ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-4

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匿名ユーザー

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初めにいた家から歩き出しおおよそ10分ほど経った頃、私は立ち止まりこの場所について観察した結果をまとめていた。
いたるところにある洋式の家。しかも本でしか見ないような比較的古い時代のもの。
規模から見ておそらく集落だろう。
どの家にも明かりはついておらず、この集落の住人が寝静まっていることがわかる。
そんなことが解っても意味はないけどな。
家の形式や風景から見て、ここが外国だということは解る。しかし、地球上で月が二つも見えるところなんてありはしない。
何故なら月が二つもないからだ。
ではここはどこなのか?
古い洋式の家、集落、外国、二つの月……ダメだ。いくら考えてもこれらが関係があるようには思えない。
これらに私がここにいる理由を関連付けることができない。
ギ…グギギ…………ミシミシ……
そんな音をたてながら爪が伸びるような気がする。いや、気のせいではない。
実際に伸びているのだろう。
音こそたてていないが確実に少しずつ爪が伸びている。
この世に、この世の中に自分を偽れるものがどれだけいるのだろうか?
ミシ…………ギチ……
この世の中に持って生まれた『性』というものを抑えられる人間がいるのだろうか?
永遠に誰にも自分の『本性』を隠し続けられる人間がいるだろうか?
いない……
誰にも『爪』を伸びるのを止めることができないようにな……
今、ここにいたら私はきっと、どこかの家に忍び込み誰彼構わず殺してしまうだろう。
それは避けなければならない。今、この状況で派手なことをするのは非常に危険だ。
ここに来る前はそのことにまで頭が回らず二人も殺してしまった。あの時はたまたま運が向いていたと考えるべきだろう。
同じようにうまくいくというのは二度と考えないほうがいい。
少なくとも、自分にとって都合のいい状況を作り出せるまでな。
そう考え再び足を進める。この集落の外へとだ。
とりあえず、ここから離れて他の場所の様子も見るべきだ。
クソッ!これほど我慢しなければならないなんて!
仗助や承太郎たちさえいなければこんなことにはならずにすんだものを……!
発散できぬ怒りをうちへ溜め込みながら私は適当な方法へ進んでいった。

「……………たちは夜の間だけしか逢えないのかしら……」
「……なこと言わないでくれ。俺だって悲しいさ」
村から離れ、暫らく歩いていると、茂みの中から声が聞こえてきた。
それを聞き取り思わず立ち止まる。
若い男と女の声だ。なにやら憂いを帯びたような声で話し合っている。
「いくら親同士が仲が悪いからって……」
「そのことなんだけど……、俺、思い切って親に話してみようかと思うんだ!」
「え!?」
「それで、君の両親にも会って話してみるつもりだ。お前をちゃんと付き合せてくれって」
どうやら逢引らしい。
聞く限り親の不仲が原因のようだな。
しかし、そんなことはどうでもいいんだ。問題は!
『本性』を表さないために村から離れたというのになぜここに人がいるかということだ!?
ギギ…ギ…………グギギ……
せっかく、せっかく、せっかく我慢できていたというのに……
この辺りには誰もいない。民家もない。奴ら以外に人はいない。
やるなら絶好のチャンスだ。
自分の中の『本性』が急速に自分の心を支配していく。
ばれる心配はない!やってしまえ!
心がそう叫ぶ。
そして、私は彼らに向かって足を進めようとして……それを無理やり押し留め別の方向に向かって足を突き出した。
ここが正念場だ。誓ったではないか、油断しまいと。
ここでやってしまってはその決意に楔が入ることになる。それは避けなければならない!
自分の両手を握り締め固く握り締め歩き出す。足音を立てぬように気をつけつつも急ぎ足で。
握った拳からは血が出ていた。爪は短く切られていたはずなのに、血が出ていた。
まるで『本性』の叫びを代弁するかのように。

早足で去っていくヨシカゲの後ろ姿を、鳶色の瞳は見詰めていた。
まるで何かを問うかのように。そして瞳は彼の後を追って動く。
……キラヨシカゲは、気づかない。


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