アルヴィーズの食堂。一日の勤めを終えた貴族たちが会話を楽しみ和やかな雰囲気で夕食を取る最中
ルイズは唇を尖らせ、不満気な表情で前の席に座る者を見つめていた。
「それで『土くれ』のフーケって盗賊なんだけど…」
「貴族の家ばかり狙うなんて大胆ね。怖くないのかしら?」
「フーケもメイジよ。たぶん没落した貴族ね」
ルイズはトリッシュと楽しげに会話をするモンモランシーを見て嫉妬していた。
苛立ちを紛らわそうとサイトを蹴ろうと思ったが、主人の命令を聞かないダメな使い魔を躾けようと食事抜きで
部屋で留守番させていた事を思い出して尚更苛立った。
(なによ!朝だって!お昼だって!色々喋ってくれたのにっ!!)
ルイズはトリッシュに構って欲しくて何とか話しかけようとしているのだが、学院に入学してから一年が経つも
友人らしい者は一人も出来ず、周りには魔法が使えない事をからかってくる者か陰口を叩く者しか居なかった。
そんな者たちに寂しいからと言って自分から話しかける事などルイズのプライドが許さない。
その結果、同年代の子と何を話せばいいのか解らないのだが、それでも何とかして友人関係を築きたい、
落ちこぼれの自分を馬鹿にしないトリッシュと仲良くなりたいと思っていた。
(う~なにかキッカケがあればいいのよ…それなら私だって…)
何か話すキッカケが無いかと色々と考え、ある事に気が付いた。
(そうだ!すっかり忘れてたわ)
包帯の巻かれた自分の手を見て、朝も昼もトリッシュは手を怪我した自分を気遣って食事を手伝ってくれた事を
思い出してルイズはニンマリと笑い、ナイフとフォークを使ってメインディッシュに取り掛かる。
既に傷は治っているのだが、構って貰えたのが嬉しかったのでルイズは包帯をそのままにしておいたのだ。
(うふふ。これに気付くなんて私って天才じゃないかしら)
頭の中でトリッシュにあ~んされる光景を浮かべながら牛ヒレのステーキにナイフを突き刺した。
ルイズは唇を尖らせ、不満気な表情で前の席に座る者を見つめていた。
「それで『土くれ』のフーケって盗賊なんだけど…」
「貴族の家ばかり狙うなんて大胆ね。怖くないのかしら?」
「フーケもメイジよ。たぶん没落した貴族ね」
ルイズはトリッシュと楽しげに会話をするモンモランシーを見て嫉妬していた。
苛立ちを紛らわそうとサイトを蹴ろうと思ったが、主人の命令を聞かないダメな使い魔を躾けようと食事抜きで
部屋で留守番させていた事を思い出して尚更苛立った。
(なによ!朝だって!お昼だって!色々喋ってくれたのにっ!!)
ルイズはトリッシュに構って欲しくて何とか話しかけようとしているのだが、学院に入学してから一年が経つも
友人らしい者は一人も出来ず、周りには魔法が使えない事をからかってくる者か陰口を叩く者しか居なかった。
そんな者たちに寂しいからと言って自分から話しかける事などルイズのプライドが許さない。
その結果、同年代の子と何を話せばいいのか解らないのだが、それでも何とかして友人関係を築きたい、
落ちこぼれの自分を馬鹿にしないトリッシュと仲良くなりたいと思っていた。
(う~なにかキッカケがあればいいのよ…それなら私だって…)
何か話すキッカケが無いかと色々と考え、ある事に気が付いた。
(そうだ!すっかり忘れてたわ)
包帯の巻かれた自分の手を見て、朝も昼もトリッシュは手を怪我した自分を気遣って食事を手伝ってくれた事を
思い出してルイズはニンマリと笑い、ナイフとフォークを使ってメインディッシュに取り掛かる。
既に傷は治っているのだが、構って貰えたのが嬉しかったのでルイズは包帯をそのままにしておいたのだ。
(うふふ。これに気付くなんて私って天才じゃないかしら)
頭の中でトリッシュにあ~んされる光景を浮かべながら牛ヒレのステーキにナイフを突き刺した。
カチャカチャと音を立てて肉を切る。トリッシュは気付いていない。
今度はぎこちなくナイフとフォークを操ってみる。トリッシュは気付かない。
両方やってみる。やはり気付かない。
(音が小さかったかしら?)
