ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-16

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「ハァ………」
自分の部屋で、静かにため息をつくキュルケ。
彼女は今悩んでいた。
それというのも、
「平民ならまだしも、人間じゃないなんてねぇ…」
彼女の新しい恋の相手…の予定だった、ゼロのルイズの使い魔が、実は人間では
なかったのである。
「それにしても…凄かったわね、あれ」
ドットとはいえ、ギーシュの作り出したゴーレムを、苦も無く一蹴する様を思い出す。
ゴーレムを溶かし、イカズチを発し、傷を治し、さらには姿まで変えるその力…
「先住魔法?でもディティクトマジックでの反応は無かったし…」
ルイズが彼を呼び出したとき、念のため魔力の反応を調べていたのだ。
彼女の家と、ルイズの家は犬猿の仲であり、彼女自身何かとルイズにちょっかいを
出している身としては、使い魔の質で負けるわけにはいかないのである。
「東方の亜人とか言ってたけど」
決闘の後、2人を連れて行ったミス・ロングビルに、何人かの生徒が彼は何者かと
尋ね、返ってきた答えがそれであった。
もっとも、その答えを聞く前に様々な噂が飛び交い、もはやその言葉を素直に信じる
生徒はあまりおらず。さらに、キュルケ以外にも、彼に魔力の反応が無い事に気付き、
それを騒ぎ立てる者までいて、更なる噂が生まれることになった。


曰く、ラ・ヴァリエール家が作り出した最終兵器
曰く、エルフが人類抹殺の為に生み出した魔人
曰く、星の海を越えて、この世界を侵略しに来た宇宙生物
曰く、地獄から蘇った悪魔
等々

どれもこれも邪悪っぽいのは、決闘相手のギーシュが死にそうな目にあったから。
だけでなく、見た目も無関係ではないだろう。
「ま、何であれ尋常じゃないわよね。
 はぁ、ルイズの悔しがる顔が見れないのは残念だけど、諦めるしかないか…
 にしても、あの時ルイズが来なかったらどうなってたのかしら?」
彼を誘惑しようと、自分の使い魔を迎えに行かせた事を思い出す。
なぜか彼の変わりにルイズが来て、その後喧嘩になってうやむやになったが、
もしあの時彼が来ていたらどうなったのだろう?


「ふふふ、いらっしゃい」
育郎は素直に従い、キュルケがその身を預けるベッドに腰かける。
「あなたは、アタシをはしたない女と思うでしょうね」
大きくため息をついて、悩ましげに首を振るキュルケに、育郎は口を開く。
「いいや」
その言葉を受け、嬉しそうに育郎に身を摺り寄せるキュルケ。
「解ってくれるの!そう、しかたないわよね!恋は突然なんですもの。
 突然で、そして一気に燃え上がるの…
 だめ…やっぱりアタシってば、みっともない女だわ」
「そんなことは無いよ」
そう言って、育郎はキュルケのアゴに手を沿える。
「ああ…」
目をつぶり、唇が重なる感触を待ち受けるキュルケの耳に、育郎の声が入ってくる。
「君は…愚かな女だよ!」
「え!?」
驚いて目を開けると、異形の姿に変わっていく育郎の姿が目に入った。
「え、ちょっと何よこれ?やぁ…ッ!」
異形から次々に触手が生え、キュルケの肢体に絡み付いていく。
「だ、だれかたすけングッ!」
触手がキュルケの口の中に入りこみ、助けを呼ぶ声を封じ込める。
「怖がる事は無いよ。君が望む事をしてあげるだけさ…」
その言葉と共に触手たちが一斉に…


じゅるり
「お、惜しいことを…じゃなくて、危なかったわ!
 一歩間違えてたら、そんな素晴らしい…もとい、恐ろしい事に!
 待って、じゃいつも同じ部屋で寝てるルイズは!?」

あれほどの力を持つ存在が、本当に『ゼロのルイズ』の使い魔なのか?
夕食時、食堂に使い魔を連れてやってきたルイズは、彼に自分の食事を分け与えていた。
さらにその後、厨房に明日からは自分と同じものを、と頼んでいる姿も目撃されている。

