ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

反省する使い魔!-7

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匿名ユーザー

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反省する使い魔!  第七話「決闘・三年ぶりの戦い」


ヴェストリの広場…
ルイズたちに案内されてやってきた広場には
音石やルイズたちが想像していた以上にギャラリーが集まっていた。
しかし、観客は多いほど盛り上がるしやり甲斐がある…
ギタリストとして熱く生きることを目標とした音石にはちょうどよかった。

「ギーシュ!あいつが来たぞ!」

観客の一人マリコルヌがそう言った瞬間、ギャラリーたちが一斉に音石を見た。
そしてギーシュが高らかに杖の薔薇を掲げる。

「さあ諸君、決闘だ!!」

観客たちがよりいっそう強い歓声を上げる。
音石がギーシュのいる広場の中央に向かい、
ルイズとシエスタは野次馬に紛れ込んだ。

「逃げずにきたのは褒めてやろうじゃないか、正直意外だったよ…」
「御託はいいんだよ、さっさと始めようぜ」
「まあ、待ちたまえ。軽くルールだけは説明しておこう、とはいっても単純だ、
どちらかが敗北を認めるまでだ。立会人はここにいる観客たち…、
ついでに言っておくが僕はメイジだから当然魔法で戦わせて貰うよ?
だが僕は慈悲深い、ハンデとして…僕の杖であるこの薔薇…
君がこの僕からコレを奪うことができたら君の勝ちにしてやろう
フフッ、とは言っても所詮平民ごときにできやしないだろうがね」
「フッフッフ、よく言うぜ。逆に聞くがよ、魔法がなかったら何にもできやしない
口だけ野郎のお坊ちゃまが魔法以外でどうやって俺に勝つ気だ?
テーブルマナーでもしてくれんのかよ?」
「………いいだろう、そんなに死にたいのならっ!!」

音石の挑発に頭に来たギーシュが勢いよく薔薇を掲げ、魔法を発動しようとしたが…

「ン!だがちょっと待ってくれ………
その前にオレのほうも『ハンデ』を決めとくぜ」

音石の発言にギーシュ含め、周りの観客たちも一瞬キョトンとしたが
すぐそれは爆笑に変わった。
ギーシュが目を閉じ、顔に薔薇を近づけクックックッと皮肉そうに笑った。

「『ハンデ』だと?クックック何を馬鹿なことを…平民ごときに
『ハンデ』など必要な…」
「ギーシュ危ない!!」
「え?」

【バキィッ!!】

「うぐぇっ!!!」
「おいおい、なに決闘中に目なんか瞑ってんだぁ~?
ふっふっふっふ、眠いんだったらコレで目ぇ覚めただろぉ」

音石が言うコレとは
目を瞑った瞬間、ギーシュに一気に近づき
彼の顔面にお見舞いした音石の拳のことである。
生徒の一人がギーシュに警告したときは時既に遅しだった。

「なんて卑怯な……!」
「さすが平民だな!そこまでして勝ちたいのか!?」
「神聖なる決闘を…、なんて奴だ!!」
「おい平民!卑怯だぞ!!」

観客からの熱烈なブーイングを受けるものの、
音石はギーシュにそれ以上の追撃はしなかった。
いや、それどころか元いた位置に後退し、ギーシュが立ち直るまで
待っていたのだ。

「ぐ…はっ…、やってくれたな……
よもやこんな手を使ってくるとは…、さっき貴様を褒めてやろうと言ったが…
取り消させてもらうぞ、平民…」

ギーシュの殺気と怒りが篭った目が音石を睨み付けるがそれでも
ギーシュの目に臆する事も無く、音石は余裕の笑みを浮かべていた。
そんな音石の余裕の表情に、ついに必死で平静を保っていたギーシュの
怒りが爆発した!

