ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい No Remorse

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
         使い魔は手に入れたい  No Remorse

その日、シエスタは少し戸惑っていた。
「ヨシカゲさん?ヨシカゲさーん」
コン!コン!
呼びかけながらもう一度ノックしてみる。しかし、反応は全くない。
出すまい、出すまい、と思っていたがやはりため息が出てしまう。さっきから暫らくの間こうして呼びかけているのだが一向に反応がないからだ。
何故こんなことになっているのかというと、朝食の時間になってもヨシカゲとルイズが来ないからだ。
初めは待っていたのだが、あまりにも来ないので呼びに来たのだ。ルイズは弟たちに任せてある。
弟たちに任せればどんなに寝惚けている人でも忽ち起こしてしまうほど五月蠅いので、ルイズもすぐに起きるだろう。
シエスタは村に来るまでルイズと同じ部屋で寝起きしていたので、ルイズがどれだけ朝が弱いか知っている。だから弟たちに任せたのだ。
だが、弟たちに任せた理由は上辺だけに過ぎない。本当の理由は、自分がヨシカゲを起こしたかったからだ。
昨日は都合よくルイズが買って出たのでいけなかったが、今回は自分が起こせるチャンスなのだ。そのチャンスを逃すことがあるか?いや、ない反語。
そんな感じで起こし来て10分が経ち冒頭に戻る。
まさか、これほど呼んでも起きないとは思わなかった。
それほど深く眠っているのだろうか?
でも、ヨシカゲさん結構朝は早いほうよね?
そう、早朝仕事をしているときなど、たまにヨシカゲの姿を見かけることがあった。洗面器に水を汲んだり、洗濯などを朝の早いうちにしていたからだ。
自分にも仕事があったし遠目で見ただけなので声はかけなかったがこんな時間に起きているのかと感心していた。
それに中継所でも常に自分たちより先に起きていたのだからなおさらである。
そんなヨシカゲがこれだけ呼んでも起きないというのは少し引っかかる。だからと言って勝手に部屋の中に入るのは失礼だ。
「おねーちゃん!」
部屋に入るべきか否かを考えていると、ルイズを起こしに行かせた弟の一人がシエスタの元へやってきた。
「どうしたの?」
「貴族さまぜんぜんおきないよ~」
「え、ミス・ヴァリエールが?」
「ぼくたちちゃんとおこしたよー!おきない貴族さまがわるいんだもん!ぼくたちわるくないもん!」
「あ、はいはい。わかったからそんなに喚かないの。別に怒ってないでしょう」
ミス・ヴァリエールが起きない?
弟を宥めながらそのことを思い返す。
いくらルイズの寝起きが悪いといっても、弟たちに任せれば確実に起きるはずだ。自分でも時間は掛かるが起こせれるのに。
それなのに起きないなんていうのはいくらなんでもおかしいだろう。
それにヨシカゲも起きないというのはいくらなんでも出来過ぎじゃあないだろうか?
そんな思いがシエスタの胸中をよぎる。
よし、部屋に入ってみよう。
やがてシエスタはそう決め、ドアノブに手をかけ、捻る。鍵はかかっていない。
「ヨシカゲさん、失礼します」
声をかけながら部屋の中に入ると、そこには、
「あれ、おじさんいないじゃん。あ!ネコ!」
「ミャオ!?」
誰もいなかった。剣と帽子と手袋と、弟から逃げ回る子猫以外、そこにはなにもなかった。
シエスタはそれを確認した瞬間、部屋から出て急いでルイズの部屋へ向かう。部屋の前には弟たちがルイズを起こそうと声を上げドアを遠慮なく叩いていた。
それをやめさせドアノブを掴む。そして間髪いれずドアを開く。
「ミス・ヴァリエール、失礼します」
もちろん声をかけるのも忘れない。
部屋の中に入りすぐにベッドを見やる。そこにルイズはいなかった。
「貴族さまいないよー?」
「おねえちゃん、勝手にはいっていいの?」
「あれー?いないいない?」
村を出たわけじゃない。
シエスタはそう結論付ける。何故ならルイズの部屋には荷物が残されているからだ。
ヨシカゲの部屋にも荷物は少量ながら(剣しか持って来ていなかった気がする)残されていた。
では二人そろってどこへ?
シエスタはとりあえず父の判断を仰ぐことにした。その後、近所のもので貴族とその従者探しが行われた。

