ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

奇妙なルイズ-15

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匿名ユーザー

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手を使わずに、ペンを動かす。
これは別に何ら奇妙なことではない。
メイジは、ある程度なら簡単に自動書記が可能であり、あらかじめ鍛錬した動作であれば、軽く杖を振っただけでそれをトレースすることが出来る。
貴族は、その格式の高さから、封書を閉じる封蝋(ふうろう)と、その上に判子を押すという一連の動作を魔法で行う。
王族に近いヴァリエール家の者であれば、嗜みとして当然のことであったが、ルイズにはそれが出来なかった。
魔法成功率0%と呼ばれるだけあって、呪文を用いる魔法はほとんど爆発してしまう、呪文を用いないごく簡単な魔法は、発動すらしない。
そんなわけで、授業では必ず自分の指を使ってノートを取るルイズだったが、今日は違った。

最初に異変に気づいたのは『風上のマリコルヌ』だった。
トリスティン魔法学院では、様々な魔法薬の講義も行っているが、魔法薬の材料となる薬草、秘薬、その他の材料をいちいち消費するわけにはいかない。
黒板の前で大きな巻物が宙に浮き、そこには様々な素材のイラストが描かれている。
さながら写真のような精密さだ。

メイジは得意とする属性とは関係なく、魔法に関わる全般に詳しくなければいけない。
しかし彼らは自分の得意分野以外にはあまり興味がない、魔法薬を専門に学ばない限り、微細な特徴まで知る必要はないと考えているのだ。
ルイズはその中でも異端の異端、得意とする属性すら分からない状態なので、どんな種類の講義でも真面目に受けてようと努力していた。
この『イラスト』に関してもだ。

マリコルヌは、ふとルイズの席を見た。
さっきからペンを走らせる音が妙に大きいからだ。
ルイズの席は列の一番奥だが、その周囲2席分には誰もいない、何度も爆発騒ぎを起こしたルイズのそばに座る者は皆無なのだ。
間を2席開けて座っていたマリコルヌは、音の招待に気づいて驚いた。
シャシャシャシャ、ではなく、シャァァーーー、と音を立ててペンが紙の上を走っている。
ルイズも魔法が使えるようになったのか!
と驚いたマルコリヌは、好奇心からルイズの席に近づくことにした。
席を一つ詰め、二つ詰め、ルイズの隣に座り、ノートをのぞき込んだ。
そこに描かれているのは教材のイラストと同じイラストだった、そのあまりの見事さに、風上のマリコルヌは思わず声を上げた。
「すごい…」
それに驚いたのはルイズだった、ぼーっと授業を受けていた彼女は、隣にマリコルヌが座っていることに気づいていなかった。
しかもノートをのぞき込んでいるのだ、声に驚いたルイズはマリコルヌを見、マリコルヌはルイズを見た。
その距離5cm。
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
バッキョォォォォォォォン!
「タコスッ!?」
およそ貴族らしからぬ悲鳴を上げたルイズは、ノーモーションからのアッパーカットをマリコルヌに放った。
まるで分厚い鉄板に銃弾が当たったような音が響き、マリコルヌの体は宙に浮いた。
風上から風下に風がながれるが如く、上流から下流に水が流れるが如く、宙に浮いたマルコリヌの体は回転しながら床へと落下した。

「な、なんだっ!?土くれのフーケか!?」
驚いたギーシュは杖を手に取り臨戦態勢を取った。
キュルケもまた杖を構えて周囲を見渡す、よだれの跡を誤魔化しながら。
タバサは今日の授業も終わりかやれやれと言った表情で、ノートを片づけ始めた。
ルイズとマルコリヌを後ろから見ていたモンモランシーは、マリコルヌが授業中突然ルイズにキスしようとしたと説明し、マリコルヌは不名誉な烙印を押されてしまった。

そしてルイズは、モット伯の館で紛失してしまった杖を新調するためには、時間と手間のかかる『契約の儀式』を行わなければいけないと思いだし、ため息をついた。


放課後、杖を新調し、さて魔法を使うぞと意気込んだルイズは、魔法学院の外に直径20m程のクレーターを作ってしまった。
意気消沈するルイズに、見物に来ていたギーシュは「もう君を馬鹿にする者はいない、君は今日から爆発のルイズだ!」と言ったため、レビテーションもフライも使うことなく爆風によって宙を舞った。
それを見ていたキュルケは破壊力に驚き
「凄いわねえ、あれならトライアングルクラスのメイジでもイチコロよ」
と感心していた。
そしてタバサは、いつか役に立つかもしれないと思い、あの魔法の出し方をルイズに教えてもらおうなどと考えていた。

