ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アナスイ-1

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「ど………どこから来るんだ───ッ!」
 叫ぶエルメェスを窘めるように俺も叫ぶ。
「覚悟を決めろ!!」

 タイミングはほんの一瞬だ。それを逃してはならないッ!
「承太郎さん、まだだッ! まだだぞッ! オレの合図を待て」

 ……来るぞ!来たッ!
「今だッ! 時を止め……………」

…………
………
……

「ハッ! 承太郎さん!」
 ガバッと上体を起こしオレは叫んだ。
 本当は「神父はヤったか」と続けようとしたんだが、オレは言葉に詰まった。
 ……どこだここは……というよりこの状況は何だ?
 辺りを見回すが知っているモノは何も無い。
 オレの目の前には、黒マントを羽織った、桃色がかったブロンドの少女。
 そして少女と同じ黒マントを羽織った少年少女が、オレと少女を見守るように囲んでいる。
 あとは青い空と、どこまでも広がる草原……遠くに見えるのは、城、か?
 あるのは、それだけ。プッチ神父も仲間達の姿もどこにもない。もちろん愛しの徐倫の姿も……。

 呆然としていると目の前の少女に話しかけられた。なかなか可愛い顔立ちだが、徐倫には遠く及ばないな。
「あんた誰?」
「いきなりそれだけ聞かれてもだな……ナルシソ・アナスイだ、としか答えようがないんだが……」
「それがあんたの名前ね。で、どこの平民よ?」
 多分、どこに住んでるのか、と聞きたいんだろうが、普通はそんな聞き方はしないだろうに……。
「さすが『ゼロのルイズ』! 平民なんか呼びやがった!」
 誰かがそう言うと周りにいた奴らが笑い出した。
「『サモン・サーヴァント』で平民を召喚するなんてルイズくらいのもんだな!」
 そう言って彼らが笑うと、目の前の少女が彼らに怒鳴る。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
「そうは言っても、いっつもじゃないか!」
 周りの人垣は再び爆笑する。
 とりあえず、この少女の名がルイズだという事と、少女が周りに笑われているという事だけはわかった。
 だがそれ以外はさっぱりだ。

「ミスタ・コルベール!」
 少女が怒鳴ると、人垣が割れ、そこから中年の男が現れた。
 だがその男は真っ黒なローブに身を包み、何やら大きな杖を持っている。どこの教祖様だ。
「もう一度召喚をさせて下さい!」
 少女が現れた男になにがしかを要求しているようだ。

 しかしそんな光景をよそにオレの頭は疑問で一杯だった。
 時の加速は収まっているようだが神父は倒したのか?
 そうだとしたら徐倫はどこへ? まさか徐倫も倒されたのか?
 相打ちか? 他の奴らも? なら何故オレだけこんな所に?
 しかもさっきからこいつら平民だの召喚だの……。
 湧き出る疑問に何一つとして答えが出ないまま考え込んでいると、さっきの少女が近寄ってきた。

 なんだか顔が赤い。拗ねたような、照れたような表情をしている。
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
 貴族? ……なるほど、恐らくさっきの”平民”は”貴族”と対になってるんだろう。
 だからなんだ、って感じだが。
 すると少女がなにかを呟き、手に持った杖をオレの額に当て、そして、キスを、してきた。
「……って何してやがんだこのアマ──ッ!」
 オレが叫ぶと、驚いたのか少女は短い悲鳴をあげた。
 クソッ……オレの唇は徐倫だけのものなのになんでこんな……。
 と思っていると次の瞬間! な、なんだ? 体が熱い!
「うおおぉぉぉ……! て、てめぇ、何しやがった?」
 スタンド攻撃か? ダイバー・ダウンを少女の目の前に出して威嚇してみるが全く何の反応も返さない。
 少女の身体に『潜行』させてみても反応なし。
 見えていないのか? ならこれはスタンド攻撃じゃない? クソ、さっきから疑問だらけだ!
「まったく、すぐ終わるから我慢しなさい。」
 確かに少女の言うとおりすぐに熱は治まった。
 するとさっきの男が近づいてきて、いつの間にやらオレの左手に現れた印を確認している。
「ふむ、珍しいルーンだな。だけど『コントラクト・サーヴァント』はちゃんと出来たみたいだね。おめでとう」
 その言葉に「ありがとうございます」と少女が答える。
 そう言うと男の体が宙に浮いた。スタンドかとも思ったが、周りの奴らも皆浮いている。
 どうなってるんだ……? この疑問の多さはちょいとヘビーだぜ……。

