破壊の杖を使用した後の惨状を、
ルイズはやや感心したというような表情で見つめていた。
実際、ルイズは感心していた。
破壊の杖……つまりは、『ろけっとらんちゃー』なる武器の凄まじい威力に。
―――素晴らしい。
爆発が起こった後には、草木1本残っていない。
自分の爆発にも、ある程度の自信があっが、
これはその遥かに上をゆく。
ルイズは密かに、この破壊力を今後の目標に定めた。
改めて目の前の光景を見る。
何もかもが吹っ飛ばされ、
場を支配しているのは『死』や、『無』だ。
その有様は、何故かひどくしっくりと自分に馴染んだ。
やがてその場の空気に当てられ、虚無感がルイズの中でリズムを取り始める。
何だか懐かしいリズムだ。
神経が研ぎすまされ、辺りの雑音が耳に入らなくなる。
体の中で何かが荒々しく暴れ、それが回転していく感覚……。
ルイズは目をつむって、しばらくそのリズムに身を任せていたが……
やがてそれは嘘のように消えていってしまった。
途端にルイズは不快になった。
もっとさっきの感覚を味わいたかったのに。
自分にとって、もっとも大切な何かを掴み掛けていたのに、
お預けを食らってしまった感じだった。
ルイズはやや感心したというような表情で見つめていた。
実際、ルイズは感心していた。
破壊の杖……つまりは、『ろけっとらんちゃー』なる武器の凄まじい威力に。
―――素晴らしい。
爆発が起こった後には、草木1本残っていない。
自分の爆発にも、ある程度の自信があっが、
これはその遥かに上をゆく。
ルイズは密かに、この破壊力を今後の目標に定めた。
改めて目の前の光景を見る。
何もかもが吹っ飛ばされ、
場を支配しているのは『死』や、『無』だ。
その有様は、何故かひどくしっくりと自分に馴染んだ。
やがてその場の空気に当てられ、虚無感がルイズの中でリズムを取り始める。
何だか懐かしいリズムだ。
神経が研ぎすまされ、辺りの雑音が耳に入らなくなる。
体の中で何かが荒々しく暴れ、それが回転していく感覚……。
ルイズは目をつむって、しばらくそのリズムに身を任せていたが……
やがてそれは嘘のように消えていってしまった。
途端にルイズは不快になった。
もっとさっきの感覚を味わいたかったのに。
自分にとって、もっとも大切な何かを掴み掛けていたのに、
お預けを食らってしまった感じだった。
興奮覚めやらぬルイズは、
『破壊の杖』を再び手に取った。
もう一回ぶっ放せば、
またあの感覚を味わえるのではないかと思ったからだ。
先ほど撃った場所とは少し離れた場所に照準を合わせ、
ルイズはトリガーを押した。
しかし、弾が発射されることはなかった。
"カキン!"という音がするだけで、
『破壊の杖』はうんともすんともいわない。
思わぬ出来事に、ルイズはイラつきながら、
トリガーを連打した。
"カキン!""カキン!""カキン!"……
しかし、やはり何の反応もない。
苛立ちが頂点に達し、ルイズは『破壊の杖』を地面に叩きつけた。
『破壊の杖』を再び手に取った。
もう一回ぶっ放せば、
またあの感覚を味わえるのではないかと思ったからだ。
先ほど撃った場所とは少し離れた場所に照準を合わせ、
ルイズはトリガーを押した。
しかし、弾が発射されることはなかった。
"カキン!"という音がするだけで、
『破壊の杖』はうんともすんともいわない。
思わぬ出来事に、ルイズはイラつきながら、
トリガーを連打した。
"カキン!""カキン!""カキン!"……
しかし、やはり何の反応もない。
苛立ちが頂点に達し、ルイズは『破壊の杖』を地面に叩きつけた。
「何でよ……!!」
ルイズの中に、もうあの時のリズムは影も形も無かった。
やり場のない怒りにしばし身を震わせるルイズは、
やがて1つの手がかりに行き着いた。
DIOだ。
DIOは、この『破壊の杖』の使い方を知っていた。
あいつなら、もう一回この杖を使う方法を知っているに違いない。
しかし、その肝心のDIOは、今この場にはいない。
キュルケ達に対する煙幕代わりに、ルイズが派遣したのだった。
……もう片づいた頃だろうか?
いずれにせよ、今のルイズにとって、『破壊の杖』は最優先事項だった。
ルイズの中に、もうあの時のリズムは影も形も無かった。
やり場のない怒りにしばし身を震わせるルイズは、
やがて1つの手がかりに行き着いた。
DIOだ。
DIOは、この『破壊の杖』の使い方を知っていた。
あいつなら、もう一回この杖を使う方法を知っているに違いない。
しかし、その肝心のDIOは、今この場にはいない。
キュルケ達に対する煙幕代わりに、ルイズが派遣したのだった。
……もう片づいた頃だろうか?