「平民ごときがっ!!貴族をコケにするのも大概にしろぉーーーーッ!!!」

今度こそ勢いよくギーシュが薔薇を振る。
すると花びらが宙を舞い、地に触れる。
その途端、まるで地面から生え出てくるかのように
甲冑を身に纏った一体の青銅の女戦士が現れた!
大きさは大柄の人間ぐらい、およそ2メートル前後ほどである。

「ほぉ~、そいつがてめえの魔法ってワケか?」
「この『ワルキューレ』が貴様を嬲り殺してやる!!
この『青銅』のギーシュを怒らせたことをあの世で永遠に後悔するがいい!!」
「『ワルキューレ』……ねえ……
しかし嬲り殺す?ククク、そんなノロそーな鉄くずでかァ~?ククククク
笑ったものか!アクビしたものか!こいつは迷うッ迷うッ」

ワルキューレが音石に突進を仕掛けてきた。
こうして決闘の火蓋が切って落とされる!



所変わってここは学院長室

魔法学院の最高責任者、学院長オールド・オスマンが
パイプを吸いながら、退屈そうに机に置かれている大量の書類を眺めていたが
やがて、ソレもそっちのけで愚痴をこぼしていた。

「退屈じゃの~、ミス・ロングビル」

オールド・オスマンがいうミス・ロングビルとは
彼の秘書を勤める、緑色の髪と眼鏡をした若い女性の事である。
彼女もまた秘書用の机で書類をまとめている。

「オールド・オスマン、そういう台詞は
仕事を終わらしてから言ってください」
「いやいや、そういう意味での退屈じゃなく……なんと言うかの…
そう!毎日が平和すぎてつまらんのじゃ!」
「平和が一番じゃありませんか」
「しかし、こうも毎日が何も無いというのもかえって体に毒じゃろ」

すると、ミス・ロングビルが書類を書く手を止めた。

「オールド・オスマン」
「何じゃ?」
「そーやって私の気を逸らしてる間に
スカートを覗くのはやめてください」

ミス・ロングビルが自分の机をずらすように動かすと
机の下から、オスマンの使い魔であるネズミ、モートソグニルが姿を現し
素早くオスマンの元に帰っていった。
使い魔には主人と感覚を共有する能力などがあるらしく
オスマンは自分の使い魔のネズミを使い、ミス・ロングビルの
スカートの中を覗いていたのだ。
ついでに言うとなぜか音石にはこの使い魔としての
能力が搭載されていないらしい。

「なんじゃバレとったのか、つまらんのぅ
ミス・ロングビル、あまり年寄りの楽しみを奪うものではないぞ
フム、なるほど…今日はシロか」
「……今度やったら王宮に報告します」
「フォッフォッフォッ、いちいち王宮が怖いよーで
この魔法学院の長が務まるかい」

オスマンが笑いながら、自慢の長い顎髭をいじり
ロングビルがため息をついていると、学院長室の扉が
不意に大きな音を立てた。
入ってきたのは慌しい様子のコルベールである。

「学院長!た、た、た、大変です!!」

コルベールの顔は汗でびしょ濡れだった。
どうやらよほど慌てて走ってきたようで呼吸もだいぶ荒い。

「どうしたんじゃ、コルベール君
そんなに慌てて…、瞬間育毛剤でも発明したのか?」
「そんなんじゃありません!!あ、いえ、それよりも
見てもらいたいものがあるんです!」

コルベールが手に持っていた本をオスマンに差し出した。
どうやらかなり古いものらしく、だいぶ痛んでいる。

「ほう…『始祖ブリミルと使い魔たち』か、
こいつがどうしたんじゃ?」
「実はさっきまで図書室で調べモノをしていたんですが…」
「調べモノ?」
「はい、…昨日の使い魔の儀式で人間が召喚されたのは
学院長もご存知でしょう?」
「当たり前じゃ、人間が召喚されるなど前代未聞じゃからの」
「実はその召喚された人物がしていた使い魔のルーンが
見たことなかったモノだったので調べてみたんですが…
ここです!このページ!ここに記されているルーン!」

