ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-36

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匿名ユーザー

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突如、大きな音と共に医務室の扉が開かれた。
3人の視線が扉へ一斉に向けられる。
果たして、そこから現れたのはルイズ・フランソワーズであった。
ヴァリエール公爵家の息女であり、魔法が使えない『ゼロ』。
3人とも、ウワサには聞いていた。
特に、コルベールは彼女と……というより、彼女の召喚した使い魔とだが……ちょっとした因縁があったので、
彼女の姿を見た彼は、少々複雑な心境だった。

「なっ…ミ、ミスヴァリエール!?
何事ですか。
取り込み中ですぞ!」
というより、授業はどうした---コルベールはどこから突っ込んだらよいやらわからなかった。
取り敢えず怒声をあげてはみたもののそこから言葉が続かず、うぅとか、むむとか、唸るばかりだった。
そんなコルベールには一瞥もくれず、
ルイズはコツコツコツと靴の音を響かせてオスマンの前まで進むと、片膝をついた。
マントがふわりと舞う。
オスマンの鋭い視線がルイズを貫く。
ルイズはその眼光に怯えることなく、真正面からオスマンの目を見返した。
視線を交えること数瞬。 最初に切り出したのは、オスマンだった。

「ミス・ヴァリエール…じゃな。
さっきの我々の会話、聞いていたと伺える」

ロングビルとコルベールが、弾かれたようにルイズを見た。 ルイズはオスマンの目を見据えたまま、きっと唇を真一文字に結んで答えた。

「オールド・オスマン。
偶然とはいえ、盗み聞きをしてしまったことを、まずはお許しください」
やはり、と思ったが、オスマンが聞きたいのはそんな事ではない。
何も言わないことで、先を促した。

「不躾を承知でお願い申しあげます、オールド・オスマン。
フーケ討伐の任務、どうかこのルイズ・フランソワーズにお任せを…!」
コルベールは我が耳を疑った。
生徒が、しかも、年端もゆかぬ少女が、フーケ討伐に向かうなどと、
彼の道徳規準からすればとうてい受け入れられないことだ。

「な、何を言うのです!
ミス・ヴァリエール!
あなたは生徒ではないですか!」

「少し…口を塞いでおれ、ミスタ・コルベール」
声を張り上げるコルベールだったが、
オスマンの苛立ちの言葉が、彼の喉を鷲掴みにした。

「何故、ワザワザ危険を冒すようなマネをする?」
オスマンがアゴヒゲを一撫でした。
ルイズは、フーケに対する憤りを露わに(見えるように)して答えた。

「『土くれ』のフーケは、
その卑劣な手段を以て、我々貴族の牙城であるトリステイン魔法学院に侵入しました。
これは学院のみならず、貴族全てに対する侮辱に他なりません…!
私は貴族です。
貴族としての誇りがございます!
フーケ討伐を志願する理由は、それ以上でもそれ以下でもありません!
オールド・オスマン、どうかお許しを!!」
ルイズのはっきりとした声が、医務室に響く。
コルベールは、その堂々としたルイズの態度を見せられると、
オスマンに先遣調査隊の志願を募られた時の教師達の様子が思い出されて、
ヒドく恥ずかしい思いがした。
オールド・オスマンはというと、しばらく黙っていたと思ったら、突如大きな声で笑い出した。

「……ホ、ホッホッホッホッ!!!
なんと、まっこと、良き貴族じゃな、ミス・ヴァリエール…!
腰抜けの教師どもに、聞かせてやりたいくらいじゃて!」
一通り笑うと、オスマンはルイズの肩に手を置いた。

「よかろう。
魔法学院は、そなたの努力と貴族の義務に期待する」
ルイズは真顔で直立すると、「我が杖にかけて」と宣誓をした。
そして、スカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。

「では、早速馬車を用意しよう。
魔法は目的地につくまで温存するのじゃ。
ミス・ロングビル、詳しい道のりを教えてやりなさい」
言葉をかけられたロングビルが、何やら慌てた様子でオスマンに進言した。

「オ、オールド・オスマン!
その件ですが、どうか
私も同行させて下さい…!」
ルイズがギラリとロングビルを睨みつけた。
その異様な視線に、ロングビルの喉が、ヒュウと鳴った。
直ぐに視線を逸らすルイズ。
コルベールが、ロングビルの言葉にとうとう我慢できずに声を上げた。