いずれにせよ、今のルイズにとって、『破壊の杖』は最優先事項だった。
DIOを呼び戻すべく、ルイズは杖を取り出し、
意識を集中した。
自分の魔力が抜き取られ、DIOへと流れていく感覚がルイズを襲う。
そのうちに奴はここに戻ってくるだろう。
それにしても、と倦怠感に耐えながらルイズは思う。
近頃、こうやって無理やりDIOに命令を聞かせたことはあまりないが、
何だか今回は奪われていく魔力がやけに多い気がする。
DIOの力が増していっている証拠だ。
いつかDIOが己の制御から抜け出す日が来るのではないかという不安が再び鎌首をもたげるが、
ルイズは直ぐにそれを打ち払った。
自分だって、強くなった。
今回のフーケ戦で、ルイズは自らの飛躍的な成長を実感していた。
越えられなかった壁を1つ、打ち壊せた気がする。
まだまだ自分は成長する、いや、成長せねばならぬのだ。
成長して、勝利せねばならないのだ。
でも、一体何に勝つというのか……?と、
考えようとしたら、段々頭がぼーっとし始めた。
靄がかかったみたいに、さっきまでの思考があやふやになっていく。
―――はて、私、何考えてたんだっけか?
ルイズはうんうん唸って思いだそうとしたが……思い出せない。
意識を集中した。
自分の魔力が抜き取られ、DIOへと流れていく感覚がルイズを襲う。
そのうちに奴はここに戻ってくるだろう。
それにしても、と倦怠感に耐えながらルイズは思う。
近頃、こうやって無理やりDIOに命令を聞かせたことはあまりないが、
何だか今回は奪われていく魔力がやけに多い気がする。
DIOの力が増していっている証拠だ。
いつかDIOが己の制御から抜け出す日が来るのではないかという不安が再び鎌首をもたげるが、
ルイズは直ぐにそれを打ち払った。
自分だって、強くなった。
今回のフーケ戦で、ルイズは自らの飛躍的な成長を実感していた。
越えられなかった壁を1つ、打ち壊せた気がする。
まだまだ自分は成長する、いや、成長せねばならぬのだ。
成長して、勝利せねばならないのだ。
でも、一体何に勝つというのか……?と、
考えようとしたら、段々頭がぼーっとし始めた。
靄がかかったみたいに、さっきまでの思考があやふやになっていく。
―――はて、私、何考えてたんだっけか?
ルイズはうんうん唸って思いだそうとしたが……思い出せない。
いけない、まだ頭の怪我が治りきっていないようだ。
そう思い、ルイズは2、3度頭を振った。
まぁいいや。
とにかく、自分は邁進せねばならぬのだ。
勝利して、支配する。
そう頭の中で結論を下したのと時を同じくして、
突如背後から物音が聞こえ、ルイズはひとまず思考を中断した。
ルイズの後ろの木の陰から姿を現したのは、DIOだった。
その姿を確認するや否や、
ルイズは地面に転がる『破壊の杖』を拾い上げ、
DIOに突きつけた。
そう思い、ルイズは2、3度頭を振った。
まぁいいや。
とにかく、自分は邁進せねばならぬのだ。
勝利して、支配する。
そう頭の中で結論を下したのと時を同じくして、
突如背後から物音が聞こえ、ルイズはひとまず思考を中断した。
ルイズの後ろの木の陰から姿を現したのは、DIOだった。
その姿を確認するや否や、
ルイズは地面に転がる『破壊の杖』を拾い上げ、
DIOに突きつけた。
「遅いわよ、まったく!!
それよりこれ、さっき使った後から壊れちゃったみたいなんだけど、
あんた、直せる?
ていうか直しなさい、全速力で」
猛烈な勢いでググッと詰め寄るルイズだが、
それとは対照的に、DIOは冷たい視線を送った。
彼曰く、『良いところ』で邪魔をされ、些か不満だったのだ。
無理やり呼びつけられたDIOが発する不機嫌オーラは、それはそれは結構なものなのだが、
しかしルイズは全く意に介した様子はない。
『破壊の杖』の事で頭がいっぱいなようだ。
好奇心と期待に溢れ、目が爛々と輝いている。
よくも悪くも真っ直ぐなルイズの姿勢に毒気を抜かれたのか、
DIOはフッと緊張を解いた。
それよりこれ、さっき使った後から壊れちゃったみたいなんだけど、
あんた、直せる?
