ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-55

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匿名ユーザー

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魔法学院を出発して以来、ルイズ一行は途中で馬を交換しつつ、ほとんど休み無しで駆け続けた。
そして魔法学院を出発して以来、ルイズは怒鳴りっぱなしであった。
いつの間にまた女の子に唾を付けていやがったのか!
いつの間に合い鍵なんて作っていやがったのか!
いつのまに……!
いつのまn……
……以下略。
あまりの剣幕に、乗っていた馬がビビって疝痛を起こしてしまうほどであった。
単純な独占欲から飛び出した文句の一つ一つに、
DIOは誠実(に思えるよう)な回答を心掛ける。
しかし、その裏腹に存在する白々しさをルイズは敏感に察知し、怒りを増大させるのであった。
怒鳴りすぎて少しインターバルを取ることにしたルイズに、ワルドのグリフォンが近寄った。

「君は、やけにあの使い魔を気にしているね。
一体何があったんだい?」
冷や汗を流しながら笑うワルドに、ルイズは顔を赤らめた。

「べ、別にあなたが考えていらっしゃるような事は、これっぽっちも!!
ええ! 誰があんなスケコマシ!」

「そうか。ならいいんだ。
婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、僕はショックで死んでしまうよ」
勝手に死んでいろ、とルイズは思った。

「親が決めたことですわ」
「おや、ルイズ。君は僕の事が嫌いになったのかい?」
おどけた口調で言うワルドに、ルイズは真面目な顔で答えた。

「いいえ。そうではありません。
ミスタ・ワルド、確かに貴方は立派になられたわ。魔法衛士隊隊長ですものね。
それに、控え目に見ても、素敵な顔立ちをしていらっしゃいますわ」
ワルドの目が、爛と輝いた。

「よかった。じゃあ、好きなんだね?」
ルイズは首を横に振った。

「私にとって、貴方はまだ過去の人なのです、ミスタ・ワルド。
好きになるのかどうかは、これからですわ」
ワルドは納得したように頷いた。

「旅はいい機会だ。
きっと、君を振り向かせてみせるよ。約束する」
「……期待、しておりますわ」
ルイズはふっと笑い、馬を飛ばした。
そんなルイズ達の後ろで、一人馬に突っ伏している男がいた。

「モ、モンモランシー……」
ギーシュ・ド・グラモンであった。
馬での長旅も意に介さず、ギーシュはずぅっとこの調子であった。
彼は、自他共に認めるプレイボーイである。
モンモランシー以外にも、何人もの女性にちょっかいを出している。
『浮気は男の甲斐性』を地で行く男であった。

一人彼女を失ったくらいで自分は何ともない、と思っていたのだが……。

「モンモランシー……」
ギーシュは、モンモランシーのあの目を思い出す。
熱っぽく潤んだ様子で、DIOを見つめるモンモランシーの目を。
今まで、ギーシュはモンモランシーにあのような目を向けられたことなど、ただの一度もなかった。
その目を、自分ではなく、DIOに向けていたモンモランシー。

「いいもん。帰ったら、一年生の女の子に慰めてもらうんだもん……」
自業自得とはいえ、ギーシュはこれまで感じたことのない程の喪失感に、悩まされているのであった。

――――――――――――――
休みもせずに飛ばした結果、ルイズ達はその日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着いた。
ラ・ロシェール。
アルビオンへの玄関口。
港町であるにも関わらず、狭い峡谷の間の山道に位置する小さな街。
空に浮かぶ、重なりかけた二つの月が、ラ・ロシェールを淡く照らし出す。
普通なら馬で2日はかかる距離を飛ばしてきたため、一行の疲労も溜まった。
険しい岩山の中を縫うようにして進むと、峡谷の先に街が見えた。
一息つけるとあって、ルイズの心に少しばかり緩みが出始める。

その時であった。
ルイズ達の跨った馬目掛けて、崖の上から松明が何本も投げ込まれた。
赤々と峡谷を照らし出す松明に、戦の訓練を受けていない馬が驚き、
前足を高々と上げていなないた。
腑抜けて馬に突っ伏していたギーシュは、馬から放り出された。
しかし、そんな状況になっても受け身を取ろうともせず、ギーシュは顔面から墜落し、地面と熱烈なキスをした。
シエスタは力ずくで馬を押さえ込んでいた。
ルイズも力ずくで馬を押さえていたが、飛来した一本の矢がルイズの馬を絶命させたせいで、
あえなく放り出される結果となった。
ワルドは『風』の防御魔法で矢を防いでいる。
DIOは屁でもないらしい。
体勢を立て直すために、僅かに生まれた一行の隙を突いて、何本もの矢が空気を裂いてヒュンヒュンと飛んできた。

「奇襲か!!」
ルイズが敵意を剥き出しにして叫んだ。
よりにもよってこんな時に! と毒づきながら、ルイズは杖を取り出した。
崖の上から、鎧を身に纏った男達がなだれ込んでくる。
何故かは分からないが、下手人達は、ルイズとDIOに狙いを絞っているように映った。

下手人達は、グリフォンに跨るワルドと地面に転がるギーシュには目もくれず、ルイズとDIOに集中攻撃を開始したのだ。
無数の矢がルイズに襲いかかる。
ルイズは、自分の横で事切れて横たわっている馬を担ぎあげて、盾にした。
あれだけの数の矢を避けきる自信は、さすがに無い。
一方のDIOは、降り注いでくる矢も何のその、相変わらず馬上でふんぞり返っていた。
DIOなら一人で勝手に何とかするだろうとルイズは思ったが、DIOは動く気配を見せない。
矢の雨が、もう間近に迫っていた。
このままでは間に合わない、と誰もが思った時……シエスタが身を投げ出した。
DIOと矢の雨との間に自分の身体を割り込ませたのだ。
無数の矢は、DIOの代わりにシエスタを串刺しにした。
身を投げた勢いをそのままに地面に激突するシエスタ。
常軌を逸したこの行動に、下手人達は一瞬浮き足だった。
迷いも見せずに、己の命を投げ出してみせたメイドに、どよめきの声があがる。
―――だが、それでも止めないからこそ下手人というのであって。
DIOの背後から、下手人がこっそりと近寄る。
DIOは気付いた素振りを見せない。

気づかれていないと確信した下手人が、これまた下品た笑みを浮かべて、
剣を片手にDIOに飛びかかった。
刃こぼれしてはいるものの、殺傷力は侮れない刃が、DIOの頭部に振りおろされる。
しかし、

「『ザ・ワールド(世界)』!!」
~~~~~~~~~~~~~~
"ボッゴォオオンッ!"

「……そして時は動き出す」
~~~~~~~~~~~~~~
「ブゲェッ!?」
下手人が吹っ飛んだ。
馬上のDIOは、手綱から手を放してすらいない。
頭部を滅茶苦茶に破壊された名も知らぬ下手人は、地面に激突して赤い華を咲かせた。
DIOの裏拳が炸裂したのだ、とルイズは頭の片隅で考えつつ、魔法を唱えた。
勿論失敗した。
やや控えめな爆発が生じ、崖の上から矢を放っていた下手人の内三人の頭が爆ぜた。
胴と泣き別れになった首が三つ、ゴロゴロと崖から転がり落ちる。
それでも、まだ下手人は怯まなかった。
数が多さが、彼らに無用な勇気を与えていたのだった。
ルイズはワルドに向かって怒鳴った。

「ちょっと、ミスタ・ワルド!!
真面目に殺って下さらない!?」

「え? あ、いや、僕は別に……」

先ほどから、防御の呪文や、"ウィンド・ブレイク"など、攻撃的ではない様子を見せるワルドに、ルイズは苛立つのであった。
"エア・カッター"なり、"ライトニング・クラウド"なり、
もっと広範囲で、殺傷力のある魔法を使えばいいのに、それをしないのだ。
まるで、自分が傷つけられないことが分かっているかのように。

「ちと……数が多いか」
周りを下手人に囲まれて、DIOは舌打ちをした。
今回の出張りで、DIOは自分の能力を使うつもりがこれっぽっちも無かった。
DIOはフーケ戦以来、益々もって己の力の回復を心がけ始めたのだった。
しかし、使わざるを得なかった。
DIOの心に、苛立ちが募るのであった。

「立て、シエスタ」
主人の命令に応じて、シエスタがむくりと立ち上がった。
全身に矢が突き刺さっているにも関わらず、その動きには微塵の乱れもない。
涼しい顔をして、己に刺さった矢を抜くシエスタに、下手人の間に動揺が広まった。
DIOは、背中に背負っていたデルフリンガーを外し、鞘ごとシエスタに投げ渡した。
宙を舞うデルフリンガーを、シエスタはしっかりとキャッチしてみせた。

「やれ、シエスタ」

シエスタはDIOに一礼すると、勢い良くデルフリンガーを抜き放った。途端に柄の部分がパクパクと動き出し、デルフリンガーが喋り出す。

「あーやれやれ、久し振りに出られたわね。
……って、ゲェッ!!メイド!!」
自分を握っている人間がシエスタだということに気がつくと、デルフリンガーは目に見えて狼狽し始めた。
正直デルフリンガーにとっては、相棒(認めたくないけど)よりも、このメイドの方が苦手であったからだ。
DIOはまだ、話が通じるというか、人間性がある。
たとえその人間性が壊滅的であっても、デルフリンガーは耐えられた。
だが、シエスタにはそれが全く無い。
質問すれば返答はしてくれるのだが、どれもこれも事務的で、温度を感じさせないのだ。
唯一、DIOに対してのみ、彼女は生の感情を見せる。
陶酔。忠誠。献身。奉仕。
デルフリンガーはそんなシエスタが気味が悪くて仕方がなかった。
だが、どんなに相手が苦手でも、デルフリンガーは所詮身動きのとれぬ剣である。
持ち手を選択することは出来ない。
文句を垂れることが出来るだけ、デルフリンガーはまだ幸せといえた。

