ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀の使い魔-18

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匿名ユーザー

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夢を見ていた。

故郷ラ・ヴァリエール家の領地内にある屋敷の、誰も寄り付かない中庭の池にある『秘密の場所』。そこはルイズが唯一安心出来る場所。
幼い頃、叱られるとよくここに来て、たった一艘浮かべられている小舟の中に隠れた。
夢の中の幼い私もその小舟の中に隠れていた。
しばらくするとマントを羽織り、つばの広い帽子を被った『彼』がやってきた。
「ルイズ、泣いているのかい?」
『彼』は夢の中の自分に優しく声をかけた。
「可哀相に…また怒られたんだね…。」
『彼』とは領地が近くにあったことから晩餐会を共にしたこともあり、また父と彼の交わした約束もあって、会う度によく会話したものだ。
幼い頃も、そして会わなくなった今も紳士的だった『彼』は私の憧れだ。
「僕の可愛いルイズ。ほら、僕の手をおとり。もうじき晩餐会が始まるよ。
……安心して。お父上には、僕から取り直してあげる。」
…今思えばかなり陳腐で芝居がかった言葉である。多分今同じ事言われたら「キモい」と言ってしまうだろう。
それでも夢の中の幼い私は立ち上がると、差し出された彼の手を握ろうとした。が、その時、いきなり足元がぐらついた。
「!?」
私は思わずしゃがみ込んだ。何故ぐらついたのか分からなかった。舟の揺れが収まってから立とうとしたが、立てなかった。違う、身体が怠くて動けないのだ。だんだんと睡魔が襲って来た。
私は助けを求めるように彼を見たが、いつの間にか手はひっこめられ、彼は彼じゃ無くなっていた。つばの広い帽子をしていたが、マントが無くなり、全身が真っ黒だった。しかし、何故かそれをどこかで見た気がし、同時に頭が淋しい気もした。
結局夢の中の私は眠気に耐え切れず、舟の中で眠り込んでしまった。


「はう!」
目を覚ますと学生寮の自分の部屋にいた。
「夢か…って何で夢の中でまで寝るのよ。」
私は自分の頭を触った。…よし、髪はある。
「やっと起きたか。」
ポルナレフがベッドのすぐ側に立っていた。洗濯から帰ったばかりらしく(どこでやってるかは知らないが)籠を持っていた。
「…なんか嫌な夢見たわ。いきなり憧れの人が帽子を被った真っ黒い人影みた…「それ以上言うなッ!」!?」
ポルナレフはそう叫ぶと籠を取り落とし、その場にうずくまった。また何かのトラウマに触れたのだろうか?それにしてもこいつってトラウマが無駄に多いわね。若い頃何やってたのかしら?
「言わないでくれ…あそこはああするしかなかったんだ。さもなければやつに、ディアボロに矢を…」
もうなんだかよく分からない。完全に頭の中がどっかにトリップしているらしい。

「ほら立ちなさい。もう言わないから。誰も責めてなんかないわよ。早く朝ご飯食べにいきましょ?」
ポルナレフは泣きじゃくりながら頷くと私の後についてきた。この姿をあのシエスタとか言うメイドやキュルケが見たらどう反応するだろうとか考えつつ外に出るとほぼ同時にキュルケが部屋から出て来た。
「あら、おはようダーリン。」
とだけ言うとキュルケは私を無視してポルナレフに抱きつこうとした。いつものようにポルナレフは避けると私を指差した。
「なんだ、いたの。いろいろ小さくて全然気付かなかったわ。」
「ちょい待ち。いろいろも気になるけど、こいつの情けない顔見て何も…」
振り返ってポルナレフの顔を見ると普段と全く変わらない落ち着いた表情をしていた。
「何も…やっぱりダンディねぇ…」
キュルケが頬を赤らめる。
いや、それより何でもう元に戻ってんの?
「レディに情けない顔など見せられん。」
「私はレディじゃないのかしら?」
私はにっこり微笑みながらポルナレフの股間を蹴り飛ばした。

今日は何となくルイズに着いて行き、授業を受けることにした。股間の痛みも収まってきたし、気分転換にはちょうどいいだろう。
教室のドアを開け入って来た教師は黒い長髪に黒のマントと全体を黒で統一したスネイプもどきの男だった。
「では授業を始める。知っての通り私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。」
疾風ということは風のメイジか。
「さて、最強の系統をご存知かな?ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説に…」
この時点でもう聞く気になれなかった。どうせギトーは「風が最強だァーッ!」と言うだけだろう。
土が金属を作り、火が生活のための火を起こし、風は舟を進ませ、水は治癒に関する。つまり優劣等無いはずだ。あるとしても虚無だけが別格といった所か。
ましてや大人と子供では格差というものがある。それを考慮すればあのギトーがキュルケをみせしめにした所で意味は無い。生徒の不満を呼ぶだけだ。
そこまで考えると寝る体勢に入った。どうせ自分は使い魔の平民だ。起こされることはあるまい。
「…残念ながら試したことは無いが、我が風は『虚無』すら吹き飛ばすだろう。…貴様寝ているなッ!」
右手で顔を隠し、左手を半分開け人差し指だけをピンと伸ばし指差してきた。面倒だな…
「生憎俺は生徒じゃなく使い魔なんでな…」
「だからといって寝る奴がいるかッ私が講義しているのにッ!自覚をもたんかッ!」
少しむかっとした。お前よりは人生経験は豊富だぞ。若造が。
「講義?まさか生徒一人吹っ飛ばして『風は最強なんだ。風のメイジは最強のメイジなんだ!』とか自慢することが講義な訳はあるまいな?そうだったら余りにも大人げ無いぞ。」

