ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-9

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匿名ユーザー

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フーケは、気配を感じることが出来なかった。
完全に気配を消されていたからだ。
風の上級メイジなら気づいたかもしれないが、彼女は土。
空気の流れを読むなどとたいそうな事は出来ない。

木の上に、少年はいた。

「よっと」

軽く着地する。フーケは反撃を試みるが、ナランチャは先ほどの3人と一緒に行ってしまったとばかり考えていたので、殆どゴーレムに魔力を注いでしまい、フライか、レビテーションが出来るぐらいの力しか残っていなかったのだ
ナランチャは裏ンチャではない。
純粋な戦士の目で、フーケに肉薄した

「くぅ……私としたことが!こんな罠に……何故分かった!?」

エアロスミスの弾丸を体で受け止めながら、問いかけた

ナランチャが勘付いたのは、当然、自分が「あそこには人が居ない」と言った時のロングビルの反応。
ロングビルが投げ飛ばされた後、エアロスミスのレーダーで観察していると、こちらが戦っている間、ちょろちょろ動いていたのだ。その場からはあまり離れていなかったが、恐らく戦況を見るため、木々の隙間を探していたのだろう。
投げ飛ばされて気絶してないなら、真っ先にこちらへ来ればいいはず。

フーケだと分からせる為の鍵は、あの脆いゴーレムは精神力を全て注ぎ込んではいないことを分かった時。余力を残していることになる。
あとは、ナランチャが一人で廃屋まで行く。
こちとら一人なのだから、ゴーレムを出さないのはおかしい。楽に始末できる状況だから。
なら、出せない状況にあると考えていい。
周りに、ルイズ、キュルケ、タバサがいるから、出せないのではないか――

ただ、これではまだ足りない。
確証を手に入れるため、単純な引っ掛けを作る。
全員まとめて始末できる自信をフーケは持っている。チャンスを待っている。だからこそ、ゴーレムを出した。

そこを、隠れていたナランチャに見られたのだ。あらかじめ、木を倒しておき、フーケの場所からはこちらが見えないようにする
詠唱していたフーケは、そのことに気がつかなかった。ゴーレムとの戦いで倒れたのだろうと思っていた。
詠唱が終わると同時に、声を掛ければ仕上がりだ。

「アンタが、こっちの能力も把握せずに突っ込むマヌケだったからさァ。これで十分だろう?」

把握せずに?
そんなはずは無い、何回も行なわれていた決闘は全て見たし、細かく分析しつくしたはず。
まだ、能力を隠していた?
失態だった。
特別、奇抜でもないアイデアに引っかかってしまった。
それがフーケを追いたて、こんな簡単な挑発に乗せられることとなったのだ

「こいつ!生意気なんだよ!」

ゴーレムをすぐさま呼び戻す。フライで肩に飛び乗る。まだまだ力を残しておいたのは、腐っても彼女がフーケである所以だ
もちろんゴーレムに結構使ったため、精神力は半分もないのだが。
その力で、ゴーレムの足を鉄へ錬金。
この蹴りを喰らえばタダではすまないが、当たらなければどうと言うことはない。

エアロスミスで乱射しつつ、援軍を待つ。

来る方向を予測して、その方向から攻撃がかけやすいように、機銃で穴をあけておく。
案の上、その方向から炎、風、爆発、
無残にもゴーレムの右肩は砕け散る。

「予想通りね」

「計画通り」

「ふんっ、甘く見るからよ!」

ふんぞり返るルイズに、どこから出したか、ハリセンを頭に振りぬくタバサ。
唸り声を上げて痛がるルイズを、キュルケが宥めた。

「う……」

フーケは、追い詰められていた。
トライアングルメイジ2人。謎の能力を持った少年一人。 ……爆発魔一人。
出来るなら時を巻き戻したい気分だ、後悔が後から後から、感情の波となって押し寄せる

