ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔波紋疾走-8

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数日が過ぎると、生徒達のジョナサンへの印象は二つに割れていた。
一つは貴族に歯向かう不埒な平民、というもので、面と向かってジョナサンに勝負を挑んだり罵声を浴びせる者こそ
いなかったものの、ルイズと一緒くたに厄介者を見る目を向けられるようにはなった。
もう一つは平民ながら天晴れ、という評で、周囲が驚いたことにギーシュはこの側に立っており、それどころか
「身分の差こそあれ僕達は友人だ、なぁジョジョ?」と公言して憚らなかった。
とはいえ彼自身の女癖の悪さは決闘後も一向に直る気配を見せなかったが。

一方で使用人、つまり学内の平民達からの評価も微妙なものだった。
「魔法が使える平民」「貴族を圧倒した平民」…つまり「評価はするが得体の知れない奴」というのが大勢の意見で、
その中で「貴族サマに一泡吹かせたってだけで俺ぁ痛快だ」と大笑した厨房長のマルトーと、先の決闘の一件で
危うい所を逃れたシエスタだけは、ジョナサンにとって数少ない味方となった。



ルイズにしてみればジョナサンは思った以上に「使える奴」だったが、いかんせん説教臭いのと偉そうなのが
いちいちカンに触っていた。
餌付けで言う事を聞かせる方法が聞かない事を悟ると、ジョナサンが使用人の食卓で食事を摂ることを
渋々ながら承知し、その代わりにジョナサンに小間仕事を幾つかさせようとした。
ただ残念ながらジョナサンは生活能力がさほど高くない事がすぐ判明し、結局他の使い魔同様に主人であるルイズの
身辺警護が主な仕事となった。

ジョナサン自身はそのような評価を気にする事も無く、ルイズに付き添って学園生活を送っていた。
当然授業にも同行し、ジョナサンもハルケギニアの歴史・地理・文化についての知識を少しづつ学び始めたが、
いかんせん魔法学校という場所柄のため授業も魔法の原理と実践が主体であり、魔法が使えない身にすれば
メイジを相手にした場合の策を考える時以外は無用の知識でしかなかった。
同時に元の世界に戻る方法をあちこち尋ねてはみていたが、そもそも使い魔と主人の契約は無条件の終身契約な上、
「異世界から来る」者がいる割に「異世界に行く」者は皆無と知り、最近ではかなり悲観的になっていた。

そして教師陣は…



「ハブショ」
鼻毛を抜いてくしゃみ一発。
トリステイン魔法学園学長オールド・オスマンのこの癖はコルベールにとって馴染めないものの一つだった。
「…なぁ、ワシの言った通りになったろォ~?」
「はぁ」
納得いっていない表情のコルベールはこれまた納得いっていない返答をする。
「あのグラモンん所のマセガキは口ばっかりなんじゃから…まあ石畳の傷だけで済んだんだから良しとせねばな。
 秘宝を使って生徒の喧嘩を止めたりすれば後が面倒で困るしの」
「石畳は先日生徒に実習の名目で修理させました。ただやはり『何が石畳を切り裂いたのか』を知りたがってたとか」
「まあ言って信じる奴もおるまいて。見ていたこっちが信じられんのじゃから」
鼻毛を抜いてくしゃみ一発。
「ところで例の件、調べが付いたと聞いたが?」
「あ、はい…これを」
コルベールは小ぶりの古書を取り出し、付箋を挟んだ箇所を開く。
「これだけが一致しました」
「おっそろしく古い本だのぉ…しかも薄いし小さいし…良う見つけてきたもんじゃな」
「『始祖ブリミルの使い魔たち』。刊行年不明、子供向けの教材か絵本です。
 文学の未整理棚にあったのをたまたま見つけてきました」
開いたページのルーンの一つを指差し、
「これです」


「『ガンダールヴ』…『始祖ブリミルの盾』か…」
「はい。ですが本の中にはこれ以上の記述はありません。ルーンだけです」
「繰り返すが、他の資料には載ってないんじゃな?」
「まず最初に『魔力文字大全』を調べましたが、該当するルーンはありませんでした」
「あれに載ってないとなれば本当に忘れられたか、それとも…」
オールド・オスマンの意地の悪い笑み。
「『歴史的に無かった事にする』ため消したか、じゃな」
「そんなバカバカしい…」
「自分に都合の良い歴史が欲しい連中はそれくらい平気でやるぞ。時間と手間は掛かるが確実な方法じゃ」
鼻毛を抜いてくしゃみ一発。
「こうなると確証が欲しいのぉ…彼が本当に『ガンダールヴ』たる者か、そしてその主が主たるにふさわしいか」
「では模擬戦でも?」
「そんなスッとろい事せんでもええわい。相手役なら適任がいるじゃろが」
「はあ…あまり関心しませんが…」
渋るコルベールを面白がるように見つめつつ水タバコの吸い口を引き寄せ、
「素破かと思うて泳がしてみたがそんな大したタマでなし、そろそろお引取り願う頃合じゃろうて。
 それともなんじゃい、おぬしも色香にたぶらかされたか?ん?」
ほくそ笑みながら一口。
「そうではなくて万一を考えると…」
「ま、よしんば失敗しても何とかするわい…トリステイン魔法学園の名誉にかけて、な」。
笑いと共に煙を吐き出すオスマン。この癖もコルベールにとって馴染めないものの一つだった。
「さて、女狐を釣る餌じゃが…あれでいいかのう…」

その三日後、トリステイン魔法学園の宝物庫に怪盗「土くれのフーケ」が現れた。

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