ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-22

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
学院長室への階段。
ミスタ・コルベールは、左足を若干引きずりながら一歩一歩上っていた。
時々左足に痛みが走る度、彼は三日前にその傷をつけた、ミス・ヴァリエールの使い魔を思い出す。
初めはただの死体だと思っていたソレが動き出し、あまつさえ自分に牙をむいた様を。
それをいなせなかった事実は、単純にコルベールに驚きを与えていた。
(私も、ヤワになったというわけですかな……)
が、同時に彼は、その使い魔に対して非常に強い興味を抱いていた。
首だけでも活動し、メイジにケガすら負わせる異形に。
コルベールは好奇心の強い人間だった。
襲われたことに怒りを覚える前に、興味を感じてしまっている自分を皮肉りながら、コルベールは学院長室の扉を開けた。

「失礼いたします、学院長」
コルベールが学院長と呼ぶ人物、オールド・オスマンは、窓際に立ち、腕を後ろに組んで、重々しく彼を迎え入れた。
側には彼の秘書であるミス・ロングビルが黙々と書類仕事をこなしていた。
コルベールは無言で彼女に挨拶した。
彼女もまた無言でそれに応じた。

「ケガは治ったようじゃな、ミスタ・コルベール」

「……まだ少し痛みは残りますが、概ねは」
「君の治療に使った秘薬の代金は、バカにならんかったぞ…?」
「…………………」
「一応は、勤務中の事故じゃからな。学院の経費で決算じゃ。
しかしのう、額が額じゃ。王室の連中からまたケチを付けられるわ」
「………申し訳ありません」
コルベールは居心地悪そうに頭を下げた。
オールド・オスマンはフンッと鼻息を荒げた。

「謝る時間があれば、たるんだ貴族共から学費を徴収する上手い方法を考えるんじゃな。
誰だって我が身は可愛い……そうじゃろう?」
オールド・オスマンの鋭い視線が、コルベールを射抜いた。
コルベールは再び頭を下げた。
冷や汗が彼の頬をつうっと垂れた。

「で、一体何のようじゃ?
ケガの回復の報告だけをしに来たのではあるまい」
そんなものは書類で済む話じゃからのう、というオールド・オスマンに、コルベールは重々しく言った。

「…ヴェストリの広場で、決闘を始めようとしている生徒がいるようです。
大騒ぎになっています。」
オールド・オスマンは苦々しげにため息をついた。

「全く、隙を持て余した貴族ほど、たちの悪い生き物はおらんわい。
で、誰が騒いでおる?」

「1人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あのグラモン家のこせがれか。
オヤジ同様、大方女の取り合いじゃろう。
相手は誰じゃ?」
コルベールは一瞬躊躇したが、オールド・オスマンの促しに耐えきれずに話した。

「……どうやら、ミス・ヴァリエールの使い魔のようです」
オールド・オスマンの片眉がピクと持ち上がった。

「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが…」
オスマンの目が、再び鷹のように光った。
コルベールはうっとうろたえた。

「アホか。小競り合いの延長のような決闘如きに、秘宝を使ってどうする。
しかし………ふむ、そうじゃな…ウチの大切な教員にケガをさせたそのミス・ヴァリエールの使い魔か…。興味深いのう」
いちいち話をほじくり返すオスマンに対して、コルベールは針のむしろに居るような心地だった。
そして、オスマンはその杖を振った。
壁に掛かった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。

―――――――――――――――――――――――
ヴェストリ広場は魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある中庭である。
西側にあるその広場は、昼間は日があまり差さない。

決闘にはうってつけの場所だった。
そのヴェストリ広場は、ギーシュの取り巻きが広めた噂を聞きつけた生徒で、溢れかえっていた。その中には、キュルケとタバサの姿も伺えた。
噂を聞きつけて駆けつけてきたのだろう。
他の観衆と違って、二人はいつでも魔法を使えるように緊張していた。
が、キュルケは時々チラチラとルイズ顔色をうかがっていた。
何かに怯えているようだった。
その観衆の輪の中、DIOは静かに皆の視線を受けていた。
後ろには、ルイズとシエスタがいた。
ルイズは腕を組んで、己の使い魔を見守……いや、睨みつけている。

