ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-46

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
吐いてしまった後、シーツが取り替えられた。そして何事もなかったかのように食事は再開された。
吐いたと言ってもルイズやシエスタに見せないように吐いたし、ルイズたちも音だけではそれほど精神的にはこなかったのだろう。
もし吐いている様を直視していれば食事が再開されることはありえなかっただろうからな。
再開された食事は案外スムーズに進んだ。何故なら私が平気な顔で食事を取っていたからだ。
腹にダメージが残っている中、何故平気で食べられたのかというと、召喚された次の日のことを思い出したからだ。
あの頃、胃袋なんて使ったことがなかったから初めての食事のとき、私は食事を吐き出してルイズに食堂から追い出された。
……今考えると結構腹立つな。いや、それは置いといて。
初めての食事のとき私は吐いてしまったわけだが、あのあと、私はちゃんとパンを食べたのだ。
何故ならよく噛んだからだ。原形がなくなり流動食といっても過言ではないほど噛む砕いてな。それを胃が使われることに慣れるまで続けていた。
あのときを、思い出しながらあの時と同じように食べれば案外平気だった。必然的に食い物を口に入れている時間が増えて食べるのが遅くなったが。
食事が終わると起こしていた体を再びベッドへ横たえる。いくらガンダールヴの効果が働いているからといっても痛いものは痛いのだ。
寝転んでいたほうが楽でいい。
「そういえば」
ルイズが、今思い出した、という風な顔をしてこちらに目を向ける。
「明日竜騎士隊が来るみたいよ」
「明日?早くないか?昨日の今日……、そうか。3日も寝てたんだからな。早く感じて当然か」
「そうそう。わたしも起きてから聞かされたから結構驚いたわ」
ルイズと話しながら、ふと思い出す。
「ルイズ、シエスタでもいいけど答えれるなら答えてくれ。どうして私の指は折れてるんだ?顔も殴られたみたいに腫れてるし」
そう言うとシエスタは困ったように眉を顰める。
「私はわかりません。お二人を見つけたのは私ですけどその時はもう怪我してましたし」
「見つけた?」
見つけたってどういうことだよ。
「はい。朝起きたらヨシカゲさんとミス・ヴァリエールが部屋から居なくなってて、皆で探してたんですよ。
それで心当たりを手当たり次第探していって、でも全然居なくて最後に草原に行ったんですよ。3人で見に行きましたから。そしたらお二人が怪我をして倒れてたんですよ」
「そのときはもう指が折れていた?」
「はい。ヨシカゲさん自分で草原に行ったわけじゃないんですか?」
「いや、あの日の晩眠って気がついたらここに寝てたよ」
ワケがわからない。どうして私が草原に居たんだ?
なんで指が折れてるんだ?どうして顔が腫れてるんだ?本当にワケがわからなすぎ……ん?そういえばルイズも草原に倒れてたって言ったな。
「ルイズ」
声をかけた瞬間、ルイズの肩が一瞬跳ね上がる。
「な、なによ!?」
なんだ、そのあからさまに、何があったか知ってます、みたいな反応は。隠す気があるのか?
シエスタですらどういった反応をしていいのかわからないらしく少し戸惑っている。
まあいい。一応聞いてみよう。
「お前も草原に居たんだよな。お前はなにがあったか知らないのか?」
「し、知らないわよ!?あんたが顔腫れてる理由なんて全然知らないんだから!」
「…………シエスタ、今私の言いたいことって大体わからないか?」
「……殆んど私と同じだと思いますよ」
ハァ。
どうやら顔の腫れの原因はルイズのようだ。この調子だとどうして草原にいたのか、どうして指が折れているのか知ってそうだな。
でも話しそうにないだろう。顔のことは別にして、草原のことや指の骨折のことを私が口にしたときルイズの眼に何かの感情が見えたからだ。
必死に隠そうとしていたので殆んど読み取れなかったが、困惑という感情だけは読み取れた。
それだけで推測するには、私とルイズがなんだか理由で草原にいて、ルイズが困惑するようなことが起きた。そしてなんだかの理由で指が折れ、ルイズが顔を殴った……。
これだけだと本当に何が起こったかさっぱりだな。後でデルフにでも聞いてみよう。
前に学院で寝ていていつの間にか外で眠っていたということがあった。しかも二つの手首を両手に握り締めているというおまけつきだ。
あのときデルフを外に放り投げていたからデルフに私が外に出ていた理由を聞いてもわからなかったが、今回は部屋に置いていた筈だ。
つまりデルフは私が外に出た理由を知っているはず。
そこまで考えると、ふと自分の考えにとてつもなく不吉なものを、違和感を感じた。前には感じなかった、しかし今だからこそ感じるこの違和感。
その違和感の元は、あのとき自分が手首を握っていたということだ。
あのとき劇場でみたキラヨシカゲ、灰色の空間で腹をぶち抜かれながらも見たキラヨシカゲの記憶の一部。
キラヨシカゲは女の綺麗な手に異常な執着を示す性的嗜好の持ち主だった。手を手に入れるためだけ何十人もの人間を殺している。
しかし、私はそんな異常な性的嗜好はない。ちゃんと女性の身体が好きだ。これは普通の性的嗜好だろう。
そんな私が手首を持っていた。しかも自分の意識がないときにだ。
もしかしたら、キラヨシカゲが私の体を動かして人を殺し手首を手に入れた?……おそらくそうだ。そうに違いない。
そう考えれば手首を持っていた説明がつく。夢遊病じゃ人を殺しはしないだろう。
そう考えると今回のこともキラヨシカゲのせいではないか?キラヨシカゲが私の体を動かして草原まで行った。十分にありうる。
アルビオンでワルドと闘っていた最中意識がなくなったとき、デルフは私がちゃんと闘っていたと言っていた。
私の意識がなくなっていたとき、闘っていたのはキラヨシカゲか?
キラヨシカゲは私が気づかなかっただけで結構頻繁に私の体を動かしていたのか!?そう考えるとゾッとする。
もし、私があの劇場に行かなかったら、杉本鈴美に会わなければ、キラヨシカゲのことを自覚しなければ、私はキラヨシカゲに乗っ取られていたかもしれない。
「ねえ、ヨシカゲ」
「え?」
ルイズの突然の呼びかけに少し驚いた声を出してしまう。なんだよいきなり。
「……ううん、やっぱりなんでもない」
「そうか」
口調やしぐさからして何かを話そうとしたみたいだな。一体何を話そうとしたのだろう。
私の空白の時間帯のことか?それともまた別の何かか?それはわからない。だが、この様子だとそう遠くない日に自分から話すだろう。
そのときを待てばいい。しかし、強制的に聞き出さなきゃいけない奴がいる。それはデルフだ。
デルフにはアルビオンでワルドと闘ったときのことを事細かに話してもらわないとな。いずれ話すだろうと思っていたがそんなのんきに待つ気はなくなった。
とりあえず、デルフと猫をこっちへ引き寄せておこう。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー