ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-30

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匿名ユーザー

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「それにしても……人気ね」
「……人気ですね」
「……人気だな」
今、シエスタとその家族、そして私とルイズの二人を足したあわせて12人が一つの部屋に集まっている。
理由は簡単、夕飯だからだ。
それ以外の理由で全員が集まることなど他にそうないだろう。
夕飯が始まったころ、シエスタの家族は緊張していた。それは手に取るようにわかった。
貴族と同じ食卓にいるのだし、作った食事が貴族の口に合うかどうかもわからない。
緊張するなというほうが無理な話だ。
小さいガキどもは親に何か言われたのかは知らないが殆ど喋らない。
ルイズはルイズでこういった状況に慣れていないのか周りをちらちら窺っていた。
シエスタは何とかその空気を変えようと努力していたがうまくいっていなかった。
私は自分には関係ないものの、そういった空気の中一人堂々と食べれるほどの鈍感ではないので私も食事には手をつけていなかった。
そんなげっそりしそうな空気を変えたのは1つの存在だった。
それは突然テーブルの上に飛び乗った。
そしてまるで自己主張するかのごとく伸びをする。
その存在はその場にいた全員に驚愕の目を向けられていた。
そう、その存在とはまさしく猫だった。部屋においてきたはずの子猫がそこにいたのだ。
後でわかったことだがあの扉は鍵でもかけない限り軽く押すと簡単に開くらしい。
猫は丁度私とルイズの間にいた。
そして子猫は当然のように私の食事を食べ始めたのだ。
全員がその光景に呆然としている中、猫は我関せずといった感じでパクパクと私の食事を食っている。
そしてふと我に返った私はそのとき思った。
殺してやるぜこの畜生がっ!と。
さすがにその場で殺すのはまずいと思ったのでとりあえず猫を捕まえようと手を伸ばしかけた瞬間、
「かわいいー!」
その声が部屋に響き渡った。
その声がした方向を向く。声を発したのはシエスタの弟だった。
まだ幼くいかにも自分が抑えれませんといった感じの典型的なガキそのもので、間抜け面さらしてテーブルに身を乗り出し猫を見ている。
「ほんとだ!ネコだ!」
「まだちっちゃーい!」
その弟を皮切りに、小さいガキ共が次々声を上げていく。
やれやれ、五月蠅いことだ。これだからガキは嫌いなんだ。
五月蠅いし、人の迷惑を考えない、していいことと悪いことの区別もつかない。
この子供特有の高い声は何時まで経っても慣れるものではないしな。
しかし、それが場の空気を変えたのは確かだった。
「ねえ、おじさん!そのネコおじさんのでしょ!さわらしてさわらして!」
「おじ……」
どうやら私は子供にはおじさんと呼ばれるような外見らしい。
自分の正確な年齢はわからないが20代半ばほどだと思っていたのでひそかにショックだった。
「おじさん触らせてよ!」
「おねがいおじさん!」
「バーブー!」
「ちゃーーん!」
こいつらおじさんおじさん言いやがって。
そう思っていると笑い声が隣から聞こえてきた。
隣、つまりルイズのほうを向くと、ルイズは口に手を当てこそしていたが堪えきれずにかなり笑っていた。
「お、おじ、おじさんだって……クスクス。ダ、ダメ、耐え切れない……」
ついには目の端に涙すら溜めていた。
もしかしてと思いルイズとは反対の隣に座っているシエスタのほうを見てみる。
シエスタはこちらに完全に顔を背け方を震わしていた。
場合によっては泣いているように見えなくも無い。しかしこの場合確実に笑っている。命を懸けてもいい。
っというかシエスタ、お前はこういう場面だったら謝るようなキャラじゃなかったのか。私の思い違いか?
「おじさん!」
「おじさん!」
「おじさん!」
「おっちゃん!」
『おじさん!』
シエスタの両親を見る。彼らも顔を完全にそむけ肩を震わしている。食事中に騒いでるんだからガキ共を止めろよ!
待て!落ち着け私!こんなに慌てていたらまるで自分がおじさんおじさん言われて焦っているみたいに思われるじゃないか!
くそっ!大体こんなことになったのも全部このクソ猫のせいだ!
もはや空っぽになった器から次の器に手(口かこの場合?)をつけようとしている猫を捕まえる。
そして席を立ちガキ共のほうへ近寄る。
「ほら、思う存分触ってもいいぞ。この子猫はちょっとやそっとじゃどうにもならないから結構激しいことをして遊んでみてもいい。
思いっきり投げつけるだとか、蹴り上げるだとか、ボールの代わりにしてもいいし、とにかく好きにしてもらって構わない」
「ニャッ!?」
私が言ったことが理解できたのか、それとも本能で危機を察知したのか、猫が慌てて私の手から逃れようともがく。
だが甘い!もはやお前はこのガキ共に弄ばれる運命にあるのだ!
「わーい!」
「ありがとうおじさん!」
そう言ってガキ共は猫を私から受け取り猫を弄くり始めた。ガキは加減を知らないからな。せいぜい酷い目に会うがいい。
そして席に戻るとシエスタが何時の間に持ってきていたのか新しい器に猫に食われたおかずを入れていた。
「はいどうぞ。おかわりはまだありますからどんどん食べてくださいね。おじ……」
私に新しい器を渡すと同時にすぐに私から顔を背け肩を震わせはじめる。
今おじさんって言おうとしただろ。
「優しいわねおじさん」
ルイズはそう言うと今度は腹を抱えながらケラケラ笑った。
言い切りやがったこのアマ!
しかし私が犠牲になったおかげで随分と場は変わった。
シエスタは家族に学院のことを話し、その話にルイズも参加し、シエスタの家族もルイズに敬語ながらも随分と軽く話せるようになった。
私はあえて黙々と食事を取っていた。いい気分ではないからな。
そして、
「それにしても……人気ね」
「……人気ですね」
「……人気だな」
冒頭に戻る。
今私たちはガキ共に弄ばれている猫を見ていた。先ほどからガキ共は飽きもせず猫を弄繰り回している。
猫は傍から見ても疲れているように見えた。
「えーと、大丈夫なんですかあのネコちゃん?あんなふうにさせても。ヨシカゲさんのネコなんでしょ?」
「別に構わないさ」
私の猫じゃないし。
「そういえばシエスタ」
「はい?」
「爪を切りたいんだが鑢はあるか?最近伸びるのが速くてな」
「ありますよ。食事が終わったら部屋に持っていきますね」
「ああ、頼む」
それで会話を打ち切り食事を再開する。
「ミャーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
猫の悲鳴が聞こえたが幻聴だと思うことにして食事を続けた。


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