ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は引き籠り-14

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匿名ユーザー

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「うわー、浮いた!」
「浮いてるんじゃないんだ、スタンドが手にとって持ち上げてるだけで」
「詠唱無しで浮かせられるのかい?なんでも?!」
「話を聞け!無視するな!」
『何も物が動かない』世界そのものよりも、ただ『物が動く』だけに酷く興味を示すギーシュ。
否、ただ動かすだけなら彼にだって出来るのだろう、ただその物体が
どの方向へ、何のためにだとか言う秩序を持たずふわりと浮き上がったのが面白いらしい。
オレはマン・イン・ザ・ミラーに『そこの造花を手に取れ』と命じただけで、
それをその後どうしろだとかは特に注文をつけていなかった。
マン・イン・ザ・ミラーは造花を手に取り注意深く覗き込んだ後、それに向かって手を伸ばしたギーシュから
ひょいと造花を遠ざけて、暫く手を止めた後に俺の傍らに置いた。

「その『スタンド』っていうのは、魔法が意思を持ったようなものかい?」
「さあ?意思があるかは良くわからない。見るからに自由意志を持ってべらべら喋る奴もいるし、
本体の意思をそのまま口に出しているだけの奴もいる。分身みたいに動くんだ。
逆に意思なんて持ちようも無い形をしてるのもある。本体の言う事を聞くのだけは確かかと思ったら、そうで無い奴もいる。」
「結局何なんだい?」
「さあ。オレが知りたいくらいだ。」
ギーシュはマン・イン・ザ・ミラーを目で追う。と言っても、『ここに居るんじゃあないか』と推測して見ているだけだから
どうもずれた場所を凝視していて、『マン・イン・ザ・ミラー』の方からギーシュの視線にあわせて動いた。
「使い魔と魔法をごったにしたみたいだ」
「『使い魔』ね・・・・そんな感じもするな。それで」

魔法の方は見せてくれないのか?というと、杖を手に取らなければ無理だと返ってきた。
なんと面倒くさい。鏡が無けりゃ何も出来ないと少し自信喪失していたが、それも吹っ飛ぶようだった。
そんな明確すぎる弱点をぶら下げてメイジって奴らは何故平気な顔をしているんだ?
『マン・イン・ザ・ミラー』のがずっとマシだ。鏡が無くてもぶん殴れるからな。

「じゃあ、ちょっと『マン・イン・ザ・ミラー』、洗面所までもってって・・・・よし、『許可』しろ。これでどうだ?」
ふわふわと鏡の前から返ってきた造花は、なんとなく冷え切っていた先ほどとは違って
造花なりに生き生きと色を取り戻していた。
「おお、触れるようになってる。」
「外のそいつを鏡の中に持ってきたんだ。そいつは『本物』だ。」
「さっきのは?」
「『鏡に映った造花』だから、外側だけだな。見た目以上の意味はもって無いから、電化製品なんかは許可しないと動かない」
「デンカ・・・・?何?」
「気にするな、ほら」
何かやって見せろよ、と言うとギーシュは『錬金』を唱えて衣服のボタンを別の金属に変えた。

モンモランシーは、自分の頭がおかしくなったのかと思った。
無用心に開け放されたギーシュの部屋を覗いたところ、人っ子一人いないと言うのに
部屋中に転がるギーシュの私物が出たり消えたり浮いたり落ちたり、ポルターガイストだってもう少し大人しいだろうと言う
お祭り騒ぎが現在進行中なのだ。
(『鏡の中』で男二人が自分の特技を見せ合って、ギーシュが『青銅製の鏡』を作り出した辺りで
オレ達が組んだら結構強いんじゃあないか?とテンションを上げているのをモンモランシーは知らない。)
「どうしたの?モンモランシー。中へ入らないの?」
「ルイズ・・・・」

イルーゾォ捜索は、まだ続いていた。『犯人は現場に帰ってくる』という根拠の無い定説に基づき、
何故かモンモランシーを筆頭に少女四人はギーシュの部屋を訪れる。

タバサは『勝手に帰ってくる』と結論付けたものの、モンモランシーの方では自分の恋人を半殺しにした薄気味悪い使い魔を信用できなかったし、
ルイズだって「そう、じゃあ勝手に帰ってくるまで待つか」という訳にもいかなかった。
使い魔を自分の思い通りに出来ないんじゃあ当面『ゼロ』は払拭できそうに無いし、
それに、一人の人間として、きちんとイルーゾォの事を判りたい。そう思ったのだ。
「あたしもね、ダーリンと一対一で語らい合いたいわ。まだお互いの事を知らなさ過ぎるもの・・・・」
何故こうも意味合いが違って聞こえるのか知らないが、要するにキュルケもまた、待つだけなんか性に合わないのだ。
「放っておけばいいのに」
タバサだけが、少しイルーゾォに同情する調子で呟いた。

「ルイズ・・・・貴方も?その、部屋が変になってる。私だけじゃない?」
「・・・・・・・・っ!」
ルイズは、自分の頭がおか(ry
「な、何これ?!何が起こってるの?」
「『消失』・・・・」