コルベールが興奮を抑えきれないまま、昨日紙にスケッチした
音石のルーンと、その本に記されているルーンをオスマンに
見比べさせた。オスマンの目が素早くスケッチと本を見比べ理解した。
なるほどの、コルベール君が慌てるのも無理もない
オスマンの顔が引き締まった。

するとまた突然、扉から甲高い音が響いた。
一人の教師が血相を変えてやってきたのだ。

「オールド・オスマン!一大事です!!
生徒が決闘をはじめています!!」
「まったく次から次へと…
忙しいったらありゃせんの~…」
「ついさっきまで退屈じゃの~とか言っていたのは
どこの誰でしたっけ?」
「抜け目ないの~、ミス・ロングビル…
それで?決闘をしておるのは一体どこのどいつじゃ?」
「あ、はい…一人はギーシュ・ド・グラモンです」
「やれやれ、あのグラモン家のバカ息子か。大方、女の子が原因じゃろう」
「い、いえ…確かにもとの原因はミスタ・グラモンの女癖にあったようなのですが
どうもミス・ヴァリエールが呼び出した平民が彼に
暴行を加えたそうなんです」
「彼がッ!?」

コルベールが驚きの声を上げるのとは裏腹に、オスマンは
なにかを考え込んでいるのか目を瞑って黙り込んでいる。


「オールド・オスマン、いかがなさいましょう?
教師の何人かが『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが…」
「………いや、一旦様子を見ることにしよう、
ほかの教師たちにもそう伝えておけ、何か問題が起こった場合
全責任はわしが取る」
「りょ、了解しました」【バタンッ】

教師が部屋を退出するのを確認するとオスマンが杖を振るった。
すると、壁に飾られていた大きな鏡がなにかを映し出した。
ソレはまさしく決闘が行われているヴェストリの広場の様子だった。
鏡の中でギーシュと音石が向かい合っている。

オスマンもコルベールもロングビルもそれぞれ別々の思考を
張り巡らせながら、黙ってその決闘を眺めていた。




所戻って決闘中のヴェストリ広場

観客の歓声が轟くなか
ギーシュのワルキューレの拳が音石に襲い掛かるが、
音石は横にステップしそれをかわす。
次に地面を叩きつけるかの様に拳を振り下ろしてきたが
それもバックステップで回避する。

「くっくっく、エラそーに大口叩いてた割には
逃げてばかりじゃないか?少しは僕のワルキューレに
攻撃してみればどうなんだい?」

音石から20メートル程、間隔を空けているギーシュが
そう言い放つがそれでも音石は避け続けている。


「あのバカ!避けてばっかじゃあそのうちバテちゃうじゃない!」

そんななか、ギャラリーの中にいるルイズが声を荒げている。
やっぱりここは不本意だけど自分が出てギーシュに謝ったほうが
いいんじゃないだろうか…。不安になりながらルイズは
決闘の様子を眺めていたが、それでも音石は避ける一方で
反撃する気配を見せなかった。

「なによなによ!おもしろいものって
避けてばっかて事なんじゃないでしょーねっ!?」
「あ~ら随分とご立腹ね、ヴァリエール」
「当たり前でしょう!!………って、キュルケ、なんでアンタが!?」
「こんなおもしろそうな事が起こってるのに見逃さない手はないでしょ?」

ルイズの後ろから声をかけたのはキュルケだった。
タバサも彼女の横に並んで相変わらず本を読んでいる。

「ねえタバサ、あなたの意見が聞きたいわ。どう思う?」
「……彼には何か勝算がある」
「勝算!?あいつさっきから避けてばっかじゃない!
どこに勝算があるっていうのよっ!?」
「少しは落ち着きなさいよルイズ、
でもタバサ、どうしてそう思うの?」

