ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

見えない使い魔-23

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匿名ユーザー

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タルブの村、フーケ=マチルダは花京院と別れた後もそこに逗留していた。
ワルドにつけられた傷は深く、水魔法を日に何度か使っていくことでどうにか完治はしたものの元の状態には戻っていない。
リハビリが終わるまではしばらくゆっくりするつもりだったのだ。
しかし、そんなことを言ってられない事態になってしまった。
ある日のことだった。泊まっている村長の家で身体を動かし、どこにも違和感がないことを確かめていたら、大気を揺るがす爆発音が耳に突き刺さってきたのだ。
直後には地震のような震動も伝わってきた。

これは明らかに自然の現象ではない。彼女は村長たちと一緒に急ぎ外へ出た。
まず視界に入ったのは何隻もの船が落下している光景だった。
山肌にぶつかり黒煙を上げるもの、森に落下し暴虐の火を撒き散らかすもの、様々だったが、共通点があった。
偶然落ちたものではない。落されたのだ。
マチルダにとって予想外であった。ワルドが戦争をもうすぐ起こすといっていたことは覚えている。
しかし、まさか不可侵条約をあっさり破って仕掛けてくるとは夢にも思わなかったのだ。
「村長さん、村人を非難させな」
「ま、まさか、戦争なのですか?」
「そうさ。しかも………あいつらろくでもないことをするみたいだ」
上空から生まれて初めて見るような巨大な船が下りてくる。
それが錨を草原に下ろし停泊すると、何頭ものドラゴンが飛びたちまっすぐ村にやってきていた。
これは戦争だ。それも、相手は条約を破る歴史的に見てもそういない厚顔無恥。
礼儀や配慮など持ち合わせているはずがない。そんなやつが、敵に遠慮をするか? 
いいや、示威行為として、見せしめとして、盛大な炎を上げるだろう。
マチルダの勘は当たっていた。
ドラゴンは村の上空に飛来すると、家々に火を吹きかけたのだ。
「逃げな! 焼き殺されちまうよ!」
マチルダが叫ぶ間にも火は燃え移っていく。防衛の術がないためたったの三頭で十分だというのだろう。
空飛ぶ相手は厄介ではあるが、マチルダならば相手はできる。
だが、敵はこれだけではない。戦うというのならばその後ろとも事を構えなければならない。そんな覚悟はない。
こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。
そのはずなのに、彼女は杖を持ち走っていた。

村の入り口では男連中が女子供を外に逃がしている。村長からの指示が早かったためにいまのところ怪我人はいない。
転んだ人がいるだけだ。しかし、彼らに向かって一頭のドラゴンが近づき鎌首をもたげ、火を吹いた。
メイジでもなんでもない平民が防ぐことはできない。
が、突然に地が盛り上がり彼らの盾となった。 火は村人に届くことはなかった。