エアロスミスは断続的に攻撃を続け、フーケを狙う。
そんなフーケの目に、光が灯る。

「フフフ……まだ、あったよ、逆転の方法。魔力を使わずに……とは行かないようだけどねぇ」

プロである彼女は、追い詰められた状況で、すぐさま逆転の方法を思いついた
そんなことは露知らず。
4人は猛攻撃を続け、ゴーレムの体がいい具合に弾けて行く

「あとッ、一押し!タバサぁッ!」

「分かってる」

ウィンディ・アイシクルを放とうと、詠唱を始めて、解放。
あっという間に氷柱が出来上がり、それはゴーレムの――
足に、突き刺さった。大きな足を盾にするようにしたのだ
フレイムが、それを溶かす。

「フフ、悪かったねぇ、水で溶けちまうようなやわなゴーレムを作っちまって」

邪悪な笑みが、今度はナランチャの背に冷たいものを走らせた。
ゴーレムが、その足を振った。
当然足首から先が?げる。

すると、ゴーレムの足一個分の泥が4人を巻き込む。おまけに、滑ってスッ転ぶルイズ。
ナランチャは両足を取られ、タバサは片足。キュルケは杖を持っていた腕。
ルイズはスッ転んで全身が泥に埋まっている。

「ぷはっ!」

泥から顔を出した所で、異変に気づいた

「て……『鉄』に……」

錬金、されていた。
そうすれば、もちろん全員の身動きが取れなくなり、呪文を使えるのはタバサのみ。

「後は……」

踏み潰す瞬間に錬金を解除すればいいだけ。
残った精神力を使い、ゴーレムを修復。
鉄にした右足――だが、完全には鉄になりきっては居ない。とはいえ、強度はある。
左足を軸にし、足を上げ、振り下ろす――

「うおおおああぁッ!!」

エアロスミスを目の前に出現させ

「踏ん張れッ!!エアロスミス!」

押し止めようとするが、それでは止まらない。勢いを少しだけ押し止めるに留まる。
少しの干渉が蓄積していき、全身から血が噴出す。
肩の上でフーケが笑っているのに気づく。死ぬものか。
まだ死なない。

「デルフ……根性ーッ!」

ルーンが一層激しく光る。
立ったまま両足を固定された為、踏ん張れないが、足元のおかげで楽々とは押し切られもしない。

「おおっ!?やるじゃねぇか相棒!今だ、振っちまえ!」

ありったけの力が込められた剣は、鉄の足と衝突する。
接触した金属同士の音が聞こえないほど必死だ。

歯を食いしばって、耐える
タバサは援護をしようとするが、近すぎて放てない。
レビテーションを唱える手も考えるが。

鉄に、切れ目が入った

「何!?」

「……こん、のォッ!!」

「振っちまえって言ったの俺だけど痛い痛い痛い!?相棒相棒!折れる折れる折れる折れる折れるーッ!!」

斧を振り下ろして薪を割るかのように、デルフリンガーは鉄を両断した。
その『薪』はとてつもなく硬かったが。デルフリンガーは涙目だ。……目?

割れた接合面が、限界を超えたのか、土になり、半分以上切込みを入れられてしまった足は地面へ落ちた
斬れたのは、フーケの精神力の関係で錬金がある程度弱かったからだ
証拠に、大ダメージを与えられた足の一部が泥になった。
その途中、ナランチャの頭へ欠片が直撃するが、鉄となっている足元が強制的に立たせる。
そして、割れた足は、キュルケ、タバサ、ナランチャの直撃ルートから外れ――

