を持っていたかもしれないが、プロシュートから言わせれば、まだ甘い。
言うなれば、専門職と兼職の違いか。この場において、その差がハッキリと出た。

スタンド使い以外には見えない力がそ右腕より発せられ、コルベールの首筋を掴みその跡を出現させる。
こうなれば、一瞬で終わる。直ならば、人一人老死させる事など容易い事だ。

が、不意にスタンドを解除しコルベールを離した。
「…それをオレに向けるって事がどういう事か分かってやってるんだろうな?」
明確に向けられている敵意。後ろを見なくても誰が何をしようとしているかぐらいは分かる。
「分かってる、でも!そんな事は絶対に許さない…!」
何時に無く真剣な顔のキュルケが、すぐ後ろで杖をこちらに向けている。
「先に言うが…スデにグレイトフル・デッドはオメーの真正面だ。それでもか?」
キュルケがその問いには答えず、呪文を唱え始める。
「馬鹿が……ッ!」
先にもあったが、敵対するつもりなら一切の容赦はしない。

だが、掴もうとした時、下のコルベールが静かに口を開いた。
「わたしの教え子には、手を出さないでくれ」
「そうしたいんだが、向こうがそうさせてくれねぇ」
「もういいミス・ツェルプストー。わたしはそれだけの事をやったんだ。その報いだよこれは」
「嫌です!あんなに小ばかにしていたあたしをミスタは守ってくれたでしょ。だから今度はあたしが!」
「…ってこった。悪いがオレは手加減なんっつー器用は事はできねぇからな」

一触即発。誰かが少しでも動けばケリが付く。
キュルケが杖を動かすと同時にプロシュートがスタンドを向け、コルベールが止めようと声を出そうとした時
風が吹き、キュルケを吹き飛ばす。コルベールとプロシュートには直接当たらないようにだ。
これだけの風を精密に使いこなすのは、この場所においては一人しか居ない。

「タバサ…あなたどうして……」
倒れたキュルケが顔を上げると、杖を持ったタバサが顔を横に振る。
「駄目」
その一言。それだけの行為だった。

なんとか杖を拾い、再び二人の方へ視線を向けると、またしてもコルベールの首筋を見えない手が掴んでいた。
「君に言っても仕方ないかもしれないが、最期に一つ言わせてくれ。
  これ以上、殺し合いに慣れるな。死に慣れるな。わたしのようにならないでくれ」
「…お前それは冗談のつもりか?オレみたいなヤツに言う事じゃあねーぞ」
「まぁいいさ。君たちの世界を見てみたかったんだがな…」
そう言ってコルベールが目を閉じると同時に、見事に重なる二つの声。
「やめてぇぇぇ」
「やめろぉぉぉ」
キュルケと今まで黙っていたアニエスが同時に叫んだが、もう遅い。

何時もと変わらない声のプロシュートが一言だけ言った。
「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
スタンドパワー全開。
その瞬間、コルベールの身体に無数のシワが刻まれ朽ち果てていき、その場に崩れ落ち
近寄ったタバサがコルベールの手を取ると雪風の二つ名と同じような冷たい声で告げる。
「死んだ」


炎蛇のコルベール――死亡




ようやく日の光が出てきたが、その場で声を出す者は一人も居ない。
広場にコルベールが枯れ木のように朽ち果て倒れているのだから当然だ。

そんな重苦しい中、何かに気付いたアニエスがやっと口を開いた。
「お前が…貴様が、あのグラモン元帥の子息を決闘で討ち滅ぼしたという悪魔憑きか…」
「よく知ってんじゃあねぇか。ま…確かにこいつは…悪魔かもしれないが」
人によっては悪霊とも言うだろうが、中には己に害をもたらすスタンドも珍しくないだけに、ある意味間違ってはいない。
「何故だ…何故殺した!」
「あ?オメーの手間省いてやったんだろうが。感謝しろよ」
「違う!二十年だ!二十年をもこの日を待っていた…それを貴様が!」
「そうか?ならどうしてあの時すぐに殺らなかったんだよ」
殺ろうと思えば、あの場で殺れたはずだ。
その事を指摘されアニエスが戸惑う。
「それは……仇とはいえ、わたしの身代わりになろうしたからだ……!」
「ハッ!そんな半端な気で殺ろうとすんじゃあねぇ。迷いながら殺るなんぞ、まだ殺らない方がマシだぜ」

