ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アヌビス神-3

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匿名ユーザー

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 スタンド使いの基本として、いや戦う者の基本として己の手の内を必要以上にばらさ無いという事柄が有る。
 アヌビス神も例外ではない。
 相手を操る能力の先にある単純に見える範囲で肉体を操るのでは無く思考、つまり脳まで操ることができる。つまりは意識して行う行動全てに対応している事。そして己を振るう者を何者にも勝る達人として操る能力の先にある憶える能力。
 この2つはいまだ漏らさずにいた。
 何度か『憶えたぞ!』と自ら叫んでいた事は恐らく大丈夫だろうと考える。何せエッチな事を憶えていると勘違いされている節があるからだ。悔しいが良いカモフラージュになっていると割り切る事にした。

 ちなみに今彼はは食堂に向うルイズの腰にぶら下げられている。
 部屋から出たところで、尻尾に火が付いた大蜥蜴にくんくんされた。どうやらルイズは自分のお尻をくんくんされたと思ったのか、思いっきり蹴飛ばしていた。この女カルシウムが足りないと思った。
 今、朝方操ったキュルケとかいう女が出てきて喧嘩になりかけたが、今朝無意識にルイズに迫ったと慌てて勘違いしていたのか、少々気まずかったらしく早々にキュルケは気を失った使い魔を抱いて去った。
 ルイズも自分の使い魔が、キュルケを操った事ちょっと不味いかな?と思ってるらしく、さほど食い下がらなかった。
 ちなみに「知ってるぜ、そいつはヒトカゲ。トカゲポケモンで炎タイプだ。昔少し操った子供から聞いたから判る」と言ったがスルーされた。スルーされなかったら記憶を探る能力がばれたのだからアヌビス神、実に迂闊である。

 ともあれルイズの腰でぷらぷらしながら考える。月が2つあったり聞いた事が無い空想上の物とされる生き物がいるので、ここは地球とは別世界だろうなどと言ったことは正直どうでも良い。DIO様への忠義も別世界に着たのなら関係ないね。

 一番大事なのはこの体だ。思いっきりオラオラバゴォされて相当粉々になったよな?あまりに衝撃的だったので記憶が混乱しててはっきりしない、何か牛のケツ臭い気がして思い出すのも嫌なんだが。
 取り合えず今完全では無いとはいえ治っている。あの鏡を超えた時に粉砕され失っていたパーツもぼろぼろとは言え揃っている。そう言えば爆発の後壊れて折れてはいたが、パーツは全部揃っていたよなァ?ルイズにゲシゲシされてまたちょっと壊れかけた気も……ってアレ?
「ねええええええええええっ!!!!」
 廊下でアヌビス神は叫びを上げた。
「うるさいうるさいうるさいっ」
「にゃいんだよ、無いの。
 先っぽが無いの」
「先っぽぉ?」
「ほ、ほら折れた先っぽ」
「あー召喚した時に一緒に転がってた……
 そう言えば如何したのかしら……」
 ルイズは帰りの記憶を穿り返す。
 無茶苦茶に踏む→キュルケに向って蹴り飛ばす→其の侭捨て置こうとも思ったけど、帰り道の方向に落ちてたので一応拾う→部屋に戻る→床に放る→寝る
「思い出したわ。
 面倒だったから其の侭放置して帰ったのよ」
「ひ、酷ッ!!」
「何よ、帰り道に落ちてなかったら、其の侭捨て置こうかと思ってたのよ。拾われただけでも有り難く思いなさい。この馬鹿犬」
「お、お願い。早く拾って。野晒しだと、さ、錆びてしまうーっ!」
「気が向いたらね」
 こいつはDIO様とは別の意味で暴君だ。そうアヌビス神は思った。