そして1時間後、ルイズとヨシカゲは草原で発見された。発見者はシエスタ。彼女は相当慌てて草原に来るように皆に訴えていた。
探していたみんなが草原に行くとそこにはルイズとヨシカゲが倒れていた。
ヨシカゲは顔を大きく腫らし口から血を流して、ルイズは頭部から血を流しながらそれぞれ気絶していた。二人はすぐに村へ連れて行かれ手当てされベッドへ寝かされた。
シエスタの父はシエスタに草原に探しに行った理由を聞くと、昨日3人で見に来たからここ以外に心当たりがなかったからだという。
なぜこんなことになっているのか?村の人たちは考えたがいくら考えても出るわけがなかった。


白い、白い、白い空間が続く。
この部屋には白い以外の部屋はないのだろう。あの例外を除いてだ。

She keeps Moet and Chandon in her pretty cabinet
'Let them eat cake' she says, just like Marie Antoinette
A built in remedy for Khrushchev and Kennedy
And anytime an invitation you can decline
Caviar and cigarettes well versed in etiquette
Extr'ordinarily nice

相変わらずのこの歌流れている。この歌を流すあの人影がこの白い空間の中、私を除いて唯一白以外の色を持っている。
その歌に連れられる様に人影の元へ向かっていく。
どうして自分がここにいるのか?どうして崩れたはずの体がここにあるのか?そんなことはどうでもいい。
今することは、あの人影のところまでいくことだ。
この空間に来た瞬間にそう決めた。何故なら思い出したからだ。前にこの空間に来たときのことを。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~...(~~~)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (~~~~?)

サビは相変わらず聞こえない。私には聞こえない。私には聞こえることはない。
それを実感しながら人影に向かって歩く、歩く、歩く。まずあの人影のところまで行かなければ話しにならないのだから。

To avoid complications, she never kept the same address
In conversation, she spoke just like a baroness
Met a man from China went down to Geisha Minah
Then again incidentally if you're that way inclined
Perfume came naturally from Paris (naturally)
For cars she couldn't care less, fastidious and precis

人影はやはり右腕しかはっきり見えない。私には右腕しか見えない。
それを改めて実感しながらさらに歩く、歩く、歩く。
なぜ、聞こえないのか?何故見えないのか?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(~~~~)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(~~~~~?)

この歌の曲名は『KILLER QUEEN』、あの人影の名前も『KILLER QUEEN』。
どうして解るのだろうか?

Drop of a hat she's as willing as a playful as a pussy cat
Then momentarily out of action, temporarily out of gas
To absolutely drive you wild, wild
She's out to get you
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(~~~)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (~~~~~?)

私が持っているのは銃だとあの男は言っていた。
自分が持っているのは弾だと。初めは何のことだかわからなかったが、今考えればわかる。
もう一つの右腕、『キラークイーン』のことだろう。あのときそう言っていたはずだ。
弾を撃ち出すためには銃がなければいけない。弾だけではその真価は発揮できない。銃だけではその真価を発揮できない。
銃と弾は二つで一つだ。
ついに人影のところまでたどり着く。そこには既に私を待ち構えるかのように人が立っていた。中肉中背のどこか気品漂うような、しかし影の薄い顔立ちをした男が。
なにも言わず私たちは見つめあう。目の前に立つ男の顔は舞台で見た男と同じ顔だった。
「……改めて、初めて。私の名前はヨシカゲ。キラヨシカゲだ」
「奇遇だな。私も吉影。吉良吉影だ」
初めて私たちは、お互いのことを理解して見詰め合った。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー