ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サブ・ゼロの使い魔-19

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「ここにフーケがいるの?」
「ええ、わたくしの調査によれば」
中から気取られない程度の距離を保って、一行は茂みの中から廃屋を観察
する。「ここからじゃ分からないわね」とキュルケが口にしたのを合図に、一同は一斉に顔を見合わせた。
「誰かが偵察に行かないとね・・・」
「セオリーとしては捨て駒が見に行くべきかしら」
「ちょっと!なんで僕を見るんだい!?」
あーだこーだと言い合うハデな髪の三人を尻目に、タバサが「ギアッチョ」と呟くのとギアッチョが腰を上げるのはほぼ同時だった。
「ちょ、ちょっとタバサ!?」
ルイズが抗議の声を上げる。青髪の少女はちらりとルイズを見ると、
「無詠唱」
ギアッチョを指してそう呟いた。そしてギアッチョがそれを受ける。
「なかなか実戦慣れしてるじゃあねーか小せぇのよォォー いい判断だ・・・この中で最も不意打ちに対応出来るのはオレってわけだからな」
無詠唱という単語にミス・ロングビルがピクリと反応する。腰に下げた剣を抜こうともせずに廃屋へ向かう男の背中を見ながら、ミス・ロングビルは誰にともなく尋ねた。
「ミスタ・ギアッチョはメイジなのですか?」
その質問に、全員が今度は一斉に彼の主を見る。ルイズはどう言っていいものか少々言いよどんだが、
「ま、まぁ・・・そんなものです 厳密には少し違うらしいですけど」
とりあえず当たり障りの無い程度に答えておくことにした。というか、ルイズもそれ以上のことは知らないのである。
魔法ではないとキッパリ言われたのだが、じゃあどこが違うのかと言うことまでは教えてくれなかった。
緑髪の秘書は無詠唱という部分を詳しく知りたがっているようだったが、今はそんな話をしている場合ではない。ルイズは使い魔が襲われてもすぐ助けられるよう、杖を抜いて彼を見守った。

木々に身を隠しながら小屋へと向かう。ギアッチョは別にいつ襲われてもいい、むしろ手間が省けるからとっとと襲ってこいぐらいの気持ちだったのだが、万一逃げられると後が非常に面倒なことになるので真面目にやることにした。
「ねえ、何かあいつ凄く隠れ慣れてない?」
後方で様子を伺うキュルケがそう口にする。タバサやギーシュ達も、その洗練された動きを興味深げに見守っていた。自分の使い魔が褒められて嬉しくない主人がいるだろうか?
「そりゃ、凄腕の暗殺者だったんだからね」
と胸を張りたかったルイズだが、流石にそんなことをバラしてしまうのはどうかと思って黙っていた。
そうこうしているうちに、ギアッチョは廃屋に辿り着く。入り口の横にスッと身を隠し、
――ホワイト・アルバム
スタンドを発動させる。
「人の気配はしねぇが・・・気配を殺す魔法なんてのがあってもおかしかねー 念を入れておくとするぜ」
ギアッチョの足から、小さくビキビキという音が発生する。その音は入り口へ 向かって進み、そしてそこを見事な氷の床へと変えた。
「逃げようとしてもこいつでスッ転ぶってわけだ」
そうしておいて、一分の無駄も無い動きで小屋の中へと滑り込む。身を低くして一瞬で周囲を見渡し、隠れている者がいないかを探した。
「・・・誰もいねぇな」
わざと声に出して呟き、そして敢えて隙だらけの挙動で小屋の中心に立つ。
五秒、十秒。何かが襲ってくる気配はない。逃げ出す気配もない。
「やれやれ」
どうやら本当に誰もいないようだ。別の意味で面倒なことになるなと思いながら、ギアッチョはルイズ達にOKのサインを送った。

「二番手は僕に任せたまえ!!」
誰もいないと分かって俄然やる気が出たギーシュが猛然と小屋に突進し、
「ワアアアアーーー!!」
見事に氷のトラップに引っかかった。一回転したのち背中から落下したギーシュを確認してから、ギアッチョはホワイト・アルバムを解除する。
わざとだよね?わざと解除しなかったよね?というギーシュの恨みがましい視線を清々しくスルーして、ギアッチョはキュルケ達を迎え入れる。
ルイズは小屋の外で見張りをし、ミス・ロングビルは周囲の偵察をすることになった。
まだ床で呻いているギーシュを「てめーも見張れ」と蹴り出して、キュルケ、タバサと共に家捜しにかかる。
程なくして、タバサが無造作に置かれていた破壊の杖を見つけ出した。
「ちょ、ちょっと待って 何かおかしくない?こんな簡単に・・・」
キュルケの疑問はもっともである。ギアッチョは警戒するように辺りを見渡した。
「普通に考えて罠だろうな これから何かを仕掛けてくるか・・・あるいは既に何かを仕掛けているかよォォ」
タバサはスッと杖を掲げると、探知魔法を唱える。
「周囲に魔力の痕跡は見当たらない」
タバサは簡潔に結果を報告すると、指示を待つようにギアッチョを見た。
「となると 外・・・か」
その言葉に答えるかのように、外から何かを叫ぶルイズとギーシュの声が聞こえ――それと同時にミス・ロングビルが室内に飛び込んで来る。
「皆さんッ!土くれのフーケが現れました!!」