 考え事をしている間に気がついたら食堂に着いていた様だ。
「中々に豪華で広いでは無いか。しかも人が沢山いる。斬りてェェー!!」
 思わず口にした。思わず口にした事が音になるから厄介だ。
「物騒な事をいきなり言うなー!!!!」
 怒鳴られた。だが流石に公の場の食堂だったのかゲシゲシはされなかった。
「今度そんなこと言ったらスープに浸けるわよ」
 しかし脅された。脅し文句が一々妖刀生命に関るから怖い。ある意味承太郎より怖い。
「ところであんたは食べる?
 わけないわよね」
「どっから食うんだよどっから」
「スープに浸けといたらゆっくり吸い込むとか」
「植物じゃないし、錆びるからホント勘弁して下さいご主人様」
 意外とルイズはご機嫌だった。
「食事コストが一切掛らないのは褒めといてあげるわ」
 誉める様な事柄じゃ無いし、500年間で初めて会ったね、飯食わないと刀を褒める人間は。とか考えてると腰から外され床に放られた。
「えー?外すのか?」
「当たり前じゃ無いの重いし座るのに邪魔だし」
「腰周りの肉の感触が物凄い良かったのに(軽くずぶずぶっと斬ると気持ち良さそうな意味的に)」
「こ、この馬鹿犬ーっ!!」
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ
 顔を真っ赤にしたルイズに、アヌビス神はテーブルの下で思いっきり何度も何度も踏まれた。

 食事の後アヌビス神は、其の侭机の下に本気で忘れられた。
「おーい。
 ご主人様ァー。
 このアヌビスをお忘れですよ~?」
 声をかけたが机の下だったのできちんと届かなかった。

「食堂の机の下で放置とか惨め過ぎるよーっ。しかも一部は外で野晒しだよーっ。孤独だよーっ」
 机の下で孤独に震えていると、
「あら、落し物かしら」
 と覗き込む人影があった。
 カチューシャで纏めた黒髪が見える。
 余裕のあるメイド服に身を包んでいるがおれには判るねッ!!こいつはルイズと違う実に女らしい身体が、その服の下に隠れているッ!!
 そのスカートから覗く脚の肉付き、間違い無いね。こいつは上物だッ!!斬りてェー。
 今度は口に出さなかった。えへん!!

 そのメイドさんがそっとアヌビス神をテーブルの下から拾い上げる。
 ルイズも居ないしここは一つ乗っ取ろうかと思ったが、さっきのゲシゲシを思い出したので思いとどまった。
 意外と躾は上手くいっている様だ。
「いや~。助かったぜ」
 いきなり手の中で、今拾った布でぐるぐる巻きの棒が喋ったのでメイドさんは驚いた。
「おっと、驚かせたか。
 おれの名はアヌビス神。昨日呼び出された使い魔って奴だ」
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
「知ってるのか?」
「ええ学院中で噂になってますわ。インテリジェンスソードを召喚するなんて前代未聞だって
 あ……あと」
 メイドさんが少し顔を赤らめる。
「あと?」
「その……物凄いえっちなインテリジェンスソードって……」
「ちっ!
 がぁぁぁぁぁぁぁぁぁうッ!!」
 アヌビス神は絶叫した。
 酷い酷すぎる。こんな仕打ち500年間で初めてだ。こんな体験憶えたく無い。忘れたいーッ!!

 兎に角アヌビス神は必死に誤解を解こうと説明した。人の良いメイドさんは一応判ってくれたようだ。

「取り合えず、そのおれのご主人様の所へ運んで貰えるとありがたい。
 あ、あとおまえの名前は何ってんだ?」
「これは申し遅れました。私はシエスタっていいます」
「ではあらためて、おれはアヌビス神。刀に宿る魂みたいな物だ」
 シエスタの胸元に抱きしめられ、運ばれる道中色々会話をした。
 そして……、
「それにしてもシエスタの胸に抱かれるのはイイなー」
 (ズバァーっと斬る肉の感触がを想像すると)柔かくて
 (ズブズブと斬りたくて)興奮しちまうね!」
 思わず口にした。

 シエスタは顔を赤らめ苦笑いをしながらも、微笑んでルイズが待つ教室まで届けてくれた。

 解けた誤解は、ホワイトアルバムとホルス神が全力同時攻撃で冷凍した位ガチガチに固まった。
 貴族達中心だった上に下火に向っていた噂は、平民達をも巻き込み爆発的に広がる予兆を見せていた。