ドラゴンに跨る兵士は背後に振り向いた。そこにはマチルダがいた。彼女が守ったのだ。
「貴様、メイジか」
「そうだよ。まったく、こんなことガラじゃないんだけどね」
「ならば我らレコン・キスタに入れ。貴様の腕なら相当な地位につけるぞ」
ため息をつく。
「あのさあ、なんであんたら馬鹿の一つ覚えみたいにそんなことしか言えないんだい?」
「ほう、何度か言われたことがあるのか。ならば、入るつもりはないのだな?
このような状況においても」
マチルダの周囲には、前方のものを含めて三頭のドラゴンがいた。
なるほど、まともに戦って勝てるわけがない。だが、それならまともに戦わなければいいのだ。
マチルダは前に歩いた。
「入ると、決めたのか?」
「んなわけないでしょばか」
ドラゴンが背後からハエのように飛ばされた。村人を救った土、それをゴーレムに変えたのだ。
さらに間断いれずにもう一頭のドラゴンをも殴り飛ばす。
最後のやつは腕の届かないところに逃げ出してしまったが、船に戻すつもりはなかった。
マチルダは燃え盛る家の中から焦げた柱をゴーレムで取り出し、投げつけた。
「おおあたりっと。やれやれ。貧乏くじ引いちゃったわね」
そう言ってマチルダも村から出ようとしたところ、背後から爆発音がした。
自分以外にもメイジがいたのだろうかと思ったが、そうではないと徐々に知ることになった。
爆発は一度ではすまなかった。何度も起こった。マチルダは、それが魔法や自然で起こったものではないということもわかった。
爆発したところからは火も煙も昇ってこなかったからだ。
普通そんなことはありえない。
不審がるマチルダの耳に奇妙な声も聴こえてきていた。
「……………ジャネェー」
人間のものとは思えない、ひどく無機質な声。いや、音というべきである。
マチルダはゴーレムの頭に飛び乗って村を見回し、その声の主を見つけようとした。
一番近い家が爆発した。火は消し飛んだが、そこから彼女のほうに向かってくる小さな物体があった。
それが爆発を起こしたのか、確信はなかったがゴーレムに殴らせた。
つぶれた。そう思った瞬間、ゴーレムの腕が爆発して消えた。マチルダは爆風に飛ばされ地面に降り立った。
「今ノハ人間ジャネェー」
髑髏が付いた走る車、それがその声の主だった。
「……なんだいこりゃ」
それはゴーレムの胴体に突っ込み、圧倒的な質量を持つそれをあっさり爆発させて消し去った。
塵一つ残っていない。
マチルダの背筋が寒くなった。あんなものを食らえばどうなるかわかりきっているからだ。
どうかこっちに振り向かずどっかに行ってくれればと願ったが、そんなわけがなかった。
その子供のおもちゃのような車は彼女に振り向き、走ってきた。
「今ノハ人間ジャネェー」
「―――じょ、冗談じゃないよまったく!」


冗談じゃなかった。マチルダは生まれてこの方、これ以上の恐怖を味わったことがない。
ワルドはまだ人間だった。だから驕りと油断があり、隙を突くことができたのだ。
ところが今回の敵は己の意志というものが存在しない。そのため油断や驕りが生まれることもない。
ただただ自動的に爆破させているのだ。
それだけでなく自慢の巨大ゴーレムのパンチをものともせず、あっさりとこの世から消し去ってしまうほどの能力を持っている。
救いがあるとするならそれは一つ、空を飛べないことだ。
「これで飛行能力までついてたらって考えると、ぞっとしないね」
フライを使い、マチルダは恐ろしい敵から逃れることができていた。
しかし、そいつはマチルダの真下から離れようとはしない。
それを利用していっそアルビオンの船にぶつけてやろうとも考えたが、途中で殺されるか、そうされなくともどのみちなんらかの対抗策を用意されているに違いなかった。
やるだけ無駄である。しかし、ではどうする。
打撃は無意味、かといって魔法を使ってどうにかなるとは思えない。こいつは大火に突っ込んで爆発させまくったのだから。

……どうしてわざわざ火の中に突っ込んでいったのか。

マチルダは村のことを思い出す。目の前の車は燃えている家を爆発させて回っていた。
それなのにいまはマチルダ自身を追ってきている。人間を狙っている、のは間違いない。
だが、識別する方法は視覚的なものではない。なにか、条件があるはずだ。
そうでなければ、車の近くに落ちたときに殺されている。
なぜあのときゴーレムに向かったのか。なぜ燃えている家を爆破させていたのか。
その理由は―――温度。
ゴーレムはドラゴンの火を浴びて熱せられていた。だから先に向かったのだ。
しかし、答えがわかったところで、どうだというのか。学院の宝物庫に匹敵する頑丈さをどうやって攻略するのか。
いや、それより、どうやってこの状況を脱するのか。
そのうち魔力は切れてしまう。そうなったら…………

マチルダが悩んでいると、視界に数十人の軍勢が入ってきた。
彼らは恐らくここら一帯の領主であるアストン伯とその兵士たちだろう。
領土内に侵攻されたので黙っちゃおれんとばかりに出征してきたのだ。

