ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アヌビス神-4

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匿名ユーザー

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 ルイズはご立腹だった。失敗魔法でふっとばした教室の後片付けを命じられたのだ、それも一人で。
 ガラスをぶち抜き窓枠に突っ込んで気を失ったシュヴァルーズ先生は、意識が戻らず治癒魔法を連打されながら運ばれた。
 何時もより気合が入った爆発だった為、教室の惨状は並大抵のものでなく片付けはとてもてこずる。ちなみにぼろぼろになった衣服は、流石に其の侭衆目の元動ける状態で無かった為片付けの前に着替えた。着替えた衣服がまた片付けで汚れていっそう不機嫌になる。
「あんたこう言う時本当に役立たずよね」
 そして机の残骸を集めながら、腰にぶら下るアヌビス神に向って、ぶつぶつ不機嫌をぶつける様に文句を言う。

 返事は無い。

 アヌビス神は片付けの激しい動きで、ぶらぶら揺れてお尻にぶつかる際の肉の感触を楽しんでいた。『あぁ~、この決して分厚くない肉と脂肪が骨の感触も同時に楽しめてサイコー』とか考えながら。
「あんた聞いてるの?」
 ルイズに問われてアヌビス神は思わず考えていた事を其の侭口にする。
「柔かい尻肉が(ずぶずぶと斬ってみたい感覚で)実に最高だ」
 ルイズは両の腕を組んで『ウンウン』と頷く犬面の男の姿を見た気がした。
「こここっ、
 この馬鹿犬ーっ!!!!」
 アヌビス神はびたーんと床に叩きつけらる。
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
 そして踏みつけられる。
 ひたすら踏みつけられる。
 トコトン踏みつけられる。
 今日に入って何度目になるだろうか。
「ま、ままままっ、まてっ!
 誤解だ。誤解」
「何が誤解なのよ。
 何処が誤解なのよ」
「柔かくて最高って訳ではなくてだな」
「じゃあ何よ」
「お尻をずぷずぷしたいナーということだ」
「余計悪いわァー!!」
 怒りの咆哮を上げるルイズに、アヌビス神は思いっきり蹴り飛ばされた。
「だから誤解いィィィー……」
 無事に残っていた机に向って吹っ飛ばされるアヌビス神。そこで少し慌てていた彼はうっかり透過能力を発動したッ!!
「……ィィィィィィ」
 声の残響を残しながらアヌビス神が机の向こうに消える。
「あ、あれ?アヌビス?」
 突然起こった不思議な現象にルイズは怒りを忘れ冷静さを取戻し、机に駆けより机の裏側を覗き込む。
「慌ててうっかり透過しちまった」
 とかブツブツ呟くアヌビス神の姿がそこには有った。

「今の何よ」
 アヌビス神は問い詰められた。
「お昼ご飯にスープをご馳走するわ」
 暴力と脅迫を伴い問い詰められた。
「何かをすり抜けられるなんて聞いた憶えないんだけれど?」
 あんた説明していた中にそんな能力の話しは無かったじゃないのよと問い詰められた。

 そして、
「あんたの能力を隠さず漏らさず取り零しなく全て話しなさい」
 とすごまれた。
 アヌビス神は『奥の手の透過能力だけですよー』と笑って返した。
「本当?」
「ホントホント、この透過能力は思うが侭に物体を選んで透過できるんだぜー。凄いだろー。
 例えば服を斬らずに身体だけ斬るとか、その逆とかな」
 饒舌に喋るアヌビス神に向けてルイズは疑いの視線を向ける。
「本当にそれだけ?」
「こんなに超スゴイ能力持ってる刀なんか魔法の世界でも滅多に無いだろ?だろ?」
「そうよね、手にした物を思うがままに操ってみたり」
「そうそう」
「手も足も自在に操って達人の様に動かせるんだっけ?」
「うむ!スゴイだろ?しかも普段の能力以上に力を引き出して動かせるんだぜ」
「ふぅーん、頭も自在に操って記憶とかも読めるのよね?」
「どんな心の奥底に秘めた秘密でも暴いてみせるぜ」
「へぇー、凄いわね。そんな事もできたんだ」
「何せ身体を自在に操れるからな!」
 ルイズはアヌビス神の能力に付いて色々考えてみた。そして応用可能な事の想定もし、色々摸索してみていた。
 魔法の成績は全滅物でもこのルイズ、決して頭は悪くないのだ。むしろ優秀な部類と言っても良い。
 そしてカマをかけてみたのだ。
「その辺初耳ね」
「そりゃ今始めて言ってるか―――――――
 はっ!?」
 アヌビス神のスタンド使いの基本に則った長期戦略は全て潰えた。
「この脳味噌がマヌケがっ!
 全部言えって言ったでしょうがッ!全部ッ!
 それを隠してたわね?わざと隠してたわね?」
 そしてルイズは想像していた以上の能力がまだまだ隠されていた事を聞きだした。
 そして全て言えと言ったにも関わらずアヌビス神が能力を隠していた事に怒りを覚えた。
 と言うか収まっていた怒りがぶり返し一気に再着火する。


