ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀の使い魔-19

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王女一行が校門前に到着し馬車からアンエリッタ姫が降りてくると、門の前に並んでいた生徒から歓声があがった。凄い人気である。
最も、ここにいる生徒はメイジであるにしてもあくまで子供である。親が良からぬ事を考えているにしてもここの生徒の世代ならいくらか洗脳が効くだろう。学校とは学びの場でありつつも、そういう場であることもある。
だが、それでも興味無さそうにしているのも何人かいた。キュルケやタバサといった留学生達、そして生徒ではないポルナレフである。
「あれが王女か。凄い人気みたいだが、実際はどうなんだろうな。」
「どういう意味?」
「あの笑顔が嘘臭いという事だ。何と言うか、人の顔を見て作られた表情という感じがする。」
「なんでそう思うの?」
「30年も生きてきたらそれぐらい分かるさ。」
ふーん、とキュルケが頷く。だが、ポルナレフは自分の思ったことが単なる杞憂であることを祈った。もし本当にそうなら、たとえ尊敬していないにしても、あまりにも不憫に思えたからだ。
そういう環境で育てられた人間はよっぽどの転機が無い限り堕落していく。そうやって堕落しきった人間は望んでもいないのに将来的に非難されるのだ。
(もっとも、異邦人の自分にはどうしようもないことだが、な。)
そう思うと列の方に目をやった。ギーシュや一部の男子が熱狂的にアピールしていたり、女子は女子で王女の美貌を羨ましがっていたりした。
だが、自分の主人であるルイズはその中でポケッと頬を赤く染めながら皆とは違う方を見ていた。その視線を追うと隊長らしき一人の貴族を見ているのが分かった。
見事な羽帽子、そして髭。正にダンディにしてどことなく繊細な感じを持つ、絵に書いたような美丈夫である。
(…一目惚れか?歳は離れているみたいだが、青春しているな。)
ポルナレフはルイズの様子を見てそう思った。

夜になって部屋に戻ってもルイズはまだポケーッとしていた。さすがに不安になってきた。
「ルイズ、一目惚れした気持ちは分かるがいい加減しっかりしたらどうだ?貴族ならまた出会う事もあるだろう?」
それでもまだポケーとしていた。今は駄目だが、いくらなんでも明日になったら戻っているだろう、と考えるとさっさと寝ようとしたその時、部屋のドアがノックされた。
不器用に初めに長く二回、次に短く三回…
ルイズが動く気配がしないので仕方なくドアを開けた。
ドアの前にいたのは黒い頭巾を被り、黒いマントを身に纏った一人の女

バタン。

危ない危ない今の女は多分人違いだろう。きっと隣のキュルケに用があるに違いない。こんな時間にルイズに会いに来るほど酔狂な奴なんかいるまい。だいたい俺の周りに来る女は災厄を持ってくる。
「え、ちょっと今の誰!?」
小声でそう言うと先程と同じ調子でドアを叩いてきた。居留守を決め込んで無視した。
「ルイズ!?いるんでしょ?ルイズ・フランソワーズ!」
無視すること約15分。ルイズがその小さな声にようやきはっとしてドアに近付き開けると、外からさっき見た女が入って来た。いくらか怒っているらしく、ルーンを唱えると些か荒っぽい動作で杖を振った。
「……ディティクトマジック?」
ルイズが尋ねるとコクリと頷き、
「どこに目や耳があるかわかりませんもの。」
と言って頭巾を外した。頭巾の中から現れた顔は端正に整っていたが、その両眼はまるで猛禽類のように吊り上がりこっちを睨み付けていた。
目を除けば昼間見た気もするが、誰だったかな。
「ひ、姫殿下!」
あのルイズが床にひざまずいた。ああ、あの王女様か。あんな顔してたのにえらい変わりようだな。

「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ。」
王女様は感極まった表情をするとルイズを抱きしめた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ…」
…やばいな…王女様、ルイズを抱きしめてるけど目が明らかに笑ってない。まだにこっちを睨んでる…
ジョースターさん…また、あれをお借りします。
「二人は何故かは知らんが親しいようだな。二人だけで話し合いたいこともあるだろうし、邪魔者はしばらく外に出ていよう。」
と言って紳士らしさを装い部屋の中から逃げた。後ろから来る視線が痛いが気にしない。