その行為はすばらしいものだ。領民を捨てずに戦いにきたのは。
だが、彼女に言わせれば、それは勇気でもなんでもなく蛮勇である。確実に、死ぬ。
ノミが人間に勝てるか。
彼らはそのままマチルダのほうに近寄ってきた。車は距離があるからかまだ彼女の真下にいる。
「貴女に尋ねるが、村人たちはどうなった」
精悍な顔つきをした男だった。鎧の装飾からして伯爵だろう。
「みんな無事さ。家や田畑はあんなことになっちまったけどね。それより、あんまりこっちに近寄るんじゃないよ。あたしの真下にいるやつが村をあんなふうにしやがったんだ」
正確には違うが、こうでも言っておかなければ不用意に近づいて爆死してしまう。
余波にやられてはたまらないのだ。
ところが、いいのか悪いのか、この伯爵はモットとは大違い。
善人だった。
「わかった。なら、まずは貴女を助けよう」
伯爵がそう言うと、一人のメイジが詠唱を始め、よりにもよってファイアーボールを投げてきた。
突如生まれた高温、車はそれにまっすぐ向かい、爆発した。
「今ノハ人間ジャネェー」
「よ、余計なことを!」
車はマチルダ以外の温度に気づいてしまった。
馬、人間、よりどりみどりだ。
「逃げな! そいつは『ぶっ壊れ』ない!」
せっかくの警告を聞いちゃいなかった。一人の兵士が馬から下りて剣を叩きつける。
しかし、パキンとあっけにとられるほどの間抜けな音を立てて真ん中から折れてしまった。
そして、その無知な兵士はこの世から消えた。

マチルダは即座にフライを切った。すると重力の鎖に絡め取られ落ちていくがその最中に遠くへファイアーボールを投げ込んだ。
車はそちらに向かって走っていく。そして、爆発した。
「なんなのだあれは! 彼は一体どうなったのだ!」
「死んだんだよ。よくわかんないけど、あの車は温度が高いところに走って爆発するんだ。跡は残らない」
マチルダの話を聞いても伯爵はまだ半信半疑だったが、もう一度遠くに火をつけると車はそちらに向かっていき爆発した。
「……何者かの使い魔であるのか?」
「わかんないけど、その可能性はあるわね」
もしくは、花京院と同じスタンドか。これならもっと話を聞いておけばよかったと考えかけたが、いまはそんな場合ではなかった。
車は彼女らの方向に走ってきている。
また遠くに火を点けて遠ざける。
「尋ねるが、村人たちはいずこに」
「南の森。そっちに避難しているよ」
「そうか。皆のもの、あの魔物は私が引きつける。その間に村人たちを館へ誘導しろ」
「……正気かい?」
「無論。こういうときに殿を勤めるのがメイジである。貴女は逃げても構わんぞ」
「そういわれてハイハイ逃げられたらいいんだけどね」
「人がいいな。『土くれ』のフーケよ」
「ばれてたのかい。まったく、こんなのあたしのガラじゃないのに。
なんでこうも貧乏くじを引かされるのかね!」
マチルダはあちらこちらに火をつけて兵士たちのために時間を稼いだ。
アストン伯も協力してくれるが、いつまでもこんなことをしていられない。
そのうち精神力か体力が尽きてしまい世界からさよならだ。
「案はあるかい?」
「ある。極々簡単な方法がな」
「マジで? じゃあやってみなよ」
アストン伯は短く詠唱すると、車の前方に水を生み出した。そして、衝突した瞬間、がちがちに凍らせてしまったのである。
車はごろごろと残った勢いで転がったが、爆発するようなことはなかった。
マチルダは恐る恐る触れてみても分厚い氷に覆われているせいか爆発はしない。
たぶん、標的を抹殺するためにある程度近づく必要があり、それを温度で確かめるのだが、氷に覆われているためそれを感知できないのだろう。
「……機転が利くじゃないか」
「お褒めに預かり光栄だ。しかし、なにもかもが遅かったようだ」
二人の視線の先には、陣を広げ始めているアルビオンの軍隊が見えた。
元々数十人の軍勢など歯牙にもかけていない。使い魔かなにかがこのような事態になろうとどうだっていいのだ。
「一泡、吹かせてやりたいもんだね」
「まったくの同感だ。彼奴らは、罪なきものたちの命を軽々と奪おうとしたのだ。 貴族ではない。もはや蛮族である」
「ともかくいまは待ちだね。それしかできない」
「うむ。貴女も館に来るといい。どうせ盗むものは何もないが気落ちしないでくれたまえ。 いや、一つあったか。ものではないがな」


