ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-44

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匿名ユーザー

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上空、シルフィードに跨るルイズは、
頭の傷を手で押さえて止血していた。
一度は塞がりかけたものの、フーケとの戦いで
再び傷口が開いてしまい、治癒が遅れてしまっていた。

ルイズの頭に、フーケの高笑いがガンガン響く。
怒りと屈辱のあまり、ぬうぅ…、と野獣のような唸り声をあげていると、
心配になったキュルケが、おっかなびっくり聞いてきた。

「ル……ルイズ?
えぇっと、そのキズ…痛むの?」

「KUAAAA!!!」

ご機嫌斜めのルイズは、ギロリとキュルケを睨みつけた。
眼球の端からダラダラと血が頬に垂れており、
純白だったはずのブラウスはもう真っ赤っかになっているので、
はっきりいって今のルイズは直視に耐えない。
そんな状態にも関わらず、
ルイズが異様にギラギラした目で見つめてくることが、
余計にキュルケの恐怖を煽った。
キュルケは、うっ…と仰け反った。
幽霊系が大の苦手なタバサは、
出来うる限りルイズの方を見ないようにしている。

タバサに半分幽霊扱いされている事などつゆ知らず、
ルイズはブルブルと頭を振った。
ピシャッと血が辺りに飛び散って、キュルケはさらに仰け反った。

「あぁ……ゴメン。
ちよっとイライラしてたから。
大丈夫、大丈夫よ……」
ルイズが人並みな会話をしてくれたおかげで、
キュルケはちょっと安心した。

(よかった…まだ人間だわ、この子……)

近頃、ますます人間離れしてゆくライバルに、
キュルケは気が気でなかった。
さっきだって、自分の知らないところで、
ルイズが越えてはならない一線を越えたような
嫌な予感がしたものだが、どうやら杞憂だったようだ。
頭の傷も、よくよく見てみたら、
皮膚が裂けているだけだ。
―――そうだ。
なんてことはない。
フーケを捕まえたら、全て元通りになるに決まってる。
キュルケは、自らの胸に渦巻く得体の知れない疑惑を
そう結論づけて、地面を見下ろし、
ゴーレムの肩に乗るフーケを見た。
フーケが持つ、流れるようなエメラルドの髪に、
キュルケはどこかで見覚えがあった。

「ねぇ……あのフーケ、
どことなくミス・ロングビルに似てると思わない……?
ほら、髪の色とか」
キュルケは、思ったことをそのまま口に出した。

「ミス・ロングビルがいない」
タバサがポツリと呟いた。
そういえば、辺りにミス・ロングビルの姿が見当たらない。

まさか、とキュルケは目を見張った。

「ウッソ!?
そ、それじゃあ、ミス・ロングビルが………!!」

「そ。
『土くれ』のフーケよ。
まんまと騙されてたのよ、私たち」
キュルケの続きを、ルイズが取った。
ロングビル=フーケの事実に、キュルケは唖然としたが、
直ぐに意識を切り換えて、DIOを見た。
その存在感は、ゴーレムを目前にしても、なお揺るがない。

「ルイズ。
あいつ1人だけ残しちゃったけど、大丈夫なの?
はっきり言って、あのゴーレム、
反則スレスレの代物よ?」
キュルケは先ほどの僅かな攻防で、
フーケのメイジとしての実力の高さを痛感していた。
フーケは『トライアングル』クラスだと聞いたが、
自分だって『トライアングル』だし、タバサだってそうだ。
どうにかなるさと高を括っていたが、どうやら認識が甘かったようだ。
何せあのゴーレム、自分たちの魔法が通用しなかったのだ。
どれだけあの使い魔が化け物だろうと、
1人で立ち向かうには荷が重すぎるのではないかと、キュルケは感じていた。

「…………………」
しかし、キュルケの率直な質問に、ルイズは何も答えなかった。

『破壊の杖』をしっかりと抱きしめたまま、目をつむり、呼吸を整え、
完全に休息の体勢をとり始めていた。

「なによ、もう……!!」
無視されたのが面白くなかったのか、キュルケはふてくされたように髪をかきあげた。
再び下に視線を向けると、
ゴーレムの拳撃に対抗すべく、DIOの体から半透明の幽霊が浮き出て来ている様子が、
視界に入った。

「……ざわーるど」
タバサが、若干変なアクセントでその名を呼んだ。
聞き慣れない異国語の名前を持つ幽霊もどきに、タバサの視線は珍しく釘付けだった。
これから何が起きるのか、カケラも見逃さないと言わんばかりだ。
ゴーレムの鉄拳を破壊したDIOは、
どこからともなく剣を2本取り出した。
上半身裸のDIOには、物を入れる場所は、ズボンしかない。
しかしあのズボン、剣を出す前と後で、見た目が全く変わっていない。
ズボンじゃないとしたら、どこに仕舞っていたというのか。
穴が開くほど見ていたタバサにもサッパリわからないようだ。
首をかしげている。
キュルケは、すべての秘密はあのズボンにある、
とばかりに叫んだ。

「まぁ……すご(ry」

キュルケの間の抜けた発言に、タバサが溜め息をついた。
DIOが何ともいえない表情でキュルケを見上げた。
シルフィードが、『空気を読め』と、きゅいきゅいと抗議の声を上げた。
ルイズはスルーした。