「さっき彼がギーシュに騙し討ちを仕掛けた時、
成功したにもかかわらず、彼は追撃せずあえて後退した
確実に勝利を狙うのならあのまま杖を取り上げるなり、
攻撃を続けたたりしたほうが確実、
でも彼はそうしなかった。ギーシュが仕掛けてくるのを
待っていた、つまり………」
「たとえギーシュが魔法を使ってきても、ソレに対応できる
何らかの自信と勝算がある、ってこと?」

タバサが言おうとした内容をルイズが察し呟く。
タバサはコクリと頷いた。
キュルケもルイズもなるほどと納得はしたもののソレでも重要な所が
未だわからなかった。

「でもタバサ、その勝算って一体何なのかしら?
あの使い魔、メイジじゃなさそーだし
特に武器を持っているわけじゃないのよ?」
「わからない、でも考えられる可能性がひとつだけある…
彼がぶら下げているあの見たことない楽器……」
「まさかあれがマジックアイテムの類ってこと!?」
「確証はない、あくまで可能性……」
「……仮にあれがマジックアイテムだとして
どうして彼はさっさとソレを使わないのかしら?」
「たぶん様子見、ワルキューレを通して
ギーシュの実力を推測してるのだと思う…
もしそうならそろそろ頃合……」【オオォーーーーーーーーーーーーーッ!!!】

ギャラリーのいきなりの歓声に
3人が咄嗟に広場に目を戻した。
なんと音石がワルキューレを猛撃を切り抜け、
ギーシュに突っ込んでいるのだ!

一気に間合いに入りギーシュを倒すつまりだ!

広場にいる誰もがそう思った、
しかし同時に音石のその行動を誰もがあざ笑った…、
なぜなら……、

「ハッハッハッ!僕のワルキューレを無傷で切り抜けたのは
敬意を表してあげよう、平民にしてはたいしたものだ!
見た目によらずなかなかいい動きをする……しかし、甘いな!!
僕が操れるワルキューレは1体だけだと思っていたのかい!?」

そう、ギーシュが操れるワルキューレの数は1体だけではなかったのだ!
手に持つ薔薇を振ると、地面から新たに3体のワルキューレが現れたが
それだけではない、その3体すべてが槍を武装していたのだ。

「チィッ!」

音石が舌打ちをし、仕方なくバックステップで
距離をとろうと考えたが、後ろにはまだ最初の1体がいるのを思い出し
音石が咄嗟に足を止めたが、その瞬間をギーシュは見逃さなかった。

「そこだ!ステップ移動は止まった瞬間におおきな隙ができる!!
ワルキューレ一斉攻撃!その平民を八つ裂きにしろぉッ!!」

前方の槍を持ったワルキューレ3体が
正面、右側、左側から、
音石の後方にいる何ももっていない素手のワルキューレが
音石の背後を、
一気に取り囲み、一斉に攻撃を仕掛けた!!

「いやあアァァァァァァァァァァッ!!!」

シエスタかルイズのかもわからない甲高い悲鳴が広場に響いた。
いや、案外モンモランシーかケティの悲鳴だったのかもしれない……。



「そんな……!!学院長!!!」

学院長室でコルベールが叫ぶ、ミス・ロングビルも
なんてこと!と今にも言いそうな顔をしていたが
オールド・オスマンの目がよりいっそう鋭くなっている。

「は、早く広場に行って彼に治癒の魔法を……!!」
「まてぃっ!!コルベール君、よく見てみるのじゃ!!」

すぐに広場に向かおうとしていたコルベールは
オスマンの声にピタッと止まり、もう一度
広場を映しこんでいる鏡を見てみた。そこには…

「な!?こ、これは一体!!?」




広場の観客たちを初め、ギーシュ、ルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタ達は
一瞬何が起こったのか理解できなかった。
だれもが音石のインパクトのある串刺し死体を
強く思い浮かべていたからだ、
しかし、今その広場には音石の周りにワルキューレだった青銅が
粉々になって散らばっているという結果だけが残っていた。