心に迷いがあるという事は、その覚悟が出来ていないという事だ。
つまり、今のアニエスにコルベールを殺す資格などは無い。
「なら、どうすれば良かった…どうすれば…!」
「知るか。そのぐらい自分で考えろ。オレとあのハゲからの宿題だ。次、会う時までぐらいには答え見つけとけよ」

「…クソ。負傷者の手当てを…悪いがしばらく一人にしてくれ…」
近くに居た銃士にそう告げると、力無くアニエスが歩き出し、その姿を消した。

他の銃士の姿も見えなくなると、息を吐く。
「ったく…どいつもこいつも…」
今にして思うと、チームのヤツらが懐かしく思える。
よくもまぁ、ああも似た連中が集まった…いや、似た連中だから暗殺チームになったのかと思っていると
コルベールの上に覆い重なるようにして、キュルケが泣いていた。

「どうしてこんな……」
どうしてこうなったのか全く以って理解できない。
コルベールを殺ろしたプロシュートも、死を受け入れたコルベールも、そしてあの時邪魔したタバサの事も。

パシ!

それもこれも、自分のせいだ。自分が不用意な行動を取らなければ、もう少しマシな結果になったかもしれない。
そう思うと余計に泣けてきた。

ピシ

ふとコルベールの指に嵌った燃えるようなルビーを見つけると、ある決意が浮かび上がる。

ガシ

何時もの『微熱』の二つ名を持つ自分ならどうするか。

グッ

決まっている。情熱と破壊という火の本領に基き行動する。
つまり、プロシュートへの攻撃の再開。敵わなくても一矢報いたいという想いで顔を上げたのだが…

グッ

もの凄い無表情でプロシュートとタバサが手を合わせていた。

「で、何時からだよ」
傍から聞くと何のこっちゃ分からないだろうが、意訳すると「何時からオレに気付いた」という事だ。
「夜の街道」
「マジか?あの暗さだぞ」
「シルフィードを甘く見ない」
ウェールズを追った時の夜。つまり、大分前から知っていたという事にはさすがに驚きを隠せない。

「それでよくオレの事他のヤツに言わなかったな」
「人には事情がある」
「大したタマだよ…オメーも。それにしても、何も言ってないのによく気付いたな。礼を言うぜ」
「普段言わないからすぐ分かった」
コルベールが死んだというのに、一仕事終えたかのような感じでそんな会話をする二人と
さっきまでの危険極まりない雰囲気とのギャップに力が抜けかけたが、振り絞るかのようにしてキュルケが叫んだ。

「な、何よ!あなたたち!コルベール先生が死んだっていうのに、よくもそんな風にしていられるわね!」
そのシャウトにキュルケの方を向いた二人だが、揃って『何言ってんの?この人』というような顔をしている。
「タバサもタバサよ!あの時あなたが邪魔したおかげで先生が…!雪風を微熱で溶かしてあげれたかと思ってたけど全然違ってたのね!」

「おい、アレはまさかとは思うが素か?」
「多分そう」
二人揃って呆れ気味だが、この状況で気付ける者が居る方が珍しいだろう。

「大体、揃って手なんか合わせたりして!ミスタが死んだのがそんなに嬉しいの!?見損なったわ!」
いい加減五月蝿いと思ったのか、普通にタバサが一言だけ短く言った。
「死んでない」
「ええそうよ!自分で確認したんでしょうから……って、え?」
「だから死んでない」

ザ・ワールド
そんな声と共にキュルケだけの時間が止まる。それでも、何とか理解しようとしたが、まだいま一つ理解できていないようだ。
「……つまり?」
「見れば分かる」
そう言って指差した方向を見ると、さっきまで枯れ木のようだったコルベールが元に戻っている。
さすがに、ここまで生き残った髪の毛は丈夫なようで抜け落ちてはいない。

