ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-13

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匿名ユーザー

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フーケが潜んでいるという場所に向かうべくロングビルが用意した馬車で移動している。
屋根無しの荷車のような馬車で、襲撃を受けた時の脱出を容易にする為だ。

ロングビルが御者を担っているが、手綱を握る彼女にキュルケが話しかける。
「ミス・ロングビル…手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」
「構いません。わたくしは、貴族の名を無くした者ですから」
「え?だって、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だという事にあまりこだわらないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
キュルケは興味津々といったようすでロングビルに迫るが、ルイズがそれを止めに入った。
「よしなさいよ、昔の事を根掘り葉ほひ…って何すんのよ!」
言おうとした事を誰かに止められる。手の主はプロシュートだ。
モノ凄い目でルイズを見ているが数秒後気付いたかのように手を離した。
「…一体なんだったのよ」
「…条件反射ってやつだ」
原因はもちろん矛盾点などがあれば辺り構わずキレまくり周りの物に八つ当たりをかますギアッチョだ。
特にこんな場所でキレられでもしたらえらい事になるため思わず体が反応した。

「土くれって言うからには土系統ってわけか…厄介だな」
頭に「?」を浮かべるルイズを尻目に話を進める。
「ええ、あの巨大なゴーレムを操れるからにはトライアングルクラスは確実よ」
それもあったが、一番厄介なのが土系統という事だ。
有機物なら老化させる事も可能だが無機物で構成されたゴーレムを作られるとグレイトフル・デッドではどうにもならない。
ワルキューレの場合は破壊もできたが昨日見た大きさのゴーレムを相手にするとなると正直厳しいものがある。
(メローネのベイビィ・フェイスと同じタイプって事か
    イルーゾォやメローネなら楽なんだろうがオレじゃあ本体狙いになるな)

「ところで、一つ聞きたいんだけど」
「何だ?」
「…まさかとは思うけど、わたし達を巻き込んで老化させるとか考えてないでしょうね?」
初日の惨状を見ていたルイズがそう問うが
「状況によるな」
その瞬間空間に「!」という文字が見えたような気がした。

「嫌よ!絶対嫌!」
「お願いだからそれはだけは…!」
タバサを除いてほぼ全員必死だ。
ロングビルに至っては半分脅えている感がある。

「…持ってろ」
「なによこれ」
「老化防止薬みてーなもんだ」
何か物が入った袋を4個渡されるが、袋はしっかり封が施されており中身は見れなかった。
「ちょっとそれ私にもよこしなさいよ」
「全員分ちゃんとある…ってどこに入れてるのよ!」
「そりゃあ、貴方には無理な場所よ」
まぁ、つまり胸に仕舞ったわけで『ゼロ』vs『微熱』第四ラウンドが開催されそうになるが
「馬車内」
タバサが冷静に突っ込みそれを終結させ、馬車が森に入り
「馬車でははここまでのようですね…ここから先は徒歩で行きましょう」

馬車を降り徒歩でしばらく進んだところに開けた場所がありそこに小屋らしき廃屋があった。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
ロングビルがその小屋を指差すが人の気配は全く無い。
あの中に居ないとしても唯一の手掛かりであるからには調べないわけにはいかない。
タバサがちょこんと正座をし杖を使い地面に絵を書き作戦を提案する。
1.偵察圏囮が小屋に近付き小屋の様子を調べる
2.中にフーケが居れば挑発し誘き出す
3.フーケがゴーレムを作ろうとして外に出たところに魔法の一点集中砲火を浴びせこれを撃破する

だがそう説明し終えるより先にプロシュートが小屋に近付いていた。
「ちょ…何やってんのよ!」
「フーケが居る居ないにしても…こうした方が早いからなッ!グレイトフル・デッドッ!!」
その瞬間、プロシュートを中心とした1~2メイルの植物がボロボロと音をたてて崩れ始めたッ!
その様子を見て一瞬にしてプロシュートから離れる女性陣だったが
自分達が老化していない事を確認するとため息を吐きながら小屋に近付いてきた。
「危ない事するわね…無関係の人とか居たらどうするのよ」
「たいした事ァねーだろォーッ!破壊の杖が使われたら甚大な被害が出る…それよりは軽く済むッ!!」

少し時間が経ってから小屋に入る事にしたがロングビルだけは周辺の偵察に行くと言い残し森に消えていった。
ドアを蹴破るようにして中に入ったが、マタギの炭焼き小屋のようで人の隠れるような場所など無い。
あるのは崩れた暖炉とテーブル、その上に無造作に置かれているボロボロの服、酒瓶、薪、その横にある大きめの箱―チェストだけだ。

フーケの残した痕跡が無いか探っているところにタバサがチェストの中から何か物を取り出し
「破壊の杖」
と杖らしき物を無造作に取り出していた。
「随分とあっけないわね…!」
キュルケがそう叫ぶがプロシュートは違った。
(あのジジイの言った通り…か。確かにこれはオレの世界のもんだな)
パンツァーファウスト ―― 第二次世界大戦においてドイツ軍が開発した歩兵が使う携帯用対戦車擲弾で確かに杖にみえない事も無い。
連合軍主力戦車をも撃破する事が可能で携帯用兵器としては大戦中最大級の威力を誇りまさにナチス脅威の科学力である。

破壊の杖を手にそれを見るが、何故か使い方までもが理解できてくる。
妙な感覚があった。
「それにしても破壊の杖だけで肝心のフーケが居ないなんて…」
その刹那、外からルイズの悲鳴が飛び込んできた。
「きゃぁああああああ!」
それを聞くとキュルケとタバサをスタンドと自分で引っつかみ外に飛び出す。
ドグシャァア
飛び出した瞬間小屋の上半分が吹っ飛ばされ、そこに居た者は……
「ゴーレム…!」
それと同時にタバサとキュルケがそれぞれの魔法で攻撃を仕掛けるがゴーレムは依然として健在でびくともしていない。
「無理よ…こんなの!」
「戦略的撤退」
キュルケとタバサが敵わないとみて一目散に逃げ出す。
が、ルイズはそれに加わっていない。どこか

ゴーレムの背後に立っていた。ルーンを呟き杖をゴーレムに向け振りかざす!
爆発は起こったがゴーレムの巨大な質量からすれば微々たるものだ。
表層を僅かに欠けさせただけで損傷には至らない。
爆発を受けたゴーレムがルイズに気付きその巨体をルイズに向けるべく振り向く。
「オメーじゃあ無理だ、逃げなッ!」
「嫌よ!フーケを捕まえれば、もう誰もわたしを『ゼロのルイズ』なんて呼ばなくなるんだから!」
そう答え返すルイズの目はマジだった。

「それにあんた言ったじゃない!『成長しろ!』って『成長しなけりゃあゼロと言われるだけだ!』って…!」
そう言い放ち杖を握り締める。
「あいつを倒さないと『成長』できないのよわたしは!」
ゴーレムが足を持ち上げルイズを踏み潰そうとした。
ルイズは魔法を使うべくルーンを呟き杖を振るが、結果はさっきと同じだ。
爆発が起こるがゴーレムはびくともしない僅かに土が欠けるもゴーレムはその歩みを止めようともしない。
ルイズの視界に巨大な足が広がり目をつぶった。

だが覚悟していたものは訪れない。目を開けるとゴーレムが足先を砕けさせていた。
「…デカイ事はデカイが堅さはねーな」
破壊力B、魔法で動かされているとはいえ土を破壊する事など造作も無い。

足先を弾け飛ばしたゴーレムだったが土が再び集まり何事も無かったかのように再生した。
「なるほど…土だけの事はあるな」
ルイズを引っつかみゴーレムから一旦離れる。
そして、距離を取ったところでプロシュートがルイズの両肩を掴んだ。
―殴られる プロシュートがキュルケやギーシュにした事を思い出し思わず目を閉じた。

コツン
だが、襲ってきたものは額への軽い衝撃
目を開けるとプロシュートが額を合わせており思わず赤くなって離そうとする
「ちょ…なに!?」
「ルイズ ルイズ ルイズ ルイズよォ~~
   成長したいんなら『状況を把握しろ』…おまえの魔法じゃあ、あのゴーレムを破壊するのは無理だ。そうだろ?」
うぐ…とルイズが言葉に詰まる。
「だが、オメーのその『覚悟』がありゃあ、あのゴーレムを倒せる。ここが正念場だぜルイズ!」
「倒せるの…?あのゴーレムを」
「こっちじゃあ破壊の杖って言うんだったな、こいつを使え。使い方は教える。オメーがやるんだ」
一瞬迷ったようにしたが、目をプロシュートに合わせ――
「…分かったわ」

