ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-17

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匿名ユーザー

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結果的にルイズの企みはほぼ失敗したといえる。
あのあとDIOが帰ってきてから、ルイズは1も2もなくDIOに魔力を流す訓練をした。
少しずつ少しずつ流してゆくのは実に骨が折れた。
気を抜けば、蛇口を壊したみたいに抜けていってしまう。
2、3時間の試行錯誤の後、ルイズは肌でその調整を覚えた。
そして、DIOの意に反する命令を聞かせるには、相応の魔力を代償にされることを、数回の気絶の後、ルイズは知った。
仮にルイズが一時間に生産できる魔力を10として、DIOに強制命令執行を行うには15必要とすれば、その差額の5が、気絶というかたちでルイズに跳ね返ってくるのだ。

巨大なダンプカーを操縦しているような気分だった。
操作性最悪だ。
燃費も余りに悪すぎる。
取り敢えずルイズはルーンを介してDIOに洗濯を命令してみた。
当たり前のようにルイズは気絶した。
しかし、二時間後に失敗を悟ったルイズが目を覚まして裏庭に向かうと、意外や意外、自分の服が綺麗に洗濯されて整然と干されていた。
ルイズの純白の下着が、ユラユラと風に揺れていた。
怪訝な顔を向けるルイズに、DIOは答えた。

「使い魔になると、約束したじゃあないか、『マスター』。
 これくらいのことはするさ」
「せ、洗濯、上手ね」
「……昔とった杵柄だ」

完璧すぎて、嫌みにしか聞こえない。
DIOは表面上は穏やかだが、すねたような、嫌そうな雰囲気がルーンを介してしっかり伝わってきて、実に心地よかった。
しかしなんだ、別に無理やりさせなくても、使い魔としての仕事はやってくれるらしい。
ありがたいといえば、ありがたいが、素直すぎて逆にルイズは不気味だった。
一線を越えるような命令には従わないが、何を考えているのかわからない。

一応警戒するものの、同時にルイズは、化け物のくせに優雅で貴族然としたDIOにこうした汚れ仕事をさせることに、ゾクゾクするような背徳的な喜びを覚えた。
気がしただけだが。
2メイル近い屈強な男が、自分の命令でゴシゴシ洗濯していただろう姿を想像して、ルイズはうっとりした。
(今度から見学してみようかしら……)
ルイズは案外ダメな人間だった。
使い魔として働いてくれるDIOにすっかり味を占めたルイズは、段々調子に乗り始めた。
ルイズそれを自覚していたが、こんな楽しいこと、止められそうにもなかった。

掃除をさせて、キレイになった部屋のぐるりを見回して、ルイズは得意になった。

(もっと鍛錬を積んで、魔力を増やしてゆけばゆくゆくは……)

輝かしい未来を妄想して、ルイズはウキウキした。
床につく前、ルイズはDIOに一冊の本を貸した。
彼女が子供の頃、よく姉のカトレアに読んでもらった、思い出の品だった。
ありがたく読むようにと言うルイズに、DIOは何も言わずに本を受け取り、宝物庫からパチってきたソファーに横になった。

(……………………………)
ルイズは今度はDIOに床で寝るように命令してみた。
ルイズの意識が急速に遠のいた。
何故だろうか、昨日と違って、DIOには何の変化もなく、ソファーでルイズが貸した本を読み始めていた。
いずれにせよどうやらルイズにはまだ過ぎた命令らしかった。
レベル不足という奴だ。
だが、今度はちゃっかりベッドの上からためしていたので、問題は無かった。
いつか絶対に床に寝かしちゃる……と薄れる意識の中で固く決意しながら、ルイズはポテンとベッドに伏せった。

明日は学級閉鎖が解かれ、召喚を行ったクラスメイト達が初めて顔を合わせる日だ。
そう思うと、ルイズは複雑な気持ちでいっぱいだった。

翌朝、ルイズはやはり部屋に溢れる陽光で目を覚ました。
カーテンは閉められていて薄暗いものの、その光をウザったく思いながら、ルイズはもぞもぞとベッドから起きた。

「服~」
薄闇の向こうから、ポーンと上下が飛んできた。

「下着~」
薄闇の向こうから、ポーンと上下が飛んできた。

「着せて~」
「…………………」
今度は何も反応がなかった。
渋々ルイズは自分でそれらを身につけた。
もう目は覚めていた。

「今日は授業があるわ。あんたにも同伴してもらうから」

DIOは無言でルイズに従った。

ルイズが使い魔と共に部屋を出るのとちょうど同じく、隣のドアが開いて、中から燃えるような赤い髪をしたキュルケが出てきた。
メロンみたいなバストが艶めかしく、身長、肌の色、雰囲気……、全てがルイズと対照的だった。。
彼女はルイズを見ると、にやっと笑った。