タンカを切ってやった。生徒達がどよめく。
「おいおい、あの平民頭大丈夫か?」
「まあ、あの『ゼロ』の使い魔だし。」
「さすが平民!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!そこに痺れない!憧れないィ!」
「大人げないだと…?」
わなわなとギトーが震え出した。そしてどよめいていた生徒達は一気にシンとなり、心配そうに自分とギトーを交互に見た。
「ああ。子供と大人じゃ場数が違うからな。」
ルイズが「やめなさい。殺されるわよ。」と言ってきたが無視する。
「ほう…なるほど、つまり君は自身が痛い目に逢わないと私の言う事が分からないのだね?使い魔君。」
ギトーが杖を構える。多分もう詠唱し始めているだろう。
「貴様も前のギーシュと同族か?やれやれ、反吐がでる…」
立ち上がって机に立て掛けていたデルフリンガーを引き抜き臨戦体勢に入る。トライアングルメイジ相手だ。容赦せずチャリオッツも使ってもかまわないだろう。
ここまで来るとさすがのルイズも「勝手にしなさい。」とそっぽを向いた。

じりじりと距離を詰めていく。相手がまず出す魔法はエア・ハンマーか、あるいはウインド・ブレイクに違いない。
相手の方が射程が広く、シルバー・チャリオッツの剣も風で弾き飛ばされるかも知れない。だがそれを乗り越えるのが闘いの年季というものだ。もうそろそろ相手の射程に入るかな。
「エア・ハンマー!」
ギトーが叫び、身体に空気の塊が直撃する。チャリオッツを使い防御するが剣の先が飛んでしまい自分も風圧に耐え切れず吹っ飛ばされてしまったが、デルフを床に刺しその抵抗で勢いを殺す。そのおかげで壁に激突する前に止まることが出来た。

「ほう、やるじゃあないか。私の風の勢いに剣を刺して耐え切るとはね。」
ギトーが余裕のある声でそう言った。だが、『もう遅い。』

ドスッバタン

ギトーの首筋にチャリオッツの剣が刺さり昏倒した。馬鹿め、剣が折れたときに首筋を狙ってやったのだ。最もスタンドが無い貴様には何も見えなかっただろうがな。
さて、後の処理はルイズに任せようか。
「ルイズ、よくやってくれた。私の失態をカバーしてくれるとはさすが私の主人だ。」
俺は振り向き、うやうやしくそう言った。ルイズが戸惑った様子を見せたが、このまま俺に合わせろと目で合図を送る。
「え?ま、まあね。私にかかればあれぐらいお安い御用よ。」
皆一斉にルイズを見た。まさかゼロのルイズが魔法を!?というような表情である。ルイズもそんな皆の態度に少し嬉しそうだ。


皆から「何をしたのか」と聞かれた時にコルベールが入って来た。
金髪ロールのカツラ、レースや刺繍によって華やかさを演出しているローブという明らかに似合わない、珍妙不可思議で胡散臭い恰好をしている。
「ミスタ・ギトー!授業などやっている場合では…なんと眠っておられるのか!情けない!生徒に居眠りを許さないあなたが自分の授業で居眠りするとは!」
…何を勘違いしたらそうなるの…


「はっ!そんな場合ではありませんぞ!
…おっほん。皆さん、今日の授業は全て中止であります!」
教室から歓声が上がる。そりゃ誰だって授業が無くなったらうれしいだろう。
だが、コルベールはその歓声を押さえる様に両手を振り、言葉を続けた。
「えー、皆さん。本日はトリステイン魔法学院にとって名誉な日です。我が国に咲く一輪の華、アンリエッタ姫が急遽行幸に参られることになりました!」
教室中がどよめく。
「したがって、粗相があってはいけません。急な事ですが、今より全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。各人、正装して門に整列すること」
生徒達は緊張した面持ちで頷いた。
「皆さんが立派な貴族になったこと(この時ポルナレフはギロリとコルベールを睨んだ)を姫殿下にお見せする絶好の機会です。
御覚えがよろしくなるよう、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですな!」
コルベールの言葉に全員が重々しく頷くと学生寮のそれぞれの部屋に戻って行った。私も行こうとするとポルナレフはコルベールに目配せして「コルベールと話がある」と言って中に残った。
今更ミスタ・コルベールと話?と気になって教室のドアに耳を当てて盗み聞きしてみると中で
「このスネイプもどきがァ!てめーをこの事だけで20年は減給になるようにしてやるぜ!」
「ゆ、許して~私は…実演しただけだァーッ」
「トンチキがァ!!
俺はてめーのような長髪野郎がでー嫌いなんだ。だがな、俺達はいい奴なんだ。これから毎週2エキューずつ俺達の所に持ってこい。それから生徒から取り上げた物の半分もだ!」
…二人がかりでギトーからカツアゲしていた…。
後で取り分の半分を脅して上納させようかしら?そんな事を考えながら部屋に向かった。


To Be Continued...

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