その晩。
思い通りに魔法が使えないルイズを慰めようとして、キュルケはルイズを馬鹿にし、タバサはかなり真面目に爆発魔法を教えてもらおうとしていた。
「あーもう、あたしに言われたって分かんないわよ!どうして爆発するのかこっちが聞きたいわよ…」
「ルイズったら短気ねぇ」
「あ ん た に 言 わ れ た く な い !」
キュルケとルイズの漫才が終わり、キュルケが部屋に戻ろうとした。
その時タバサが突然立ち上がり、こう言ったのだ。
「一蓮托生」
何のことはない、3人でトイレに行くという事だ。
キュルケが部屋の扉を開けようとしてドアノブを回すと、扉の脇に置かれたハンガーからマントが浮いて、ルイズの肩にかかった。

ハンガーは部屋の入り口。
ベッドは部屋の奥。

キュルケもタバサも、何が変なのか気づかなかった、魔法が使えればこれぐらい当然なのだ。
しかし、続いてルイズの杖が宙に浮き、主人の手に収まったのを目撃して、二人は声にならない悲鳴を上げた。
口を半開きにして驚いているキュルケ、実に珍しい光景である。
タバサはいつもの無表情だったが、ちょっとだけ漏れていた。
「…な、なによ、そんな顔して」
「あ、あんた今どうやって杖を持ったの?」
「手で取ったわよ」
「テーブルの上に置いた杖って、そこから手を伸ばして届く?」
「何言ってるのよキュル…」
そこまで言ってふと気づいた、そういえば、マントはどこに掛けてあったのかと。
ルイズはマントを取ろうとしたときと同じように、テーブルの上に置かれたタバサの本を取ろうとして、手を伸ばした。
いや、正確には『手を伸ばすイメージをした』だ。
タバサの本を掴む感触が伝わり、本が宙に浮く。
本の感触は確かにルイズに伝わっているが、ルイズの手が感じているわけではない。
もう一本の手がタバサの本を掴んでいる、そんな感覚だった。

じわり、じわりと何かが見えてくる。
よーく見ると、ルイズの腕から半透明の腕が伸び、タバサの本を掴んでいた。

「「「……………!!!」」」


そのころルイズの部屋の前で、顔に包帯を巻いた一人の男が立っていた。
風上のマリコルヌ、彼はルイズに誤解を解いてもらおうと思い、ルイズの部屋までやってきたのだ。
ルイズの顔をのぞき込んだ自分も悪いとはいえ、脳内にシーザァーと響きそうなアッパーカットを食らったのは納得できない。
でも爆発は怖い。
誤解だけでも解いて貰わなければ、授業中にルイズを襲ったという不名誉な噂がついて回る、それだけは勘弁して欲しかったのだ。
ルイズの部屋をノックしたマリコルヌは、その扉が微妙に開いているのに気づき、部屋の中をのぞき込んだ。

ノックの音に気づいた三人は扉を見た。
先ほどキュルケが開きかけた扉の、わずかな隙間がゆっくりと開かれ、包帯まみれの風上のマリコルヌが姿を見せた。
「るいぐぅ~ごうのことはおがいなんらおぉ~」
(ルイズー、きょうのことはごかいなんだよー)

「「「…………!!!!」」」






翌日、風上のマリコルヌがよく座る席に、一輪の花が手向けられていたという。










おまけ

マリコルヌ「おぐはまらいんれらーい!」(僕はまだ死んでなーい!)

シエスタ「あのー、マリコルヌさん、シビンはこちらに置いておきますから」

マリコルヌ「からががうごかららいんら…てつらっれふれらい?」(体が動かないんだ…手伝ってくれない?)

シエスタ「うわ…最低」

マリコルヌ「あ…ほどめ、そんはへでみらへはら、ほぐ…」(あ…その目、そんな目で見られたら、僕…)

シエスタ「なにこの人…気持ち悪い」

マリコルヌ「はあ!もっほ、もっほのろひっへ!」(ああ!もっと、もっと罵って!)




マリコルヌは後に「まんざらでもなかった」と語ったそうな。

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