ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔の兄貴(姉貴)!!-1

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匿名ユーザー

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―真っ暗だった

(ここは一体、あたしは…)
エルメェス・コステロは暗闇の中にいた。
記憶がはっきりしない。
確か自分は徐倫たちといっしょに神父と戦っていて、
時が加速して、
エンポリオの幽霊の弾丸を利用して海へと逃げて、
アナスイの作戦を聞いて、
ニュー神父が来て、
それから…
そうだった。
自分は神父の新しいスタンドの攻撃(といっても打撃だが)を喰らい、そのまま海で息絶えたのだ。

(…じゃあここが、死後の世界ってやつ?)
死後の世界、キリスト教でいう天国。
確か死んだ人間がたどり着く楽園とか言ってたっけ。
しかしここは幼いころに親から聞いていたそれとはまったく違っていた。
何もない。
罰則や規律に守られた刑務所も、温かみあふれる家庭も、ともに笑いあった仲間も、光さえも存在しない完璧な暗闇。その中で自分は横になっている。
(そうだ、あいつらは?)
周りから聞こえてくるのは雑音だけで仲間の声はしない。死んだのは自分ひとりなのだろう。
(情けねぇなあ、あたし…)
いつか自分が倒した男の口癖をつぶやく。
結局自分は助けられているだけで、助けることはできなかった。徐倫と出会い、そして文字通り死ぬまで。
(そういえばいろいろあったな)
今考えてみるとこの数ヶ月は本当におかしな出来事にあふれていた。
空条徐倫との出会い、不思議なペンダント、スタンドの発現、マックイィーンとの対決、農地の捜索、F・Fと仲良くなり、キャッチボール、スポーツマックスへの報復。
『……我が名…イズ・フラン……ヴァ…ール…』
…なんだ今の?いや気のせいだろう。なぜなら周りを見回しても暗闇の中にはあたししかいないのだから。
報復をした後、エンポリオと三人で脱獄して、徐倫の元カレに合い、まぶたストーン、神父を見つけ、墜落した飛行機の記憶、虹、カタツムリ、ウェザーの過去、新月のとき。
『…力を司るペン…ン。この者に祝福を…』
何なんだ、ブツブツブツブツと。自然界にこんな音あったか?
そうだ、祝福。アナスイのやつ何もあんなときに結婚の申し込みなんてしなくても…
『我の使い魔と…』って、
「さっきからうっせェーんだよ!!」

結論から言うと、あたしのいた場所は暗闇なんかじゃなかった。どうやら気を失っていただけのようだ。


使い魔の兄貴(姉貴)!!


最悪だった。

何が最悪って今日という日のすべてが最悪だった。
朝起きて、最初に会ったのがキュルケ。多少いやみを言われたが気にしていなかった、なぜならもっと大切なことがあったから。
次に廊下で風邪っぴきにあった。汗臭いデブもブーブー何か言っていたみたいだが気にしない。なぜならもっと大切なことがあったから。
そう、使い魔召喚の儀。
なんとしても失敗できないと気合を入れて臨み、それでも何回も失敗した。
周りの人たちは「何度やっても無駄」というような冷たい目で見ている。
それでも彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはあきらめようとしなかった。
失敗とともに起こる爆発によってだんだんと大きくなっていく穴に向けて、何度も何度も杖を振り下ろす。
何度も何度も何度も何度も振り下ろす。
そして爆発回数が百回を越えるころ、ようやく彼女は召喚に成功した。
ひときわ大きな爆発が起こり、爆風によって飛んでいくデブ。やはりこういう役まわりなのだろう。
爆発によって立ち上っていた砂煙がはれる。ルイズがおそるおそる爆発のくぼみを覗き込んでみると、そこにいたのは人間だった。
ドラゴンでも蛙でもトカゲでもなく、空気を操る猫みたいな草でも曲乗りとかいろいろできちゃうしゃべる恐竜でもなく、人間。

周りのざわめきが次第に大きくなり、そして彼女への嘲笑へと変わる。
「ギャァーーーハハハハハハハ!」
「呼び出されたのは…平民だったァーーー!!」
「さすが『ゼロ』だ。こんなことほかの奴らは考えもしなかっただろうよォ~」
「いや、完璧にまいったスよーッ」
「は、腹イテェーよォ~~~~~」
「こ、コルベール先生!しょ、召喚の、召喚のやり直しをさせてください!こんな、こんな、へへへ平民を使い魔にはできません!」
彼女は教師に召喚のやり直しを求めた、が現実はそれを許すほど甘くはなかった。
「いいえ、その人を使い魔とするのです。ミス・ヴァリエール」
「でも!でも!!」
「いいですか、ミス・ヴァリエール。二年生に進級するには使い魔の召喚が絶対。
しかしこの儀式であなたは今までに失敗した回数を数えていましたか?
私が数えるのをやめるほどの回数、あなたは失敗しました。そして今やっと召喚に成功したのです。
もうこれ以上時間をかける余裕はありません。ここであなたが選べる道は二つ。
1.あきらめてあの人を使い魔にする
2.一年生をもう一年繰り返す
さて、どちらが良いですか?」

コルベールはあくまで笑顔でそう告げた。
ルイズは思わず息を呑む。1を選べば現在更新中の伝説をまたひとつ築くことになるのだろう。
2を選べばゼロの伝説は修復不可能な完璧な伝説として後世まで語り継がれるのだろう。
道は二つあるらしいが本質的には道はひとつだ(無論ゼロ的な意味で)。
ならば考えるまでもなく答えは決まっている。
「契約……してきます…」
「よろしい、ならば早くお願いします」
がっくりと肩を落としたままルイズは爆発跡地の中心にいる人物へと近づいていく。

やはり平民のようだ。貴族やメイジならもっとマシな服を着ているだろうし、先住民(エルフといったか、授業で習った覚えがある)ならばもっと身体的特徴があってもいいはずだ。
脇のあたりでそでが止まっている服、頭についている怪しい石、顔の奇妙な化粧、十中八九旅芸人だろう。
ルイズは深くため息をつき、穴の中の人物との契約に取り掛かる。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
目の前の平民が動いたような気がする。当たり前だ。生きていなければ召喚できるはずがない。死体なんかを召喚した日には二つ名は間違いなくマイナス反転するだろう。
「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え…」
今度は動いた。はっきりとわかる。ブツブツと何かつぶやいている。
目が完全に覚めてしまうと厄介だ、さっさと済ませてしまおうと思い多少早口になりながらも彼女が呪文を言い終わり、契約のキスを交わそうとしたときに事件は起こった。
「さっきからうっせェーんだよ!!」
そう、いきなり倒れていた人物が目を覚まし飛び起きたのだ。

ここで重なってしまった不幸は三つ、
ひとつはルイズが驚いてしまい身動きひとつ取れなかったこと
ひとつはエルメェスが意味もなく飛び起きたこと
そして最後のひとつはエルメェスが起きたのがキスの直前。つまり二人の距離はほぼゼロ距離だったということ。

ゴチイィィンという鈍い音が響いた。
やはり今日は最悪だったと朦朧とした意識の中でルイズはそんなことを考え、そのまま意識を手放した。

TO BE CONTINUED・・・


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