ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-39

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匿名ユーザー

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「えぁ…………あいう」
意表を突かれたロングビルは、間の抜けた声しか出せなかった。

「どこに行くのかな?
かな?」
再度、問い掛けるルイズは、ロングビルの目をのぞき込んだ。
鳶色の大きな大きな瞳が、ロングビルを射抜いた。
まるで、今日の夕食は何?と聞くかのような、軽い調子だが、
肩から伝わる力が、有無を言わせぬ迫力を醸し出している。

"メコッ"と、ルイズの片手が肩にめり込んで、ロングビルは激痛に喘いだ。
とてもじゃないが、身長153サントの、
小柄な少女が持つ握力とは思えない。

「そそそそその、て、て、て、偵察に、行こうと、思いましたの!ええ!」

「でも、1人だと危ないですわ、ミス・ロングビル。
フーケが潜んでいるかもしれませんもの。
今は、バラバラになることは避けるべきですわ」

ロングビルの必死の言い訳を切って捨てると、ルイズはロングビルをグイグイと廃屋の方へと引っ張っていった。
あまりに強いその力に、ロングビルはなす術がなく、されるがままであった。

廃屋から出てきた3人が、ルイズの姿を捉えた。
「あら、ルイズ。
どこ行ってたの?
ミス・ロングビルも」

「いえ、私は、あの………」

「2人で周囲を偵察してたの。
フーケが潜んでいるかもしれないから。
そうよね、ミス・ロングビル?」
キュルケの問いに、ロングビルが答えようとしたが、それをルイズが遮った。
先程のやりとりとは全く食い違うルイズの言葉に、ロングビルは疑問を感じたが、
ロングビルに向けられるルイズの笑顔が、反論を許さなかった。
ロングビルは壊れた人形のように、カクカクと頷いた。
キュルケは、そんなロングビルの様子を訝しがったが、
やがて『破壊の杖』に注意を移した。

「それにしても、やっぱり変なカタチしてるわよね、これ。
本当に魔法の杖なのかしら」
キュルケは思ったことをそのまま口にしていた。
ルイズも同じ感想なのか、タバサが抱えている『破壊の杖』を、
胡散臭そうに眺めた。
ロングビルは、何だか落ち着かないのか、あちこちに視線を移し、そわそわしている。

「…それをかしてくれないか」
輪の外で、同じく『破壊の杖』を眺めていたDIOが、不意にタバサに話しかけた。
その場にいた全員が、DIOを見る。
タバサは暫く考えた後、トコトコとDIOに歩み寄り、『破壊の杖』を手渡した。

『破壊の杖』を手にした途端、DIOの手の甲のルーンが、ぼぅっと光を放った。

「どうしたの?
それが何か知ってるの、DIO?」
DIOは、その金属で出来た物体を、しげしげと観察した後、ルイズの方を向いた。

「ふむ……。
『マスター』、やはりこれは魔法の杖などではないぞ」
DIOの言葉に、ロングビルが反応した。

「どういうこと?」
ルイズの再度の質問に答えることなく、DIOは『破壊の杖』を両手で持つと、流れるような動作で安全ピンを抜き、リアカバーを引き出し、インナーチューブをスライドさせ、チューブの照尺を立てた。
そして、フロントサイトをルイズに合わせる。

「これは、私の元いた世界で人間が使っていた武器だ。
『M72ロケットランチャー』という。
この安全装置を解き、トリガーを押すと、広範囲に渡る爆発を起こす弾を発射する。
……どうしてこんなものがここにあるのやら」

DIOの懇切丁寧な使用方法の説明に、
ロングビルがそれとわからぬような笑みを浮かべた。
訥々と語るDIOに、耳を傾けていた4人だったが、
爆発という単語を聞いて、ルイズがあわてた。

「ちょ、ちょっと!
どうしてそんな危ない物、私に向けるのよ!?」

「さぁ………どうしてだと思う?」
心なしかさっきよりも距離を取り始めているDIO。
4人の頬に、冷や汗がタラリと伝った。
―――あれれ?
まさかこいつ、この場で私達吹っ飛ばすつもりなのかな?
奇しくも、4人の考えがシンクロした。

「………冗談だ」
一言そういうと、DIOはロケットランチャーを元の状態に戻した。
4人は心底ほっとした。
安心したら、怒りが沸き起こってくる。

「この、バカ!
ぜ、全然、笑えないのよ!!」
ルイズが叫んだが、その声はひきつりまくっていた。
DIOの言葉は、冗談なのかどうか判断しかねるのだ。

「で、でも、これで破壊の杖は取り戻せたわ。
後は、肝心のフーケだけね!」
さっきまでの狼狽を取り繕うように、キュルケが言った。
その通りだとばかりに、ルイズは頷いた。
フーケがこのままむざむざと、自分達を取り逃がす分けがない。
タバサも同じ意見なのか、油断無く杖を構えて、
周囲を窺っている。

「それでは皆さん。
二手に別れて、周囲を偵察するというのはどうでしょうか?
フーケが姿を現さないのも気になりますが、
いずれにしても、私達は行動を起こさなければなりません」
ロングビルの提案に、4人は賛同した。
確かに、いつまでもフーケの出方を待つわけにはいかない。
盗賊相手に後手に回るのは、良策とはいえない。
宝物庫を破った時のように、盗賊が動くのは、
自分の成功をよっぽど確信した時だけなのだ。
話し合った結果、
DIOを廃屋に待機させ、破壊の杖の監視に当て、
キュルケとタバサが北側を、
ルイズとロングビルが南側を、
それぞれ見回りすることになった。
5人はそれぞれの武運を祈りあってから、別れた。

―――――――――

ロングビルは、ルイズよりもやや後方に位置する形で、
森を進んでいた。
すでに本道から外れているので、草木がありのままに茂っていて、
酷く足場が悪い。
草をかき分けながら、ロングビルは、自分の目的がほぼ成就されたことに喜んでいた。
あのルイズの使い魔のおかげで、破壊の杖の使用方法が明らかとなったのだ。
もはや、ロングビルの振りをする必要は、無くなったといえる。
あとは、邪魔者を消すだけだ。

その点ロングビルにとって、ルイズとチームを組むことになったことは、
好都合だった。
ロングビルは、ルイズの背中に鋭い殺気をぶつけた。
ルイズは危険だ。
ロングビルは先程のルイズの目を思い出す。
ルイズの鳶色の大きな目は、まるで全てを見透かしたようであり、恐怖を煽った。
場数を踏んでいるロングビルですら、しりごみしたほどだ。
ルイズは最優先で暗殺する必要がある。
ならば今こそが絶好のチャンスだ。
ロングビルは懐から杖を取り出し………

「最初に怪しいと思ったのは、あなたが学院に帰ってきた時」

突然背を向けたまま語り始めたルイズに、ロングビルの手が、
ピタリと止まった。

「あのタイミングで、ノコノコと現れるなんて、嫌でも疑わざるを得ないわ」

「…………………」
ルイズの口調は、やはり軽々しい。
しかし、背中から発せられる威圧感は、瀑布のような勢いだ。
ルイズは歩みを止めた。
それに続いてロングビルも、立ち止まった。

「でね、その疑いは、さっきあなたが姿を消そうとした時に、
完全な確信に変わったわ」

ロングビルの手は、懐の杖を掴んだままだ。

「そもそも、ここまで来るのまでに、馬車で半日かかったわ。
馬を飛ばして、4時間ってとこかしら?
早朝に調査を始めたっていうのに、随分帰ってくるのが早かったわね、
『土くれ』のフーケ?
どれだけ誤魔化しても……犬畜生の臭いは消せないわ。
プンプン臭うのよ、あなた」

ルイズが詠うようにロングビルを弾劾した。
ロングビルの動悸が早くなる。
背を向けたままのルイズの表情は、ようとして伺えない。
ルイズに気圧されまいと、ロングビルは自分に喝を入れた。

「な、何のことだか……………」

「言い訳無用」

"ドドドドドドドド…!"
ルイズの口調が、完全に変わった。
それと同時に、ルイズの背中から発せられる威圧感が、質量を持つと錯覚するまでに増大した。

「フゥ……………大正解。
いかにも、私が『土くれ』のフーケよ」
観念したように、ロングビルはメガネを外して、その正体を現した。
目がつり上がり、猛禽類のような目つきに変わる。

「……どうして、こんな回りくどい手を取ったの?」
ロングビルの告白を意に介すことなく、ルイズは質問を続けた。

「私ね、この『破壊の杖』を奪ったのはいいけれど、使い方がわからなかったのよ」

全てを理解できたのか、ルイズの体が一瞬強張った。
それをみて、ロングビル……いや、『土くれ』のフーケは妖艶な笑みを浮かべた。

「あの杖、振っても、魔法をかけても、うんともすんともいわないんだもの。
困ってたわ。
持っていても、使い方が分からないんじゃ、宝の持ち腐れ。
でしょう?」
ルイズがフンッと鼻で笑った。

「だからわざわざケガをおしてまで学院まで戻ってきたってわけ?
私達なら、使い方を知ってるかもしれないから。
とんだ盗賊根性だわ。
呆れて声もでない」

「おだまり。魔法1つ扱えない娘っ子が。
悪いけど、貴女にはここで消えてもらうわ。
邪魔なんだもの。
…………でも、解せないわ。
そこまで嗅ぎ付けておきながら、どうして私と2人っきりになったの?
そこだけが、どうしても分からないの。
よければ教えて下さる?」
フーケの問いに、ルイズは腕を組んだ。

「だって、2人っきりの方が、あなたを消しやすいんだもの」
仁王立ちのルイズが、高慢不遜に、当たり前のように言い放った。
フーケは一瞬キョトンとしたが、次第にその口元を笑みで歪めた。

「……あら、お互い考えていたことは一緒だったってワケ?」

「………そういうことになるわね」
滅多に無い偶然に、2人は、クスクスと笑い出した。

――――次の瞬間、ルイズが弾かれたようにフーケの方を振り向いた。
その手には、杖がしっかりと握られている。
それを受けてフーケも、電光石火で杖を懐から取り出し、ルイズに向けた。

ピタリ、とその場が硬直した。
ルイズとフーケは、お互いに杖を向けあいながら、二手に別れてから初めて視線を交わらせた。
フーケの猛禽類のような目と、ルイズの狂気に染まった目が、お互いを射抜く。
龍虎相まみえる、というやつだ。
2人とも、殺意を隠そうともしない。


一触即発の2人だったが、しかし、この戦いは、既に勝敗決していた。
ルイズがニタリと笑った。

「チェックメイトよ、『土くれ』。
私を殺すには、少なくとも『ライン』以上の魔法を唱える必要があるわ。
でも、私はコモン・マジックだけでも、貴女を吹き飛ばすことができる。
どっちが素早いかなんて、オーク鬼だって分かるわ。
貴女は、魔法1つうまく扱えない少女に殺されるのよ」

ルイズの勝利宣言を、フーケが嘲笑した。
おかしくてたまらないという笑いだった。

「あは、は、あははははははははは
はははははは………!!!
あなた、何か大切な事を忘れてるわよ。
私は『トライアングルクラス』よ?
戦闘経験をつんだトライアングルクラスともなれば、
詠唱をしながら、お喋りをすることだってできるのよ。
チェックメイトにはまっているのはあなたの方だって、気づかなかったの?
私の詠唱は、さっき森を歩いていた時に、もう終わっているのよ…!!!」
フーケの嘲りに、ルイズの顔が焦燥で歪んだ。
動揺を隠せないのか、杖を持つルイズの手は、若干震えている。
――――場の硬直は、しびれをきらしたルイズの言葉で、
解かれることになった。

「『レビテーショ……」
「遅い!ゴーレムよ!!!」
やぶれかぶれで詠唱をするルイズだったが、やはりフーケの方が早かった。
フーケが素早く杖を振った。
杖を振りかぶるルイズの 横の地面が盛り上がり、ゴーレムの右腕が現れた。
フーケお得意の『錬金』だった。
ルイズはそれに気づき、視線をゴーレムに向けたが、そこまでだった。
ゴーレムの豪腕が、唸りをあげてルイズに襲いかかった。
フーケは容赦なく、インパクトの瞬間、ゴーレムの拳を鉄にかえた。

ゴーレムの拳が、ルイズの側頭部を無慈悲に直撃した。

「うぐっ!!」
ルイズの断末魔は、それだけだった。
"バグシャア!"
と、ルイズの頭蓋骨がコナゴナに砕け散る音が響いた。
レントゲンをとったら、
コナゴナに砕けた頭蓋骨の破片が、脳をグチャグチャにしているのがわかっただろう。
そのままゴーレムの右腕が振り抜かれ、ルイズは十数メイルも吹き飛ばされ、
地面に水平に飛び、近くの大木に叩きつけられた。
ルイズは力なく、血の海に沈んだ。
頭が完全に粉砕され、脳漿が辺りに飛び散っている。
目はあらぬ方向を向いていた。
完全に即死だった。
フーケはルイズの近くまで歩み寄ると、
その死に様を確認した。

「フィナーレは……案外あっけないものだったわね。
正直言って、今あなたを殺せてほっとしているわ。
でも安心なさい。
これから直ぐに、あなたのお仲間も後を追うわ」
フーケはペッと、唾を吐いた。
彼女なりの、皮肉のこもった敬意だった。
フーケは踵を返して、元来た道を戻り始めた。

フーケの背後で、ルイズの手が、ピクリと痙攣した……ように見えた。


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――死亡?

to be continued……


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