「青銅つっても所詮こんなもんか、案外モロっちーもんだな」
「な、なにを……した?」
「メイジの強さを確かめる為っつっても、さっきのは
さすがに焦ったぜ、生身じゃあれぐらいが限界だな」
「僕は何をしたかと聞いているんだ!答えろ!平民!!
い、いや…少しだけ見えたぞ、なにか…異様に光った腕が
ワルキューレの影から見えた!あれは一体なんだ!?」
「………てめぇ見えてんのか?…いや、そう言えば
あのシュヴルーズって教師が言ってたな
『メイジが魔法を使う要は精神力にある』
なるほどな~、精神力を扱うってとこらあたりが俺たちと同じだから
見えていてもおかしくはねーってわけかい……」
「なにを一人でブツブツ言っている!答えろ!あの腕は何だ!!?
貴様、まさかメイジなのか!?それともただの平民なのか!?どうなんだ!?」

ギュウウウアァーーーーーーーンッ!!!

「な、なに!?」
「フッフッフッフッフッフ……」

音石が突然ギターを弾き、笑い始めた、
ギーシュはさらに混乱しながらも、
音石が自分に接近してきているのに気が付き、
すぐさま、新しいワルキューレを作り出した、
しかし4体が一斉に破壊されたことを警戒しているのか
作り出したワルキューレの数は1体だけだった。

「く、くそ!一体何がおこっているんだ…、確かめてやる!
いけ!ワルキューレ!!今度こそ八つ裂きにしろぉッ!!」

ギーシュが音石に杖を指し、ワルキューレが先ほどと同じように
剣を手に、音石に突撃を仕掛けた。



周りのギャラリーも平民がワルキューレ4体を一瞬で粉々にしたという
予想外な自体にざわめき始めている。

「あの平民、一体何をしたんだ!?」
「お、落ち着け!ただの平民がギーシュのワルキューレを
倒せるわけがないだろ!!単にギーシュの錬金が甘かっただけさ!!」
「なにか…一瞬光ったような…」
「ギーシュ、落ち着け!そんな平民にうろたえる必要なんてないぞ!」

当然、混乱しているのはルイズたちも同じだった。
ルイズもキュルケもわけのわからない結果に驚愕し、
日頃、特に感情を顔に出さないタバサさえも、本から目を離し
目を見開いている。

「ね、ねえタバサ…、彼一体なにをしたの!?」
「わからない、ワルキューレが陰になって見えなかったから見当も付かない…
少なくとも、普通の人間が青銅を粉々にするなんてありえない」
「そう…よね…、ねえルイズ。あなたは何か見えた?
やっぱりあの楽器、マジックアイテムだったかしら?」
「ぜ、全然……わたしにもサッパリ…
で、でも……私にも見えた、ちょっとだけ…
あれは…、そう間違いない!あれは『尻尾』よ!
ワルキューレの足の間から『尻尾』のようなものが視えたのよ!!
あいつ、ただの平民なんかじゃない!わたしたちの想像できない
何かを隠し持ってるっ!!」



剣を手に持つワルキューレが向かってきている、
それでも音石は余裕の表情を一切崩さなかった。

運が悪かった、それ以外何者でも無いだろう…、
普通の平民なら十中八九、ギーシュが余裕で勝っているだろう、
しかし悲しきかな、ギーシュが相手にしている平民は本当に特別だった。
異世界から召喚された人間という事実だけでも十分特別だろう…
だが、真の『特別』はそれだけではない、真の『特別』とは!
人並みを外れ、その外れた数が多ければ多いほど真の『特別に』近づくのだッ!!

そして音石は叫んだ、自分の『特別』を!
才能持つ者にしか手にすることができない特別、自分を『スタンド』を!!

「『レッド・ホット・チリ・ペッパー!!!』」

【ドグォンッ!!!】

「…………………………は?」

マヌケそうな声がギーシュの口から漏れた。
言葉が見つからなかったのだ。一体何が起こったのかわからなかったのだ。
自分は今間違いなく平民と向かい合っていた。
その間にいるのは自分が作り出したワルキューレだけだった、
じゃああれはなんだ?一体なんなんだ?