「諸君! 決闘だ!」
ギーシュが薔薇の造花を掲げた。
歓声が巻きおこる。

「ギーシュが決闘するぞ!
相手はあの『ゼロ』の使い魔の平民だ!」
ルイズの頬が一瞬ピクリと痙攣した。
が、すぐに何事もなかったように無表情に戻る。
ギーシュは一通り歓声に応えたあと、もったいぶった仕草でDIOの方を向いた。

「とりあえず、逃げずに来たことは誉めてやるよ、平民」
ギーシュは薔薇をいじくりながら歌うように言った。
DIOは無視した。

「では、始めようか!」
そう言うと同時に、ギーシュは薔薇を振るった。

花びらが一枚宙に舞い、甲冑を着た女戦士の形をした、人形になった。
硬い金属製のようだ。
甲冑が陽光を照り返し、きらめいた。
DIOはその様子を見やると、興味深そうにほぅといった。

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。
文句はあるまいね?
僕の二つ名は『青銅』。従って青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手するよ」
ギーシュが大仰に礼をした次の瞬間、ワルキューレがDIOに向かって突進した。
一瞬で間合いに入ったワルキューレが、その右の拳をDIOに振りかざした。

が、瞬間、あたりに銅鑼を思い切り叩いたような、
"ゴワァァアン"という音が響いた。
ワルキューレが地面に水平に吹っ飛び、ギーシュの前に転がった。
みると、ワルキューレの腹部は、ハンマーで殴られたようにボッコリとへこんでいた。
ギーシュは、うっと呻いた。
DIOを睨む。
DIOは腕を組んだまま、静かに佇んでいる。
しかし、ギーシュの目は、DIOの前に、うすぼんやりとした何かが浮いているのが見えた。
DIOはチッと舌打ちして、ソレを見ている。

「平民…! 今何をした!?
何だソレは!?」
DIOは再びほぅと言った。

「見えるのか、小僧。我が『ザ・ワールド』が」
ルイズは、先ほどの光景を間近で見ていた。
ギーシュのワルキューレが、DIOにその金属の拳を振りかざした瞬間、DIOの体から出てきたソレが、ワルキューレを殴り飛ばしたのだ。
ソレは、DIOの周囲をフワフワと漂っていた。
人間の上半身のようにもみえるソレは、ヒドく像がぼやけていた。
ムラサキともピンクともつかない色を放っていて、まるで幽霊のようなソレには、左腕がなかった。

(あれが、DIOの言っていた、『すたんど』…ってやつかしら?)
ルイズはそう推測した。
恐らくはあれが、DIOの能力なのだろう。
青銅をへこませた所をみると、かなり腕力がありそうだ。
『ざわーるど』……変な名前だ、あいつの靴のデザインには負けるけど、とルイズは思った。
だけど、あれだけなのだろうか……?
あれでは、殴る拳が一つ増えただけに等しい。
それだけで倒せるほど、ギーシュは……メイジは甘くない。
何か、別の力でもあるのだろうか、あの幽霊には。
何にしても、これからが見ものだ、とこぼしつつルイズはギーシュの方を見た。

一方のギーシュは、苦々しげにDIOに吐き捨てた。

「…ふん!何だか知らないが、やってくれたじゃないか。
『ゼロ』の使い魔の癖に…!」
ルイズの頬が、今度はピクピクと二度痙攣したが、ルイズは表面上は穏やかだった。
―――表面上は。

そんなルイズの内心を知らぬまま、ギーシュは再び薔薇を振った。
六枚の花びらが舞い、さっきと同じように六体のワルキューレが現れた。

先ほどとは違い、剣や槍や斧など、様々な武器を持っている。
それと同じく、ギーシュの足元に転がるワルキューレの腹の窪みがすうっと元に戻った。

「平民のクセに、生意気におかしな力を使うようだな。
…いいだろう、ならば、この『青銅』のギーシュ、全力でお相手いたそう!」
ギーシュが薔薇の造花を振ると、一体をギーシュの側に残して、都合六体のワルキューレが、DIOに向かって再び突進した。
それを迎えて、DIOは初めて、組んでいた腕を解いた。

to be continued……


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー