ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-34

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
早朝、ルイズ・フランソワーズは、蜂の巣をつついたような喧騒に、目を覚ました。

こんな朝っぱらから騒がしい…
そう毒づいて、眠い目をこすりつつ、耳を澄ませる。
どうやら、外の廊下を学院中の教師たちがバタバタと走っているようだ。
皆口々に何かをわめいている。
ルイズはネグリジェのままベッドを下りて、扉に耳を当てた。
教師たちが『一大事!』やら、『宝物庫に賊が…!』やらといった内容を言い合いながら、
ルイズの部屋の前を通り過ぎ、本塔へ向かっているようだ。
ルイズの顔から、さぁっと血の気が引いた。
振り返って、自分の部屋を見る。
部屋の中は、DIOが宝物庫からパチってきた宝で一杯だ。
…………とうとうバレたか?
ルイズは死にたくなった。
無論、今の今まで問題を先延ばしにしていたのは、ルイズ自身だ。
次から次へと増えていく宝の山に、最初はまずいと思ってはいたが、
次第に感覚が麻痺していき、最終的にどうでもいいやと思い出したのがまずかったか。
激しく後悔するが、もう遅い。
ルイズはソファーに横たわっているDIOを見た。
いつものように優雅に本を読んでいる。
いつもどおりなのだが、今日に限ってやけに腹が立つ。

どうしよう…
……今度こそ、退学か?
それだけは勘弁してほしかった。
どの面下げてヴァリエール家に帰れというのか。
カトレア姉さまに何をされたかわかったものじゃない。

ボロきれのようにされる自分を想像して、ルイズの顔がますます青ざめる。
---ええい、ままよ!
追い詰められたルイズはヤケクソになった。
こうなったら仕方がない。
とことんまで逃げきってやろうじゃないか!
ルイズは密かに決意した。
使い魔の不始末は、ご主人様の責任なのだ。
こうして、明らかに方向性を誤った決断を下したルイズは、教師たちが集結しつつある、本塔五階の宝物庫へ向かうことにした。
いずれ、生徒の部屋にもガサ入れが来るに違いない。
それまでに、まずは、敵の戦略を読むのだ。
ルイズは音も立てずに扉を開けた。
すると、後ろからDIOが話しかけてきた。

「…どこに行くのかな?」
ルイズは振り向きもせずに答えた。

「あんたのケツを拭きに行くのよ…!」
ルイズはDIOの反応も待たず、通路にでて、扉を閉めた。
そして、滑るように本塔へと廊下を駆け抜けた。

--------
宝物庫には学院中の教師が集まり、その惨状に口をあんぐりと開けた。
まず驚いたのは、トリステイン魔法学院の誇る宝物庫の扉が、
粉々に吹っ飛んで、瓦礫の山になっていたことだ。
中はもっとひどかった。
高価な美術品や秘薬や財宝が、メチャクチャにされている。
一体どれだけの被害になるのか、見当もつかない。
壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
もうひとつ、教師たちの目を引いた物がある。
本棚の後ろにある、隠し部屋のことだった。
今まで、目録を作るために宝物庫に入ったことのある教師は大勢いるが、
こんな部屋があるとは誰も聞いたことがなかった。
しかし、その隠し部屋も、メチャクチャに破壊されている。
教師たちは口々に好き勝手なことを喚いていた。
「土くれのフーケ!
貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か!
魔法学院にまで手を出しおって!
随分とナメられたものじゃないか!」
「衛兵は何をやっていた!?」
「衛兵などあてにならん!
所詮は平民だ!
それより、当直の貴族は誰だったんだね!?」
ミセス・シュヴルーズは震え上がった。

昨晩の当直は、彼女であった。
まさか、魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは夢にも思わずに、
当直をサボり、ぐうぐう自室で寝ていたのだった。
本来なら、夜通し門の詰め所に待機していなければならないのに。
「ミセス・シュヴルーズ!
当直はあなただったのではありませんか!?」
教師の1人が、さっそくミセス・シュヴルーズを追求し始めた。
あの恐ろしいオールド・オスマンが来る前に、責任の所在を明らかにしておこうというのだろう。
ミセスシュヴルーズはしどろもどろで反論した。