ていうか直しなさい、全速力で」
猛烈な勢いでググッと詰め寄るルイズだが、
それとは対照的に、DIOは冷たい視線を送った。
彼曰く、『良いところ』で邪魔をされ、些か不満だったのだ。
無理やり呼びつけられたDIOが発する不機嫌オーラは、それはそれは結構なものなのだが、
しかしルイズは全く意に介した様子はない。
『破壊の杖』の事で頭がいっぱいなようだ。
好奇心と期待に溢れ、目が爛々と輝いている。
よくも悪くも真っ直ぐなルイズの姿勢に毒気を抜かれたのか、
DIOはフッと緊張を解いた。
「あぁ……それは単発式なのだ。
もう弾がない以上、一回こっきりの使い捨てだ」
「ウソッ!?
じゃあ、もう使えないの、これ?」
ルイズは捨てられた子犬のような顔をしたが、
DIOは首を横に振った。
もう弾がない以上、一回こっきりの使い捨てだ」
「ウソッ!?
じゃあ、もう使えないの、これ?」
ルイズは捨てられた子犬のような顔をしたが、
DIOは首を横に振った。
「諦めるんだな。
これはもう、ただの鈍器としてしか使えまい。
さて、色々あったが、
フーケとやらは消せたようだな。
……ようやく任務完了といったところか」
DIOは、目の前に広がる焼け野原に目をやりながら言った。
しかしルイズは、DIOの言葉にチッチッチッと指を振った。
これはもう、ただの鈍器としてしか使えまい。
さて、色々あったが、
フーケとやらは消せたようだな。
……ようやく任務完了といったところか」
DIOは、目の前に広がる焼け野原に目をやりながら言った。
しかしルイズは、DIOの言葉にチッチッチッと指を振った。
「いいえ、それは違うわ。
残念ながら、『逃げられた』の。
ロングビル=フーケの奇襲に対して、トリステイン魔法学院の生徒達は勇敢に奮闘。
『破壊の杖』を奪還するに至るも、
フーケは卑劣極まる手段を用いて私達の一瞬の隙をつき、逃走。
以後、消息不明となるわ……永遠にね」
これにて任務完了よ、と締め括り、
ルイズはエッヘンと胸を張った。
DIOは取り敢えず、賛辞の拍手を送った。
"パチパチパチ……"と、しばらくの間、白々しい拍手が森に響く。
残念ながら、『逃げられた』の。
ロングビル=フーケの奇襲に対して、トリステイン魔法学院の生徒達は勇敢に奮闘。
『破壊の杖』を奪還するに至るも、
フーケは卑劣極まる手段を用いて私達の一瞬の隙をつき、逃走。
以後、消息不明となるわ……永遠にね」
これにて任務完了よ、と締め括り、
ルイズはエッヘンと胸を張った。
DIOは取り敢えず、賛辞の拍手を送った。
"パチパチパチ……"と、しばらくの間、白々しい拍手が森に響く。
「喜びに水を差すようで気が引けるが……」
1人悦に浸っているルイズに、DIOが素朴な疑問を投げかけた。
1人悦に浸っているルイズに、DIOが素朴な疑問を投げかけた。
「フーケがいなくなった今、一体誰が帰りの馬車の御者をするのかな?」
ルイズは、さも当然と言うような清々しい笑顔を向けた。
ルイズは、さも当然と言うような清々しい笑顔を向けた。
「もちろん、使い魔のあんたがやるに決まってるじゃない。
今から馬車に戻るから、ついてきなさい」
返事を聞くことなく破壊の杖をDIOに押し付けると、
ルイズは軽やかな足取りで、馬車が待機している場所へと向かい始めた。
今から馬車に戻るから、ついてきなさい」
返事を聞くことなく破壊の杖をDIOに押し付けると、
ルイズは軽やかな足取りで、馬車が待機している場所へと向かい始めた。
「………………」
DIOは黙ってそれを見送り、ルイズの姿が見えなくなった後、
深いため息をついた。
しかし、直ぐに意識を切り替えると、
ルイズの後を追わず、ゆっくりと近くの茂みへと分けいっていった。
ガサガサと音を立てながら茂みの中を物色した後、
やがて茂みの中から1本の枯れ枝らしいものを拾い上げた。
軽く力を入れただけで、ポッキリと折れてしまいそうなほどカラカラに干からびている。
しかし、それは枯れ枝ではなかった。
枯れ枝かと思われたそれは、かつてフーケと呼ばれていた人物の右腕だった。
ルイズによって根こそぎ吸血された結果、
生気のかけらも感じられない。
DIOは黙ってそれを見送り、ルイズの姿が見えなくなった後、
深いため息をついた。
しかし、直ぐに意識を切り替えると、
ルイズの後を追わず、ゆっくりと近くの茂みへと分けいっていった。
ガサガサと音を立てながら茂みの中を物色した後、
やがて茂みの中から1本の枯れ枝らしいものを拾い上げた。
軽く力を入れただけで、ポッキリと折れてしまいそうなほどカラカラに干からびている。