正体がばれたので、わざわざ平民扱いさせておく必要が無くなった。
つまり本当の主人は…

噂の中にはその類のものも含まれていた。
「そ、それじゃまさかあの子はもう!」


「ご、ご主人様…」
下着姿で立つルイズが、ベッドに腰掛ける育郎を震えながら見る。
「ルイズ…僕は君に、一日に君が『ご主人様』と主張するのを何回許したかな?」
「は、はい…5回です…」
やれやれと首を振って、育郎がルイズに近づく。
「今はまだ君が主人であると思わせたほうが都合が良い…
 けど、だからと言って気楽にそう言われるのは不快だからね。
 それで…君は今日何回自分のことを『ご主人様』と言った?」
「9回…です」
「7回だ…」
冷ややかに告げ、育郎はルイズの顔に手を伸ばし、その柔らかな唇に指を添える。
「いけない子だ…そんなに『おしおき』が欲しいのかい?」
「あぁ…」
震えているのは恐れているからではない、期待しているのだ。
「まったく、これじゃあ『おしおき』にならないな…今日は止めにしよう」
「そ、そんな!」
育郎の足しがみつき、必死になって懇願するルイズ。
「お、お願いしますご主人様!こ、この哀れな犬にどうかお慈悲を!」
「しょうがないな…」
「ありがとうございます…ぁ!」
触手が現れ、ルイズの幼い身体に…


じゅるり
「そ、そんな!?ルイズがそんなうらやましい事…もとい酷い事をされていたなんて!」
自分の妄想に、身体をわななかせるキュルケ。
「こうなったら…私が何とかしないと!」
そう叫んで自分の部屋を飛び出し、隣のルイズの部屋の扉の前に立つ。
「こんな事に、他人を巻き込むわけにはいかないわよね…わ、私一人じゃひょっとして
 不覚を取るかもしれないけど、それはしょうがないわよね?
 そ、その結果色々と蹂躙されちゃったりしちゃったりしても、仕方ないわよね?
 わ、私も精一杯やったんだけど、卑劣な罠にかかっちゃったりするんだから、
 ホントにもう…不可抗力って奴よね!?」
じゅるり
「ハァハァ…そ、それじゃあ行くわよ!」
喜色満面で扉を開けるキュルケであった。

「ああああああぁ…………ぁああああああ」
「この位置までは大丈夫と」
育郎がデルフの鞘に印をつける。
「いやーすまねぇな。相棒」
「ねえ、さっきから何やってるの?」
不思議そうな顔をして、育郎の手元を覗き込むルイズ。
「いや、デルフがなるべく自分を持ち歩いてくれって言うから」
「今日みたいな事があったとき、俺が居た方がいいだろ?」
「それとさっきのに、何が関係あるのよ…」
鞘を指差し、育郎がルイズの疑問に答える。
「いや、危ないから鞘に入れておかなきゃいけないけど、それじゃデルフが
 喋れないから、何処まで鞘に入れたら喋れなくなるかを調べてたんだ。
 ここから切り取って、ちょっと手を加えて落ちないように」
「いいじゃない、別に。メーンとか言わなくなるし」
「娘っ子も結構拘るな…というか俺一回しか『メーン』って言ってねえぞ」
「2回目ね、3度目は無いから覚悟しときなさい。
 って、道具も無いのにどうやってそんな工作するのよ?」

リスキニハーデン・セイバーとメルテッディン・パルムを組み合わせた
まったく新しい工作術で

「まあ、いいけど…ってキュルケ!なに人の部屋に勝手に入って来てるのよ!?」
「キュルケさん?」
二人が扉を開けたままの姿で立つつくすキュルケを見る。
「あ………」
「「あ?」」
「貴方達にはガッカリよ!!!」

「きゅるきゅる!(駄目だこりゃ!)」
部屋に残されたフレイムが、そう呟いたとかなんとか。


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