「ミス・ヴァリエールお届け物です」
 教室では授業前にルイズがすぴーすぴーと可愛らしい寝息を立てて居眠りしていた。
 早朝からあれだけ大騒ぎをしたのだ無理は無い。
 隣にまでやって着たシエスタが、ルイズをそっと揺する。
「ミス・ヴァリエールお届けものです。食堂にお忘れになっていましたよ」
 そっと耳元で囁く。
「むにゃ……
 そこ……置いといて」
 半分寝たままの状態で適当に机の上を指差す。

 シエスタはそっとアヌビス神を机の上に置き『失礼します』と一礼して出て行った。

 ルイズは机に突っ伏したまま顔を横に向け、アヌビス神をじぃーっと見つめる。
「あんた、あのメイド操ってここまで運ばせたんじゃないでしょうね?」
「失礼な。事情を説明して運んでもらった。
 と言うか置き忘れるな!」
「五月蝿いわねぇ……持ち慣れてないから、うっかり忘れてたのよ」
「おれ、こう見えて孤独なのは結構嫌いなんだ。倉庫の中に長年放置されたの思い出しかけて泣きが入ったぞ!」
 ぶつぶつと二人で机の表面間近で話してると何時の間にやら、今回の授業の先生が教室に入って来ていた様だ。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功……」
 とかなんとか聞こえた気がした。

 コホンッと咳払いが聞こえた。
「ミス・ヴァリエール、ミス・ヴァリエール!」
「は、はいぃぃっ」
 自分の名を呼ばれて、反射的に飛び起きるルイズ。
「春だからと言って弛んでいては駄目ですよ。
 それにしても変わった使い魔を召喚したものですね」
 先生、シュブルーズが机の上の布でぐるぐる巻きの棒を見て言う。
 教室で大爆笑が巻き起こる。
「先生!あれ一応インテリジェンスソードでーす!」
「エロいけどな!」

 ルイズがムカッとした顔をして立ち上がり声を上げる。
「それでも一応ちゃんと召喚成功したもの!」
 ついでにアヌビス神も叫ぶ。
「エロは誤解だァーッ!!」
「嘘付くな!ゼロのルイズ!召喚出来ないからって、適当な安売りインテリジェンスソード買って来たんだろ」
 教室の大爆笑の渦はいよいよ盛り上がっていく。
「ミセス・シュヴァルーズ!侮辱されました!かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱したわ!」
 マリコルヌと呼ばれた少年が、売り言葉に買い言葉で立ち上がり反論する。
「俺は風上のまりk―――――」
「あんたは明日の朝には風邪を引いてるわ。全裸で走り回ってね!」
 反論許さずルイズは多少意味不明な宣言をする。アヌビス神をそっと撫でてニヤっと一瞬笑って。
「な、なななっ何だとーっ。俺はそんな恥ずかしいことしないぞーッ!!」

 収まりが付かなくなりそうだったのでシュヴァルーズは二人を魔法で強引に沈黙させる事にした。
「ミス・ヴァリエール、ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」
 ルイズはから返事をしながら席についた。
 まだマリコルヌがゼロだの悪口を言って回りがクスクス笑っているが、ルイズは一人くくくくくっとこっそり笑った。
 小声で、
「アヌビス、今夜一度だけ乗っ取りを許すわよ」
 と机の上の剣に話しかけながら。

 今夜の計画をアヌビスとぼそぼそ打ち合わせていると、シュヴァルーズ先生に咎められた。
「ミス・ヴァリエール!授業中の独り言は慎みなさい」
「すいません……で、ですけど独り言じゃありません」
「どちらでも同じです。
 ま、おしゃべりをする暇があるのなら、あなたにやって貰いましょう」
「え?わたし?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
 その言葉に教室に動揺が一気に広がる。
「ゲェーッ!!」
「ミセス・シュヴァルーズ!それだけは!それだけは!」
「考え直して下さい。世界が終わります!」
「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
 『ミセス・シュヴァルーズが錬金の実習を行おうとしたと思ったらゼロのルイズを指名していた』
 な…、何を言ってるのか分からねぇとは思うが
 おれも、何が起こったのかわからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 ごく普通の錬金の授業だとか
 そんなチャチなものじゃ断じてねえ
 最も恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」

