ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

タバサの安心・キュルケの不安-5

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匿名ユーザー

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「まだ……傷口が塞がってすらいなくてね……。これだけしか『動け』ないんだ…」

不可解なセリフだったが、キュルケにはそれが冥土の土産に思えた。
ロウソクの頼りない明かりが、自分の背後に立つDIOの影をキュルケの前に浮かび上がらせる。
中途半端な光は、逆に闇の存在を強調するのだ。肩におかれたDIOの手は、キュルケのうなじへと、滑るように動いた。心臓がバクバクと暴れ、歯の根が合わずガチガチと音を立てた。
---完全に死角を取られた。
もはや生かすも殺すもDIO次第だろう。
背後に迫る闇の脅威にキュルケは脱力し、己の命をあきらめた。

「そんな……ガマガエルみたいに脂汗をながすほど怖がらなくたっていいじゃあないか……。安心しろ…安心しろよ……キュルケ…。」

キュルケが捨てた命は、しかし、DIOによって拾われることとなった。うなじから手が離れ、闇がこの場を去ってゆくのを、キュルケは感じた。
「私はまだまだ本調子ではない…。怪我が直るまで、今しばらくはおとなしくしているつもりさ…今しばらくは……」

辺りにDIOの声がおどろおどろしく響き渡り、DIOの気配は図書室から完全に消えた。

安堵のため息とともに、キュルケはその場に崩れ落ちた。
自分の命が助かったことよりも、もうDIOの近くにいなくて済むことに対する安堵の方が大きかった。
脱力もそこそこにふと前を見ると、さっきまで床に落ちていたはずの『よい子のたのしいゲルマニア語』が無くなっていた。
DIOが持っていったのだろう。
が、それはあり得ないことだった。
自分はずっと、前--『よい子のたのしいゲルマニア語』の方--を向いていたが、DIOが本を拾う仕草をキュルケはチラとも目にしていない。
一体どうやって……
その疑問は、先ほどDIOによってもたらされた不可解な現象への考察へと移行した。
目を離さなかったのに、一瞬で自分の背後に回ったDIO。
油断も慢心も、あの闇相手にはあろうはずがない。
それではどんな手段を使ったというのか……
キュルケは未だに靄がかかる頭を最大限回転させ、考えられる可能性を絞り込んだ。
まず初めに浮かんだのは『超スピード』説だったが、これは即座に否定した。
超スピードだろうとなんだろうと、動けば必ず生じるはずの空気の流動が感じられなかったからだ。
ましてや目にも留まらぬ早さで動けば、ソレがわからぬはずはなかった。


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