慌ててコルベールの元に駆け寄り、手首を取ったが温度と脈の動きが確かにある。
「生きてる……」
「報酬も出ねーのに殺るかよ。誰が好き好んでそんな割りに合わねぇ事するか」
それこそはき捨てるかのように言ったが、今度はキュルケに疑問が浮かんできた。
「で、でもあの時死んだって言ったじゃない!それにあの雰囲気…!」
確かに、恐ろしいまでの冷徹な殺意がキュルケとコルベールを襲っていたのだから当然だが
その問いに答えたのはタバサだ。

「普段言わない事を言った」
その言葉を聞いてさっきの事を思い出す。この男が普段絶対言わないような事。
必死になって記憶を探ると、一つ引っかかる言葉があった。

『……いっその事、ここで死ね。なに、オレに殺られるのも、そいつに殺られるのも大して違いはねぇ。この際だ、オレがブッ殺しといてやる』
『この際だ、オレがブッ殺しといてやる』

『ブッ殺しといてやる』

「あ……」
「彼は殺すなんて使ったりしない」
「よく分かってるじゃあねーか。マジで何モンだ。それに比べてなんだ!?オメーのあのザマは!?」
本気であれば、そんな事思った時点で行動が終わっている。
どっちか気付くかと思ったのだが、やはり気付いたのはタバサの方だ。

「今までのは演技?だとしたら劇場で主役張れるわね…」
「そうでもない。殴ったのも言った事もありゃ本気だ。ついでに言えば、お前に向けた殺気も本物だぜ」
気が抜けたのか、頭を押さえながらそう聞いてきたが、続いてプロシュートが言った事に動きが止まる。

「……もしもよ?もしも、あのままタバサが止めなかったらどうなってたの?」
腫れ物に触るように恐る恐る聞いてきたが、聞かれた方は当然のように答えた。
「お前がそこに転がってるに決まってるだろ。具体的に言うなら、全身シワだらけになって、無数のシミとかも出来てる。
  自慢のスタイルも崩れてるし、場合によっちゃあ歯や髪も抜け落ちてるな。そこまで酷いと解除しても元には戻らないかもしれねぇ。
 なにせ、直を叩き込んだ相手の殆どは殺っちまってるからオレも分からん。まだ他に聞きたいか?ああ、そういや背骨とかも…」
「いえ…もう結構よ……」
もう限界。これ以上聞いたら欝になる。至極普通に言っているだけ余計恐ろしい。
そんなわけでまだまだ続きそうな説明を即座に断ると、キュルケが半分泣きながらタバサに抱きついた。

「タバサ~~あなたってばホント良い娘ね。一個どころか、十個ぐらいの貸しよ、これ」
タバサに抱き付き頬ずりまでせんばかりのキュルケだったが、老化を免れたのだからそれも当然というべきか。
「オメー、そんな老化すんのが嫌か」
「当然よ!」
即答というのはまさにこの事。間髪入れずに返してきたが、人の能力全否定されただけに少々ムカつかないでもない。

「まぁいい…それより、そいつどっかに隠せ。あいつに見られたら洒落にもなんねー」
折角面倒な三文芝居までかましたのにバレては洒落にならんとして指示を出したが、どうやらまだ納得がいってないようだ。
「でも、どうしてそんな回りくどい事を?簡単に止められたんじゃ」
「別に、本気で殺るなら止めやしなかったがな。あの場で殴って止めても、そいつが追われる事には変わりねぇ。
  だからいっその事、死んだようにして、あいつに時間やって考えさせるしかねぇだろ。どいつもこいつも半端なくせに面倒なヤローばっかだよ」
本当に、ロクに覚悟の意味も理解できてないような連中ばかりだ。
ただ、最近少しだが思うようになった事がある。
今までこそ、似たような連中に囲まれていたため気にも留めていなかったが、本来は自分たちのような連中が圧倒的少数派なのだと。
まぁ、今更進む道を変える事もできないだろうし、変える気も無い。

