ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ 第二章-03

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匿名ユーザー

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依頼を受けた翌朝、朝もやに紛れてジョルノ達は出立の準備をしていた。
アンリエッタ王女から授かったのは極秘任務。それも国家の命運を左右する可能性がある重大なもの。
誰にも言えない。聞かれてしまえば、口封じの為に殺人を行う事も許可されている。

それに加えてアルビオンの王党派の命脈は風の便りによれば最早尽きようとしているから、という建前でいそいそと準備を進めていた。
それはプッチ枢機卿から借り受けた風竜アズーロの横でそわそわしているルイズの主導によるものだ。

どうやらルイズは、母親のヴァリエール公爵夫人への説明に失敗したらしい。
予想はついたが、ジョルノ達はそれについてはあえて聞かずに準備を進めていく。
元々あのルールを重んじるヴァリエール公爵夫人に嘘をついて学生の本分を疎かにする許可を得るなど無茶な話だと、共にアルビオンに向かう人員の何名かは理解していたからだ。

予定としてはサイトが竜を扱えると言うので、ジョルノ達は重量軽減の為亀の中に入り総重量を軽くしてアルビオンへと向かう算段だった。
サイトがこの件を枢機卿から聞いたということについては、これも誰も突っ込まない。
『敬虔な信徒が懺悔したいと言うんだからね。私が断る理由はなかったよ』とはその枢機卿がベッドの上でジョルノに言った言葉だったが。

「風のルビーをゲットできたようですね」
「…ええ。姫様が任務を引き受けた私に授けてくださったわ。これと始祖の祈祷書があれば私は魔法を覚えられるのね?」
「可能性は高いでしょう」

ルイズは、魔法でぴったりのサイズとなり細い指に通され存在を主張する『風のルビー』を掲げる。
光を受けて輝くルビーを見つめる眼差しには飢えと、期待と不安に満ちていた。

風のルビーはルイズの希望となったのかもしれない…ジョルノはルイズを横目に、まだ亀の中には入らずにココ=ジャンボを金属で補強された皮のベルトで括り腰につけていた。
ココ=ジャンボの能力についてもルイズに口止めをしており、アンリエッタがジョルノ達以外の誰にも打ち明けないことを全く期待していないということだった。
それについて、ルイズは2、3文句を言ったが、さっさと出発したいらしく今は黙っている。

これもまたプッチ枢機卿から譲り受けたAK小銃の具合を確かめていたジョルノは顔を上げ、視界を曇らせる朝もやの一点を見つめた。
「ジョナサン、どうかしたの? もしかして…」

ジョルノの行動から、母がやってきたことを考えてしまいルイズが青ざめる。
だがルイズの予感は外れた。朝もやを抜けて現れたのは、ジョルノ達の居場所を何らかの、恐らくは風のメイジらしく空気の動きなどで見つけた衛士服に身を包んだ男だった。
深く被っていた羽付き帽子を男が取ると、ジョルノの腰につけられていた亀が安堵して息をついた。

「アンタ、随分若返ったな」
「…あ、ありのまま起った事を話す」

ココ=ジャンボ…の中にいるポルナレフは男の一点を見つめて言うと、脂汗を滲ませて男は言った。

「私はジャンニーサンと熱く紳士的な暮らしについて議論を行っていた。
すると何かが僕に直撃して意識を取り戻した時には髪の毛も髭も残念なことになった…な、何を言っているかわからないと思うが、私にも何が起ったのかわからなかった。
ゲルマニアの軍隊とかトリスティンの衛士隊だとかそんなちゃちなもんじゃない。恐ろしいまでの怒りを味わったよ」

その場にいる皆に少し芝居がかった身振りを交えて言うジャン・ジャック…魔法衛士隊の隊長らしい男は先日会った時は長髪、そして豊かな髭を蓄えた男だった。
だが被っていた帽子を取り、今真剣な表情で亀に説明をする男の髪はとても短い。

ある程度切りそろえ無造作にセットされてはいたが、いい腕の職人など用意する時間はなかったのか髪の長さも多少ばらつきがある。
そして髭は完全に剃られ、剃り残しなど見つからなかった。