部屋から出るとすぐにギーシュと遭遇した。
「夜中の女子寮で何やっているんだ?貴様は。」
「い、いやモンモランシーに会いに行こうと思ってさ…」
「ここはルイズの部屋だが…貴様、さては二股に飽き足らず…!」
「ち、違う!」
ギーシュが慌てて否定する。
「本当のことを言うとだね、彼女の部屋に黒いマントと頭巾の人が入ってきたろう?横顔をちらっと見たんだけど、姫殿下らしかったから気になって…」
ギーシュの言い訳が終わるのを待ってからギーシュと別れた。
15分も待ち続けるとはこいつ、無意識ではあるがストーカーだな。このことを種にしたらこいつもギトーのような金づるに出来そうだ。

懐かしいヴェストリの広場に来た。ベンチに腰掛けるが夜中なだけあって誰もいなかった。
「友達…か。」
ルイズと姫を見て十年以上前、エジプトへ旅した時に得た仲間達…真に心の内を伝え合うことの出来た、掛け替えの無い親友達を思い出した。
帰ってこないのが二人と一匹、そして連絡を絶たれたのが二人。
いまや自分も帰れない仲間に入った。
若き希望の為に命を賭し…そして戦いに費やした人生は戦いの中で終わった。だが、もう戦わなくてすむとなるとホッとした所があった。心の安らぐことがほとんどなかったからだろう。
(もう闘いはいらない…心落ち着くような平和な生活がしたい…)
肉体が戻った今、心からそう願っている。長年会えなかった友人達にも会いたい。だがその願いは…
空を見るとそこには輝く月が二つ。別世界にいるという何よりの証明。それを見て涙を流した。
ここは別世界なのだ。自分の故郷も無い、知り合いもいない、孤独な世界…もう帰れないかもしれないと思うとますます淋しくなった。

「ミスタ・ポルナレフ…。」
不意に声をかけられた。顔を上げると素晴らしいハゲ頭をしたコルベールがいた。
「隣に座らせていただいてもよろしいですかな?」
「…」
ポルナレフは無言で頷いた。よいしょ、とコルベールが隣に座った。親父二人、あまりにも不愉快な光景である。
「みっともない所を見られたな…」
ポルナレフが切り出した。
「いやいや、誰でも泣きたいときはありますし、泣きたい時は泣くべきですぞ。」
「…そうか?」「そうですぞ」
ポルナレフとコルベールは笑いあった。親父同士伝わるものがあるのだろう。
「しかしこんな夜更けにどうなされた?」
「月が綺麗だったから散歩したくなってな…」
ポルナレフは嘘をついた。ルイズの部屋に王女がお忍びで来ているからとは言えないからである。
「私もですな。」
コルベールが空を見上げた。先程のポルナレフと同様、物憂げな表情をしている。ポルナレフはそれを見てきっと思い出したく無い過去があるのだろう、と思った。だから、それには触れないように返事をすることにした。
「へえ、意外だな。貴方がそんなにロマンチストだなんて…」
「はは…私のような者でもたまには月を見て散歩したくなる日もあります。」
「そういうものかな?」「そういうものです。」
ははは、と二人はまた笑いあった。笑い終わった後、しばらく二人は何も喋らずに月を眺めていた。だが、二人の間には友情という絆が確かに芽生えていた。

「ただいま。」
ポルナレフはコルベールと別れてルイズの部屋に帰って来た。
「遅かったわね。」
ルイズが多少嬉々とした様子で迎える。
「姫様は帰ったのか?」
「ええ。」「…ルイズ、何があった?」
ルイズの機嫌がやけにいいのが気にかかり、ポルナレフが尋ねた。
「姫様からアルビオンの皇太子様の持つ手紙を返して貰ってこいと言われたの。姫様から直々だし、すごい名誉よ。だから明日、早朝からラ・ロシェールへ行くわよ。分かった?」
そう言うとルイズは明日が待ち切れなさそうに布団を被った。それと対称的にポルナレフがまた女難か、と嘆いたのは言うまでもない…。


To Be Continued...

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