ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

戦勝! 城下町でお買い物 その①

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戦勝! 城下町でお買い物 その①

王宮にやって来たルイズを、女王になったアンリエッタは思い切り抱きしめた。
女王になったせいで気苦労が増大したそうな。
そして異国の飛行機械で上げた戦果をアンリエッタは褒め称えた。
本来ならルイズは領地どころか小国を与えられ、大公の位にしてもいほどだ。
承太郎にしても貴族の身分を与えていいとまで言っている。
だが、アルビオン艦隊を壊滅させた光の正体を知ると、前言撤回せざるえなかった。
ルイズが虚無の担い手だという事は、アンリエッタはすぐに信じた。
伝説の虚無は本来王家の中にその力を行使する者が現れるらしく、ヴァリエール家は王の庶子でありトリステイン王家の血を引いている。それが理由。
しかし、アンリエッタがルイズに恩賞を与えたら、ルイズ達の功績を白日の下にさらす事となってしまう。すなわち虚無の力を。
それはあまりにも強大であり、一国でさえ持て余すほど。
敵に知られたら間違いなく狙われるし、味方に知られても私欲のために利用しようとする者が必ず現れるに違いないのだ。
そのため、アンリエッタはルイズに虚無の力の事は秘密にするよう約束させた。
そして始祖の祈祷書はルイズに預ける事となった。
虚無と、ルビーと、始祖の祈祷書。みっつそろってなければ真の力は発揮できない。
それに始祖の祈祷書はもう不要の物なのだ。
なぜならアンリエッタとゲルマニア皇帝との婚約は解消されたからだ。

アルビオン軍に勝利したアンリエッタは『聖女』として崇められ、ゲルマニアとも十分対等で強硬な態度で接する事ができるようになっている。
アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインは今や決して同盟を切ってはならない強国なのだ。

という訳で始祖の祈祷書を与えられたルイズは、今後虚無の事を隠しながらも色々と動きやすいようにと、アンリエッタ直属の女官に任命され、許可証を渡された。
王宮を含む国内外へのあらゆる通行と、警察権を含む公的機関の使用を認められており、つまりすごくやりたい放題やれるという訳だ。
何せ女王の権利を行使する許可を得たのだから。
「あなたにしか解決できない事件が持ち上がったら、必ずや相談いたします。
 表向きには、これまで通り魔法学院の生徒として振舞ってちょうだい」
ルイズにそう言ったアンリエッタは、続いて承太郎に向かった。
「これからもルイズを……わたくしの大事なお友達をよろしくお願いしますわね」
と、アンリエッタは身体中のポケットを探り、金貨や宝石を取り出すと、それを承太郎の手に握らせる。
「……何のつもりだ?」
「本当ならあなたを『シュヴァリエ』に叙さねばならぬのに、それがかなわぬ無力な女王のせめてもの感謝の気持ちです。
 あなたはわたくしと祖国に忠誠を示してくださいました。報いるところがなければ――」
「勘違いしてもらっちゃ困るぜ。
 俺はあんたやトリステイン王国のために戦った事は一度も無い。
 忠誠なんて持っての他だ。俺は王国にも女王にもルイズにもかしずくつもりは無い。
 あれはあくまでタルブの村と村人のために戦ったんだ……」
金貨と宝石を突き返され、アンリエッタは表情を曇らせた。
それを見てルイズは慌てて承太郎の学ランを引っ張る。
「なな、何言ってんのよ! 姫様からもらった物を、突き返すなんて!」
「……俺は金のために戦った訳でも、国のために戦った訳でもない。
 それなのに金を受け取るって事は……俺のプライドに傷をつける」
ああ、これはもう駄目だとルイズは思った。
説得不可能。承太郎は自分の意思を曲げないだろう。頑固者め。
だがアンリエッタはしばし悩み、パッと表情を輝かせる。

