ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロと奇妙な隠者-28

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匿名ユーザー

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 風景を薄っすらと染める朝もやの中、ジョセフ達は馬に鞍をつけていた。
 三人とも普段通りの格好をしているが、長い時間乗馬し続けなければならないということで、普段の靴ではなく乗馬用のブーツを履いていた。
 距離があるにせよ、さしたる不安はジョセフにはない。
 一睡もせずに主従揃って侃々諤々の大討論を繰り広げたものの、部屋を出る前に波紋をルイズに流したので、彼女からは十時間熟睡して目覚めた朝のように眠気も疲労も消えている。
 デルフリンガーは意外と長尺の剣なので背中に背負うか腰に差すか悩んだが、利便性を考えて左腰にぶら下げることとなった。
「ところでジョジョ。僕も使い魔を連れて行ってもいいかい」
「なんじゃギーシュ、お前も使い魔なんか持っとったんかい」
「そうでなかったら僕も進級出来てないじゃないか」
「そう言えばあんたの使い魔って見た事がないわね。なんだったっけ?」
 ルイズの問いに、ギーシュは地面を指差した。
「ああ、ここにいるよ」
「何? 見えないわよ。アリンコでも使い魔にしたの?」
 ルイズが目を細めながら地面を見ていると、ギーシュはくすりと笑って後で地面をノックした。
 すると地面がぼこりと盛り上がり、そこから茶色の巨大な頭と前足が現れた。
「……何じゃこれ」
「……私に聞かないでよ」
 すぐには正体が判らない二人をさておいて、ギーシュは地面に跪いて茶色の生き物を抱きしめた。
「ヴェルダンデ! ああ、僕の可愛いヴェルダンデ!」
「あーと。なんじゃそのでっかいモグラみたいな生物は」
「見たまんまじゃないかジョジョ! これが僕の可愛い使い魔のヴェルダンデだよ!」
「……ああ、ジャイアントモールだったの?」
 ルイズの言う通り、それは巨大モグラだった。大きさは小熊ほどもある。
「そうだよ。ああヴェルダンデ、君は相変わらず可愛いね。どばどばミミズはたくさん食べたかい?」
 モグモグモグ、と嬉しそうに鼻をひくつかせてつぶらな瞳で主人を見上げるモグラ。
「そうか、美味しかったかい!」
 ギーシュは巨大モグラを抱きしめて頬ずりしまくっていた。
「……色々コメントに困るのう」
 モンモランシーとの橋渡しをしたことをちょっと後悔したジョセフである。
 主にモンモランシーにいらんことしちゃったかなーという類の。
「でもギーシュ、いくらなんでもアルビオンにモグラは連れて行けないわよ。留守番させなさい」
「そんな! こう見えても僕のヴェルダンデは馬と同じくらいの速さで土を掘れるんだよ!」
 モグラはおー、と言わんばかりに前足をちょこんと上げてそうだそうだと主張した。
「あの国で地面掘ったりする生き物なんか危ないからダメよ」
 きっぱりと言い切るルイズの言葉に、ギーシュは愕然と膝をついた。
「ああ、何という事だヴェルダンデ! 熾烈な運命は僕達を引き裂くんだね!」
 脚本主演観客総勢一人の芝居に明け暮れる主人をさておいて、モグラはのそのそと穴から這い出るとルイズへと近付いていく。
「な、なによ」
 つぶらな瞳で見上げてくるモグラに気圧されたルイズを、モグラが勢いよく押し倒した。

