ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔の鎮魂歌~本編~

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ルイズ達が本塔に着いた時、フレイムと森から先に戻って来ていたシルフィードが既に戦っていた。
シルフィードが炎を吐き、フレイムが体当たりを繰り返す。二匹の攻撃に『そいつ』は成す術が無く、一方的にやられている様に見えた。
「なんだ、別に大した事無いじゃない。」
キュルケが構えていた杖を下ろしながらそう言った。
確かに近くにいた者の魂を入れ替える魔法など聞いたことないが、『そいつ』はそれ以外には何も出来ず、物理的な力も無いようだった。
「フレイム!もうとどめを刺しちゃいなさい!」
「とどめ」
キュルケとタバサが各々の使い魔に命令した。
フレイムが前から突っ込み、シルフィードは後ろから尻尾をたたき付けた。
前後から同時に打撃を受け、『そいつ』の左腕の肘から先が吹っ飛び、右足ももげ、上半身と下半身が両断された
呆気ないが終わった、と五人は思った。上半身と下半身が両断されているのだ。『生物』ならば生きてはいるまい。『生物』ならば…

その頃になってギーシュが漸く本塔の近くに来た。
「ハァハァ…マリコルヌめ…少しは痩せとけよ…」
マリコルヌの身体はお世辞にも運動には向いているとは言えない。そのため一人遅れていたのだ。
皆の方を見ると、五人共構えていた杖を下ろしていたし、遠目にも確認出来たフレイムの炎も見えなくなっていた。
「なんだ…もう終わったのかな…」
ギーシュが歩み寄ろうとした時、パキッと小さな音がした。ちょっと驚いて足元を見ると矢のようなものを踏み付けたらしかった。
「なんだ、これ?」
ギーシュは魅せられたかの様に屈んでそれを拾い上げた。
その瞬間
ガシィッ!
「ひッ!」
右足首を何者かに掴まれた。

目の前の『そいつ』はバラバラになっても、残った右腕を器用に使ってどこかへ行こうとした。
それを見たタバサは呪文を唱えると杖を振り、氷の矢で『そいつ』の身体を地面に固定した。
「これで動かない。」
タバサはそう言った。
身体を焼いたり、バラバラにしても死なないのには驚いたが、逃げないようにすれば問題は無いだろう。
急いで『そいつ』を殺し、元に戻る方法を(少なからず喜んでいる例外が三人いたが)見つけねばならない。
監視を二匹に任せ、五人が相談しだしたその時だった。
バキバキバキバキッ
何か硬いものが折れるような音がした。
「きゅ、きゅるきゅる!」「きゅいきゅい!」
フレイムとシルフィードが怯える様に鳴きだした。
その鳴き声に五人が振り向いた瞬間、黒い影が五人の間を駆け抜けて行った。
「な…ああ?」
それはばらばらにしたはずの『そいつ』だった。
いつの間にか上半身と下半身、そして右足がくっついており、今までとは打って変わって敏捷な動きでまた違うどこかへ向かって走りだしたのだ。
そして『そいつ』が向かった先には矢を手にしたギーシュがいた。

「な、なななんなんだよ!この腕ェェェ!!?」
ギーシュは自分の右足首を掴んでいる黒い腕を見て絶叫した。
足を思いっきり振って払おうとしたが、雨でぬかるんでいた地面に足を滑らせ転倒した。
更に腕はますます強い力でギーシュの右足首を絞めだした。
「い、痛い、痛いッ!だ、誰か…!ワ、ワルキューレ!」
ギーシュは手に持った薔薇を振ると三体のワルキューレを作り出した。
「ワルキューレ!この腕を引きはがせ!」
ワルキューレ三体を使い自分の足首を締め付ける腕を引きはがさせようとした。
だが、ワルキューレを出すタイミングが遅過ぎた。
バキバキバキ…!
腕はギーシュの右足首を完全に粉砕してしまった。しかしなお腕は粉砕した足首を締め付けた。
「ギャアアアアアッ!」
ギーシュは痛みと恐怖の余り再度絶叫した。
「ワ、ワルキューレ!早くするんだ!早く!」
ワルキューレに再度指令を出した。
やがて三体のワルキューレは漸く腕を引きはがした。
「た、助かった…」
ギーシュはホッとした。
しかし、彼はその一言を最後に喋る事は出来なくなってしまった。

