ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-18

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匿名ユーザー

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魔法学院の教室の1つ。
ルイズ達二年生は、今日はここで『土』系統の魔法の講義を受けることになっていた。
皆、様々な使い魔を連れていた。
キュルケのサラマンダーをはじめとして、フクロウや、カラスや、ヘビやドラゴンや…実に多種多様だ。
召喚が終わってから初めての授業、本来なら使い魔の見せ合いで騒がしくなるはずなのだが、
彼らは今日は一段と静かだった。
皆、1人の生徒の登場を待っていた。
『ゼロ』のルイズ。
魔法を全く使えない彼女が、サモン・サーヴァントでとんでもない化け物を呼び出し、挙げ句の果てにコルベール先生に重傷を負わせたらしいという噂が、まことしやかに囁かれていた。
目撃者の証言によると、彼女が召喚したのは化け物ではなくて『死体』…それもバラバラの…
だそうだが、彼らの叫びは他の生徒の、常識という箱に入れられ、蓋を閉められた。
大体の生徒は、化け物説を信じ、期待とスリルに胸をふるわせていた。
ギイと、重々しく講義室の扉が開いた。
他の生徒は皆そろっていたので、残る1人は必然的に噂の『ゼロ』ということになる。
果たして、入ってきたのはルイズであった。

皆の視線がルイズに向けられていた。
そして、ルイズに続いて入ってきた、1人の男に。
だれもかれもが、あっけにとられていた。
"なんだ。どんな化け物かと思ったら、ただの平民じゃないか"
1人また1人くすくすと笑い始める。
だが、キュルケとタバサは鋭い視線を男に向け、
そしてルイズの召喚を間近で見ていた一部の生徒は、困惑しながらも怯えていた。
そしてさらに一部の生徒は、その男が自分達と同じ食卓についていたことを思い出し、眉をひそめた。
ルイズは不機嫌そうにドカっと席についた。
そしてルイズが男と一言二言、言葉を交わすと、男は生徒達の間をゆっくりと通り抜け、後ろの壁にもたれかかり、腕を組んだ。
初めは興味深そうに生徒達の使い魔を観察していたが、
やがて飽きたのか、その手に抱えていた本を読み始めた。
先日ルイズが与えたものなのだが、どうみても子供向けなそのタイトルが、
ますます生徒の笑いを誘った。
そうしているうちに扉が開いて、先生が入ってきた。
優しげなおばさんの雰囲気を漂わせている彼女は、ミス・シュヴルーズといった。
彼女は教室を見回すと、満足そうにほほえんで言った。

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。
私はこうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」

ルイズは皮肉気な笑みを浮かべた。

「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。
 ミス・ヴァリエール」

シュヴルーズが後ろで本を読んでいる男を見て、とぼけた声で言うと、教室はどっと笑いに包まれた。

「おい『ゼロ』!召喚に失敗したからって、その辺歩いてた平民 を連れてくるなよ」

ルイズはだんまりを決め込んだ。
それをどう誤解したのか、クラスメイトの嘲りはますますひどくなっていった。
『かぜっぴき』のマリコルヌが、ゲラゲラ笑った。

「あの『ゼロ』だぜ?
 失敗に決まってるじゃんか。
 皆、知ってるよな?今までルイズがまともな魔法に成功した回 数は?」

"『ゼロ』だ!"と、他の生徒が唱和した。
再びゲラゲラ笑い。
調子に乗って歌まで歌いだした。

"♪ルイルイルイズはダメルイズ~♪魔法が出来ない魔法使い♪…"

みんなして調子を合わせられているところを見ると、影で結構歌われているようだ。
ルイズは拳を握りしめて屈辱に耐えていた。
爪が食い込んで血が垂れる。

どうせ、言ったってわからない奴らなのだと、必死にそう自分に言い聞かせた。

シュヴルーズは、厳しい顔で教室を見回した。
そして、杖を振ると、ゲラゲラ笑っている生徒の口に、どこから現れたのか、ぴたっと赤土の粘土が押しつけられた。

「お友達を侮辱するものではありません。
 あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
教室の笑いが収まった。一見するとシュヴルーズの懐の深さが示されたように見えるが、
そのキッカケを作ったのは間違いなくシュヴルーズであったし、マリコルヌたちの狼藉をしばらく見過ごしていたのも、シュヴルーズであった。
楽しんでいるのだ、結局。
ルイズは思う。
自分が笑われているところを楽しむだけ楽しんでおいて、
キリのいいところで、どこかの聖者よろしく
「貧しい者こそ救われる」とばかりに手を差し伸ばすのだ。
とんだ自己満足だ。
貧しいのはそっちの脳みその方だ、この偽善者め…!
ルイズは心の中で吐き捨てた。

