ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔-1

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味も見ておく使い魔-1




「今度失敗したら明日にしましょう。あなたならいつかきっとできますよ。」
黒いローブをまとった男性が、ため息をしながら同情を寄せるように話しかけてくる。
「いえ、コルベール先生、今度こそ成功させて見せます。」
そういいながら、私は泣きそうになるのをやっとの思いでこらえていた。
穴ぼこだらけの地面にひとり立ち、爆発を恐れて遠巻きに見守るメイジたちをたっぷりとにらみつけてから、
今日何度やったかわからない『サモン・サーヴァント』の魔法を唱え始める。
「来なさい! というか来てください私の使い魔!」
ひときわ大きい爆発が学園の敷地を揺らした。
20メルテにも達したであろう土ぼこりの中に、人影が二つ、見える。
一人は頭にギザギザのバンダナみたいなものを巻いている男で、こっちを見ている。
もう一人のおかっぱ頭は寝ている。気絶しているのだろうか?
そんなことよりも。
使い魔が人?しかも二人?なにそれ、そんなのあり?


「―これが最後の警告だ!『怪しい真似』をするんじゃない!」
コルベール先生の声でわれに返る。あんなに立ち上っていた土ぼこりがどこにも見えない。
「わかったわかった。この娘に『危害』は加えない。約束しよう。
『この世界』と『この状況』について大体は把握したからな」
いつの間にか目の前にいたギザギザバンダナの男がさも小バカにした態度で先生に答えていた。
どうやら私は我を失っていたらしい。それにしてもこの距離に近付かれても気づかないなんて。
ただでさえ小さい『自信』ってやつがブッこわれそうだわ。
「先生、やり直しをさせてください!」
「だめだ、ミス・ヴァリエール。例外は認められない。」
ギザギザ男をにらみつけながら言うのはやめてください。怖いです。
「古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。
彼らのうち最低どちらか一人にはきみの使い魔になってもらわなくてはならない。」
そ、そんな…
「ルイズが平民を呼び出したぞ!しかも二人も!」
「すごいんだか、すごくないんだかわからないな」
「ばかね、平民よ。何もできないじゃない。二人いたって全然すごくないわよ」
「ルイズの様子が変じゃなかった?」
野次が飛ぶ。
「早く儀式を続けなさい。君が召喚に時間をかけすぎたせいで、
今日やるはずだった授業がまったくできなくなってしまったんだ。」
何よ、慰めてくれたっていいじゃない。
「ところで、どちらと契約を結ぶのかね?」
どちらにしようかしら。ううう、どちらもいやだわ。


「ちょっといいか?」さっきのギザギザが口を挟んできた。
「この場合は『二人とも』契約するべきじゃないか?」
マジデスカ?
「僕の理解が正しいとするならば、だ」
「使い魔の契約は『一人一体』ってのが普通のようだが、
彼女は僕達を召還した時点で、すでに『例外』だ。
使い魔が二人いてもおかしくはない。『何なら確実にできるように…』オホン!オホ!オホン!
『試してみる』価値はあるんじゃないか?」
「…君が変なマネをしないというなら、それが一番だろう」
ちょっと先生、何同意してんのよ。
「いいから早く契約したまえ」
しょうがないのでさっさと契約を結んでしまおう。
あきらめて、まずギザギザの方から儀式を始める。
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール…」
呪文を唱えていると、ギザギザの独り言が聞こえてきた。
「小娘のファーストキスなんざ別にどーだっていいが、
『ルーンを刻まれる体験』にはスゴク興味がある!
ぼくは漫画家として最高のネタをつかんだぞッ」
ちいねえさま、泣いていいですか? っていうか何で私が初めてだって知ってるのよ?
ズッギュウウン!!