「…ちなみにちょっとした好奇心で聞くんだが、紳士的な暮らしってなんだ?」
「良く聞いてくれたね。それはつまり紳士的である為には。特に我々のような青年から壮年へと差し掛かった紳士には家庭が必要になってくるという話さ」

あくまでも真剣に亀に向かって語る衛士の姿は滑稽だったが、それに気付いた様子もなくポルナレフはジャン…ワルドに返事を返す。

「…ふむ。それは一理あるかもしれないな」
「だろう? それはつまり納得できる仕事を終えて帰ると出迎えてくれる可愛い奥さん」

と言ってワルドは少し離れた場所に立つルイズに視線を一瞬送り、

「時々ある種の趣を感じてしまうようなけしからんメイドを数人とこの際執事も妙齢の女性、一言で言うと掌に少し納まらないような感じ?を採用してはどうかなと」

まだ出だしだというのにポルナレフの亀は首を横に振った。
周りの空気を読んだわけじゃあない。
現在亀の中にいるのはポルナレフだけではないからだ。
亀の中で、杖を向けようとするマチルダをテファが必死になって止めてくれているのに気付いたからだ。

「そ、それくらいにしておこうぜ」
「そうだな。申し遅れたが姫殿下より、君達に同行することを命じられてね。君達だけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」

ワルドはそう言って皆に、ルイズに一礼した。

「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
「フーン」

トリスティン貴族達の憧れ…魔法衛士隊の隊長ともなれば実力も確かなのだろうが、先日食堂でのワルドを見ていたジョルノとサイトの反応は気の無いものだった。
一応、トリスティン王宮で流行の礼などして見せてはいるが、ジョルノの中でワルドを指名したアンリエッタ株がストップ安を記録するのも詮無いことだった。
ルイズとは既に再会を果たしていたらしく「おはようルイズ、昨日はみっともない所を見られてしまったね」
そう言ってワルドはルイズを軽々と抱き上げる。

「相変わらず軽いな君は! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」

ワルドはルイズを地面に下ろすと、再び帽子を目深に被る。

「さて彼らを、紹介してくれたまえ」
「あ、あの……、ゲルマニアのネアポリス伯爵と、伯爵の亀のポルナレフ。同級生のマリコルヌの使い魔サイトです」
「君は使い魔だったのかい? 学院の給仕かと思っていたんだが」

驚きはしたものの、ワルドは気さくな感じでサイトに近寄った。
サイトは馴れ馴れしくされるのが嫌なのか「よく言われます」と微妙な表情で返す。
それを察したのか、ワルドはサイトから離れ準備を続けるジョルノへと近寄っていく。

「ネアポリス伯爵。よろしく頼みます」
「こちらこそ」
「極秘とはいえ、遠からず同盟を結ぶ祖国の為なんとしても任務達成を目指しましょう!」

友好的な態度を見せるワルドとジョルノはにこやかに挨拶を、それこそ肩を叩き合ったりなどもしてから、ジョルノは目を反らした。
その先にはルイズがいる。

「ルイズ、先に子爵と共にアルビオンへ向かってください。港町ラ・ロシェールで落ち合いましょう」
「な、何突然言ってるのよ!?」
「一番上等な『女神の杵』亭を借りておく手配をしておきましたから、そこで待っていてください」
「だから…! どうして、一緒に行かないのよ!?」

突拍子も無い指示に説明を求めるルイズにジョルノはむしろ不思議そうに言う。

「ルイズ。母君の説得、失敗しましたよね?」
「…そ、そんなことはないわ! ちゃんと数日授業をお休みする許可を頂いて」

港町ラ・ロシェールは人工三百程度の小さい街だが、アルビオンの玄関口として常にその10倍以上の人間が街を闊歩している。
そんな街の一番上等な、貴族の客しか相手にしない『女神の杵』亭を宿ごと借りたというジョルノの言葉に驚いていたワルドは苦笑する。
あからさまにどもってしまったルイズの態度からそれはない、とわかってしまったのだ。

