ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-45

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匿名ユーザー

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冷酷な予告と共に、ルイズは『破壊の杖』を両手で構えた。
威圧的にフーケを射抜くルイズの目は、
完全にイっている。
……………本気だ。
それを横目で確認した瞬間、
フーケは最後の賭けに出ることにした。
ルイズは、『破壊の杖』を使うつもりだという。
それは良い!
使え使え、使うが良い!
使うには、DIOがやってみせたように、
セッティングに時間が掛かるはずだ。
今ならまだ自分の方が早い。
今だ、フーケ。
自分にとってのここぞという瞬間は、今なのだ。
大丈夫だ。
こちらには、さっき仕掛けた布石がある。
今。
…今だ!
フーケは自分にそう奮い立たせ、次の瞬間、
バネ仕掛けのオモチャのように跳ね起きた。
それと同時に杖を構え、ルイズに向ける。
しかしルイズは慌てない。
まるでそれが予め台本に書き定められていた
出来事であるかのように、
『破壊の杖』を投げ出し、懐から杖を取り出してフーケに向けた。
いつぞやのように、対峙する2人。
そしていつぞやのように、ルイズはニタリと笑った。

「生き汚い……。
さっさと退場して下さっていればよかったのに……」
嫌みに上品なルイズに、フーケは我慢がならなかった。

このルイズ、一挙手一投足が恐ろしく素速い。
同時に杖を振ろうとすれば、
どう考えてもルイズの方が早いのは明らかだ。
しかしそれでもなお、フーケは、勝った…!!と思った。

「お前が言うか、化け物!!
ようは勝てばいいのよ、勝てば!
それよりこの光景、見覚えあるでしょ?
ない、なんてことないわよね。
…そう、あの時と同じよ!!
結末もね!
もう私の詠唱は、終わっているのよ!
ゴーレムから落ちた時にね!!
あなたが成長しないおバカさんで助かったわ。
『破壊の杖』じゃなく、普通に魔法を使っていれば、
あなたの勝ちだったのにね!!!」

ハァハァと荒い息をしながら豪語するフーケ。
罠にはまったと宣言されたというにも関わらず、
ルイズはそれを興味なさげな顔で見つめていた。
杖を持っていない方の手で、ポリポリと頭を掻き出す始末だった。
全く恐れを見せないルイズに、
フーケの心が沸々と煮えたぎる。
これでは立場が逆だ。
気に喰わない。
杖を突きつけながら、
フーケは半狂乱になって叫んだ。

「何を余裕こいてるんだい、小娘!!!
あんたがやっていいのは、脂汗流しながら土下座して、
あたしに命乞いをすることだけなんだよ!!」
フーケの言葉に、ルイズは深くため息をついた。
もうお前との会話は飽き飽きだ、という表情を浮かべて、
ルイズは突き放すように言った。

「うるせーーーなぁぁぁあああ!!!!
やってみろ!!!!」
鮮やかに逆ギレされたフーケは、
一瞬頭がついていかなかったが、
何を言われたのか理解した瞬間に、
怒髪天を衝く形相で杖を振り下ろした。

…………"ボンッ!"
というくぐもった音が響いた。
爆発音らしきそれは、フーケの使える魔法で発生ような音ではなかった。

そのことに気付くのに、フーケはやや時間が掛かった。
チラリと前に視線をやると、
杖を振り下ろしたルイズの姿が、目に入った。
血まみれのルイズだが、新たな傷は窺えない。
こう言ってはおかしいが、無傷だ。
ならば、自分の放った魔法はどうなったのだろう?
詠唱が必要なルイズよりも、
自分の方が早いのだ。
一体どういうことかと、杖を握っているはずの右手に目をやると
…………………無かった。
杖が、ではない。
杖を握る手が……いや、手どころではない。
フーケの右肘から先が、忽然と消滅していた。
肘の歪な切断面からは、白い骨が覗いている。

え……?
どういうこと…だ?
え?え?え?え?

あまりに現実離れした出来事に、頭には疑問符しか浮かばなかったが、
"ヒュンヒュン"と空を切る音に、フーケはふっと上を見た。
空で、日光に照らされた白い棒状の物が、
ブーメランのようにクルクルと回転していた。
やがてそれは重力に従って降下してゆき、
"ボドリ"と、ルイズの足元に落ちた。
ルイズはそれが何なのか気付くと、
嬉々として拾い上げた。
半分になった右腕で、
フーケはぼんやりとその様子を眺める。

ルイズが持つその棒きれの端からは、
何やら紅い液体がボタボタと滴り落ちている。
あれは………血だ。
真っ赤な、真っ赤な血液。
よく見てみれば、その棒切れの反対側には、
五本の小枝がついている。
そしてその五本の小枝は、指揮棒くらいの長さの杖を握り締めていた。
間違いない、自分の杖だ。
ということは、あの棒切れみたいなのは………
う、うで、か?
そうだ腕、腕、右腕だ。
誰のだろう?
自分の右腕は、半分しかない。
あの腕も、半分しかない。
つまり…
「………キ」
…私の?
―――頭で理解したとたん、フーケの右腕の切断面で、
思い出したように血の噴水が始まった。