ギアッチョ達は急いで外に飛び出す。そこには自分達に背を向けて魔法を唱えているルイズと、杖を取り出したもののどうしていいか決めかねているのかオロオロするばかりのギーシュがいた。
そして二人の視線の先に見えるのは、今まさに森の中へ逃げ込もうとしている黒いローブの人物だった。
次々と放たれるルイズの爆撃をかわそうともせず一目散に茂みを目指している。
「あのローブ・・・間違いなくフーケだわ!」
すぐさま追いかけようとするキュルケとルイズを手で制止すると、
「てめーらは破壊の杖を守れ マンモーニ!てめーはついてこい!」
言うが早いかギアッチョが走り出す。
「えええっ!?ぼぼ、僕がかい!?」
「何しに来たのよあなたはッ!」
キュルケがうろたえるギーシュの尻を蹴っ飛ばし、ギーシュはその勢いで泣きそうになりながらギアッチョの後を追った。
「どうして待機なの!?私も――」
ルイズが今にも走り出そうとするのを見て、ミス・ロングビルがそれを優しく諭す。
「ミス・ヴァリエール もしフーケが逃げている先に罠があった場合、全員で行けば一網打尽にされてしまう可能性があるのです ミスタ・ギアッチョの判断は的確ですわ」
それを聞いて、彼女はしぶしぶながら納得した。

――そう、的確な判断の出来るあんたなら・・・必ずこうすると思ったよ

ギアッチョとおまけの身を案ずる3人の後ろで、有能極まる秘書は彼女を慕う者が見れば卒倒するような笑みを浮かべていた。

小屋から二十数メイルは離れただろうか。土くれのフーケは依然逃走を続けていた。
チッ、とギアッチョは舌打ちをする。
――こいつは罠を設置してある地点に向かって逃げている可能性がある・・・
そこに辿り着かれる前に、今動きを止める必要があるってわけだ。
ギアッチョはおもむろにデルフリンガーを掴むと、「え、ちょ、何を」という声も無視してそれを大きく振りかぶり、フーケ目掛けて投げつけた!

ゴワァァァーンッ!!

金属同士がぶつかり合う派手な音を響かせて、フーケはどうと地面に倒れた。
デルフリンガーに悲しい親近感を覚えているギーシュを放置して、ギアッチョは己の剣を回収する。
「初めてだ・・・こんな酷い扱いをされるなんて・・・」
デルフがぶつぶつ呟いているのも無視。そんなことよりギアッチョには一つ気になったことがあった。
――今、何故「金属同士がぶつかる音」がした?
脳裏に去来する最悪の可能性を払拭すべく、倒れているフーケを強引に引き起こす!
「――ッ!!」
ローブを身に纏っていたものは、ギーシュのワルキューレを髣髴とさせる青銅の甲冑であった。
「な・・・!?なんだいそれはッ!!」
ギーシュが異変に気付き声を上げる。
「ハメられたっつーことだッ!!」
ギアッチョはそう言い捨てて甲冑の頭部を蹴り飛ばす。氷を纏ったその蹴りに青銅の兜はあっさりと胴から分断され、鬱蒼とした森の茂みへと消え去った。

「コケにしやがって・・・!後ろを見ろマンモーニッ!!」
ギアッチョはブチ切れていた。悪鬼羅刹をも射殺さんばかりの双眸をギーシュに向けて怒鳴る。
「ヒィッ!」という声と共に、ギーシュは殆ど条件反射で元来た道を振り返った。
「ンなッ・・・!!」
ギーシュは絶句した。八体の青銅の騎士が、蟻の子一匹通さぬ密集隊形でこちらへ向かって来ていたのだ。
「既にオレ達はよォォ~~・・・罠にかかっていたっつーわけだ」
バギャアア!!と土に戻りつつあった黒いローブの青銅人形を踏み潰して、ギアッチョは今や2メイル程にまで距離を詰めた甲冑の一個分隊に向き直る。
「わ、罠だって・・・!?」
ギーシュがオウム返しに口にする。
「オレ達とあいつらを分断し・・・あわよくば始末するってところだろうなァアァ。ナメやがって!クソッ!クソッ!!」
ギーシュはとりあえずギアッチョから1メイルほど距離を取った。
「そ、それでどうするんだい!?」
造花の杖を引き抜いてギアッチョに問う。
「ブッ潰して戻るッ!!」
言うがはやいか、ギアッチョの右手が氷に包まれ始め――、数秒後、それは氷の曲刀を形成していた。
「剣の作法は知らねーが・・・こいつで首を掻っ切るなぁ慣れてるからよォォー!」
ギアッチョは腰を落として氷刀を構え、ギーシュがワルキューレの練成を開始し――そして、戦いが始まった。

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