ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの番鳥-2

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匿名ユーザー

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「もう!あんたも気合入れなさいよ」
一つでン十万はしそうなアンティークが並んだ部屋で、甲高い声が深夜の学生寮を振るわせる
声の主はルイズであり、少し殺気が入った視線の先には召喚した使い魔―――『ペットショップ』の姿
何故にルイズが叫んでいるのだろうか?
時間は多少遡る

「使い魔の目は主人の目、使い魔の耳は主人の耳ね。うふふふふ」
ちょっと逝っちゃった笑顔を浮かべながらベッドに座るルイズ
使い魔の視覚や聴覚で得た情報を、その主人であるマスターも得る事が出来ると教師から聞いた
その説明にルイズはちょっと惹かれたが、サモン・サーヴァントでマトモな使い魔が出てくるとは期待していなかった
だが、ルイズは召喚に成功した!故に彼女は試してみたかった。使い魔を手に入れたら誰だってそうするだろう、ルイズだってそうする。
「ちょっとやってみよ」
ルイズの軽い言葉、だが。これから長い長い時間が経つとは誰も予想してなかった。と言っても部屋にはルイズとペットショップしか居ないが
1時間―――――――
「ぐぬぬぬぬぬぬ」
2時間―――――――
「はぁぁぁぁぁぁ」
3時間―――――――
「・・・うぉりゃぁ」
4時間―――――――
「―――――ぅあ」
5時間―――――――
何回も何回も試したが、使い魔が何を見て何を聞いてるのか欠片も分からないルイズ。
ここで冒頭の「もう!あんたも気合入れなさいよ」である
駄メイジなルイズに根本的な原因があるのだが、連帯で責任を背負わされては使い魔も溜まった物ではない。

「先生はとても簡単って言ってたのに!」
レビテーション等の『とても簡単な魔法』すら失敗する自分の不名誉な二つ名『ゼロのルイズ』の称号を完璧に忘れているとしか思えないセリフを叫ぶ
それから少しの間ペットショップに当り散らしたりしていたが、さすがに気力の限界が来たのか。ベッドに横になるルイズ
「ご主人様の睡眠を邪魔したら承知しないんだからね!・・・zzzz」
と、又しても理不尽なセリフを吐いてから明かりを消して、のび太並のスピードで夢の世界に直行した。

マスターが眠ったのを確認してから、ペットショップは器用に足でドアを開けて廊下に出た
鳥である彼には暗闇は天敵であり、一寸先も見渡せないはずだが。『もう一つの感覚』を持つ彼には暗闇など物の数ではない
彼の頭に浮かぶのはルイズの最後の言葉『睡眠を邪魔するな』
(マスターの命令を遂行しなければならない)
(守らなければならない)
(■さなければならない)
(やらなければ)
と、そこまで考えて突然雷鳴が走るように思考に別の異物が混じる
(マスター?)(こいつは違う)(命令は違う)(ここは違う)(早く戻らなければ)(DI・様の元へ)
彼は思った。まただ、また頭に疑問が浮かんだ
何かが違う、だが、それが何なのか彼はわからない
パズルが完成している、しかし、そのパズルのピースが本来の物とは全くの別物になっているような―――辻褄の合わない感覚
最後の思考が一番大事な物だと感じたが、深く考える前に命令を遂行する事が重要だと彼は結論付けた


そして朝に事件は起きた


時間は朝
学生寮の廊下を二人の女が歩いている
「ルイズは寝坊かしらねぇ」
「・・・・・・・・・・・」
赤い髪をした大きい方はキュルケ。
青い髪をした小さい方はタバサ。
キュルケの後ろに居る火竜山脈のサラマンダーを見れば分かるが、どちらもメイジとしての腕もかなりの者。
タバサなんてシルフィードなる青いドラゴンを使い魔として使役している。
そんな彼女達が何故に歩いているのかというと、授業に出て来ないルイズを起こしに行くからである。
その行為は親切心からではなく、わざわざライバルから起こされるルイズの悔しそうな顔を見たいが為。
ルイズの顔を想像して笑みを浮かべるキュルケをタバサは呆れたような顔で見る、が、幸いな事にキュルケは気付いていない
目の前にはルイズの部屋のドア、ルイズの使い魔がその脇に見える
「使い魔より起きるのが遅いなんて、ルイズは本当に駄目ね」
そんな事をぶつくさ言いながらドアを開けようするキュルケ

―――次の瞬間キュルケは服をタバサに思いっきり引っ張られた!
「ちょ、何すんのよタバ「ドゴォ!」!?」
不可思議なタバサの行為に抗議しようとしたキュルケ。だが、顔の直ぐ傍にいきなり氷柱が生えては黙らざるをえない
長さは1メイル程で、壁を薄紙のように突き破っている。こんなのが顔に当たったら普通に死ぬ
慌てて発生源を見るキュルケ、するとそこには――――

「グガガガガガッ!!!」
得体の知れぬ冷気を放ちながら翼を広げるルイズの使い魔の姿
実践経験が無いキュルケとタバサにも感じられる程の殺気を放っている

泣く子も黙るほどの殺気を放ちながら、ペットショップは主人の命令『睡眠を邪魔する者は即座に抹殺せよ』を遂行するッ!
羽ばたくペットショップの周りに氷柱が瞬時に生成!そして半秒の間も無く発射!
『それ』はタバサの得意とする『水』『風』『風』の攻撃呪文、『ウィンディ・アイシクル』に酷似していた
しかし『ウィンディ・アイシクル』より弾の数は少ないが、大きさと速度は全くの別物!
勿論その氷柱が放たれるのを黙ってみているキュルケでは無い
「ファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤァァァァッ!」
自分に当たりそうな物だけを見極め『火』*1の呪文で叩き落すッ!
外した物はフレイムの火炎が補助!