そんなルイズの胸中を知らずに、シュヴルーズは授業を再開した。
彼女が杖を振ると、机の上に石ころがいくつか現れた。
そして、この授業のメインである、『錬金』の講義をはじめた。

知識だけは他の生徒よりはあるルイズは、耳タコなその内容に飽き飽きして、ボーッとしていた。
「私はただの、『トライアングル』ですから…」
そんなシュヴルーズの声が聞こえた。
えぇカッコしぃめ…! と思いながら、ルイズは後ろを振り返った。
後ろでは、自分の使い魔であるDIOが、本に目を注いでいたが、シュヴルーズが石ころを真鍮に変える魔法を使っている時には、しげしげと前を向いていた。
(一応聞いてはいるんだ…)
案外好奇心旺盛ね、とルイズが考えているところに、シュヴルーズからの呼び声がかかった。

「ミス・ヴァリエール! よそ見をしている暇があるのなら、あ なたにやってもらいましょうか」
「え、わたしですか?」
突然のことに、ルイズは焦った。
話を全く聞いてなかった。

「そうです。ここにある石ころを、あなたの望む金属にかえてご らんなさい」
あっさり話の内容をネタバレしたシュヴルーズを小馬鹿に思いつつ、ルイズは俯いて、密かにほくそ笑んだ。
一発かますチャンスだ。
そして、これ以上ないってほどの作り笑顔で、立ち上がった。

「わかりました、ミス・シュヴルーズ! わたし、失敗するかも しれないけど、精一杯やってみますわ…!」
キラキラと瞳を輝かせる様が嘘くさかった。
ルイズの恐ろしいほくそ笑みをしっかり見ていたキュルケは、空恐ろしいものを感じ取り、止めに入った。
『ゼロ』ネタでからかわれた後のルイズは、何をするか分からない。

「ミス・シュヴルーズ。やめたほうがいいと思いま…ひっ!」
ルイズはギロリと、シュヴルーズには分からないようにキュルケを睨んだ。
"邪魔するならあんたから吹き飛ばす"ルイズの目がそう言っていた。
そしてルイズは、目尻に涙を蓄えながら、よよと嘆いた。

「そうですわね。ミス・ツェルプストーの言うとおりですわ。私 なんかがやったら、皆さんの大切な授業の妨げになってしまい ます……」
そうして、悲しそうにうつむいて席に座ろうとするルイズを、シュヴルーズは引き止めた。

「いいえ、いいえ、ミス・ヴァリエール。誰にだって失敗はあり ますとも!
 さぁ、やってごらんなさい。失敗を恐れていては、何も出来ま せんよ」

(………計画通り…!)

ハナから勝負にならなかったのだが…。
ルイズはいかにも可憐な笑顔を浮かべて立ち上がった。
しかし、彼女の背中には、目にもの見せてくれてやると、どす黒いオーラがただよっていた。
キュルケの横を通り過ぎるとき、ルイズはドスのきいた、低い声で呟いた。

「友達のよしみよ。さっさと消えなさいな、ツェルプストー」
もうダメだ。おしまいだ---顔面蒼白でキュルケは戦慄した。
そうして、わざわざ教壇の側に回り、石が全員に見えるようにして、
離れた所から錬金の魔法にしては異常な量の魔力を石の全てに込めだしたルイズを尻目に、
キュルケはじっとDIOに視線を向け続けるタバサをひっつかんで教室を脱出した。

―――次の瞬間、教室の中で、学院全体が揺らぐほどの大爆発が起こっていた。
間一髪だ……、キュルケは己の生を始祖ブリミルに感謝して、床にへたり込んだ。

to be continued……


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