嫌がるデルフリンガーを無視する形で、シエスタはデルフリンガーを横に振るう。

「MUUUUUNNNNN!!!!」
受け止めて防ごうとした下手人の一人は、構えた己の刃ごと、上下真っ二つに裂かれた。
力任せにデルフリンガーを振り回すシエスタの姿は、金棒を振り回す鬼のようである。
型も何もあったものではない。
ただ闇雲に叩き切るだけの攻撃であったが、その威力は無類であった。

「なぁ、メイドの嬢ちゃん。
俺っち、金棒じゃなくて、剣なんですけど……。
ちゃんと使ってくれね?
"ドカッ!"じゃなくて、"ズバッ!"って」

「承知しております。
しかし、わたくしは今回生まれて初めて剣を握った身ですので、多少拙い部分も御座いましょう」
そんなことよりももっと根本的な問題なののだけれどと思ったが、
直ぐにデルフリンガーは諦めた。
再び沈黙したデルフリンガーと、その鞘とを両手で持ち、シエスタは色鮮やかな駒のようにクルクルと回転した。
シエスタの間合いの中にいた下手人達は、瞬く間に肉塊に変えられた。

デルフリンガーに切られた男の首が飛ぶ。
鞘で殴られた男の体が爆裂四散する。
シエスタの前蹴りが男のどてっ腹に風穴をあける。
柄の一撃が、眼球ごと脳天を抉る。
残酷無惨の地獄絵図であった。
周囲一面、真っ赤に染まる。
シエスタによって引き起こされた台風に巻き込まれなかった下手人達は、揃って腰を抜かした。

「ば、ば、化け物ォオッッ!!!」
数の上ではまだまだ優位だった下手人達だが、彼我の戦力差が数でひっくり返せるものではないことを悟ったのか、
蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。
撃退成功である。
先程の喧騒が嘘のように、場が静まり返っていく。
しかし、まだ終わりではない。
残兵の処理が残っている。
不幸にも逃げ遅れた、というよりも、腰を抜かしてしまって動けないでいる下手人の何人かを、
ルイズは一人ずつむんずと捕まえた。
後は、シエスタの方に放り投げるだけでよい。
シエスタの足下に転がった下手人は、悲鳴を上げる暇なく、シエスタによって両断されるのだった。
放る。両断。放る。両断。放る。両断。
その繰り返し。
皮肉なことに、二人の息はピッタリだった。

シエスタが下手人を叩き殺すその光景が、薪に斧を振り下ろす木こりのようにも見えて、ルイズは少し笑った。
やがて、最後の一人の順番が回ってきた。
しかし、ルイズはこの一人だけは生かしておいてやるつもりだった。
雇い主やら、アルビオンの今の状況やら、聞き出したいことがいっぱいあったからだ。
そんなルイズの内心を知らずに、最後の一人は泣き出した。

「慈悲を! お慈悲を!!
俺……い、いや、私には、女房と子供がいるんだ……です!! どうかお慈悲を!!!」
この期に及んで命乞いかと、ルイズは吹き出す反面ガッカリした。
もうちょっと噛み付くぐらいの根性を見せて貰いたかったが拍子抜けだ、と。
ルイズは急に、男のことが気に食わなくなった。
情報云々の事よりも、これは重要なことであった。
ルイズは、泣き喚く男の髪の毛を掴んだ。
男の顔が絶望で歪む。

「許して! 許して下さい! いやだ! やめてぇ!!!」
聞き入れず、シエスタの方に放る。
ゴロゴロと無様に地面を転がった男は、シエスタに対しても命乞いを始めた。
ルイズの期待通りの展開である。
シエスタに命乞いするなんて、エルフにブリミルの教えを説くようなものだというのに。

「子供達に振る舞うパンを、犬に放るのは宜しくないことと存じます」
案の定、シエスタの冷たく突き放すような死刑宣告。
デルフリンガーを上段に振り上げる。
咎人の首を切り落とす処刑人さながらの圧迫感。
数拍の後には、この哀れな犬の脳天は唐竹割りになっているだろう。
それを敏感に肌で感じ取ったのか、はたまた単に恐怖がメーターを振り切っただけか、男は股の間を濡らしながら失神しまった。
しかし、そんなことでシエスタが手を止めるわけがない。
腹筋に力を込めた後、シエスタはデルフリンガーを振り下ろそうとして…………一陣の風によって吹き飛ばされた。
近くの岩に叩き付けられる。

「イテッ!」
シエスタの手から零れ落ちたデルフリンガーが呻いた。

「例え忠実な犬でも、主人のテーブルから零れ落ちたパン屑は食べるわ」
上空から声が聞こえた。
ルイズとシエスタは、同時に空を睨んだ。
笑ってしまうくらい、二人の息はピッタリだった。

to be continued……


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