ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-02

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匿名ユーザー

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「あんた誰?」
康一が目を覚ますと、不機嫌そうな顔で覗き込んでいる女の子と目があった。
白人である。多分13~14歳といったところだろうか。それはもう映画で見るようなとびっきりの美少女といっていい。服装は白いブラウスに黒のプリーツスカート。ここまではいいのだが、その上から黒いマントを羽織っている。
康一はなんとなく、以前見た映画で出てきた、吸血鬼のことを思い出した。彼女のマントには襟がないので白くて細い首が見える。よし、どうやら吸血鬼ではないようだ。
半分寝ぼけた頭でここまで考えて、はっと康一は跳ね起きた。
「ここは・・・どこ!?」
「質問に質問で返すなんて平民の癖に生意気ね・・・もう一度聞くわ。あんたは誰なの?」
眉根を寄せて更に身を乗り出す女の子の迫力に、康一はなんとなく気おされてしまった。
「ぼ、僕は広瀬康一。日本人ですけど・・・。」
「ニホンジン?なにそれ、国の名前のつもり?」
康一はめんくらった。いくらなんでも日本をしらないなんて!白人の人がいるし、ここはまだイタリアのはずだけど・・・。
風が頬を撫ぜた。青臭い草原の香りがした。康一があたりを見回すと目の前の女の子のようにマントを着たたくさんの少年少女がものめずらしそうにこちらを見ている。今日はハロウィンかなにかだろうか。って、そんな馬鹿な・・・。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
誰かがそういうと、まわりからくすくすと笑い声が聞こえる。
しかし目の前の少女は肩をいからせ、顔を真っ赤にして怒鳴り返す。
「う、うるさいわね、キュルケ!ちょっと間違っただけよ!」
「ちょっとだって?はーて、ルイズの魔法が間違えなかったことなんてあったっけなー?」また別の誰かが揶揄するように言うと、人垣が爆笑した。
一方康一は混乱する頭を必死に整理していた。
「(僕はさっきまでイタリアにいて・・・。そうだ、変な鏡のスタンドに引きずり込まれたんだった。・・・じゃあ、ひょっとして僕は『まだスタンド攻撃を受けている』・・・・?でも、なんだか様子がおかしいぞ?)」
知らない場所で、見たこともない格好の人たちに囲まれ、しかし自分には傷一つないようだ。こんな妙なスタンド攻撃があるだろうか。

ルイズと呼ばれた女の子は、そばに来ていた中年の男性(やはりマントを着ているしおまけに杖まで持っている!)に訴えた。
「コルベール先生!もう一度召還させてください!これは何かの間違いです!」
「うーむ、気持ちは分かるが・・・ミス・ヴァリエール。『使い魔』の召還は原則として一度きりの神聖なる儀式なんだよ。自分の『使い魔』に不満があっても、やり直すことは認められていない・・・」コルベールと呼ばれた男は清々しいほど物寂しい頭を掻いた。
康一は使い魔ってなんだろう。と首を傾げた。まさかその使い魔というのが自分のことを言っているとはまだ思い至らない。
「で、でも『使い魔』が平民だなんて聞いたことありません!」ルイズはなお言い募る。
「だが、平民を『使い魔』にしてはいけないという法もないからね。可哀想だが監督者として一度した召還をなかったことにするなんて許すわけにはいかないよ。それとも今回の『サモン・サーヴァント』はあきらめるかね?」
「そんな・・・『使い魔』がいないと、進級できないのでしょう!?」
「そうなるね。だが僕としてはそれが精一杯の譲歩だ。さぁ、選びなさい。この平民を『使い魔』にするか、あきらめて留年するか!」

ルイズは目に涙を浮かべ、しばらく歯を食いしばって悔しげにコルベールを睨めあげた。しかし覚悟を決めたように康一のほうに振り返る。
ぎょっとする康一にずかずかと近づくと肩を左手でドンと押した。ちょうど立ち上がろうとしていた康一が尻餅をつくと、その上にのしかかるようにして跨ってくる。
「ちょ、ちょっと君・・・!」康一が顔を赤らめて後ずさろうとするが、動かないでと真剣な目で言われ、動けなくなってしまう。
ルイズは諦めたように―半分自棄になったように―目をつぶると、手に持った小さな棒のようなものを康一の顔の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
鈴のような声で、呪文のようなものを唱え始めた。
すっと、杖を康一の額に置いた。
そして、ゆっくりと顔を近づけてくる。睫毛が長い、まるで西洋人形のようだ。
「ちょ、ちょっと君、なにを・・・」ごくりと生唾を飲みながら、思わず仰け反る康一の肩をルイズの左手が引き寄せる。
「動かないで・・・」
「いやでも、僕には恋人が・・・」
だからやめてくれ、と最後まで言い切ることはできなかった。
「いいからじっとしてなさい!」と言うやいなや、えいやっとその小さな唇が押し付けられてきたからである。
唇に感じる柔らかい感触に康一は固まってしまった。
「(ああ・・・なんてことを・・・・)」
思わず息を止めて目を閉じる。心臓が早鐘のように走り出す。
「(これはラッキー!って思えばいいんだろうか・・・。でも僕には由花子さんが・・・)」
ルイズが唇を離す。
ぷはっと止めていた息を吸うと、離れ際わずかに女の子の甘い香りがした。
「終わりました。」
ルイズはその場で立ち上がり、顔を真っ赤にしてコルベールに言う。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したけど『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね。」
コルベールは嬉しそうに言った。
康一はまだ顔を赤くして混乱していた。
「ななな、なんでキスしたの!?というか君は誰で・・・あーもう、さっぱりわからないよ!!」
ルイズは少し潤んだ瞳で叫ぶ。
「うるさいわね!あんたはわたしの使い魔になったのよ!わたしだって嫌だけど・・・あんたが出て来ちゃったんだからしかたないでしょ!!」
康一はそれに言い返そうして、そのとき、突如として左手の甲に激痛が走った。
「ぐわああぁぁぁぁぁ!」
まるで焼き鏝を当てられているようだ!康一は左手を抱えて悶え苦しんだ。
みると手が光り、なにか文字のようなものが刻まれていっている。
「(そうだ、油断した・・・やはり僕は『まだスタンド攻撃を受けている』!!)」
コルベールと呼ばれた男性が、何か言いながら、ゆっくりと近づいてくる。自分が何をされているかは分からないが、このままではやばい!
康一は覚悟を決めた。戦わなければならない!
そして呼ぶ。自らの半身、『魂のヴィジョン』(スタンド)の名を。
「エコーズACT3!その男を攻撃しろォー!!!」

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