獰猛な目を持ち、尖った口ばし、尻尾を生やし
体を発光させているあの怪物は一体なんだと言うのだ!?

「い、い、い、一体なんなんだそれはあアアアァァーーーーーッ!!!??」

ギーシュは喉が枯れてもおかしくない大声で叫んだ。
ギーシュだけではない、当然ギャラリーも今までとは
比にならないくらいに騒ぎ出した。
ルイズ、キュルケ、タバサはもはや互いに語り合う事もなく
ただ目を見開きながら、レッド・ホット・チリ・ペッパーを眺めていた。

「教えてナンになるんだよ?教えてオレに得があるかァ~?
教えたところでてめーみてーなガキに理解できんのかよ?
カスみてーな質問してんじゃねーよ、くっくっくっく」
「うっ……うう……ワ、ワルキューレ!」
「邪魔だ」【ドガァッ!】
「なッ!?ぼ、僕のワルキューレを…い、一撃で!?」
「つくづくカスみてーな脳ミソだな、さっき一斉に4体を破壊してるのに
たった1体でどうにかできるわけねーだろ?
こんなノロい鉄くずが我が『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を
上回るとでも思ってんのかァー?ボケが」

ギャラリーはさらにパニックになった。
なんてことだ!あの亜人は姿がおぞましいだけでなく
強さもデタラメだ!どうなっているんだ!?
なぜあれほどの亜人をあの平民が操っているんだ!?
ギャラリーの混乱は増すばかりだった。

「くっくっくっく、いいね~~、この歓声が実にいい…
やっぱり、ギタリストとして熱く生きるオレは
こーゆーのが必要なんだよなァ~~~、フッフッフッフッフ
おらぁガキ共ッ!!声が小せぃんだよ、もっと張り上げろッ!!
もっと俺を熱くさせろぉッ!!!」

ギャギャアーーーーーーーーーーーーーンッ!!!

ギターを奏で、ギャラリーはいっそうパニックの声を高めた。
レッド・ホット・チリ・ペッパーも観客にインパクトを与えるために
音石の周りを飛び回っている。

ギーシュはこの理解不能な事態を受け入れることができなかった、
自分は今間違いなく人間の平民を相手にしていた筈なのに、
本当なら自分のワルキューレがあの無礼な平民に鉄槌を下す筈なのに、
しかしなんてことだ、自分が相手にしていた平民はただの平民では
なかった。亜人を操る平民なんて聞いたことがない。
自分はとんでもない奴を敵に回していたんだ、

「う、う、うわああああああああああああッ!!!」

ギーシュは無我夢中で杖を振り、残り最後の2体のワルキューレを生成した。
理解不能ではある、しかし今あの男は自分と戦っているんだ。
戦っている以上、あの男はあの亜人を使って自分を攻撃してくる。
青銅を一撃で粉砕するほどのパワーをもし生身の自分が受けたら…
間違いなく死ぬ!

「たった2体だけって事は…、そいつらで最後ってわけか
オーケー、ギャラリーも最高に盛り上がってるところだ
ここいらで一気に決めちまったほうが最高にカッコいいよなーッ!」
「く、来るな!来るんじゃないッ!!」

駆け出した音石にギーシュのワルキューレがヤケクソに
手に持つ剣で無茶苦茶に振り回している。

「山カンにたよってヒョッとして大当たりなんつー
都合のいい発想はやめろよな」

【グゥアシッ!】

「なッ!?う、受け止めた!?」

レッド・ホット・チリ・ペッパーは我武者羅に振り回している
ワルキューレの剣をなんと指2本だけで摘み止めたのだ。

「無駄無駄、てめーのワルキューレのスピードなんて
仗助のクレイジー・ダイヤモンドの比じゃねーんだよ、
こんなすっトロい鉄くずがオレの相手になるかよぉっ!!」

【ドゴォッ!】

最後のワルキューレもあっけ無く破壊され
ギーシュは完全に戦意を喪失した。

音石はレッド・ホット・チリ・ペッパーをおさめ
戦意を喪失し立ち尽くしているギーシュに
容赦なく顔面にひじ打ちを叩き込んだッ!