ガチャガチャと音を鳴らしながら肉を切る。気付いてくれない。
ナイフとフォークを頭の上で鳴らしながらチラチラ見てみる。全然気付いてくれない。
肉におもいっきりフォークを突き刺す。ステーキを載せた皿が割れて漸くこちらを見てくれた。
「ちょっとルイズうるさいわよ!食事くらい静かにしたらどうなの!」
トリッシュじゃなくてモンモランシーが反応した。
「うるさいわね!私は手を怪我してるのよ!お皿くらい割れるわ!!」
モンモランシーに怒鳴り返してルイズはトリッシュをチラチラ見る。何故か首を傾げていた。
「怪我、もう治ったんじゃないの?」
(なっ!なんで知ってるのよ!?)
動揺するルイズを見てモンモランシーがニヤニヤ笑う。
「彼女の傷を治したときに見といたのよ。ザンネンね~」
「なな、なんで余計なことしたのよ!べっ別に甘えたいなんて思ってないんだから!」
「あら?甘えたかったの?胸と同じで子供みたいじゃない」
赤面して混乱の極みに達したルイズが喚きたてるのを見て、トリッシュは自分が子供の頃を思い出した。
母親が身を粉にして働いていたとき、トリッシュはそんな母親に構って欲しくて悪さばかりしていたのだが、
それでも構ってくれない母親に自分が愛されていないのだと思い始めて、段々と悪さが非行までエスカレートして、
最後には同級生に麻薬を売り付けていたゴロツキの顔をナイフで刺して警察に捕まった。
捕まった自分を引取りに来た母に泣きながら頬を叩かれて、それで初めて自分が愛されていた事を知ったのだ。
自分より年上と知らないトリッシュはルイズがまだまだ甘えたい年頃と思い、その願いを叶えてあげることにした。
今度はぎこちなくナイフとフォークを操ってみる。トリッシュは気付かない。
両方やってみる。やはり気付かない。
(音が小さかったかしら?)
ガチャガチャと音を鳴らしながら肉を切る。気付いてくれない。
ナイフとフォークを頭の上で鳴らしながらチラチラ見てみる。全然気付いてくれない。
肉におもいっきりフォークを突き刺す。ステーキを載せた皿が割れて漸くこちらを見てくれた。
「ちょっとルイズうるさいわよ!食事くらい静かにしたらどうなの!」
トリッシュじゃなくてモンモランシーが反応した。
「うるさいわね!私は手を怪我してるのよ!お皿くらい割れるわ!!」
モンモランシーに怒鳴り返してルイズはトリッシュをチラチラ見る。何故か首を傾げていた。
「怪我、もう治ったんじゃないの?」
(なっ!なんで知ってるのよ!?)
動揺するルイズを見てモンモランシーがニヤニヤ笑う。
「彼女の傷を治したときに見といたのよ。ザンネンね~」
「なな、なんで余計なことしたのよ!べっ別に甘えたいなんて思ってないんだから!」
「あら?甘えたかったの?胸と同じで子供みたいじゃない」
赤面して混乱の極みに達したルイズが喚きたてるのを見て、トリッシュは自分が子供の頃を思い出した。
母親が身を粉にして働いていたとき、トリッシュはそんな母親に構って欲しくて悪さばかりしていたのだが、
それでも構ってくれない母親に自分が愛されていないのだと思い始めて、段々と悪さが非行までエスカレートして、
最後には同級生に麻薬を売り付けていたゴロツキの顔をナイフで刺して警察に捕まった。
捕まった自分を引取りに来た母に泣きながら頬を叩かれて、それで初めて自分が愛されていた事を知ったのだ。
自分より年上と知らないトリッシュはルイズがまだまだ甘えたい年頃と思い、その願いを叶えてあげることにした。
「私のは手を付けてないから良いわよね?」
「良いの?ホントに?!」
そう言ってトリッシュが肉を切り分け始めたのを見て、漸く構ってもらえるとルイズの顔が明るくなる。
しかし、モンモランシーのニヤついた顔を見てプライドを刺激されたルイズはそれを拒否した。
「べっ別に頼んでないんだから!勝手な事しないで!」
「はい、あ~ん」
フォークに刺さった肉がルイズの口元に運ばれる。先程まで妄想していた事が現実に起こっているのだが、
母親譲りの気位の高さが災いして逡巡する。
「どうしたのよ?食べないならいいけど」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!食べないなんて言ってないわ!」
「じゃあ、あ~ん」
「アアア、アンタがどうしてもって言うから食べるんだからね!」
引き下げられるフォークを見て、結局誘惑に勝てなかったルイズは何故か睨んでいるモンモランシーの前で
赤面しながらフォークに齧り付いた。
「見てられないわ…私、部屋に戻るから」
そのやり取りに呆れたモンモランシーが食堂から立ち去るが、ご機嫌なルイズはそれに気付かない。