「あんた今度からは、腰にぶら下げるんじゃなくて地面引き摺りね」
 ピクピクと顔を引きつらせながらルイズは言う。
「イヤァーーーーーーーッ」
 アヌビス神には何よりも堪えた。
 肉や骨は好きだが床や地面は嫌だ、はっきり言って好きでない。
「犬は犬らしい扱いをすべきだったのよ
 剣扱いしたわたしが馬鹿だったわ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
 ごめんなさいご主人さまァー」
 アヌビス神は改めて思った。
 ヤバイこいつはヤバイ。このルイズという女もといご主人さま。心を再起不能-リタイア-ギリギリ寸前に砕くお仕置きだけは、DIO様より抜群に上手えッ。
恐怖だけでなく羞恥心方面からも鋭く抉ってくる。
「掃除を早く終わらせる事が出来たら許したげるわ」
 ルイズはあえて明かに許すつもりがゼロな提示をした。
 アヌビス神は『ゼロのルイズのゼロは、全てを吹飛ばし大地を焦土にしゼロにする事では無く、敵を許す気ゼロ』の事だと理解したッ!!
つまりはゼロとは恐怖の称号。ゼロを連呼していたあのデブのマルコメムとか言う名の少年は恐らくマゾの類に違いない。怒らせ責められなじられる為に連呼していたのだとも理解した。
 だが甘んじて受け入れる訳にはいかない。人間で言うならば断食も同然なのである。
「た、試してみたい事があるのだがOK?」
 『何よ』と訝しむルイズに己を持たせる。
「おれはご主人さまを操れない。
 他人を操ったおれをご主人さまは命令一つで解除できる。
 って事は……」
「って事は?」
「逆に考えてみるんだ
 ご主人さまが許せばおれはご主人さまを操れると」
「もしできたとしても余計な事したら……」
「判ってるって、おれを信じてくれ(操ってしまえばご主人さまの意識も俺の物だけどな!!)」
 ルイズはまんまと騙されアヌビス神に”許可”をした。

 ぴくんっ。ルイズの手足が小さく動く。
「よっしゃー成功だッ!!」
 アヌビス神はルイズにガッツポーズを取らせる。これで斬りたい放題だと歓喜する。
「へぇー中々面白いわね」
 だがルイズの意識ははっきりと有った。しかも直ぐにアヌビス神の意図とは別に勝手に動いて自分の手足を見つめていた。

 アヌビス神の野望-完-

「何ィー!!」
 頑張って身体を動かそうとする
「何が『何ィー!!』なのよ」
 しかし優先権は明かにルイズにある様で委ねられていないと一切動けない。
 これ以上余計な事を言ってマジ犬扱いされるのは勘弁なので『何ィー!!』については黙っておく事にした。

「と、ととと、兎に角だ。これでおれがご主人を操って、力を引き出して手早く掃除すれば、ご主人は気分的には楽出来るって寸法だ」
「中々面白い事を考えるじゃないの。
 じゃあやってみなさい。
 あと”さま”をつけるの忘れちゃダメ」

 ルイズから常人以上の動きを引き出したアヌビス神によって、掃除は予想以上に早く終わった。
 一応ぎりぎり昼飯時までに終わった。

 何故一応なのかと言うとッ!!
 ルイズは食堂で全身筋肉痛で突っ伏していた。
「ここここここ、こんな事になるなんて聞いてないわよよよよよよよ」
 身体中の筋肉がビリビリする。
「運動不足なんじゃないっスか?」
 床に放り出されたアヌビス神の、適当すぎる投遣りな言葉に怒りを覚えたが流石に踏む気力は起きなかった。


 さて、ルイズが全身筋肉痛を堪えながらゆっくりと昼食を取っている間にアヌビス神は……。
 通行人に何度も蹴り飛ばされ、食堂の床を縦横無尽に滑っていた。
 ルイズは全身筋肉痛を堪えながら食事をしている為気付かない。

 アヌビス神は、慌てて時々透過をしてしまう為留まるところを知らない。
「いやっはァー。あの娘の太股中々良さそうな肉付きだッ!!
 おっとォーあの尻肉もっ。んっ?こ、このくるぶしはァーッ」
 しかし彼はそれなりにエンジョイしていた。ルイズに少し復讐も出来て気分も爽快ッ!!であった訳で。
 次々と生徒や使用人の肉付きを下からチェックし興奮している。
「斬りてェー」

「なあ、ギーシュ!お前、今は誰とつきあってるんだよ!」
「誰が恋人なんだギーシュ」
 ひゅんひゅん床を滑りながらお楽しみ中のアヌビス神と交差するコース上に、いかにも思春期な見栄を張ったような恋の雑談をしながら数人の少年達が現れた。
「つきあう?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませ――――ダッパァー!!」
 そしてギーシュと呼ばれた少年は突然足元に滑ってきたアヌビス神に躓いて派手にすっ転んだ。
 どんがらがっしゃーん
 あまりにベタな音を立てながらギーシュはテーブルに突っ込む。
 そしてそのはずみにポケットからきらきら光る何かが宙に舞った。




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