 その動揺っぷりにムカっときたルイズは席を立った。
 その情況の中、ひとつ緊張感の無い声が聞こえてくる。
「待て。立って歩くならおれを腰に下げろ!」
 またこいつは何を言い出すのかと思ったが、さっき放置した事を思い出し腰に下げた。

 生徒達は大騒動を起こし、机の下に隠れながらそのやり取りを見て思った。
 あのインテリジェンスソード、スケベだが只者じゃねえッ!!そこに痺れる憧れるゥ!!

 ルイズは机の前に立ち錬金の為のルーンを唱える。
 ルーンを唱え杖を振り下ろすその時間が、机の下に隠れた生徒達にはとても長く感じられた。
 ルイズが大上段に構えた杖を大仰に振り下ろす。昨日このやり方で召喚が成功した!この力の入れ具合でッ!

ドッグァァァァァァンッ!!!!

 石は机ごと大爆発を起こした。
 それも盛大に。
 爆風と炸裂した石と机の破片が教室を派手に舞い飛び散る。飛び散った石は、壁や天井を跳弾し机の影に居る者も容赦無く直撃する。
「ギィャァァァァァァァァァァ!!!!」
 ルイズは腰の辺りで何か悲鳴を聞いた気がした。


 シュヴァルーズ先生は盛大に吹っ飛ばされ、窓枠に突っ込み痙攣を起こしている。
 机の下に隠れていなかった使い魔達ははっきり言えば伸びている。まとめて気を失っている。
 今この場で意識を保っている使い魔は居ないだろう。アヌビス神を含めて!


 アヌビス神はやっとでお尻の定位置に戻れたぜ、やっほーい♪とか思っていた。まだ一度しかぶら下ったことは無いが定位置と決めた。
 何だか回りの様子がおかしいが目先の快楽だ。歩行の度に揺れてお尻にぽふぽふと当るのが擬似的なソフト斬撃であり、実際に斬りかかれない以上数少ない至福の時なのである。
 ふと我に帰るとルイズが杖を振り下ろしていた。
 その瞬間思い出した。今朝、拷問じみたことをされた時に一回爆破されかけなかったっけ?とか。
 その時はそれがルイズの得意とする攻撃魔法とやらなんだろうとか、その程度にしか思っていなかった。今もそうなのだが……。
 そして目の前で爆散した石や机の破片をもっとも最短距離でアヌビス神は味わった。そこで意識が遠のいた。

「きょ、今日のは一段と凄かったわね……」
 キュルケがぐるっと周りを見回すと、机の影に隠れたものの跳弾を喰らって結局気を失ったり蹲っている者もいる。
 多分無事なのはルイズが教壇に向かった時そそくさと退室した、彼女の親友のタバサ位だろう。
 と、
 思ったら爆発が廊下にまで届いたらしく、少し煤けたタバサが戻ってきてキュルケの前で一言呟いた。
「いつもの三倍」


 ルイズは爆心地近くだったにも関わらず、むくっと立ち上がる。煤で真っ黒になり服が殆ど消し飛んでいるが、頭をぷるぷるっと振った後教室を見渡して一言。
「気合入れてちょっと失敗すると凄いのね」

「だからゼロのルイズに魔法を使わせるなと言ったんだ!」
「お母さーん」
 反論の声は少なかった、むしろ泣き声はあった。と言うか反論できる状態の人間が少なかった。


 アヌビス神は遠のく意識の中考えた。この大爆発の何処がゼロなんだと。
 あ、そう言えば大都市一つふっとばす爆弾の跡地を、グランドゼロとか言ったっけとか思い出しながら考えるのを止めた。




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