王宮ではレコン・キスタの侵略戦争に対して会議が進められていた。しかし、まったく進むことはない。
ただ情報が真偽に関わらず飛び交っているだけに
過ぎず、参加している誰もが内容を把握し切れていなかった。
確かなことは戦争が始まったこと、王女の婚姻が延期になったこと。
たったの二つだった。

その騒々しい会議室から離れた宮廷の中庭では、とうに魔法衛士隊が出陣の準備を終えていた。
ただ、状況が状況だけにすぐさま出ることはできないということを面々はわかっていた。
これがもし、周到な準備をしてからの『正々堂々』とした戦争であれば話は違っていただろうなと衛士の一人であるアニエスは思っていた。
そもそもグリフォン隊の隊長が裏切り者だと判明してからまだ半年もたっていない。
混乱は表面上治まっているに過ぎず、部隊の再編成はまったく進行していない。そこへ狙ったかのように、いや、狙って戦争だ。
このまま反抗せずに降参という可能性もある。
「困ったものだ。なあ、4」
『腹減った。干し肉くれ』
アニエスはため息をつき、話し相手の小さな人間らしきものに小さく切り分けた肉を与えた。
彼か彼女かの額にはあるルーンが刻まれており、見た目は使い魔のようであるため彼女は一応貴族連中に混じって隊に入ることはできた。だが、所詮平民であることには変わりない。
彼女は常に最前線で命を張らなければならない。
『さっきの話だけどよぉー、アニエス、たぶんお前の心配は無用だぜ』
「なぜだ?」
『そりゃあお前が不吉だからだよ。俺がついているんだぜ。安全なんてものとは程遠いさ。
なにせ、元の主人つうか本体だかいうやつはその不吉を嫌って俺を認めなかったぐらいだからな』
4は腹を抱えて笑った。
『ほれ見ろ。姫様がでてきたぜ』
彼の言うとおりだった。王女は中庭に出てきて出撃を伝え、自らもユニコーンに跨った。
『やっぱ俺がついてるから不吉だな。今度ばかりは死ぬかもしれないぜえ』
「死なない。死ねないからな」