しかし、それは枯れ枝ではなかった。
枯れ枝かと思われたそれは、かつてフーケと呼ばれていた人物の右腕だった。
ルイズによって根こそぎ吸血された結果、
生気のかけらも感じられない。
DIOはフーケの腕を手に持って、
『破壊の杖』によって引き起こされた爆発の中心部へと歩を進めた。
そこは、土くれのフーケが行方不明になった場所。
おそらく、この一帯の地面には、粉々に砕けた骨やら何やらが散らばっていることだろう。
殆ど燃え尽きてしまっているかもしれないが。
『破壊の杖』によって引き起こされた爆発の中心部へと歩を進めた。
そこは、土くれのフーケが行方不明になった場所。
おそらく、この一帯の地面には、粉々に砕けた骨やら何やらが散らばっていることだろう。
殆ど燃え尽きてしまっているかもしれないが。
DIOは、やおらその腕を中心部に置いた。
そして辺りを見回して、
ポツリと呟いた。
そして辺りを見回して、
ポツリと呟いた。
「こうまでバラバラでは、無理かもしれないが……物は試しだな。
やってみる価値はある」
―――そう、かつてのタルカスや、黒騎士ブラフォードのように。
やってみる価値はある」
―――そう、かつてのタルカスや、黒騎士ブラフォードのように。
「あの土人形、なかなかの物だったぞ。
お前ほどのメイジを、死なせるのは惜しい」
DIOは躊躇うことなく、己の手首をスパッと切り裂いた。
一瞬の間をおいて、真っ赤な血が噴き出してくる。
絵に描いたように美しい赤色だが、
その中には、屍生人の元となるエキス(Extract)がたっぷり詰まっている。
出血が続く手首を、フーケの右腕の上にかざす。
ドクドクと、DIOの血液がフーケの右腕や、周りの土に注がれていく。
お前ほどのメイジを、死なせるのは惜しい」
DIOは躊躇うことなく、己の手首をスパッと切り裂いた。
一瞬の間をおいて、真っ赤な血が噴き出してくる。
絵に描いたように美しい赤色だが、
その中には、屍生人の元となるエキス(Extract)がたっぷり詰まっている。
出血が続く手首を、フーケの右腕の上にかざす。
ドクドクと、DIOの血液がフーケの右腕や、周りの土に注がれていく。
不思議なことに、フーケの右腕は、まるでスポンジが水を吸い込むようにDIOの血液を吸収し、
その量に比例して、若々しい女性のソレへと戻っていった。
その量に比例して、若々しい女性のソレへと戻っていった。
「私の血で、生き返るが良い……『土くれ』のフーケよ」
そして、念入りな血液投下が終わった。
しばらくの沈黙の後、フーケの右腕がピクピクと動き始めた。
次第にその活動は活発になっていき、やがて、陸に打ち上げられた魚のように、
ビタンビタンと跳ね回り始めた。
それを確認すると、DIOはニヤリと笑った。
成功だ。
右腕がクネクネと動き始める様子を、DIOは面白そうに眺めていたが、
その時、遠くからルイズの急かす声が聞こえてきた。
そして、念入りな血液投下が終わった。
しばらくの沈黙の後、フーケの右腕がピクピクと動き始めた。
次第にその活動は活発になっていき、やがて、陸に打ち上げられた魚のように、
ビタンビタンと跳ね回り始めた。
それを確認すると、DIOはニヤリと笑った。
成功だ。
右腕がクネクネと動き始める様子を、DIOは面白そうに眺めていたが、
その時、遠くからルイズの急かす声が聞こえてきた。
「ちょっと!
おいていくわよ!?」
フーケの再生を全て見届けようとも思ったが、
DIOは仕方なく諦めた。
そして、手首のキズをペロリとなめた。
すると、傷口がスゥッと塞がっていき、やがて完全に治ってしまった。
「今行く。
忘れ物を探していたんだ。
もう見つかったよ」
去り際にフーケの右腕に視線を投げかけつつ、DIOはそう答えた。
おいていくわよ!?」
フーケの再生を全て見届けようとも思ったが、
DIOは仕方なく諦めた。
そして、手首のキズをペロリとなめた。
すると、傷口がスゥッと塞がっていき、やがて完全に治ってしまった。
「今行く。
忘れ物を探していたんだ。
もう見つかったよ」
去り際にフーケの右腕に視線を投げかけつつ、DIOはそう答えた。
フーケ戦、終了!!
獲得賞品一覧
『微熱』のキュルケ……名誉。
『雪風』のタバサ……名誉。
『ゼロ』のルイズ……名誉+多額の財宝。
DIO……無し。強いて言えば、手駒。
『微熱』のキュルケ……名誉。
『雪風』のタバサ……名誉。
『ゼロ』のルイズ……名誉+多額の財宝。
DIO……無し。強いて言えば、手駒。
to be continued……