「な、何を言うのです!
ミス・ロングビル、無茶ですぞ!
秘薬を使っているとはいえ、
あなたはまだ歩くことすらままならないのですぞ…!」
意見はオスマンも同じらしく、怪訝な顔をしている。
ルイズは沈黙を続けた。

「フーケの隠れ家の位置を正確に知っているのは、私だけです。
相手は百戦錬磨の盗賊。
曖昧な位置情報だけでは気配を悟られ、
私の二の舞になってしまいます…!」
コルベールは言葉に窮した。

「そのうえ、フーケはどうやら、あの隠れ家から動こうとする気がないようなのです。
もしかしたら、罠を張っているやも…!
事を性急に進めるのは、危険と存じます!」

気を張りすぎたのがケガに障ったのか、
ロングビルは途端に苦痛の喘ぎ声をあげて腕を押さえた。
コルベールが即座に介抱する。
ふぅふぅと呼吸を整えるロングビルを見て、オスマンは困ったような声を出した。

「ミス・ロングビルの言うことが本当だとすれば
…ふむ、確かにこれ幸いと赴くのは危険が大きいかのぅ。
…………よろしい、ミス・ロングビル。
そこまで言うからにはそなたにも同行を願おう。
とっておきの秘薬を出してやろう。
地獄を見るが、明日の朝には、動ける位には治ろうぞ」
オスマンの言葉に、ロングビルの顔が安心したように綻んだ。
コルベールはまだ何か言いたそうだったが、
ロングビルの覚悟に溢れた言葉に、とても口を挟めなかった。

一方のルイズは、皆にわからぬように舌打ちした。
---チクショウが。
怪我人はおとなしくベッドに伏せっていればよいものを!
出来れば夜の内に事を済ませたかったが、これではそうもいくまい。
それに、ロングビルが同行することで、
自分がフーケを始末しているところを、目撃されてしまうかもしれないではないか…!
もちろんそうなった場合は、フーケの卑劣な手口による哀れな犠牲者が、
また1人増えることになるだけだが……。
いや、寧ろ道中で予め始末しておこうか?
しかし、いずれにせよ、全くもって無駄な手間だ。
ルイズは無駄が大嫌いだった。
無駄無駄。
そう考えていると、オスマンがルイズの方に振り返った。
慌てて取り澄ますルイズ。

「今聞いた通りじゃ、ミス・ヴァリエール。
フーケ討伐には、ミス・ロングビルが動けるようになる明朝、出発してもらうことになる。
異存はないかの?」
ルイズは仕方なしに承諾した。
まぁ、やむを得まい。
少々のイレギュラーは覚悟の上だ。
幸いほぼ思い通りに事は運んだ。
それで良しとするか---そう思い直して、
密かに肩の力を抜くルイズだったが、次のオスマンの言葉に、
ルイズは完全に意表をつかれた。

「今夜は、双方共に、ゆっくりと英気を養うとよい。
ミス・ロングビルもそうじゃが、ミス・ヴァリエールもまた、
たいそう疲れておるようじゃしのう…」
オスマンはいかにも好々爺といった笑顔を浮かべて、
ルイズのスカートの端を見た。
見れば、ルイズのスカートの端には、少しばかり土が付着していた。
恐らく昼間、フーケの手掛かりを求めて、
学院周辺を駆けずり回った時についたものだろう 。
スカートからルイズの顔へと視線を移したオスマンの目は
…見事に全く笑っていなかった。
(しまった!)
自分の未熟を恥じながら、
ルイズの体が一瞬強張る。
が、何とか直ぐに平静を取り戻した。

「…これは、お目汚しを……」
頭を下げるルイズに対して、オスマンは「いいんじゃよ」と笑うばかりだ。

「…………………」
「…………………」
暫くお互い何も言わなかったが、
やがてルイズはオスマンに礼をして、医務室から退室した。
オスマンはルイズの後ろ姿を、その鷹のような目でじぃっと見つめていた。
コルベールは何が何だかわからなかったが、
2人の間のただならぬ緊張に、胃がキリキリ痛んで、何も言えなかった。
---狩りが始まる

to be continued…


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