ルイズへと、向かう。
端が欠けた足は、まだ鉄だった。

「………」

エアロスミスは、間に合わない。
自分は両足を取られている。
ルイズは全身が鉄に埋まっている。

ナランチャは、一つの確信にかける。
フーケは、止めを刺す瞬間に錬金を解く筈だ。

スローモーションに見える。時間が遅く感じる。
まだか
まだか
まだか

今だ。

泥だらけになった両足を動かして、デルフリンガーを盾にしようとする。
目の前に頭から流れる血が舞う。
間に合うか――



「ナランチャ……」

「ぐぐ……ぐ!長く持たねぇって……早くしろキュルケ!」

「あががががががががが」

デルフリンガーが死にそうである。

「あ!わ、分かったわ!」

間に合った。ナランチャは安堵する。
何とかデルフリンガーを盾代わりに数秒動きを止め、鼻の先を掠めるようなキュルケの火球。
足の軌道をずらし、ルイズを引っ張り出す

「もうアイツは立てないはずだ……そろそろ決めるぞ」

言うとおり、フーケにはもはやゴーレムを操るのが精一杯。修復に割ける精神力など残ってはいない。
ナランチャが、転がっていた『破壊の杖』を取り、構える。

「ルイズ、失敗すんなよ、爆発は鍵だからな」

「分かってるわ……ここまで役に立てないで終わる私じゃないわよ!」

さっと杖を構える。
キュルケとタバサはすでに詠唱を始めていた

「やらせるものか……」

フーケは、地面に突っ伏せるゴーレムの足を動かす。
聞きたくも無い、鈍い音。疲労で一瞬反応が遅れてしまった。
左足が、ナランチャの脇腹に食い込む。噴出す鮮血。
それでも、倒れつつ破壊の杖の先端をゴーレムへと向けていた

「ぐうはッ……やっちま……え!」

ルイズの失敗魔法が先陣を切り、ゴーレムの眼前に爆発を巻き起こす。
続けて放たれるのは、巨大な氷柱の嵐と、生きているかのように迫る煉獄の火炎。
失敗魔法は目くらまし。
ゴーレムの中心へと炸裂し、巨大な穴をあけさせた。

突っ込むのは、エアロスミス。
ゴーレムの頭を削り飛ばして、もはや戦闘不能かと思われた

「まだまだだねェ!隙だらけだよ!」

ゴーレムの拳は、まだ動く。
威力が高く、一発のあるルイズを狙った拳――命中。全身を強かに打った。
吐血して吹っ飛ぶルイズ。タバサがレビテーションで勢いを弱める。

「どう、タバサ?」

「もう限界」

「私もよ……力使い切っちゃった」

「まだ手はある」

ナランチャは、踏ん張りの聞かないまま放つしかないと判断する。
肘に力が入る。
目線は、まっすぐにゴーレムを見つめ――それをカタパルト代わりにして、『弾』は飛んでいった

「何?うッ……」

ルイズが、口の周りを血で染めながらその光景を見ていた。
何かが発射されると共に、『爆発』を起こした。
それこそルイズの今の失敗魔法とは比べ物にならない。
まだ、ゴーレムは動く

「ルイズッ!絶対当てろ!」

「言われなくったって……!(成功してよ……お願いッ!)」

大爆発。
ルイズが考えるに、今までで最高峰のものだった。ゴーレムが力尽きようとしている。
先ほどの破壊の杖――ロケットランチャーの爆風で、ナランチャは茂みまで吹っ飛び、木の枝が右腕に刺さるっていたが、そのままエアロスミスを操ろうとする
両方とも開いた手を見て、何を勘違いしたのかフーケが笑い声を上げた
その傍らのゴーレムは、すでに半身以上吹っ飛んでいる。

「隠し杖もなけりゃ、あの変なのは操れないだろう!」

どうやらナランチャが隠し杖を持っていたと今まで思い込んでいたらしい。
ナランチャは構うことなくゴーレムとフーケを蜂の巣にした
現実は非情である。

「……杖も、なしに?」

「スタンドだ。魔法じゃない。 テメーの敗因はただ一つ……『能力をちゃんと把握しなかった』」

かわいそうなのでここでネタバラシ。だが今のフーケの耳には入らない。
ボロボロと元の土に戻るゴーレムを見て、やっと一息ついた。

タバサと向き合い、手を開く

「「チェックメイト」」

パンッ、と小気味良い音が響いた。所謂ハイタッチである。
学院へ帰ってからルイズの嫉妬から来る攻撃を喰らうことになるが、別の話である。

「あー、体イテェ。早く帰ろうぜ」

壮絶な戦いの後を感慨深げに見つめるナランチャに、全員頷いた。
へなっと崩れ落ちるルイズに、キュルケとナランチャが肩を貸してやった。
ナランチャの右を、タバサが歩く。

その後は馬ごと置いて行く訳にも行かないので馬車で帰り、そして出番が無い所為で、影でシルフィードが涙目になっているのには、誰も気がつかなかった。
……タバサさえも、帰り道にナランチャが自分にもたれかかっていたので、気にしなかった。


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