ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アヌビス神・妖刀流舞-29

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匿名ユーザー

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「斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
 斬る斬るKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
 KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
 KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
 KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
 KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL」

 土埃が舞った。
 クロムウェルも、そしてその場に居合わせる『レコン・キスタ』のメイジらも驚愕に声も出せずにいた。
 土煙はゴーレム。それも『土』のスクウェアが作り出した五十メイルを超える鋼鉄の特上の物であった。
 それが一瞬で土煙へと眼前で化けたのである。
 煌めく十の刃。
 その前で塵芥へと。

「絶っ!!
 好っ!!
 調ーっ!!」
 ワルドの手から叫び声が上がる。
 その声は右の手より。
 そして左の手よりも声が上がる。
「おでれーた。
 俺、マジでおでれーてる!
 無敵過ぎるだろ兄弟」
 デルフリンガーは心情を隠しもせずに興奮の声をあげる。
「はは、盛り上がっている所を悪いが、来る!それも極上の『火』!」
 割って入ったワルドの声に右の手と四方から言葉が返る。
「ちょろいね!」
 アヌビス神は『火』『火』『火』『火』のハルケギニアで最も強力で無慈悲な炎のスクウェアスペルを前にへらへらと笑い飛ばす。
 燃ゆる業火。その色白色へと達する。それは最上の熱量の証。
 側に寄るだけで身を焼くそれへと五人のワルドは、デルフリンガーを前方へと突き出し一気に間合いを詰める。
 灼熱の火球の命はほんの数瞬であった。
「げーっぷ」
 デルフリンガーがふざけた調子の声でおどけた。
 五倍の魔法喰らう伝説の前には、『火』のスクウェアと言えども児戯であった。

 ワルドらを囲む『レコンキスタ』が精鋭のメイジらが身を凍らせた。
 かの烈風の武勇伝すら、今見た現実の前には可愛らしいとさえ思えた。
「お前ら、ここは戦場だっての!」
 妖刀が吠え、自慢の魔法を喰らい尽くされ茫然自失の『火』のメイジの胴と首、胴と腰が泣き別れる。
 彼の最後の視界には左右を駆け抜けた二人のワルドが。最後の聴覚には『ガンダールヴ』を名乗る妖刀の狂ったような笑い声が聞こえた。

 吹き上がる赤き命の間欠泉。
 それを突き抜け二振りの輝きが、『土』のメイジに襲いかかる。
「あ……」
 小さく声を残し、彼は胸と首を貫かれ崩れた。

 スクウェアスペルが児戯も等しい扱い。
 有り得ぬ現実を前にして恐慌が巻き起こった。幾多の戦場を越え、屍を築き、血の海を渡った彼らだが、それによって築かれた常識を越える眼前の悪魔に、心は無垢な幼児へと戻され、泣き叫びながら蜘蛛の子を散らす様に逃げ去ってゆく。

「おやおや、閣下。
 ご自慢の精鋭たちは用事を思い出した様子。
 如何なされますかな?」
 ワルドがわざとらしくおどけて、小首を傾げる。

 流石のクロムウェル。皇帝の野心を持つ男は、その欲望を持って心を保っていた。
「この様な虐殺行為、『愛』の彼の意に反するのではないかね」
「駄目なのです閣下。この身体最早僕の自由ではありません。
 鬼の心で動きまする」
 ワルドのおどけに対し少々ふざけたふうに振る舞い笑ってみせるが、ワルドは悲しそうに首を横へと振った。
 そう、初めのあの時がワルドの独断を通せた最後の時。今やこの身はアヌビス神が支配している。
 血を好み肉を骨を断つ感触を好む妖刀。彼はたった今、複数の命を断った事に興奮し次なる贄を求めている。
 そう、現実としてその両の手からは奇妙な笑い声が聞こえてくる。
「ひゃっはぁー!いひひひひひひひひ。最高!肉最高!骨最高!」
「落ち着け。兄弟落ち着け。さっきの流れるような首撥ねは素晴らしかった。
 えへへ、落ち着け。俺たち絶頂っぽいけどよー。まあ落ち着け」
 興奮した二振りの邪悪としか言えない笑いが木霊する。

