ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-11

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目を覚ますと強烈な疲労感に襲われた。
そして昨日の練習のことを思い出す。もう過度の練習はしない。
そういえばこの感触は何だろう?まるでベッドに寝ているようだ。首を振り隣を見るとルイズの顔が眼前にあった。大体2㎝ほど前に。
ルイズはこちらに全く気づかず穏やかに寝息を立てている。何でこんな所にルイズの顔が?意味がわからない。というかこれだけ近い寝息が五月蠅い。
とりあえず起き上がる。まだ早朝のようだ。
そして気づく。
ベッドに寝ているみたいではない。ベッドに寝ていたのだ。なんで寝てるんだっけ?
そうだ。ルイズがベッドで寝てもいいとかいう考えられない発言のせいだ。
昨日は疲れて頭が働かなかったから深く考えなかったがむちゃくちゃ怪しいじゃないか!
私に泣きついたり、服を修繕したり、教えて欲しいと言ったり、貴族と同じ食卓に座らせたり、自分のベッドで寝かせたり!
アルビオンに行ってから怪しいことだらけだ!
でも待てよ?ルイズが貴族とは何かって聞いてきたときに、アルビオンの皇太子のことを言っていたな。
確か大衆が求める貴族になることは難しいとか言われたって。
あのときのルイズの話を思い出す限り、ルイズは皇太子に色々言われてそれに影響を受けている。
その中には、皇太子がルイズへ平民のことについて何かを話した事もあるだろう。
ルイズが言った『平民がこっちをどう思ってるか』と。それがいい証拠じゃないか。
それらを含めて考える。
もしかしたらルイズは平民について考え始めたんじゃないのだろうか?
ルイズが一番初めに思いつく平民とは何か?おそらく私のことじゃないだろうか。
多分そうだと思う。何故なら今まで自分が使役してきた使い魔で、一番身近にいる平民が私だからだ。
そして私の生活を考える。
今までの自分が行ってきたことを思い出せばいいのだから簡単だろう。
使い魔といっても人だ。周囲も私のことを平民だ平民だ言ってきたから、ルイズは無理やりにでも私のことをちゃんと人だとは意識していたはずだ。
もっとも言われれば言われるほどより私を動物扱いしていたような気がするな。

きっと周囲に言われるたびに平民ということを自覚して、認めたくないから動物扱いしたんだろう。
古今東西平民を使い魔にしたメイジはいなかったらしいな。
それはともかく、私をちゃんと(?)平民として見始めたのなら生活がみすぼらしいのに気づくだろう。
毛布一枚で床に寝かされ、食事は床に座らされ質素な食事(餌)、授業も床。
普通に考えてこんな風な生活を強いる奴を慕えというのが土台無理な話なのだ。殺されても仕方が無い。
そしてルイズはこれじゃあ自分が皇太子が言ったような『大衆が求める貴族』にはなれないと思い人間らしい生活をさせようと思った。
……かなり強引だがそれなりに説得力はある気がする。
ルイズは今まで貴族として育ってきた中で平民のことなど考えることは全くとは言い切れないが皆無に近かったはずだ。
初めから上に立って当然の生き物で、平民を知っていても自分たちに貢献するものぐらいにしか認識していなかったはずだ。
自分の中で全てが完結していたと言い切るほどだからな。
それが皇太子をきっかけに平民のことを考えるようになった。その話の何がきっかけで考えるようになったのかは知らない。
ただ、完結していたはずの世界が広がったのは事実だろう。
それで色々な試すのは当然の反応なんじゃないかと思う。知らないことがあれば知りたいし、やってみたい。人間として当然だ。
それがいい影響につながればいいがな。
しかしそれらを抜きにしてもベッドで寝れるのはいい。食事は餌でも食堂で食べればよかったしな。
ベッドから下り立ち上がる。
置いてあった帽子を被りデルフを持つとドアを開ける。
もし、さっきまでの考えが全部外れていて実はルイズが私に何らかの害をもつ考えで行動しているとしたら?
ふとそんなことを考え、苦笑する。
何も問題なんて無い。
だってこいつは『ゼロ』のルイズなのだから。知識はあるが、知能は並だ。状況によっては並以下だ。
魔法も使えない貴族の甘ちゃんで並以下。
そんな奴が私に害をもたらせれるはずがない。もたらしたとしてきっと事後に解決できることだろう。
何にせよ、生活が向上するのはいいことだ。もしこれが維持されるのならば別にルイズを殺す必要も逃げる必要もないな。

私をこのまましっかり養って『幸福』の足がかりになってくれよ、『ゼロ』のルイズ。
そんな風に心の中で嘲笑しながら部屋を出た。
そして船上で見たルイズの眼を思い出し、頭を振りかぶる。
あんな眼が何だっていうんだ!あの眼に何ができる!何もできるわけが無い!
そしてあの眼を頭から追い出そうと頭を振りながら昨日剣の練習をした場所へ向かった。疲れたときこそ体を動かせというからな。
練習とデルフとの会話を終え部屋へ戻る。
そしてデルフを置くと洗面器を手に取り外へ水を入れに行く。水を入れて戻ってきた頃には大体ちょうどいい時間になっているだろう。
水を入れルイズの部屋まで戻り床に洗面器を置く。
「起きろルイズ」
ルイズを起こそうと肩を揺する。
「ん~~ん」
ルイズがそれに反応するかのように声を上げる。
「起きろ」
起きるまで揺すり続ける。
「ふみゅ?」
揺すっているとようやくルイズが目を開ける。しかしまだ瞳はぼやけたままだ。
「朝だぞ。起きろ」
ルイズはむにゃむにゃと目を擦りながら起き上がり、ひとつ小さな欠伸をした。
普段から低血圧気味で寝起きが悪いが、今日は何時にも増して眠そうである。顔は少し寝たりないといった感じだ。夜更かしでもしたのかもしれない。
それでも起こすがね。

「起きるんだ」
肩を揺するとルイズはふにゃっと顔を崩したままベッドに腰掛ける。
それを確認し、ルイズの足元へ置く。ルイズの顔を洗うためだ。ルイズは私に顔を表せるのだ。もう慣れたから楽なもんだが。
手袋を外し両手で水をすくう。普段ならルイズが顔をもってくるのだが今日はもってこない。寝ているのか?
しかし顔を見ると目はちゃんと開いている。眠たそうに目をグシグシと擦っている。
「おい、顔を洗わないのか?」
「そこに、置いといて。自分で洗うから、いいわ」
声をかけるとルイズは眠たそうな表情でそう言った。
「そうか」
私は素直にその言葉に従う。もう驚くことは無い。
ルイズが顔を振りながら顔を洗う様子を見ながらそう思った。というか水が飛びすぎだ。
ルイズが顔を洗っている間に着替えをクローゼットからから取り出す。そして下着と着替えをベッドに置く
それらをし終えると後ろを向く。ルイズが下着を着けるのを見ないためだ。前は隠さなかったが最近になって見るなといい始めたのだ。
それ以来後ろを向いて下着を着けるのを待っている。
そして下着を身につけたのを音で判断するとルイズのほうを向く。服を着せるためだ。
しかし振り向くとルイズは慌てた様子でシーツを体に巻きつけた。
「どうした?」
「向こうむいてて」
「着せなくていいのか?」
「向こうむいてないさいって言ってるの」
そう言われまた振り向く。仕事が減って助かった。もはやルイズの変化は自分にとって好ましいものだと判断した。


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