外れた残りの氷柱は、ドゴゴゴゴゴッ!、と。
氷柱がぶつかったとはとても思えない音を立てながら窓を粉砕し床に穴を開ける
(トライアングル・・・・・・いや!スクゥエアクラスのメイジ並じゃない、この鳥!)
冷や汗を流すキュルケ、だが一瞬の停滞も無しに次の動作に移る

「タバサッ!!」
「エアハンマー」
キュルケの言葉に阿吽の呼吸で放たれるタバサの魔法!
杖から放たれる空気の槌。通常は不可視の波動であるそれを『もう一つの感覚』で感知して回避行動を取ろうとするペットショップ
しかし、タバサの狙いはルイズの使い魔では無かった!

ドゴォン!

轟音と共にルイズの部屋の扉が粉々に砕けて吹っ飛ぶ
キュルケとタバサの狙いに気付き、急いで氷柱を発射しようとするペットショップ!
だが、回避行動を取ろうとした時間のロスが、タバサとキュルケをルイズの部屋に入り込ませる隙となってしまった

部屋に侵入者を入り込ませてしまった!その事実に激するペットショップ
「キョオオ―――z______ン!!!」
聞く者を振るわせる声を一発かました後、彼もルイズの部屋に飛びこんで行った


「ルイズゥゥ!!!!!」
部屋に入った瞬間、怒声を張り上げるキュルケ
ルイズの使い魔に殺されかけたのだから、その行為も自然な物だ。
しかしルイズを見付けたと同時にキュルケは腰砕けになりかけた
何故か?それは

「zzzzzzzz」
何とも幸せそうな顔でルイズが寝ているのである!
部屋の直ぐ側であんな爆音が響き、ドアを物凄い勢いで吹っ飛ばされたのにまだ寝ている!
(こいつはグレートね)
と、キュルケは思考停止しかけたが
「キュルケ。鳥が来る」
タバサの少々焦ったような声で通常の思考を取り戻す
キュルケが振り返ると、あの鳥が部屋に入ってくるのが見えた
だが、無防備なマスターのすぐ近くに居るのだから、あの使い魔も無茶は出来ないだろうと予測するキュルケ
その思惑通りに、使い魔はこっちを睨むだけで手出しをして来ない
だけどまだ安心は出来ない
「あたしはルイズを起こすから、タバサ見張っててくれない?」
鳥の注意を相棒に任せると
ポカッ!
使い魔に殺されかけた分のお礼も込めて、ルイズの頭を杖で強めに殴った

突然魔法の才能が覚醒した私は、ライバルのキュルケと決闘して完膚なきまでに叩きのめした
「うーん」
土下座するような体勢で気絶しているキュルケ、私はそんなキュルケの頭に足を乗せて高笑いをしていた
幸せの絶頂―――ボカッ!

「あ痛ッ!」
突然の痛みに意識が覚醒した。頭を押さえて悶える私
涙が出てきそうな目を開けると前方に笑っているキュルケが見えた
「あら?良い音がするじゃない、頭の中身も『ゼロ』じゃなくて良かったわね」
あまりにもあんまりな言い草に、怒りが許容量を突破する。『プッツン』と言うやつだ
「あ、あああああ、あんたッ!何で勝手に入ってきたのよ!それに人の頭を殴るなんて何考えてるの!?」
怒りで震える口を何とか動かしながら叫ぶ。

すると、キュルケはあからさまに呆れてるような溜息を突いた。激しくムカツクわね
「授業に出てこないアンタを起こすよう先生に頼まれたのよ」
あれ、私寝坊しちゃったのか・・・・・・だけど殴って起こすのは無いわよ!常識的に考えて!
と抗議しようと思ったが、周囲を見回していた私は気付いた、ドアが粉々になってるッ!?
「いきなりアンタの使い魔に襲われちゃってね、正当防衛ってやつよ」
私の視線から気付いたのか、尊大に言い放つキュルケ。私は口をパクパクさせる事しか出来ない
「それから廊下の窓や床もアンタの使い魔が滅茶苦茶にしちゃったから、後でちゃんと弁償しときなさいよ?」
使い魔の責任は主人の責任よ~、等と言いながらタバサを連れて部屋から出て行った・・・・・・わぁ、私凄く腹立ってる!
怒りに突き動かされるまま、私は近付いて来たペットショップに叫んだ
「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」

マスターと何か話をしていた侵入者共は出て行った
追い駆けて『始末』するより先に。マスターの安全を確認するため私は近寄った
すると、いきなり
「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」
マスターの怒声。マスターは怒っている。何故だ?
「いきなりキュルケとタバサを襲うなんて何考えてんの!?それに廊下やドアを滅茶苦茶にするなんて正気!?」
どうやら私はマスターの友人を攻撃してしまったようだ。なるほどマスターが怒―――――(違う)(マスターなら)(・IO様なら)
「・・・・・・・・・ョップ?ペットショップ聞いてんの?」
目の前にはマスターの顔――何処と無く不安そうな顔で私を見ている

「まあ、いいわ。罰としてご飯抜くんだから、ちゃんと反省しなさいよ」
先程の思考が何なのかはもう思い出せない、無理に思い出そうとしても思考の一部に靄が掛かったような感じがして判別できない
―――――とても、とても重要な事だったような気がする、私の存在する意義に関わる程
「ペットショップ」
私は考え込んでいたが、マスターの声で我を取り戻した
寝巻きから制服に着替えたマスターが手を振る。「着いて来い」と言っているのだろう。
私はマスターの元に飛んでいった


廊下の惨状を目にしたルイズが大きな溜息を突き
弁償として割と少なくない額の金を払う事となったのは関係無い蛇足である

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