「公爵夫人を足止めする為に芝居の一つも打っておかないといけませんからね」
「何かて、手があるの?」
「カトレアに頼んで体調が思わしくない振りをしてもらうことになっています。少し薬も服用して、ちょっとだけ大げさに(勿論実際に病気が再発したりしたわけじゃあありませんよ?)。
それから以前治療した私が適当なことを言って、公爵夫人は看病をお願いするカトレアに暫くの間は付いていることになるというわけです」

普段と変わらぬ、爽やかな笑顔がどす黒く見えたのはサイトの気のせいだろうか。
ともかく、ルイズはその案に素直に賛同する事はできなかった…が、そうでもしないと母に捕まらずにアルビオンに向かうなど到底不可能なようにも思えた。
亀の中で誰かが騒いでいるらしく、ジョルノの腰で亀が揺れる。
ルイズは、複雑な顔をしたが苦い顔をしてジョルノに言う。

「わ、わかったわ。でも、あんまり遅いと置いていくわよ!?」
「ええ、勿論です。サイト。子爵のグリフォンがありますし、そういうわけですから君も残ってくださいね」
「ん? ああ、俺は別に構わないぜ」

そういうことになり、グリフォンに乗り先行するルイズを見送ってから、一旦ジョルノは学院の中へと戻っていく。
ルイズには簡単なように言ったが、その公爵夫人に「カトレアのことをお願いします」とか言われて旅立たれてしまっては元も子もない。
自室に戻ったジョルノは、AK小銃を亀の中に仕舞い、着替えなども仕舞ってからソファに腰掛ける。
ある意味裏切り者の疑惑があるワルドに対するよりも警戒しながら、ジョルノは公爵夫人がカトレアの様子がおかしいと尋ねてくるのを待った。
空いた時間を利用して、今朝届いたばかりの手紙を手に取ると、バーガンディ公爵家の紋章で封じられている。恐らくまたバーガンディ公爵から泣き言が書かれた手紙だろう。
読むかとうか迷っていると、呼び捨てなんて随分親しげじゃないか?と亀の中から呪詛のような声が聞こえてくるのを華麗にスルーして待つこと数分。
そうして、暫くして部屋の扉がノックされる。落ち着きの無い強い叩き方だった。

「ネアポリス伯ッ、ジョナサン…! 扉をあけて頂戴!」
「はい。今開きますのでお待ちを」

手紙を読むのはやっぱり止めて、ナイフを持って借りたガンダールヴの性能を確かめていたジョルノは返事をして扉を開けに行く。
そして慌てている公爵夫人の依頼を受け、ラルカスにも連絡してからカトレアの所へ向かう…そこまでは予定通りだったのだが、カトレアの部屋を訪れたジョルノはすぐに表情を変えた。
いつの間にか可愛らしい物や動物で溢れかえっている部屋にちょっぴり辟易したとかそんなことじゃあなく、ベッドで臥せっているカトレアの様子が予定とは違ったのだ。
ジョルノは脈を取りながら公爵夫人にカトレアの症状を尋ね、歎息した。
どうもジョルノがそれっぽい症状を引き起こす為に用意した薬を指定した量より一滴多く服用してしまったらしい。

「ジョナサン、カトレアさんが大変だと聞いてきたんだが」
「ラルカス、いい所に来ました。すぐに水魔法を。それと公爵夫人、申し訳ありませんが席を外してください」

心配だろうに何も言わず指示に従う公爵夫人を見送ったジョルノは、用意しておいた処方箋とラルカスの魔法でカトレアの治療にかかった。

………薬を飲ませ、ラルカスの卓越した水魔法でどうにか治療を施されたカトレアは、ベッドの周りにいるジョルノとラルカスを申し訳なさそうに見上げた。
自分の額の汗を拭くジョルノと、寝乱れた美女もいいとちょっぴりわくわくしているラルカスにカトレアは礼をいう。

「ジョナサンごめんなさい」
「構いません。きっちりその分だけ渡せばよかったですね」

薬を片付けながら返事を返すジョルノを少し眺めて、カトレアは言う。

「少し焦った?」
「いいえ」
「あらやだ。嫌われちゃった」

もう少し量を間違えると危険な薬だったと言うのにカトレアは楽しそうに笑った。
ジョルノはそれには何も言わずにベッドから離れ、ラルカスの背に隠れて汗をかいたシャツを脱ぎ、亀の中から向こうの世界で作った少々オリジナリティに溢れすぎる制服のジャケットを取り出す。
そんな素っ気無い態度を見て、ぺろっと舌を出していたカトレアは含み笑いをした。