そうしていると、妙にニヤついた顔でキュルケがこちらを覗き込んでいる。
「……何だ」
「やっぱり、そういうとこ変わってない。普段無愛想なのに、意外な所で面倒見がいいところとかが特に」
何せ、ペッシがミスタに撃たれた時に、老化していたとはいえわざわざ出て行ったという実績がある。
ミスタをおびき寄せるためというのもあったが、あの時はまだブチャラティチームの情報は略歴と顔写真ぐらいしか知らなかった。
もし、ミスタが自分らと同じ、目的の為には一般人をも巻き込むのを躊躇しないタイプなら、かなり危なかったといえる。
それを承知で出て行ったというだけに、返す言葉があまりない。

それでも反論する余地があるのは長年の経験だろうか。
「勘違いすんな。そんな気なんぞ毛頭ねぇ。そのハゲにはまだ利用価値があると思っただけで他は何もねぇ」
「ルイズと一緒のとこあるのねー。やっぱり似た者同士だったってとこかしら」
「どこがだよ…あんなのと一緒にすんな」
「結構似てる」

遂にタバサまで要らん事を言い出してきたので話を変える。というか、本来話している暇など無いのだが。
「オメーまで言うか。マジ勘弁しろ。それより、こいつをどうにかしてくれると有難いんだが」
見せたのは、余波で良い具合に焼けた左腕。こんな状態で普通に話をしていたのだから、相変わらずの精神力といえる。
それこそ、治るのであるのならば、腕や脚の一、二本を自ら切り落とす事ぐらい躊躇はしない。そういう意味ではジョルノのG・エクスペリエンスは反則だ。

「魔法ってのアテにしてなけりゃあ、あんなもんできねぇ芸当だ」
早く治せよ。という感じで腕を出したが、何かこうキュルケが言いにくそうにしている。
「……そうしたいとこなんだけど、戦争で学院の秘薬も徴収されたみたいで残ってないのよ」
「何?……つまり無理って事か?」
「ん~、怪我の程度にもよるけど精神力を削って治すって事もできるわ。でも、ねぇ…」
辺りを見たが、どうやらマジにコルベールを殺ったと思われたようで人が居ない。
「仕方ねぇ…適当なヤツ見つけるしかないようだな」

逃げてー!水のメイジ逃げてー!

この目は間違いなく、脅してでも治させるという感じの目だ。
火の系統で良かったと思う反面、これから巻き起こる交渉という名の恐喝を想像して犠牲者の為に目を閉じたが、誰かがこっちに近付いてきた。
よりによって水のラインのモンモランシーである。
「おう、オメー確か水だったな」
「いや、でもちょっと無理なんじゃ…」
能力的にではなく、ギーシュを殺ったという関係的に無理があると判断したが、返ってきた言葉は意外だった。

「腕出して」
「あら…見ない間にそういう関係になってたの?」
「違うわよ。皆と先生を助けてくれた借りは返す。それだけの事!終わったら覚悟しときなさいよ」
「さっきテンパってたヤツはどこのどいつだ。来るのは何時でも構わねぇが、手加減なんぞしないからな」
「……はぁ。なんでこんなのに決闘なんて挑んだのかしら、あの馬鹿。ほら腕」
言われたままに腕を出すと、モンモランシーが呪文を唱え始めた。
一応、また何か盛られたら洒落にもならんので何時でも直に移行できる体制には入っていたが、どうやらそれは無用になりそうだ。

しばらくすると終わったようで、手を動かしてみる。
多少痛みはあるが、動くようになっただけ良好だ。
「いつか絶対……参ったって言わせるんだ……から…覚悟しとき…なさ…い……」
やはり秘薬無しに治癒を使うのは無理があるようで、絶え絶えにそう言うと、モンモランシーが地面に向け倒れた。

「よ…っと。こいつも軽いな…飯食ってんのか?」
地面にぶつかるスレスレの所で力の抜けた身体をキャッチする。
全く、面倒なヤツに目ぇ付けられたもんだ。
「おら、そいつがノビている間にジジイの所行くぜ」

こいつをここに放置したままというのも何なので、どこかに運ぶ事にしたのだが
それを見たキュルケが一々要らん事を言ってくる。
戦闘直後なので説教する気にもなれない。こいつも面倒なヤツだ。本当に面倒な連中ばかりだ。だが……


面倒だという事が大半を占めるが、『この温い雰囲気もそう悪くは無い』という気が自覚しないまでも僅かだが湧き上がっていた。

←To be continued


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