「そう言えばマリコルヌはどうしたの?」
「ああ、昼間のことで学院長に呼び出し喰らったわ」
「なに?アイツ何かやったの?」
うるさいマリコルヌが居なくて清々していたルイズであったが、話題がないので共通項であるマリコルヌの事を
何となく聞いてみたが、トリッシュが落ち着いた様子でとんでもない事を口にして聞かなければ良かったと後悔した
「大変じゃないの!どうするのよ?!」
「ヤバイんだったらこんな所で食事してないわ。きっと大丈夫よ」
突然の事で驚いたが、考えてみれば昼間起こった事ならとっくに処分が下されている事だろう。
それに話しによればミス・ロングビルが何とかすると言っていたのだ。何とかなったんだろう。
そう思い込むようにして不安を打ち消し、ルイズはトリッシュと楽しく食事を続けた
「良いの?ホントに?!」
そう言ってトリッシュが肉を切り分け始めたのを見て、漸く構ってもらえるとルイズの顔が明るくなる。
しかし、モンモランシーのニヤついた顔を見てプライドを刺激されたルイズはそれを拒否した。
「べっ別に頼んでないんだから!勝手な事しないで!」
「はい、あ~ん」
フォークに刺さった肉がルイズの口元に運ばれる。先程まで妄想していた事が現実に起こっているのだが、
母親譲りの気位の高さが災いして逡巡する。
「どうしたのよ?食べないならいいけど」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!食べないなんて言ってないわ!」
「じゃあ、あ~ん」
「アアア、アンタがどうしてもって言うから食べるんだからね!」
引き下げられるフォークを見て、結局誘惑に勝てなかったルイズは何故か睨んでいるモンモランシーの前で
赤面しながらフォークに齧り付いた。
「見てられないわ…私、部屋に戻るから」
そのやり取りに呆れたモンモランシーが食堂から立ち去るが、ご機嫌なルイズはそれに気付かない。
「そう言えばマリコルヌはどうしたの?」
「ああ、昼間のことで学院長に呼び出し喰らったわ」
「なに?アイツ何かやったの?」
うるさいマリコルヌが居なくて清々していたルイズであったが、話題がないので共通項であるマリコルヌの事を
何となく聞いてみたが、トリッシュが落ち着いた様子でとんでもない事を口にして聞かなければ良かったと後悔した
「大変じゃないの!どうするのよ?!」
「ヤバイんだったらこんな所で食事してないわ。きっと大丈夫よ」
突然の事で驚いたが、考えてみれば昼間起こった事ならとっくに処分が下されている事だろう。
それに話しによればミス・ロングビルが何とかすると言っていたのだ。何とかなったんだろう。
そう思い込むようにして不安を打ち消し、ルイズはトリッシュと楽しく食事を続けた
ルイズがトリッシュと楽しく食事を取っているその様子をキュルケが遠くの席から見守っていた。
「ふう~ん。ルイズにも友達ができたみたいね」
この一年間、ルイズが一人で食事を取っているのをキュルケは不憫に思っていたが、プライドが邪魔をして食事に
誘えないでいた。もっとも誘ってもルイズは着いてこなかっただろうが。
「あ~ん」
横からタバサが大きめに切られた牛ヒレのステーキをキュルケに差し出していた。
「はいはい、二度も引っ掛からないから」
タバサの左手に隠されたはしばみ草が刺さったフォークを取り上げて皿に置くと、代わりにワイングラスを手に取る。
「好き嫌いは良くない」
「ダメダメ。嫌いなものは食べない主義なの」
親友の忠告を無視してキュルケはワインを口に含み、舌で転がすように味わって突然顔が歪んだ。
「フフ…はしばみ草の凝縮汁は……旨かろう…」
キュルケが盛大に吐き出し、アルヴィーズの食堂に虹が描かれた。
「ふう~ん。ルイズにも友達ができたみたいね」
この一年間、ルイズが一人で食事を取っているのをキュルケは不憫に思っていたが、プライドが邪魔をして食事に
誘えないでいた。もっとも誘ってもルイズは着いてこなかっただろうが。
「あ~ん」
横からタバサが大きめに切られた牛ヒレのステーキをキュルケに差し出していた。
「はいはい、二度も引っ掛からないから」
タバサの左手に隠されたはしばみ草が刺さったフォークを取り上げて皿に置くと、代わりにワイングラスを手に取る。
「好き嫌いは良くない」
「ダメダメ。嫌いなものは食べない主義なの」
親友の忠告を無視してキュルケはワインを口に含み、舌で転がすように味わって突然顔が歪んだ。
「フフ…はしばみ草の凝縮汁は……旨かろう…」
キュルケが盛大に吐き出し、アルヴィーズの食堂に虹が描かれた。