「た、確かにそうですが……み、ミスタ・ギトーこそ、
以前の当直をサボっていたではないですか…!」
シュヴルーズの言葉に、ギトーと呼ばれた教師が、顔を真っ赤にした。

「な、何だと…!あの時は、わ、私は、大切な用事があったからで…!」
教師達は次々と責任の擦り付けあいを始めた。
おまえが悪い!
あなたの方こそ…!
罵詈雑言が飛び交う五階の階段の影から、その様子に呆れた視線を投げかける人物がいた。
ルイズ・フランソワーズだった。
ピンクの髪がふわりと揺れる。
呆れる一方で、ルイズはほくそ笑んだ。

どうやら、話題になっているのは『土くれ』のフーケという盗賊のようだった。
ルイズもウワサだけは聞いたことがあった。
そのフーケが、宝物庫を破った犯人ということになっているらしい。
つまり、フーケが忍び込んでくれたお陰で、全てはフーケの罪になるということだ。
宝物庫を破ったのはフーケ。
宝を奪ったのもフーケだ。
ルイズは、会ったこともない盗賊に、取り敢えずの感謝を捧げた。
しかし…………ルイズの表情に影が差す。
このままフーケが逃走してくれれば、それはそれでいい。
オールド・オスマンの立場が悪くなるだけだ。
そんなことはルイズは知ったこっちゃない。
だが、問題はそのオールド・オスマンの…学院側の動きだ。
ルイズは考える。
他の財宝はさておき、フーケがはっきりと犯行声明を出した『破壊の杖』だけは、
貴族としての誇りをかけて全力で取り戻そうとするに違いない。
王室には内密にメイジを派遣して、フーケを捕獲しようとするだろう。
フーケさえ捕らえれば、とりあえずは貴族としての体裁は保たれる。
この惨状は…どうとでもだまくらかせる。
教師の一人二人位は、そのためのスケープゴートにされるだろうが…。

あの老獪なオールド・オスマンなら、眉一つ動かさずにやってのけるだろう。
そして、もし、フーケが学園側に捕獲されてしまった場合、紛失した宝のありかを聞き出すために、オスマンはフーケを拷問するだろう。
---ルイズは親指の爪をギリリと噛んだ。
いくら百戦錬磨のフーケとはいえ、『あの』オールド・オスマンの拷問に耐えられるとは、とてもじゃあないが思えない。
直ぐにゲロするだろう。
そうなるとまずい。
宝を盗んだのがフーケではないとバレてしまう。直に疑いの目は内部に向けられ、自分に捜査の手が伸びてくる可能性がでてくる。
別に、疑われたとしても、ルイズにはシラをきり通すだけの自信があった。
が、この場合それではダメだ。
少しでも疑われるのは避けねばならない。
相手はあのオールド・オスマンだ。
あくまでも100%全てフーケの仕業ということにしなければ…。
そのためには、何とか学院側の先回りをして、『破壊の杖』を奪還して、フーケを始末し、口を封じる必要がある。
『破壊の杖』さえ戻れば、学院側は最低限満足してくれる。
『破壊の杖』の奪還はすなわち、フーケ撃退の証でもあるからだ。

しかし、始末しようにも、
フーケが今どこにいるのか、ルイズにはわからない。
どうするべきか…?
思案を続けていると、誰かが慌てた足取りで近づいてくる音がした。
2人分の足音だ。
さっと身を隠すルイズ。
オールド・オスマンと、コルベールだ。
2人はバタバタと慌てた足取りで宝物庫に入る。
教師は全員、宝物庫に入ったようだ。
ルイズはそう思うと、階段の影から、破壊された宝物庫の扉の影へと身を移した。
瓦礫が上手いことルイズの体を隠した。
ルイズは身を隠しながら、中の様子を伺った。
見ると、オールド・オスマンは『破壊の杖』があった一角には目もくれず、
一直線に本棚の奥の隠し部屋へと向かっていた。
怪訝な表情を浮かべるルイズだったが、隠し部屋の中は暗く、よくわからない。
ルイズは暫く様子を見ることにした。