ルイズはンドゥールと学院の玄関先で王宮からの馬車を待っていた。アンリエッタの結婚式に出るためである。
ちなみに、いまだに詔は完成していない。
はっきり言うと才能がないというのもあるがンドゥールが旅立ってから数日前、あの夜が明けるまですっかり忘れてしまっていたからだ。キュルケやギーシュには呆れられてしまい、それでも即興でなんとかしようとしたがどうにもならなかったので王女の側近であるマザリーニに助言を頂こく腹積もりであった。
しかし、それも結局無駄なことだった。
ンドゥールがピクリと妙な動きをした。ルイズがどうしたと尋ねる前に彼は地べたに座り込み、杖を耳に当てた。
「……なにか聴こえるのね」
「…………馬車が来るのであったな。ルイズ」
「ええ、そのはずよ」
「いま来ているのは馬一頭だ。それもなんらかの、喜ばしくない事態を伝えに来ている。限界以上の速度を出しているために馬が疲弊しているのが足音でわかった」
ルイズは目を細めて遠くを見やった。その数分後、彼の言ったとおり早馬が駆けてきた。乗っているのは服装から王宮のものであった。
その人物はルイズたちの前で馬を止めると焦った口調で学院長の居室を尋ねてきた。
教えられると一目散に走っていく。
「なにがあったのかしら。ンドゥール、聴ける?」
「ああ、できる。サイレントとかいう魔法は使う暇もないだろう」
それからしばらくし、ンドゥールはルイズに語った。
「宣戦布告、だそうだ。アルビオンが不可侵条約を破り攻め入ってきた。現在、タルブが占領されているそうだ」
シエスタの故郷であるとンドゥールは教えてやった。
「村は全焼だが村人は全員無事だが………そこに陣を張りラ・ロシェールで軍同士がにらみ合っているとのことだ。準備が早かったのか制空権を取られて難儀しているらしいな」
「つまり、戦争が始まった、のよね」
「そうだ」
ルイズはそれを聴き、頭が真っ白になってしまった。また戦争、また人が死ぬ。どうしてもアルビオンの人たちを思い出してしまう。
「なんなのよあいつら。なんでそんなに戦争が好きなのよ。なんでそんなに奪いたいのよ」
「さあな。よほど不足なのだろう。だから戦争など仕掛けるのだ」
ンドゥールが歩き出した。そのあとをルイズがついていく。
「どこへいくの?」
「花京院を起こす」
そう言って、彼が向かったのはコルベールの研究室であった。
花京院はそこで寝泊りしているのだ。

いきなり起こされすこし不機嫌であったが、事情を聴くと花京院ははっきり目が冴えたようだ。
すぐさまコルベールを叩き起こしてゼロ戦を動かせるようにしてもらった。
ガソリンをゼロ戦に注いでいる間にルイズが二人に尋ねる。
「これで、どこにいくつもりなの?」
「タルブの村だ。そうだろ?」
「ええ。なにせこのゼロ戦は譲り受けたとはいえ、あの村に骨をうずめた佐々木武雄さんの誇りであり魂だったんです。助けにいきますよ。君はどうするんだい?」
「シエスタには恩を受けている。命の、というわけではないが、放っておくわけにもいかん。
それに、あの村にはフーケだったかマチルダもいる。俺はアルビオンであいつに助けられ……てもないな。もともとあの場に残ったのはあいつが原因だったか。それでも、指を奪っておいてなにも復讐をされなかったのでな、ついでに助けにいくか」
「彼女はついでか。サポートはしてくださいよ。毎日操縦法を教えられていてもぶっつけ本番なんですから」
「わかっている」
二人はゼロ戦の風防を開いて乗り込もうとしたのだが、ンドゥールのマントが弱い力で引っ張られた。
「私も連れて行きなさい」
ルイズだった。
「……詰めれば三人で乗れるんじゃねー? ああ、久しぶりの発言がこれか」
なにかを諦めたような口調でデルフリンガーが言った。それはその通りではあるが、行き先に問題がある。
「なにをしにいくのかわかってるのか?」
「わかってるわ。わかってるからいくのよ。それに、あんたは私の使い魔。目の届かないところで勝手をされるわけにはいかないもの。それに、なんだかね、こう、根拠はないけどいけそうな気がするの」
「まあいいんじゃねお二人さんよ。嬢ちゃんが危なくなるような事態になったら相棒が責任もって守ればいいんだし」
「そうですね。大体危なくなるっていうときは僕たちも危ないんですから。
それじゃあ乗ってください。一度、元の場所で飛行機が墜落したことがあるので祈っててくださいね」
花京院が冗談気味に笑い操縦席に座った。その背後、元々無線機が詰め込まれていたスペースにンドゥールとルイズが座った。クッションが敷かれてあった。
それは、いつか二人でどこかに飛び立つからだろうとルイズは思い、少しだけ苦しくなった。
コルベールが前方から風を吹かせる。花京院は慎重にだが適切なスピードで作業をすすめていく。
ここ数日、彼は学院に来てからンドゥールに付きっ切りで操縦法を教えてもらっていた。
何度も何度も繰り返し行ってきた。
間違いはない。
ゼロ戦は、いま、再び空へと駆け上る。

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