ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第六話『帽子はどこに溶けた?』

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匿名ユーザー

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「・・・まずいわ。マジでヤバイ」
ルイズは困っていた。マジに困っていた。
彼女の人生でベスト5に入るぐらい困っていた。
ちなみに1位は、小さい頃、ルイズが怖い夢をみたので小さい方の姉と一緒に寝ようとしたら、
その姉が巨大なヘビと一緒に寝ているのを見たときであるが、そんなことはどうでもよい。
「どうすりゃあいいのよ・・・」
目の前で能天気にふわふわしている帽子を睨みつつ、
ルイズは『使い魔品評会』が行われている中、ため息をついた。

『変な帽子みたいな使い魔』

使い魔品評会。
使い魔を召喚した2年生全員が参加し、学院中に自分の使い魔を紹介し、
ちょっとした『芸』を披露する、本来はそれだけの行事である。
しかしルイズには問題が二つあった。
一つは言うまでもない、ルイズの使い魔であるこの帽子である。
このふわふわ浮くしか能のない帽子に、いったいどんな芸ができるというのか。
リボンでもつけて見た目だけでもなんとかしようと思ったが、
帽子のもう一つの性質『やたら避ける』によって、それもできない。
芸は期待できない。外見でも誤魔化せない。八方塞がりであった。

そして二つ目にして最大の問題。
敬愛すべき姫殿下にして、ルイズの幼馴染であり友人でもある、
王女アンリエッタが何故か今年の品評会を観覧しにくることである。

昨晩のことを思い出す。
ちょうどルイズがどうにかして帽子を捕獲するため、
通販で買ったグリンガムのムチの投入を決心した、そのとき。
ノックの音がした。
長く二回、短く三回。
あわててルイズは服を正し、ドアを開けた。
入ってきた人物は黒い頭巾とマントで姿を隠していた。
その人物はルイズの部屋に探知魔法をかけてから、頭巾を脱いだ。
「姫殿下!」
「ルイズ!ああ、懐かしいルイズ!」
アンリエッタ王女その人であった。

その後、二人は久しく会ってない幼馴染同士がするように、昔話に花を咲かせた。
二人でやった遊び、いたずら、楽しい思い出、叱られた思い出、などなど。
部屋の中は懐かしく暖かな雰囲気に包まれていた。
しかし、そんな雰囲気はアンリエッタの次の一言で消し飛ばされた。
「ルイズ、あなたは明日の品評会はどんなことをするのかしら?」
ビシリッ
その言葉はルイズにとって『ザ・ワールド!』に等しい言葉であった。
きっかり9秒、ルイズは自分の時間が止まったのを自覚した。
「どうしたの?ルイズ」
ルイズはその言葉で覚醒し、急速に思考をめぐらせ始めた。
(ヤバイ!とてつもなくヤバイわ!どうすればいいの?
 『わたしの使い魔は、帽子なんです~(はあと』なんて姫さまにいえるわけがないし、
 その上いまだに何をするのか決まってすらいないなんてばれたら、
 きっと姫さま失望するわ・・・そうなったらわたし生きていけない・・・
 ・・・っていうかなんで姫さまの頭の上をふらふらしてんのよ!バカ帽子ぃー!
 気づかないで、姫さま!気づいちゃダメ!上を見ないで!
 上見るな!上を見るなァァァァァァ――――ッ!)

そんなルイズを見ていたアンリエッタは、納得したふうに手を叩いた。
「あら、そうよね。明日のお楽しみよね。
 ごめんなさい、ルイズ。無粋なことをきいてしまって」
「・・・へ?あ!は、はい!そうです!」
適当な返事を返すルイズ。
「あなたのことだもの、きっと素敵な使い魔よね。楽しみにしてるわ」
「は、はい・・・」
(ハードル上がったァァァ――――ッ!)

「それじゃあ・・・さようなら、わたしの可愛いルイズ」
アンリエッタは、最後に一瞬悲しげな表情をして、ルイズの部屋から去っていった。

回想終わり。

(そろそろね・・・気合を入れるのよ、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール)
いまだに何をすればいいのか全く思いつかない。
ルイズにできることは、気合を入れること、堂々と舞台に立つこと、
あとは成り行きにまかせることぐらいである。

今のところ、最も会場を沸かせたのは、タバサの風竜であろう。
逆に最も会場をドン引きさせたのはギーシュ?である。
なぜギーシュの後ろに『?』がついているのかというと、
そのギーシュらしきモノは、包帯で全身グルグル巻きにされているからだ。
顔の部分に『ギーシュ』と書いていなければ、誰も彼をギーシュと理解できないだろう。
そんな彼の演技は、車椅子に乗ったミイラ男と足元に寝そべる巨大モグラ、
そして舞台一面の薔薇という猟奇的かつシュールなものだった。
(ちなみに準備と後片付けはマリコルヌがやった)

そして、遂にルイズの出番である。
まずルイズはゆっくりと深呼吸をした。
(落ち着いて・・・ルイズ。結局なにも思いつかなかったけど、堂々としなさい。
 あんなバカ帽子に期待したって無駄よ無駄ァァァ!
 堂々と出て、挨拶して、紹介すればいいの。
 笑われたり、野次が飛んでもくじけちゃダメ。
 姫さまの前で無様な格好は見せられない、毅然としなさい!)
ふぅぅぅぅぅぅ・・・
「よし!行くわよ!バカ帽子ッ!・・・って、あれ?」

幕が上がった。舞台の上にはピンクの髪の小柄な少女が一人。
その頭の上に、彼女の『変な帽子みたいな使い魔』は、

      • いなかった。


第六話『帽子はどこに溶けた?』完ッ!

      • ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・




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