ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-7

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匿名ユーザー

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職員や生徒の間で勅使が亡くなった、というニュースが流れていたが、その日は大多数の生徒にとっていつもの平和な朝だった。
もちろん、1人の少女と使い魔の間でも。

「……で、あの『ぷろてくたー』ってのはなんなの?」
「俺の世界では、身に纏う防具だったが…名づけた相手にとっては比喩だろう。俺の体の管から水蒸気を出し、それをウズ状にして
俺の周りに纏わせる。そうすれば光が屈折して俺に当たらない、故に姿が見えにくくなる。まあ、元々の目的は透明化ではないがな」
「あんたの風って便利ねー。異世界の亜人ってこんなんばかりだとしたら…恐ろしすぎるわね」

ワムウはそうでもない、と否定をする。
「我々はもう4人、いや2人しか残っていない。あちらでは亜人などと言う言い方はしていなかったがためになにを指しているか
詳しくはわからんが俺の世界で高等生命に足る知性があるのは人間と吸血鬼、屍食鬼くらいだった。俺の知っている限りではな」
「我々、ってことはあんたみたく風を操るのがあと1人いたの?」
「元々は4人居たのだが、2人は戦死した」

ルイズは黙る。

ワムウは語りだす。
「我々は一人一人能力が違う。一人はサンタナ、奴には大した能力も知性もなかった。もう一人はエシディシ様だ。あのお方は我々の中で
最も勤勉で、人間どもの戦略を必死に学んでいたな。二〇〇〇年ぶりの目覚めだというのに『戦争論』だの『海軍戦略』読んでいてなにが
楽しいか私には理解できなかったがな。あとは少々、気難しいというかなんというか…そして、エシディシ様は熱を操る流法『怪焔王』を
使っていた。俺の能力よりも使いやすく、どんな状況でもあの方ははほぼ落ち着いていた…ほぼだがな」

「次はカーズ様だ。我々の世界で吸血鬼を生み出す『石仮面』を作り上げるほどの知能の持ち主であった。正直な話、俺が求める『戦士像』
とは違っていたが、それでも偉大な方であった、と俺は思う。カーズ様は……もうあうこともないだろうしお前に話しても構わないだろうな、
カーズ様の流法は『光』。輝彩滑刀の流法といって骨を硬質化してエッジの部分を絶え間なく動かすことによって『チェーンソー』のように
切れ味を増し、どんな堅い物質であろうとも切り裂く。俺の肉体でも一瞬で切り裂かれるかもしれんな」

ルイズは、この目の前の化け物のような働きをした亜人の肉体を切り裂く武器があるのかと驚き息を呑んだ。『チェーンソー』とはなにかはよくわからなかったが。

「そして…仲間ではないが…というか我々の敵である人間、俺を破った人間の話だ」

ワムウを一人で倒せる人間の話、と聞いてルイズは今まで以上に緊張する。

「名はジョセフ…波紋戦士…正真正銘人間の青年だ。」
「ねえワムウ、あんたの話にたまにでてきたけど…波紋ってなに?」

ワムウは少し考えたのち答える。
「波紋とは…俺には原理はよくわからんが…吸血鬼、屍食鬼、そして我々の天敵だ。我々一族は普通の生命が例えば蹴りをはなって
来たとしよう。我々はその蹴りを、足ごと吸収して食える。したがって武器なしで打撃を与えることは普通はできないし、
武器があったとしても我々に身体能力で敵う生命など生まれてこのかたみたことがない。これは自慢でも過信でもない。
我々の誇りと自負だ。しかし、『波紋』は我々の弱点である。人間がこれを纏えば、我々にとってはどんな鎧よりも恐ろしい鎧となる。
波紋を纏った蹴りを吸収しようとすれば内部から組織が破壊され、波紋が通っている油を塗った鉄球を打ち込まれれば
屈強な我々一族の肉体をも貫き、立ち上がることすらできなくなる」

ワムウは続ける。
「そして俺を破った戦士、ジョセフはその波紋の使い手の一人であった。波紋の強さ自体は今まで戦ってきた戦士の中では中の上
程度であった、が、自分の弱ささえも武器にし、自分の本質を最大限に生かしていた。これは前にもいったな。『したたかさ』と
『高潔さ』を両立できる人間…戦士を俺は尊敬している。俺にとってそういった者は友であり尊敬するもの。俺は俺を倒した
ジョセフや、俺に向かってきた戦士たちを尊敬している」
「あんたのいう『戦士』って、ただ強いだけってことじゃないの?」
「強者こそは真理であるし、敬意をも払う。しかし、俺が目指す、尊敬している友人たちは強いだけではなかった」

「話が長くなったな、もうそろそろ食事の時間だろう」
ワムウは話を終え、外へと出て行った。



 * * *


朝の食堂。

「お、おはようモンモンラシー!今日も素敵だね!」
キザなセリフを吐きながらも、なぜか声の裏返っているギーシュ。

「そんなに慌てて、またあんたなにかやましいことでもあるのね?」
「ぜ、ぜぜぜぜぜぜんぜんないよ!ハハハハ!」
「ギーシュ様…最低!」
入り口に立っている女の子が泣きながら外に走り出した。