「ふむ、珍しいルーンだな」
コルベール先生がギザギザのルーンを確かめる。
「この『ルーンの痛み』、こんな体験…めったにできるもんじゃないよ」
「これを作品に生かせば……」
「グフフ…と…得したなあ……」
「召喚されてよかったなあ~~……」
わ、忘れるのよルイズ。そう、あんな平民とキスしたことなんて一度たりとだってないのよ。
うん。そういうことにしましょう。
気をとりなおして二人目、いえ、初めての契約を、気絶しているおかっぱ頭におこなった。
様子をスケッチしてる平民?何のことです?
今度は契約がおわっても気絶したままだった。
「この男も同じルーンか…」
「それでは今日は解散」コルベール先生がそう告げると、生徒たちは「フライ」の魔法を使って学生寮に帰ってゆく。
「それと君、ミス・ヴァリエールに何かあったら私が許さないからな」
コルベール先生がよくわからないことを平民に言いながら飛び去っていく。
「なるほど、魔法をつかったらあんな飛び方をするのか。
これで今度空飛ぶ魔法を描くとき一味違ったリアルな雰囲気が描けるぞ…」
『変わった平民』ね…
しかたなしにギザギザに声をかける。
「ねえ、あんた誰?」
「僕は岸部露伴。漫画家だ」
「マンガカ?マンガカってなによ。じゃなかった。
それはおいといて、あなたそこで寝てるおかっぱ頭をつれて私の部屋までついてきなさい」
「かしこまりました、」
男は立ち上がり、背筋を伸ばした姿勢でお辞儀をした。
なによ、礼儀はしっかりとしているじゃない。
「ゼロのルイズ様」
「何であなたがその仇名を知ってるのよ!」


「オレたちがここまで到達したことが……完全なる…勝利なのだ」
「これでいいんだ全ては…」
「運命とは『眠れる奴隷』だ…」
「オレたちはそれを解き放つことができた……」
「それが勝利なんだ……」
ブチャラティは、信頼する仲間が組織のボスと決着を果たしたのを感じつつ自分の魂があるべきところへ戻りつつあった。
しかし次の瞬間、自分だけが別の場所にひきずられていくのを感じた。

…目の前が真っ暗になる。
「何であなたがその仇名を知ってるのよ!」
少女らしき女の声がする。
気がつくと、感じなくなった重力を、再び全身で感じていた。
脈は規則正しく鼓動している。呼吸も正常だ。
生き返ったのか?それにしては傷の痛みがない。
それどころか、あるはずの銃創などの傷も完全になくなっている。
目を開けると、ピンクの髪をした少女と、ペン先のピアスをつけた男の姿が見える。視力も完全に回復しているようだ。
そして夕焼けの空に大きな月が二つ見える。ん?ふたつ?
「ここはどこだ?いったいどうなっている!?」


「それほんと?」
私は、テーブルを挟んで向かい側の椅子に座っている二人を見つめながら言った。
「ああ、本当だ…」
後から起き上がった男(ブチャラティというらしい)がうなずいた。
信じられない!二人とも異世界からきたなんて!
あの後、ロハンとブチャラティは口裏を合わせたように『チキュウ』という場所から来たと主張しきた。
なにいってるのよ、月がひとつしかないところなんてあるわけないじゃない。
この二人、とくにブチャラティの方は相当な田舎ものらしく、メイジというものをまったく知らないようだった。
しかたなく、トリステイン魔法学園のことをや『契約』のことを説明する。でもハルキゲニアすら知らないって、どういうこと?まさかほんとうに異世界からきたの?
「つまり、『オレたちは君の使い魔になった。帰る方法はない。』ということか?」
その通りよ。
「君はオレたちの話を信じてないようだが、オレからすると君の話のほうが信じられない」
なに?急に立ち上がって。そんなに顔を近づけないで。
「だから、悪いが『確かめさせてもらう!』」
ベロンッ!
(対ルイズ専用!「ザ・ワールド!」)
(ドォーーーーーーーーーーン!!!)

1秒経過! 「ムッ!いいぞ!その『目が点!』な表情…スケッチしとこう」
2秒経過! 「ばっ、馬鹿な!この味は!ウソをついている『味』ではないッ!」
3秒経過!
そして時は動き出す!
「こ、」
「こここ、この使い魔ったら、ごごご、ご主人様に、ななな、なんてことするのかしら」
もう一生ご飯ヌキ!いえ、むしろコロス!
…その日一番の爆音が、トリスタニア学園に響き渡った。

「気、気を失う前に今のことメモとスケッチしとこう…」


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