「おはよう。ルイズ、もう大丈夫みたいね」
とりあえずは契約に協力してくれた恩人なのだが、ルイズは嫌そうに挨拶を返した。

「おはよ、キュルケ」
挨拶もそこそこに、キュルケはその隣にいる男に鋭い視線を向けた。

「で、これがあなたの使い魔ってわけね」
「そうよ」
「まぁ、契約したあとは、ご主人様と使い魔の間の問題だから、 口出しはしないわ。
 でも、サモン・サーヴァントで化け物喚んじゃうなんて、あな たらしいわ。さすが『ゼロ』。
 クラスはあんたの噂で持ちきりよ~?」

ルイズの白い頬に、さっと朱がさした。

「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよね~。
 フレイムー」

キュルケの呼び声に応じて、彼女の部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。
廊下の気温がグッとあがった気がする。
それを見たDIOは、実に興味深いといった風に、そのトカゲ…サラマンダーに視線を向けた。
サラマンダーがビクリと震えて、己の主を守ろうとキュルケの前に進み出た。

「平気よ。あたしが命令しない限り、襲ったりしないわ」

しかしサラマンダーは、牙を剥き出しにしてDIOを威嚇している。
今にも炎を口から吐き出しそうだ。
しげしげとサラマンダーを観察しながら、DIOが聞いた。

「こんな生き物が、この世界には当たり前のように存在してるの か」
「えぇ、そうよ。でも、そのセリフ、そっくりあなたに返してあ げるわ。
 あんた、何者?」

「…………DIO、だ」
サラマンダーに目を向けたまま、名乗った。

「へぇ、ディオね。名前だけはマトモね」
そこにルイズが割り込んできた。

「DIOよ。ディオじゃなくて、DIO」
「はぁ?どう違うのよ?」
「私に聞かないでよ。あいつがそう言ってしつこいから、先に言 っておいただけよ」
「ふぅ~ん。ま、どうでもいいけど。
 じゃあ、お先に失礼」
炎のような赤髪をかきあげ、キュルケは去っていった。
フレイムはこちらに視線を向けたままジリジリと後ずさり、やがて振り返って自分の主を追った。
キュルケがいなくなると、ルイズは拳を握り締めた。

「キーっ!なんなのよあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを 召喚したからって!
 ……あぁ、もう!」
「何か問題でも?」
「おおアリよ! メイジの実力を計るには、使い魔を見ろって言 われているぐらいよ!
 なんであのツェルプストーがサラマンダーで、わたしがあんた なのよ!
 化け物? わたし化け物なの? 冗談じゃないわ!」
「……もし、本当に使い魔がメイジの写し身なのだとしたら…… ふん、君が私を喚んだとしても不思議ではないね」
思わぬ返答だった。

「どういうことよ。やっぱり私が化け物だって言いたいの?
 朝食抜くわよ?」
「…………………」


トリステイン魔法学院の食堂『アルヴィーズ』。
3つのやたらと長いテーブルが並んでおり、百人は優に座れそうだ。
ルイズたち二年生は真ん中のテーブルらしかった。
一階の上に、ロフトの中階があった。
教師たちはそこで食べるようだ。
その中に、コルベールの姿を窺うことは出来なかった。
まだ回復していないらしい。
自分の未熟のせいでケガをしたコルベールを思うと、ルイズの胸は痛んだ 。
ルイズは気を取り直すと、得意気に指を立てて説明にはいった。

「トリステイン魔法学院では、魔法だけでなく、貴族たるべき教 育を存分に受けるの。
 だから食堂も、貴族の食卓にふさわし云々……」

ペラペラとまくしたてるルイズだが、DIOは全く聞いていなかった。
サッサと席について、その豪華な食事にありついていた。
突然現れて、勝手に席についた大男に、生徒は眉をひそめたが、男の発する『自分はここにいて当たり前』オーラのせいで口出しが出来ないでいた。
そしてその作法は完璧だった。
誰も、目の前に座っている男が、三日前に見た死体だとは露とも思わなかった。

それに気づかず話し続けるルイズの話はとうとうクライマックスを迎えたようだ。
サッパリした顔をして振り返ったが、そこにはもちろん誰もいなかった。
慌ててテーブルに目をやると、DIOは既に食事を終えていた。

「んな、ななななな、何してるのよ!?」

ドカドカとクラスメイトにぶつかりながら、DIOに詰め寄る。

「食事を終わらせた。外で待っているよ、『マスター』」

去り際の、"まぁまぁだ"というDIOのセリフが、癪に障った。
自分に逆らったらどうなるか、朝食で教えてやろうと思っていた目論見は御破算になり、ルイズはプルプルと震えながらDIOの背中を見送った。
to be continued……


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