「ダーリンとルイズは?」
「分からない」
シルフィードに乗ったタバサとキュルケが二人を探していると…
「あのバカ!一人でなにやってるのよ!」
キュルケがゴーレムから破壊の杖を両手で押さえ逃げるようにして走っているルイズを見つけた。
「近寄れない…!」
それを助けるべくルイズに近寄るがゴーレムが拳を振り上げ近づけないでいた。

ゴーレムが止まる。だが同時にルイズも止まりゴーレムに向き直った。
「なにやってるの!今のうちに逃げなさい!」
「これでいいのよ…!ゴーレムが足を止めてる今がいいんじゃあない!」
ルイズが教えられたとおりにそれを構え狙いを付け…引き金を引いた。
「んきゃぁああ」
反動で後ろに2~3回転するが、弾頭が放物線を絵描きながらゴーレムに吸い込まれるかのように飛んでいく。
弾頭はゴーレムの上半身にめり込むように着弾し―――爆発した!
自分がいつも失敗して起こしている爆発とは比べ物にならないぐらいの音と閃光。
目を閉じ光が去るのを確認してからゆっくりと目を開けるとそこにはゴーレムの下半身がそこにあった。
さすがに上半身を完膚なきまでに破壊されたのでは再生もできないようで膝を付きそのまま土に還っていった。
「スゴイ…まさに破壊の杖ね…」

「やるじゃない…破壊の杖を使いこなすなんて」
「奇跡」
ゴーレムが破壊されたのを確認した二人が地上に降りてきた。
「ところでダーリンはどこ?」
「プロシュートならさっきの小屋の所よ。最後の仕上げがあるとか言ってたけど」
「それじゃあ早く迎えにいかないと」

だが小屋があった広場には誰も居なかった。
「…まさかフーケに?」
「そういえばミス・ロングビルもいないわ…」
三人にまさかという考えが浮かぶが茂みの中からロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル、無事だったのね!
   フーケがどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」
キュルケがそう尋ねるがロングビルは顔を横に振った。
「破壊の杖はどうされたんですか?」
「ここよ」
そう、言うとルイズが抱き込むようにして抱えている破壊の杖を見せる。
「そう、それじゃあそれを渡してもらおうかしら」
その瞬間時が凍る。
「…どういう事ですか?」
「まだ分からない?さっきのゴーレムを操っていたのは私」
「え…じゃああなたが…土くれのフーケ!?」
「御名答、それにしてもさすが『破壊の杖』ね。私のゴーレムがバラバラじゃあない」
三人が戸惑いながらフーケに杖を向けるがそれよりも早くフーケが茂みの中から何かを引っ張りだしそれを盾にした。

(~~~~ッ!あのバカ!思いっきり無関係の人間巻き込んでるじゃないのよ!!)
弱りきった老人を盾にしたフーケが言い放つ。
「おっと。動かないで欲しいわね?この無力な平民を一緒に巻き込んでもいいっていうのなら話は別だけど」
杖こそ捨てはしないがさすがに人を盾にされてはどうしようもなくなっていた。
「どうして…!?」
「そうね…死ぬ前の手土産に教えてあげるわ
  この破壊の杖を奪ったのはいいんだけれど使い方が分からなかったのよ」
「使い方…?」
「ええ、振っても魔法をかけてもうんともすんともいわないんだから…
   そこで魔法学院の人間なら使い方を知ってると思ってここに連れてきたってわけ」
「わたし達の誰も知らなかったらどうするつもりだったの?」
「その時は全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を連れてくるだけよ
   もっとも『ゼロ』って言われてた貴方が使い方を知ってるだなんて思ってもいなかったけど」
フーケが笑いながらそう言い放つ。
「話はここまでね。その杖を渡さないとこの可哀想な平民が死ぬ事になるわよ?」
三人が迷う、破壊の杖を渡せばどんな被害が出るか分からない。
だけど目の前の人間を見捨てるという事ができないのも事実。
迷いに迷い杖をフーケに向け投げようとした瞬間――

「理由は…分かった」
その場に居る者以外の声がした。
「だ、誰!?」
フーケが辺りを見回すが誰も居ない。
この場で自分達以外の人間は自分が盾にしている今にも死に掛けている老人だけ――老人!?
その瞬間老人がフーケの手を掴み
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨
「だが、もう何もできないさ…ただしお前がだ……『フーケ』」
ズキュン!
「うぁああああああああああ!」
その瞬間森の中に土くれと呼ばれた盗賊の叫び声が響き渡った

フーケ ― 直触りを受け老化
二つ名   土くれ


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