「でもこうでもしないとジョナサンって放って置いても平気って思うんじゃないかしら」
「貴方はそれでも問題ない方だと思いますが」
「あらあら、そんなことばかり言って……次は浮気しようかしら」とカトレアは寝台に横たわったまま、改めて旅支度として久しぶりに向こうの服に袖を通すジョルノを上目に見つめた。

鏡の前で腰でじたばたと足を動かすココ=ジャンボの位置を直し、テントウムシのブローチの位置を確認していたジョルノは納得が行ったらしくカトレアには返事をせずラルカスへと目を向ける。

「ラルカス。そろそろ期限ですが、ペニシリンは完成しましたか?」
「ん? ああ、先日第一号が完成した。ボスが戻るまでにはある程度数を用意できるぜ」
「ベネ。アンタのお陰で工程が繰り上がって来たな」

嫁どころか小動物を召喚して落胆していたとは思えない、自慢げなラルカスの胸を軽く小突いてジョルノはカトレアのベッドの方へと戻ってくる。
ラルカスはそのまま、カトレアのベッドの先にある窓の外で待つサイトの元へと行くジョルノの背中を眺める。
牛の顔に、何時になく真摯な眼差しを作りラルカスは言う。

「ボス。何かあったら使い魔で連絡をくれ。あんたの命令なら、アンリエッタの暗」
「そこまでだラルカス。留守を頼む」

頷くラルカス。
肩越しに振り向いていたジョルノは、思い出したように無視された上に不穏当な会話まで聞かされ、息を呑むカトレアの手を取って口付けた。

「するな」
「え? ……あら…うふふ。わかったわ」
「……あの、ボス? そろそろ行ってやらないとサイトが泣くと思うんだが」

乱暴な言い方だったが、口元に緩く孤を描くカトレアを見て、なんとなく切ない気持になったラルカスは口を挟む。
寝ていたところを治療の為に起こされたラルカスは、それでも直立不動でジョルノに申し訳なさそうな声だった。
ジョルノは息をつき、

「そうですね。ああラルカス、シャルロットの所に手紙は届けましたね?」
「ああ。母君を治療する準備が整ったことをイザベラ様から伝えられているはずだ。これでアルビオンには向かえま…」

窓の外に何かを見たらしく、動きを止めてしまったラルカスを見てなんとなく察しがついたジョルノはやれやれと歎息し窓へと目をやった。
ベッドに臥せっていたはずのカトレアが、窓の外に現れた風竜の頭を撫でていた。
その首根っこに当のタバサが跨っている。
まだオフレコだが、ああなってしまったジョゼフ王が、オルレアン家も赦免すると言う話をイザベラから聞いたので治療を引き伸ばす必要もなくなった。
そう判断したので、わざわざイザベラ経由で手紙を送ったのだがタバサにはばれていたらしい。
だがジョルノはそわそわしているタバサにとぼけた態度で言う。

「こんな早くに何か?」
「…この借りは、いつか必ず返す」

タバサがそう言うと、風竜は巨体を翻し風を巻き起こしながらガリアの方角へと飛んでいく。
最初から全速力で飛んでいるらしく、あっという間にその姿が小さくなっていく。
風に飛ばされたカトレアを抱きとめて、風が収まるのを待ってからジョルノも窓から出て行く。

窓の外で竜に跨り、早く飛ばしたいなぁとぼやいていたサイトの後ろにジョルノは下りた。

「お、驚かすなよ!?」
「すいません。行きましょうか」
「ああ!しっかり捕まっててくれよな!」

得意げにサイトが笑い、アズーロが飛び立つ。
そして次の瞬間には「ちょっとこっちに来な」とジョルノはマチルダに耳を引っ張られ、亀の中へと引きずり込まれる。
中から女性の怒鳴り声とそれを止めるポルナレフの声が聞こえてきたが、サイトは聞こえないふりをして初めて竜の背に乗って飛ぶ空を満喫することにした。
だって怖いし。


To Be Continued...

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