 飛び去る彼らを眺めているオレに、さっきの少女が話しかけてきた。
「あんた、なんなのよ! 大体さっきからアマだのテメーだの、ご主人様にそんな口利いていいと思ってるの!?」
「……ご主人様? ……あいにく、オレにはそんな趣味はないんだが……」
 相手が徐倫だったら少し考えるが。
「何の話よ!」
「それはオレのセリフだ。悪いがさっきから全く状況が掴めてないんだが、ちょっと説明してくれないか?」
「しょうがないわね! 一から説明してあげるから、ちゃんと聞くのよ!」


 * * *


 ルイズの説明によるとここはハルケギニア大陸のトリステイン王国。
 遠くの城みたいのは魔法学校。
 この世界では魔法が普通に存在していて、オレはルイズに『使い魔』として召喚されたらしい。
 ルイズはこの国の貴族で、貴族はみんな魔法を使えるんだとか。
 そして話していてわかったことだが、どうやらオレがいた「世界」とこの「世界」は違うようだ。
 しかしルイズは別世界の存在など知らないと言うし、オレも知らない。
 さらに言うと元の世界に帰る魔法はないらしい。少なくともルイズは知らない。ヒドイ話だ。
 ならばそれを見つけるまでは、おとなしく『使い魔』とやらをやった方がいいのかもしれない。
 この見知らぬ「世界」で当てもなく彷徨うよりはマシだろう。

 一体オレの愛する徐倫はどうしているんだろうか……。


 その後、ルイズの部屋に連れてこられ、使い魔の仕事の説明をされた。
 曰く、主人の目となり耳となり、秘薬を探したり、護衛をするらしいのだが、
 こちらが何か言う前に「まああんたには無理そうね」と言われた。
 護衛は出来なくもないだろうが、言うのはやめておいた。
 徐倫以外の女を積極的に護る気にはならないしな。
 結局、オレに与えられたのは掃除とか洗濯などの雑用だった。

「あーあ。なんか色々話してたら眠くなちゃった」
 そう言いながらベッドに腰掛け、オレ目の前で服を脱ぎ始める。
「おいおい、男のオレがいるんだぞ」
「男? 誰が? 使い魔に見られたってなんとも思わないわ。それにあんた何か女っぽいし」
 オレは男として見られていないという事か? まあこんな小娘から男と見られようが見られまいがどうでもいいが。重要なのは徐倫だけだ。
「で、オレはどこで寝ればいいんだ」
 ルイズは無言で下を指差す。
「床で寝ろって事か?」
「そうよ。当たり前でしょ。まぁ一応この毛布を貸してあげるわ。ありがたく使いなさい」
 黙って毛布を受け取る。
 今までだって逃亡生活、その前は刑務所暮らし。床で寝るくらいどうって事はないが、なんだか見下されている感じがムカツク。
 バラしてやろうかこのアマ。
 そんな気持ちを抑えつつ横になる。とそこに何かが飛んできた。
「それも、洗っといてね。」
 下着だった。本気で男として見られてないらしい。やっぱりちょっぴり悲しくなってきた。
 徐倫。早くキミの顔が見たいぜ。
「それじゃ、おやすみ」
 ルイズが指を鳴らすと、部屋の明かりが落ちる。電気ではなさそうだ。これも魔法だろうか。

 横のベッドからは早くも寝息が聞こえてきた。
 オレは寝転んだまま、ふと窓から外を見たが、そこにありえないものがあった。
 月が二つある。しかも妙にでかい。
 ……どうやら、マジに異世界に来ちまったようだな。
 実はここは異世界などではなくて、オレのいた世界の、物凄い遠い未来なのではないかなんて考えていたんだがな。
 神父の「時の加速」によって、時代がめぐりにめぐり、人類は一旦滅び、新たな文明が興った。
 そんな世界に、神父のせいでオレは飛ばされた。魔法だって、科学によって否定されていたが、話として伝わってきてる以上、本当にあったのかも。
 SFとファンタジーが混ざったような話だが、少なくとも「異世界に召喚されました」よりはオレ的に納得がいったので、そんな風に思ってたんだが。
 ルイズには言ってもわからん話だろうから異世界からやって来た事にしておいたが。
 だがどんなに時が経とうと、月が二つになるって事はないだろう。
 という事は、オレはやっぱりマジでこのファンタジーな世界に『召喚』されちまったって事か。
 ……まあ、どっちだろうと、徐倫達がどうなったのかも、元居た世界に帰る方法もわからないのは変わらない。

 今日はもう、寝た方がいいな。起きていても無駄に体力を消費するだけだ。
 オレは徐倫の顔を思い浮かべながら、ゆっくりと眠りについた。

 ←To be continued

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