----------
オールド・オスマンは、宝物庫に駆けつけると、『破壊の杖』が盗まれた現場になど目もくれず、本棚の裏の隠し部屋へ足を運んだ。
油断のない足取りで、奥へと進む。
不気味なほど静かだ。
隠し部屋への通路は、コルク栓を抜いたように、円形に抉られている。
オスマンの脳裏に、忌むべき過去が蘇る。
威力こそ劣るものの、間違いなく、奴の仕業だった。
部屋の中央に到達すると、オスマンは信じられない物を見た。
百余年前、自分が持てる技術を結集した結界が、破られていたのだ。
ルーンの輝きが失われている。
鎖が千切れ、封印していたはずの本が、
床に転がっている。
オスマンの頬に冷や汗が垂れる。
弾かれたように杖を構えるオスマン。
一歩一歩、時間をかけて本に近づく。
---本がひとりでにガタガタと震えだした。

その瞬間、オスマンの杖が電光石火で振られ、杖からまばゆい光が放たれ、本に直撃した。
強烈な光に包まれ、本の動きがピタリと止まった。
オスマンは安堵のため息をついた。
これで当座はしのげるだろう。
本を拾い上げて、オスマンはそれを台座に戻した。
だが……と、オスマンは疑問に思う。

『土くれ』のフーケの話は、オスマンも知っていた。
ウワサによれば、フーケは『トライアングル』クラスのメイジらしい。
しかし、これはどうみても『トライアングル』クラスのメイジの手には余る所業だった。
『スクウェア』クラスのメイジ数人がかりの『固定化』を打ち破り、あまつさえこの封印をも破るとは。
実力を見誤っていたか?
そこまで強力なメイジだとは聞いたこともないが…。
いっそ人ではなく、物の怪の類の仕業と考えた方が楽だ。
化け物………オスマンには、1人だけ、心当たりがあった。
確証が持てなかったが、一人の人物の顔が脳裏に浮かぶ。
これは…………もしや…。
----------
しばらくして、オールドオスマンが隠し部屋から出てくると、教師達は口々にオスマンに自らに責任がないことをがなり立てた。
オスマンはしばらく黙っていたが、自らの保身しか考えていない教師達に苛立ち、杖で床をドンと叩いた。

「…静まれぃ!」
オスマンの低い一喝で、教師達はシンとなった。
誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。

「貴様らの中で、まともに当直をしたことのあるヤツが、何人おる?」
静かなオスマンの問いには、しかし、誰も答えられなかった。

「さて、これが現実じゃ。
責任があるとするなら、我々全員じゃ。
この中の誰もが……、もちろんワシを含めてじゃが…、
まさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っていなかった。
何せ、ここにいるのは、ほとんどがメイジじゃからな。
誰が好き好んで、虎穴に入るものかと思っておったが、間違いじゃった」
オスマンは、宝物庫の扉にあいた穴を見つめた。
「このとおり、賊は大胆にも忍び込み、『破壊の杖』以下、財宝十数点を奪っていきおった。
つまり、我々は油断していたのじゃ。
責任があるとするなら、改めていうが、我ら全員にあるといわねばなるまい」
オスマンの、杖を持つ手がブルブルと怒りで震えていた。
皆、俯いたまま一言も喋らない。

「……目撃者はおらんのか?」
オスマンの問いに、コルベールが答えた。

「ざ、残念ながら、深夜の突然の出来事だったようで……」
「ふむ……後を追おうにも、手がかりナシというわけか…」
オスマンはヒゲを撫でた。
それからオスマンは、気づいたように再びコルベールに尋ねた。

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」
「それが、その…、昨夜から姿が見えませんで」

「この非常時に、どこに行ったんじゃ」
「さ、さぁ…」
そんな風に噂をしていると、宝物庫に1人の人間がフラフラと入ってきた。
服はボロボロで、ほとんど半裸だ。
全身傷だらけで、酷い火傷も負っている。
呼吸は荒く、右手で左腕を痛そうに押さえて、
右足をズルズルと引きずっている。
歩いた後には、血の後が点々と続いていた。
出血も激しそうだ。
誰がどうみても重傷だ。
ミス・ロングビルだった。

「……オ、オールド・オスマン…」
ミス・ロングビルは、オスマンの前までやっとの思いでたどり着くと、
そこで力尽きたのか、バタリと倒れて、意識を失った。
宝物庫内は騒然となった。

to be continued……


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー