ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの番鳥-12

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匿名ユーザー

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ルイズの起床より少し遅れる事幾らか。
体中に包帯を巻いて湿布を張り付けたキュルケも全身に痛みを感じながら意識を取り戻した。
朦朧とする頭で窓を眺め、そこから見える太陽の眩しさに意識の覚醒を促される。
体のあちらこちらに感じる痛みに苦しみながらも、キュルケは昨日の出来事を思いかえした。

途端に体の痛みに勝る怒りがキュルケの頭を占める。
(瓦礫に押し潰されて無抵抗な私に2度も暴行を加えるなんて!)
正確には瓦礫に押し潰された後の2発はルイズのした事ではなかったが。
体の痛みと頭の怒りで、割と混乱しているキュルケは気付いていない。

「ルイズゥゥゥゥ!!!この恨み晴らさでおくべきかッ!メェェェェェェーーーーーン!!」

と、どこぞのアメリカインディアンの呪術師のような事を叫びながら体を起こした。
今のキュルケの怨念なら人形を遠隔操作してルイズを暗殺する事も可能かもしれない。
・・・・・・そのアメリカインディアンの呪術師の死体は、とあるデッサンの狂った頭の男との死闘の末にトイレで発見されたのだが。
彼はそこにずっと隠れていたのか?それとも偶然トイレで用を足しているときにやられてしまったのだろうか?
まあ、物語とは全く関係無い疑問だ。

体を起こした勢いのまま着替えと化粧を数分で済ませるキュルケ。
しかし、怒り狂ってるとは言え、着替えと化粧を忘れないのはある意味冷静である。
化粧を終わらせた瞬間、自分の部屋から飛び出て、隣にあるルイズの部屋のドアを蹴破る。


バギャァッ!!

と言う凄まじい音と共に、直されたドアが再度破片と化してルイズの部屋の中に吹っ飛んだ。
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
胸元から杖を取り出しながら、破片が散らばる部屋の中に悠々と進入するキュルケの姿。
こことは別世界のレース中に起きた果樹園の決闘の一部を思い出させる。

次の瞬間、何かに気付いたキュルケは慌てて部屋を見回した。
しかし見回しても結果は変わらない・・・・・・部屋はもぬけの殻だったのである、誰も何も居ない。
顔が赤くなるキュルケ。褐色の肌なので良く見なければ分からない事だが。
キュルケの頭の中では、ヤッベェーぜッ!!ドジこいたーーッ!!との言葉が浮かんでいる。
勇んで宿敵の部屋に入ってみれば留守中。
魔王の城に入ろうとしたら、門に本日休業の看板が立て掛けてあったのと同じぐらいの喜劇である。

「え、ええ!?何?どっかに出かけてんの?」
ちょっとテンパりかけたキュルケだが、鞄が何処にも無いのに気付く。
急いで、部屋の窓の外を見る、すると門から馬に乗って出ていく二つの人影が。
目を凝らしてみれば、それはルイズとギーシュである事がわかった。

「ムム!?」

ルイズはともかく何故ギーシュも出かけるのか?キュルケは疑問に思った。
更にちょっと慌てているキュルケの目にはルイズとギーシュは仲良く話し合っているようにも見えた。
数秒何かを考えたキュルケは、入る時以上のスピードでルイズの部屋を飛び出した。



タバサにとって、虚無の曜日は大事な物である。
何故ならば、誰にも邪魔をされることなく、趣味の読書に没頭できるからだ。
今日も彼女は朝から本のページに目を移している。
だが、そんなタバサの安息は唐突に破られる事となった。

ドンドン!!

乱暴な音を立ててドアが揺れる。
誰かがノックしている、しかし、タバサはドアを一瞥しただけで軽く無視する。

ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!

超速の乱打を受けて、壊れそうな音を立てながらドアが揺れる。
しかし、これまたタバサは無視して本を読み続ける。大物である。
そして――――

ドガッ!

ドアがいきなり物凄い音を立てて開かれた。
鍵が吹き飛び、開かれたドアは前後にグラグラと揺れながら、蝶番がギシギシと嫌な音を立てる。
乱暴な方法で入ってきたのは赤毛の女生徒、キュルケだ。
本来ならこんな乱暴者には得意の魔法『ウィンディ・アイシクル』で体中を蜂の巣にして部屋から叩き出す所だが、キュルケは、タバサにとって数少ない友人である。
それにキュルケは爆発寸前の爆弾のような目をしながらこちらを見ている。
ゼーハーゼーハーと荒い息の音がタバサの耳にはっきり聞こえる。
(刺激するのは良くない)
と判断したタバサは溜息を突くと読み掛けの本を閉じて話しを聞く事にする。


「出かけるわよ!30秒で支度してちょうだい!」
いきなりにも程がある言葉に
そのキレイな顔をフッ飛ばしてやろうか、とタバサは思い実行に移しかけた
が、持ち味でもある驚異的な忍耐力でそれを我慢する、良い子である。
タバサのジト目に気付いたのか、慌てて話しを続けるキュルケ。

「あのルイズがギーシュと一緒に出かけたのよ!それも2人っきりで!
 ギーシュがルイズに何かしないか、心配だからよ!そうなのよ!」

そのキュルケの言葉は100%嘘だろうと瞬時に判断するタバサ
だが、本当の事を話してくれるまで聞くのも時間の無駄だと思い、渋々窓を開けてシルフィードを呼ぶ。
指笛のピューッという甲高い音が空に吸い込まれると同時に、窓から外へ飛び出す二人。
落下するタバサとキュルケ、このままだと地面に衝突して潰れたトマトのようになるだろう。
だが、地面に衝突する前に、タバサの使い魔であるドラゴン―――シルフィードが二人を受け止めて上昇した。
キュルケの指差す方向を見るタバサ
確かにルイズとギーシュの二人が馬に乗ってどっかに出掛けているのが見える。
「追い駆けて」
タバサはシルフィードに命令しようとしたが。
ルイズとギーシュの周りを飛んでいるペットショップが目に入った。
ペットショップに見付かったらややこしい事が更にややこしくなるだろうと思い、即座に二つ目の命令を付け足す。
「あの鳥に見付かっちゃ駄目」
主人であるタバサの命令に、風竜は一声鳴いて応えると、卓越した視力で目標の死角を取りながら追い駆け始めた。


一息ついて本を読み始めようとしたタバサだが、ある事を思い出して隣のキュルケに伝える。
「ドアの修理代」
タバサの呟きはキュルケの苦笑いと共に青空に吸い込まれて行った。

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