「ではこれは、わたくしの国にあるタルブの村を救ってくれたお礼として差し上げます。
 そしてわたくしの命や、数多くの兵達の命を救ってくれたお礼でもあります。
 あなたがいなければ、わたくし達はアルビオン軍に敗北していたでしょう。
 ですから、これを受け取ってください。報いではなく、純粋な感謝の気持ちです」
「断る。礼ならタルブの連中に十分してもらった。じゃあな」
こうして承太郎は一人でさっさと退室してしまう。
ルイズは全力で謝罪したが、アンリエッタは怒る事なく、今度はルイズに金貨と宝石を受け渡した。
「ルイズ。このお金は、あの使い魔さんのために使って上げてください」
「は、はい。解りました」
こうしてルイズは承太郎の後を追いかけて王宮を出て行くのだった。

「ねえジョータロー。あんた、これからどうする気?」
道中、ルイズは好奇心から訊ねてみる。
もう日食はすぎてしまって、元の世界に帰る手がかりは無くなってしまったのだ。
だが、さすがは承太郎しっかり手がかりを掴んでいた。
「竜の羽衣は……東から飛んできたと言われている。
 だったら東……東方とやらに行けば、何か手がかりが掴めるかもしれねー。
 竜の羽衣がどうやってこの世界に来たのか解る可能性もある」
「……でも、戦争始まっちゃったし、トリステインを放って行けるの?」
「…………さあな……」
もう置いて行かれるのは嫌だ、とルイズは思ったけれども、
そんなの絶対口に出して言えないし、考えた事すら知られたくなかった。
いっそ承太郎が自分から望んで手伝ってくれたら嬉しいんだけど。

と、悩みながら歩いていると、ルイズはいかつい男にぶつかってしまった。
「イテェなコラ! どこ見て歩いてやがる!」
どうやら傭兵崩れらしいその男は、手にした酒のビンを見るにそうとうデキてるようだった。
ルイズは無視して脇を通り抜けようとしたが、腕を掴まれてしまう。
「待ちなよ、人にぶつかっといて謝りもしねーで通り抜けようってのか? アァン?」
この騒ぎに傭兵の仲間達も気づき、ルイズの羽織ったマントを見て貴族だと解ると、
酔った傭兵の男をなだめ始めたが、男は逆にこう言った。
「今日はタルブの戦勝祝いの祭りだぜぇ? 無礼講だ! 貴族も兵隊も町人もねーよ。
 ほら、貴族のお嬢ちゃん、俺に一杯つげや。ホレ」
「放しなさい! 無礼者!」
その言葉を聞いた途端、男の顔が凶悪に歪んだ。
「アァン!? てめー、誰がタルブでアルビオン軍をやっつけたと思ってんだ!?
 いいか! 『聖女』でもてめえ等貴族でもねえ! 俺達兵隊なんだよ!」
「ほーう、そいつは初耳だ。具体的に言ってみな」
ルイズを掴んでいた傭兵の手が、承太郎の手で掴まれる。
「何だてめえ!? 引っ込んでやがれ!」
「俺が知っている兵隊は……アルビオン軍のメイジが作ったゴーレムに恐れをなし、
 タルブの村人を放って逃げ出した臆病者くらいしか心当たりがないんでな……」
酒に酔ってただでさえ赤かった顔が、さらに真っ赤になる。
「て、てめえ! 何で知ってやがる!」
「何だ、本当に逃げ出した奴等の一味だったのか。やれやれ」
馬鹿にした物言いに、完全に男はプッツンした。
「てめー! ぶちのめしてやるぁあああッ!!」
ルイズを突き飛ばして、傭兵の男は承太郎に拳を振り上げる。
が、承太郎の膝蹴りが男の腹部にめり込み、呆気なく這いつくばってゲロを吐いた。
「う、ウゲゲゲッ……て、てめー! もう勘弁ならん! ぶっ殺す!」

その頃、某武器屋にて。
「あっ! 今、俺を買ってくれる人が近くにいる! 心が通じ合った感じがしたぜ!」
「寝言は寝てからほざきな、デル公よぉ~」

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