彼の喉を黒い右手が貫いていた。

「ギ、ギィィィィィシュ!」
マリコルヌが叫んだが、もうその言葉はギーシュに届くことは無かった。
目の前にあるギーシュ、いや、マリコルヌの肉体はもはや原型を留めておらず、肉の塊としか言いようがなかった。
ルイズやキュルケは直視できず、目を背けた。タバサもショックを受けていた。コルベールは教師でありながら生徒を守れなかった己を責めた。
(何故私は彼を一人置き去りにしたのだ…彼を一人にしなければ…!!)
「ギーシュ…仇は僕がとってやるからな…!」
マリコルヌは涙を拭くと『そいつ』の向かった方へ一人で追い掛けだした。
「ま、待ちなさい!」
コルベール達もその後を追った。


「うぁぁぁッ!」
マリコルヌは杖を振り回しながら突進して行った。
「エアハンマー!」
空気の塊が『そいつ』に衝突し、『そいつ』は地面を転がった。
「とどめだッ!」
マリコルヌが杖を振り上げた時、その手をコルベールが掴んだ。
「落ち着きたまえ!」
「嫌です!離して下さい!!あいつはギーシュを…!」
「無駄」
ポン、とタバサがマリコルヌの肩を叩いた。
「な…」「どういう事かね?」
「あいつはさっきバラバラにしたのに今じゃピンピンしてるのよ?またバラバラにしてもまた戻っちゃうでしょうね。」
キュルケがタバサに代わって言った。
「焼いても無駄、バラバラにしても無駄。じゃあどうしろと言うんだ!」
「だーかーらー、それを探さなくちゃならないんじゃない。まだ殺せないなんて決まった訳じゃないんだしね。」
「…分かったよ…」
マリコルヌが渋々頷いた。

「待って…何か変じゃない?」
ルイズがいきなり言い出した。
「変?何が?」
「あいつ、なんでいきなりギーシュに向かって走りだしたの…?それに何か変わってない?なんかさっきと…」
全員ハッとした。考えてみれば、何故いきなりギーシュを殺したのか、その理由がはっきりしないのである。
「ギーシュは何かをしたから殺されたんでしょうけど…一体何で…」
「矢。」
全員がタバサの方を見た。
「どういう事?タバサ」
「殺す前左腕ごとなかった。けど持ってる必要は無いのにまた持ってる。」
ルイズはハッとした。確か召喚した時、矢は何故かあいつの方に転がっていった。ならば、矢が何らかのヒントなのかもしれない!
「矢…あれを奪えばいいのか?」
タバサはふるふると首を横に振った。
「奪えば殺される。ギーシュみたいに」
う、とマリコルヌは呻いた。ギーシュはきっと何も知らなかったんだろう。だが、彼の(肉体は自分のだが)お陰で多少ながら倒す方法も見えてきた。
「じゃあ破壊すればいいんだな?」
「それもちょっと違うみたいよ。」今度はキュルケが答えた。
「何で分かる?」マリコルヌが食ってかかった。
「これを見て。」
キュルケはシルフィードの尻尾に出来た痣を指差した。
「この子、炎を吹き掛けてたんだけど、どうも矢の形の痣があるのよ。」
きゅいきゅい…とシルフィードが痛そうに鳴いた。
「つまり、矢を攻撃しても無駄。」
「~!!」(これじゃあギーシュの仇を取れないじゃないか!)
マリコルヌは頭を抱えた。
だが、ただ一人、四人とは違うものに注目した者がいた。それは桃色のブロンドの長髪を持つ少女、ルイ…じゃなかった。コルベールである。


To Be Continued...

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