「うぐァッ!」

鼻血をぶちまけ、ギーシュは地面に倒れこもうとした
音石はギーシュの胸倉を掴み、ソレを阻止した。

「う…げ……ま、参った……降参だ…」
「だめだな、このまま終わらせるわけにはいかねェ、
今ここでお前を徹底的に痛めつける、周りの連中が
二度とオレやルイズ、シエスタを見下さねーよーになァ」
「ひっ……そ、そんな……ゆ、許してくれ……」
「ハッ、許して?…お前は今にも泣き出しそーになってまで
頭を下げまくってたシエスタを許してやんなかったくせによ~、
今ここでオレが許してやるとでも思ってんのかァ~?
そういう都合のいい考えもやめろ………殺すぞ?」
「ひ、ひいぃッ!?」
「まあどうせ、これだけの差別社会だ、
貴族であるお前が平民であるオレを殺してもどうせお咎めなしで
逆にオレがお前を殺したらお咎めありなんだろ?
だから殺しはしねェ、安心しろ…
だがな、よーは殺さなかったらいいだけの話なんだ
…………………………だから………」

音石はギーシュを地面に叩きつけ、両腕をポキポキ鳴らし始めた。
ギーシュはもはやそんな音石の凄まじい威圧に
動くことができなかった。動いたら間違いなく殺される。
人間としての本能がそう思ったからだ。

「だから半殺しで勘弁してやるッ!!
せいぜいベットの上で尿瓶のお世話にでもなってもらうんだなッ!!!」

「ひ、ヒイイイイイイイイイイイイィィィィッ!!!」


【ドガァベギッバギッバゴォペキポキグチャメメタァグチャ!!!】


ギーシュはこの日、両手両足指鼻などの骨をすべて折られるという
重傷負ったが、魔法の治癒のおかげで数日で復帰した………。
決闘には勝ったものの、音石には不可解な疑問があった。
なにを隠そう、その疑問とは自分のスタンド、
レッド・ホット・チリ・ペッパーのことである。

(どうなってやがる?俺のレッド・ホット・チリ・ペッパーは
三年の歳月を費やして回復するには回復した……
確かに、レッド・ホット・チリ・ペッパーは本来
近距離パワー型ではある………
だがそれでも、電気なしであそこまでのパワーが出ねェ筈だ
こいつは一体………)

音石はギターをいじりながら考えふけっていたが、
やがてルイズがこちらにやって来るのが見え、一旦この疑問は保留した。

「オトイシッ!!」
「よおルイズ、どうだ?面白いモンが見れただろ?」
「アンタ一体あの亜人はなんなの!?きっちり説明しなさいッ!!」
「おいおい、落ち着けよ。まっ、お前の性格じゃあ無理な話か」
「あんた一体何者なの!?」
「まあ待てよ、教えてやるがさすがにここでじゃまずい
できれば誰にも聞かれたくねーからな……」
「………わかったわ、それなら私の部屋に」
「お待ちください、ミス・ヴァリエール」

ルイズの背後から一人の女性が声をかけてきた。
その女性は先程、学院長室にいたミス・ロングビルだった。

「ミ、ミス・ロングビルッ!?」
「失礼しますミス・ヴァリエール、学院長がお呼びです。
至急、使い魔と共に学院長室に来るようにと」
「…………わかりました。オトイシ、ついて来なさい」

(このタイミング…、やれやれ
こいつはメンドくせー質問攻めにあいそーだな)

そして音石はルイズとミス・ロングビルに案内され
学院長室に向かったのであった。

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