「あの子は後輩のケティね……あんた、後輩にも手を出して…」
「ははは、ちょっと待ってくれ、平和的に話し合いで…」
「どうして欲しいのあんたは?色々と嫌がらせしてみる?あんたのファン減らすためには…そうね、色々とバラしてみる?」
「や、やめてください…」
「ってことはやっぱりまだやましいことがあるのね?オラオラオラァー裁くのは私の水魔法だァーーッ!」

今日も食堂は平和であった。
ルイズ達が入ってくるとやや雰囲気が強張ったが、決闘騒ぎはもう過去の物となり、影にさえ気にしていれば大丈夫とされたため
大多数には特に目立った変化もなかった。キュルケはまだ怯えている少数派の一員だったが。

「あら、おはようシエスタ」
「おはようございます、ミス・ヴァリエール」
「前は言いそびれちゃったけれども、ルイズでいいわよ。そんな畏まらないで」
「そ、そんな恐れ多いです……そういえば前に話しましたモット伯の話を聞きました?」

ルイズはビクリとふるえる。ワムウは平然と食事を続ける。
(落ち着くのよルイズ……落ち着いて自然数を数えるんだ…自然数はなにかがある数字…私と胸に力を与えてくれる…)
「い、いえ聞いてないわ」
「それが、行方不明になったらしくて、私が勤める話もご破算になって…それでここの仕事に復帰できたんです」
「そ、そうよかったじゃない」
「ミス・ヴァリエール、なんだか目が虚ろですけれど風邪でもおひきになられましたか?」
「べ、別になんでもないわ、大丈夫よ。気にしないで」
「そうですか、では仕事に戻らせてもらいます」

シエスタが席から離れていき、ルイズはため息をついた。
(なんとか、うまくいったようね…死体も残ってないから「行方不明」になってるんでしょうけど…冷静に考えるとすごい恐ろしいわね)

どうにか一息つき、シエスタの働きぶりを眺める。
(しかしよく働くわねー。メイドだけじゃなくウエイターや会計までやってるわ)

今日は虚無の曜日の前の平日であり、出かけている人も少なく、食堂は非常に混んでいた。
そして、その日はウエイターが数人休んでおり、ただでさえ多いシエスタの仕事は増していた。
そのため、いつものシエスタならば起こりえないミスを犯してしまったのだ。

「あっ!」
シエスタが持っていた飲み物が手から落ち、横にいた女生徒の頭にかかる。

「す、すみません!ミス・ヴィリエ!」
シエスタは膝を土につけ、必死で謝る。が、

「おのれ…よくも私の髪に飲み物をッ!」
ヴィリエと呼ばれた女性はその程度では許す気にはなれないらしく、杖を懐から出し、振り上げる。

(ああ、私を魔法で殴る気だッ!)

しかし、杖は振られなかった。
いつのまにか後ろに立っていたルイズが杖を抑えたのだ。

「やめなさいよ、大人気ないわ。仮にも貴族であるなら程度をわきまえなさい」
「あら、『ゼロのルイズ』が貴族観について私に意見するの?」

相手の言にルイズは激昂しそうになるが、堪える。

「ええ、そうよミス・ヴィリエ。謝っているのにそれを認めずに杖を出すのがあなたの貴族観だっていうの?」
「ええそうよ、平民風情が多少謝ったところで許してたら私たち貴族の誇りは守れないの。私、残酷ですもの」

ルイズの眉が震える。
「じゃあ、どうすれば許すってのよ」
「どんなに魔法で痛めつけても、私の心は晴れないし許す気にもならないけど…それくらいの罰は受けてもらわないと、貴族としてね」

ルイズは一歩下がる。
そして、

目の前の少女を思いっきり殴った。

乾いた音が静かな食堂に響く。

倒れた状態でヴィリエは叫ぶ。
「おのれ…よくも私のハダに傷をッ!」
「や、やめてください!ミス・ヴァリエール!私が悪いのです!」

シエスタがルイズを止めようとする。
しかし、ルイズはそれを無視する。

「あんたがいくら私を侮辱しようとも構わないけれど…私の友人を侮辱するようなら!私はあんたを
許さないわ!貴族による決着のつけたたを私から教えてあげるわ、決闘よ!」

「決闘…ですって?貴族同士の決闘は許されていないわ」
「そんなのは関係ないわ…侮辱には『決闘』も許される!ヴェストリの広場で待ってるわよ」

ルイズは後ろを向き、出口へ向かう。
そして、一度振り向いて

「ただ、あんたがこの決闘の申し込みにも従わず、負けても従わないようなら、私はあんたに対して『貴族らしく』なんて考えないことにするわ」

そう呟いて食堂を出て行った。



To Be Continued...

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