「キャアアアアアアア
アアアアアアアアアア
アアアアアアアアアア
アアアアアアアアアア
アアアアアアアア!!!!!」
ブシャーッと紅い液体が弧を描いて飛び散ると共に、
耐え難い激痛が彼女を襲った。
半分になった右腕を押さえて、彼女はうずくまり、
喉よ裂けろとばかりにソプラノの悲鳴をあげた。
しかし、目の前が真っ赤に染まって地面をのたうち廻るフーケをよそに、
ルイズの視線は相変わらず棒切れ
……フーケの右腕から滴り落ちる血に釘付けだ。

ルイズはおもむろにそれを空に掲げると、
滴り落ちる血液を口で受け止めた。
しばらく滴り落ちる血液を舐めていたルイズだったが、
やがて口で受け止めるだけでは我慢できなくなったのか、
ルイズは腕にかぶりつき、ヂューヂューと音を立てて吸い始めた。
フーケはそんなことを見る余裕もない。
ただただヒイヒイと泣き叫ぶ。
しばらくの間、それが続いた。
ようやっとルイズが口を離すと、フーケの腕は、
まるで枯れ果てた枝のようにカラカラに乾ききってしまっていた。
ルイズは血にまみれた口をゴシゴシと拭うと、
フーケの腕を脇の茂みに投げ込んだ。
俗に言うポイ捨てだ。
環境に悪い。
一方、思う存分叫んだおかけで、雀の涙ほどの理性を取り戻したフーケは、
震える唇で
「何故?」と呟いた。
しかし、その疑問に答える人はいなかった。
実はルイズも、シルフィードから落ちる時に事前詠唱を済ませており、
ルイズとフーケは同じ土俵に立っていたのでした、
という事実にフーケが辿り着く事は、もう少し後のことになる。
ルイズは改めて『破壊の杖』を拾った。
時間をかけてゆっくりと拾う様は、
嫌味としか言いようがない。

そしてルイズは、DIOがやってみせたのと一手も違わずに、
しかし過剰にゆっくりとした手つきで
安全ピンを引き抜き、
リアカバーを引き出し、
インナーチューブをスライドさせ、
照尺を立て、
安全装置を解放して、
フロントサイトをフーケに合わせた。
後はトリガーを押すだけだ。
フーケは仰向けに倒れたまま、
ズルズルと後ずさった。
「た……た、すけ…て…」
お尻を引きずって後退しながら、フーケはいつの間にかそう口走っていた。

「たす、助けて!!
…お願い、許して!!!
やめて………!!」
情けのない命乞いだった。
並みいる貴族を歯牙にもかけず、呵々とあざ笑ってきた『土くれ』のプライドは、
カラカラに乾ききり、ボロボロと心から崩れ落ちていた。
あるのは、ひたすら生存への本能だけ。
助かりたい。
助かりたい。
生きたい!
もうそれ以外、フーケは考えることが出来なかった。
……ルイズは、フーケの必死の命乞いを受けて、一瞬キョトンとした。
が、やがてクックックッと笑い出した。

「………ごめんなさい、ミス・フーケ。
今なんて言ったのかしら?
わたくし、貴女に頭を殴られてから
どうも耳の調子がおかしくて……」

おおげさに耳をフーケに傾けるルイズ。
その目は、罠に掛かった哀れな獲物を見る目だった。

「お願い!命だけは!
おとなしく捕まるから、
お願い殺さないで!!」涙ながらにひたすら『HELP』を連呼するフーケを、
ルイズは恍惚とした表情で見下ろした。
人差し指を立ててチッチッチッと振る。

「駄目よ……駄目駄目。
ここまでバチバチ戦っておいて、
いざ危なくなったら命乞い?
そんなのって、あり?」「あっ……あっ…イヤ…!!
イヤ!イヤ!!!」
「もちろんナンセンスでしょ。
……とゆーわけで、
あなたには、『行方不明』になってもらうわ」
ルイズの判決に、フーケはもはや、
駄々っ子のようにイヤイヤと首を横に振るだけだ。
ルイズはゆっくりとトリガーに手をかけて、
餞とばかりに爽やかな笑みを浮かべた。

「う~~~ん?
聞  こ  え  ん  な  ぁ?」
爽やかな笑顔とは、180度異なるドスの利いた声色で、
ルイズはフーケに別れを告げた。
軽やかにトリガーを押す。
しゅっぽっと栓抜きのような音がして、
白煙を引きながら羽をつけたロケット状のものが、
フーケのどてっぱらに吸い込まれる。

そして、狙い違わず、フーケに命中した。
吸い込まれた弾頭がフーケの体にめり込み、
そこで信官が作動して爆発する。
耳をつんざくような爆音が響いた。
悲鳴があったかどうかは、結局わからずじまいだった。

―――この日『土くれ』のフーケは、
名実ともに『行方不明』になることとなった。


to be continued……


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