タバサが、やはりそうかと言うように呟く。
「イルーゾォ、居る。ギーシュも・・・・ずっと居た。」

ルイズは思考を巡らす。
そもそも、イルーゾォが忽然と『消え』、再び『現れる』事は誰しもが知っていた。
目にとまるのはその『消え』『現れる』一瞬の事象ばかりで、『消えている』間一体何処に居るのだろうとか、そんな事は考えもしなかった・・・・
「透明になってるだけ、って事?」
「違う。透明になるだけなら、現れる必要は無い。ずっと透明で居るだけで安全・・・・」
タバサは言い終わらないうちに、手に持っていた本を思い切り投げた。
「何?!」
デスクから人一人分の余裕を持って引かれた椅子の上、『人が座っていて不思議じゃない』その場所をめがけ本は飛んで行き、
そして『叩き落とされた』。

「どんな仕組みかは、彼に聞けばいい。ルイズ、頑張って。」
タバサに背中を押される。ううん、やっぱり良くわからないけれど。私に何か出来る事があるの・・・・?

部屋に一歩足を踏み入れ、良くわからないうちに杖をぎゅっと握る。
何も無いはずの空間がぴりりと、私を警戒した。

「うわっ、何あれ?」
ギーシュが驚いたようにドアを指差す。
音も無く開いたドアから勢い良く分厚い本が飛んできた。
咄嗟に『マン・イン・ザ・ミラー』が叩き落とすが、軽率だったかもしれない。
堰を切ったように部屋中の小物が渦を巻いて暴れだし(まだ日中だぞ。ポルターガイストだってもうちょっと大人しいだろう)
『マン・イン・ザ・ミラー』はオレにぶつかりそうになる幾つかを忙しく叩き落とす。
「おいギーシュ!こりゃ何だ?さっきの『レビテーション』か?」
「いや、タバサの杖がある、多分風の魔法だと思う!部屋の中で風が起きてるんだ!!」
部屋に4本の杖が浮いている。一つは目に見えてメガネ女のものだとわかるが、残りは区別がつかない。
花瓶だの万年筆だのの直撃を食らって悲鳴を上げるギーシュを尻目に、
先ほど奴が作り出した鏡を『マン・イン・ザ・ミラー』が持って駆ける。
『外』では空中を落下する鏡に映る、一つだけ明らかにデカい杖に『マン・イン・ザ・ミラー』が手を伸ばす――――

「『マン・イン・ザ・ミラー』、杖を『許可』しろ!杖だけだ!」

やはりと言うか杖さえ取り上げれば異変は収まり、
しかしそれは『先ほどの旋風はオレにとって危険だった』と教えてしまったことにもなる。
それだけじゃない――――

空中で少女四人を睨み付けていた鏡が、破片も残さず弾け飛んだ。


ほら見たことか、嫌な予感がした!『ゼロ』の爆発はオレにとって危険なものだ!
多少砕けるならばむしろ有利なぐらいだが、『無くなってしまう』なら訳が違う。
鏡が無ければオレは無力だ!そして何より、たった今証明された・・・・『マン・イン・ザ・ミラー』と『爆発』、俊敏性と射程が段違いだッ!
このままじゃあ・・・・・・・・!
「ギーシュ!洗面台行――――」


瞬間、世界が裏返るような浮遊感と共に背景が瞬き、「やっぱり『鏡』に関係しているようね!」と勝ち誇った声が振ってくる。

ルイズだ――――やはり気づかれていた――――存外に恐ろしいぞ、『爆発』ってモノは。
この短時間に、『マン・イン・ザ・ミラー』の射程内の鏡を、片っ端から吹っ飛ばしたって言うのか?
(正確には、何も『爆発』で鏡を消失させずとも、初歩の錬金で一時的に鏡に成り得ない物質に変えればいいだけなのだ。
ギーシュの部屋以外には迷惑がかかるだろうと、キュルケ・タバサ両名が錬金をかけた。)

『鏡の世界』は勿論鏡が無ければ維持できず、射程内に鏡が無くなったせいで反転世界は霧散し放り出された先は『現実』だ。
こんな事態は初めてで、ぐにゃりと歪んだ空間を見たときは胃が裏返るかと思った。

「もう逃げようなんて考えない事ね!」
ルイズに杖を突きつけられて――――向けんな、頼むから。爆発したくない――――観念する他無いようだ。
絶対安全で最良のスタンド『マン・イン・ザ・ミラー』・・・・『魔法』なんてものの存在で、オレの取り戻しかけてた自信は見事粉砕されるハメになる。



①現実と鏡の世界で物体は同じように動く
②鏡の世界で物体を動かせるのはマンミラのみ
③引き込むにはマンミラが触れる必要あり
④衣服は身につけている者が『自分の体の一部』と思える範疇まで。
 ポケットの中身はおk、本やカバンは駄目。襟元でイガイガして気になる洋服のタグとかも駄目。
他に魔法については原作のパープルヘイズの時のイメージで
鏡の外で発生する『事にしてある』。注釈が多くてゴメン。


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