「つまりはこう言う事なのです」
 ワルドのその言葉にクロムウェルはついに心を折り、「ひぃっ」と声を上げ数歩後退り、振り返り尿を漏らしながら走り出す。
 刹那、左の腕に焼かれる様な痛み。そして突然左半身が軽くなり、体重のバランスが崩れ地面へと転がる。
 クロムウェルは恐る恐る己の左腕を見る。
 真っ赤な腕。否、噴出す血潮。
 恐怖に痛みは消し飛ぶ。
 たった今斬り飛ばされた左腕を、ワルドの脚が容赦なく踏み付けるのが視界の片隅に映る。
 声も出ず、這うようにして、迫るワルドから逃れようと必死に必死にもがく。
 進む先、目の前に脚が見えた。
「ひっ」と怯えの声を上げて恐る恐る視線を上げる。
 それはフードを深く被った女性であった。
「しぇ、シェフィー……ルドか?」
 クロムウェルは救いの神とばかりに残された右の腕のみで必死で掻きついた。
 シェフィールドと呼ばれた女性はクロムウェルを気にも止めず、唇をニィっと一瞬歪めワルドの方を見た。
「まさか『ガンダールヴ』がインテリジェンスソードだとはね」
 何処から、そして何時から様子を窺っていたのか彼女は言葉を続ける。
「それも『ガンダールヴ』の名前がアヌビス?なんて面白い冗談」
 その言葉にアヌビス神がハァ?と、がらの悪い声をあげる。
「人様を冗談呼ばわりたーふざけやがって。
 オイ、ワルド。誰だアレ?」
「クロムウェルの秘書のシェフィールドだ」
「おーおー。なるほどなるほど。ワルド子爵ご推奨のレコン・キスタ、ベストオブおっぱいだな?」
 ワルドは盛大に口から何かを吹いた。偏在の数だけ吹いた。
「と、とと突然何を。
 そ、そそそ、そのような事は。ま、待てシェフィールド!
 何だその表情は!」
 反射的に胸元を庇うように腕を組み、シェフィールドが何かせつない生き物に向けるような視線でワルドを見た。
「サイレンスの魔法で、こっそり風呂覗いて確認したから間違いないらしいぜ。
 睡眠中にスリープクラウドかまして起きないようにしておいて、じっくり触ったから間違いないらしいぜ」
「マジか。マジか兄弟。こいつそこまで屑だったのか」
「ああ、良い弾力だったとか―――――」
「ま、ままま、待ちたまえ!」
 ワルドは、勝手に五方向サラウンドで、戦場に似つかわしくないとんでも無い事を言い始めた二振りへと割って入る。
「覚えは無い!そんな事は断じて断じて!」
「嘘だね。其の侭寝巻き捲り上げて吸ってみただろ実は。味も見ておくべきだとか思ってただろ?」

「な、ななななななななな!
 何か油断なら無い物は感じていたけれど、まさかそんな下種だったなんて」
 瀕死ではぁはぁ息を切るクロムウェルを放置して、シェフィールドが纏った雰囲気に似つかわしくない感情を顕わにして声を荒げた。
 予想外のセクハラ発言に頭に血が上り、何故アヌビス神がそのような事を言い出したのか疑問にも思えずワルド殺すと殺意を向ける。
「誤解だ!僕はそんな事はしない。そんな事するような人間ならば既にフーケやタバサにもやっている!
 ではない、それも誤解だ。そんな無粋な事をこの僕がするとでも言うのか!」
 混乱気味のワルドが五方向サラウンドで必死に弁解するが泥沼である。
「あんな幼い子にまで……」
 フーケは兎も角として、諸事情でタバサの事は詳しく知るシェフィールドは、更に軽蔑するような視線をワルドへと送る。

 ワルドが五人揃って涙目で必死に弁解している。アヌビス神も茶々を入れるのに夢中だ。
 シェフィールドは、馬鹿馬鹿しい上に腹立たしいがチャンスであると判断した。どうあれこの場は当初の予定通り、瀕死のクロムウェルを救い脱出しなければならない。
 彼女は用意していた物を懐から取り出し素早く準備し、煙幕を焚いた。