そのうちに、戦いは佳境に入り、DIOがデルフリンガーを片手に大ジャンプをした。
たちまちゴーレムの顔まで上昇したDIOの身体能力には驚かざるを得ないが、
空に跳んだのはとんでもない失敗ではないかと、キュルケもタバサも思った。
空中では、身動きが激しく制限される。
あれではゴーレムのいい的だ。
案の定、上昇を止めたDIOの体目掛けて、ゴーレムの鉄拳が迫った。
あのタイミングでは、避けられる可能性は絶望的だ。
しかし、ギーシュの時も、DIOは脱出不可能の状況から見事に抜け出し、
あっという間に逆転してみせた。
ここからは、決して目を離すべきではない。
キュルケとタバサは、まばたき1つせずに身を乗り出して成り行きを見守る。
鉄拳が迫る。
キュルケが息を呑む。
タバサが杖をギュッと握る。
シルフィードが緊張で震える。
DIOが笑う。
ルイズが欠伸をする。

そして……………………

「『ザ・ワールド(世界)』!!!!」

―――――――――ドォオオオオン!!!―――――――――

……………気がついたら、DIOは地面に降り立っていて、
ゴーレムは無惨なボロキレと化していた。

一気に。
瞬時に。
全ての出来事が時間差もなく。

キュルケとタバサは、こういう結果になることを心のどこかでわかっていながらも、
ブルッと震えた。

「タ………タバサ、今の見えた?」
呆然と顔を向けるキュルケに、タバサはフルフルと首を振った。

ゴーレムがガラガラと音を立てて崩れ落ち、
肩に乗っていたフーケも、一緒に地面へと吸い込まれていった。
何やら叫んでいたが、ゴーレムが崩れ落ちる音にかき消されて、
何を言っているのかは分からなかった。
―――と、地に立つDIOが、何かを伝えようとしているのか、
シルフィードを見上げたた。

キュルケもタバサも、DIOの何かを促すような視線に、覚えはなかった。
しかし2人の背後、まるでそれを待っていたように、
ルイズがカッと目を見開いた。
呆然とDIOを見下ろしていた2人は、それに気づかなかった。
ルイズは『破壊の杖』を懐にしまうと、ズルズルと全体を引きずるように移動して、
シルフィードから身を投げ出した。

視界に、落下してゆくルイズの姿がはっきりと映り、
キュルケは叫んだ。

「ルイズ!!!!!」
キュルケはルイズにレビテーションを掛けようと、慌てて杖を取り出そうとしたが、
その間にもルイズはグングンと地面に近づいてゆく。
よそ見をしていたキュルケでは、もはや間に合わなかった。

"ズドォン!"と地鳴りをさせながら、ルイズは四つん這いで地面に墜落した。
結局レビテーションが間に合わなかったキュルケは、
ルイズが全身打撲で昇天してしまったと思ったが、
意外にもルイズは、すっくと立ち上がった。
何事もなかったかのようにスカートに付いた埃を払うルイズを見て、
キュルケは安堵のため息をついてタバサを見た。

「ナイス、タバサ!!
レビテーション、間に合ったのね!!!」
タバサが代わりにレビテーションを掛けてくれたと思ったキュルケだが、
予想に反して、タバサは首を横に振った。
心なしか、彼女は冷や汗をかいている


「………てない」

「…え?」

「私、レビテーション掛けてない。
……間に合わなかった」

「……………は、はいぃ?」

キュルケはもう、何が何だかわからなかった。

――――地面に降り立ったルイズは、すっくと立ち上がると、
スカートに付いた埃をポンポンと払った。
辺りを見回すと、ちょっと離れた所にDIOがいた。

「要望通り、あの土人形は破壊したぞ、『マスター』。
私の仕事は、これで終わりかな?」

「いいえ、まだよ。
ここはもういいけど
あんたには、あいつらと遊んでもらうわ」
ルイズは首を横に振って、上空のシルフィードを親指でクイと差した。

「ほほぅ、友人に見られるのは、まだ気が引けるのか?」

「それもそうだけど、目撃者がいたら、あとあと困るでしょ?
フーケはあくまで、『行方不明』になるんだから」
面白そうに問いかけるDIOに、ルイズはあっさりと答えた。

「殺してもいいけど、その時は、あの竜も含めて、
全員纏めていっぺんにしなさい。
それ以外の場合は、殺しちゃダメよ」

「注文の多いご主人様だ。
最後に私まで食ってくれるなよ」

「はぁ?
分けわかんないこと言ってないで、さっさと行きなさい。
ほら!!」

冷やかしに気づくことなく、
ルイズはせかせかとDIOを追い立てた。
機嫌がいいのか、煙幕になれと言うルイズに、
DIOは静かな微笑みを浮かべたまま、森の奥へと消えていった。

それを見送ったルイズは、さて…、と一息入れると、
ゴーレムが崩れた方向を見やった。
そこには、地面に横たわるフーケがいた。
その距離、約17メイル。
目にした途端に、ルイズは無表情になった。
フーケはピクリとも動かず、死んだようにも思える。
30メイルの高さから、地面に叩きつけられたのだ。
打ち所が悪くて、命を落としてしまったのかもしれない。
しかしルイズは感情を押し殺し、至極冷静な、
何故かフーケにも聞こえる位の声量で言った。

「死んだ……………か?
いいや、『土くれ』のフーケは、あなどれないわ………。
死んだふりをしてだましているかもしれないわね……。
念には念を入れるとしましょうか」
フーケの体が、微かに震えた気がした。
ルイズは、まるで誰かに話しかけているかのような調子で続ける。

「完全なるとどめを………刺す!!」
"ゴゴゴゴゴ…"

「こいつで………」
"ドドドドド…!"

「跡形もなく吹き飛ばしてね………!」
ルイズは懐からズォオオオ、と長さ1メイル程の
金属の筒を取り出した。
果たしてそれは、『破壊の杖』であった。
フーケが、ビクッと怯えたような気がした。
to be continued……


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