「落ち着け兄弟。落ち着けワルド。馬鹿をするタイミングじゃねえぞ」
「確かにあれは良い物だが断じて吸っては……はっ!?」
「だってよー、あの胸を見るなりワルドの頭の中に邪まな感情が見えたしよー。
 それに覗いたりはした事あるんだよな実際……はっ!?」
 デルフリンガーの言葉にワルドは、アヌビス神は、はっと我に帰る。
 そして偏在を含め自分たちへ煙の中から飛来した何かを軽く斬り飛ばす。
「ちっ、煙幕か!
 おっぱい子爵が余計な言い訳をするからだ」
 煙の向こうを人影が走るのが見えた。
「逃がさな……ん?」
 アヌビス神は素早くワルドの身体を駆り、その逃げる影へと飛び掛ろうとするも影が幾つも存在する事に気付く。
 しかも其々に気配が存在する。
「おいワルド、デル公、何だありゃ?何で十も二十も沸いて出るんだ?
 あれも偏在か?」
「僕はあんな数の偏在など聞いたことも無い。不可能だとしか言えん」
『風』のスペシャリストであるワルドが真っ先に否定した。
 幾ら五の身体を持ってしても手におえる数ではない。
「かまやしねえ。片っ端からばらしちまやいいじゃねーか」
 デルフリンガーのその言葉に動こうとした、その時に偏在が一斉に姿を消した。
「は?」
「ど、どうしたんだ?」
 アヌビス神とデルフリンガーが、『え?』と声を上げる。
「先程斬り飛ばした何かが不味かったのか、ダメージを受けて掻き消えたようだね」
 ワルドが視線だけで己の身体を大丈夫かな?と伺う。
「もう一回出せばいいだけだろ。さっさと出せ」
 取りあえずとばかりに、最も近い影を斬り付けつつワルドを促す。
「無理だ。僕にはもうエア・ハンマー一発分残っているかと言った所だ」
 アヌビス神の言葉にワルドは苦笑気味に答えた。
 無理も無い、出陣前に若干の休息は有った物の、それ以前に魔法を酷使し過ぎていたのである。

「つまりは何だ」
「取り逃がしたって事だあね」
「余計な事を言い出すからだ……」
 煙が晴れた後には、見た事も無い人形が転がっているだけであった。
 魔法か何かで身代わりとして動く人形を囮とし、クロムウェルとシェフィールドが煙幕に紛れて逃げたのは直ぐに理解できた。
 それをワルドの身体で蹴飛ばしながらアヌビス神たちはやれやれとぼやいた。

 ニューカッスル方面の空を覆いつくすような大艦隊が、轟音を響かせ砲撃を繰り返すのが見える。
「不味くね?」
「途轍もなく不味いな」
 アヌビス神とデルフリンガーは遠い眼差しで空の有様を見上げた。
 旗艦『レキシントン』を中心とし、レコン・キスタ艦隊がこれでもかとばかりにどっかんどっかんと大砲を撃ち続けている。
「デル公よお、あれってやっぱばれたら袋叩きだよな?」
「間違い無いね。一瞬で火達磨爆発炎上だあね」

「慌てるな。クロムウェル本人はまともに指令も出せぬ程には追い込んだ。
 今の内にクロムウェルの下の指令系統を押さえ撤退命令を流せばどうとでもなる」
 ワルドのその言葉に、アヌビス神がほほーとわざとらしく息を吐く様にして言葉を返す。
「で、その指令系統とやらは何処だ。司令官か何かがいる所があるんだろ?おれたちの今の足で如何にかなる場所なんだろうな?」
「その通りだあね。直ぐに駆けつけられる場所じゃないとはっきり言ってやばいね」
 デルフリンガーが鍔をかちゃかちゃ鳴らしながら、そうだそうだと言葉を続ける。
 グリフォンの場所までの距離。そして敵の情報統制が取れる前にグリフォンの速力で到達できる距離かどうか。それ次第では非常に面倒な展開も考えなければならない。
 場合によっては、魔法も殆ど打ち止めで偏在も無いワルドの身体を使って敵陣制圧も行わなければならないのである。
「コホン。ははは問題無い、場所なら良く知っている所さ」
 二振りの注目を感じながら、一度咳払いをし落ち着きを取り戻すようにしてワルドは口を開いた。
「『レキシントン』……いや、『ロイヤル・ソヴリン』だ」
 その言葉に二振りは黙り込む。

 そしてアヌビス神はちょっと待てよ!と思う。
 それ、最初に何か取り決めておけば良かったんじゃねえの?とデルフリンガーが考えているのが何だか伝わってくる。
 馬鹿馬鹿しさから復帰し思考が回り始め、堰を切ったように溢れ出すのは抗議。
「にゃにぃー!ちょっと待て!!」
「駄目じゃねーか!!本当に駄目じゃねーか!!」






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