「ちょ、ちょっと!? 何するのよ! やめ、どこ触ってるのよ!」
 鼻先や前足で美少女の身体をまさぐるモグラ。
 当然ルイズが大人しくしているはずもないので、抵抗しようと暴れた結果色んなところがめくれたり露になったりするわけである。
「オイコラ。アレは何をしとるんじゃ」
 特に押し迫った危険がないようなので静観しているジョセフと、少々首を傾げたギーシュ。
「んー。ヴェルダンデは危害を加えるつもりはないんだけれど……ルイズ! 何か宝石とか身に付けてないかい!」
「ほ、宝石!? それがどうかしたの!」
「ヴェルダンデは僕のために貴重な鉱石や宝石を見つけてきてくれるんだ! ルイズが何か高価な宝石をつけてるから、それに反応してるみたいだよ!」
 ギーシュの言葉通り、右手の薬指にはまったルビーを見つけるとそれに鼻先を擦り付ける。
「この! 無礼なモグラね! これは姫様から頂いた指輪なのよ!」
 必死にモグラからルビーを逃そうとするルイズと、宝石に追いすがろうとするヴェルダンデ。
 これはどっちも引く気配がないと見たジョセフは、やれやれと苦笑しながら一人と一匹の間に割って入ろうとモグラと主人の間に手を差し入れた瞬間。
 一陣の風が二人と一匹の間に舞い上がり、ジョセフごとヴェルダンデを吹き飛ばした。
 ヴェルダンデは地面に転がって目をくるくる回し、ジョセフは腰をしたたかに打ちつけた。
「誰だッ!」「誰じゃッ!」
 二人の男がそれぞれ激昂しながら叫ぶ。
 すると朝もやの向こうから、一人の長身の貴族が歩いてくる。
 羽帽子が目立つシルエットを見止めたジョセフは、レストランで頼んだ料理に髪の毛が入ってた時と同じくらいのしかめっ面を見せた。

「貴様ッ! 僕のヴェルダンデになんてことをッ!」
 ギーシュは怒りに任せて薔薇の造花を振りかざしたが、羽帽子はそれよりも早く杖を引き抜いてギーシュの薔薇を吹き飛ばす。
 辺りに舞い散る薔薇の花弁が地面に落ちもしないうちから、ゆっくりと言葉を並べ立てる。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行することを命じられた。任務が任務だけに、一部隊をつける訳にも行かない、と僕が指名されたというわけだ」
 ジョセフとおおよそ同じくらいの背丈の貴族は、羽帽子を取って一礼した。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長。ワルド子爵だ」
 文句を言おうとしたギーシュは、余りにも相手が悪いと口を噤まざるを得なかった。
 トリステイン貴族の憧れである魔法衛士隊の隊長の実力は、ギーシュも十二分に理解している。
「すまないね、婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りは出来なかったのでね」
「フン、剥がそうとしてたわしまで吹き飛ばすたぁいい度胸じゃなッ」
 婚約者、という単語を耳にしたジョセフの機嫌が更に急降下していった。
 ヴェルダンデから解放されたルイズは、立ち上がることも忘れてワルドを見つめていた。
「ワルド、様……」
 ワルドは朗らかな笑みを浮かべながら、ルイズに駆け寄ると彼女を抱き上げた。
「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ! 相変わらず君は軽いね、まるで羽毛のようだ!」
「お……お久しぶりで御座います」
 突然のことにも、悪い気分はしないのか頬を赤らめてうっすらと笑みを見せていた。
 そのルイズの様子も、更にジョセフの機嫌をより一層悪くしていく。
「あ、あの、恥ずかしいですわ……」
「ああ、すまない! 僕の可愛らしい婚約者に久しぶりに会ったものでね、ついはしゃいでしまった! ところで、彼らが今回の仲間かい? 旅を共にするんだ、自己紹介と行こうか」

 と、ルイズを下ろしてもう一度羽帽子を被り直したワルドは、ギーシュとジョセフに向き直った。
「え、ええと……ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のジョセフです」
 ルイズがそれぞれを指差して紹介すれば、ギーシュは深々と頭を下げた。
 ジョセフは不本意そのものな顔はしながらも、一応会釈くらいはした。
「御老人、キミがルイズの使い魔かい。人とは思わなかったな」
(ケッ! ガキにタメ口叩かれる覚えなぞないわいッ!)
 学院の友人達と同じような口調と態度で話しかけられて、ジョセフの眉間には深々とした溝が刻み込まれた。
 もし敬語で話しかけられても眉間の溝は同じ深さになっていただろう。
 とどのつまり、嫌いな相手から何をどうされようが不愉快なことに変わりはない。
「僕の婚約者が世話になっているよ」
「そいつぁどーも」
 ジョセフは目の前の男を軽く一瞥して品定めした。
 色男なのは認めてやってもいい。だがどうにもいけすかん雰囲気がプンプンする。
 こうやって向かい合えば、いやぁな目をしてるのが丸判りだ。
 まるで仮面つけたまんま人と話してる様な……使い魔が人だろうと動物だろうとどうでもいい、という目だ。
 しかも微笑みがすこぶる上手なのがより一層腹が立つ。この仮面の裏に隠した素顔がどんなものかは知らないが、この目からしてろくなモンじゃないだろう。NYにいた頃に、自分を騙そうと近づいてきた連中と似た、ゲロ以下の臭いが漂ってきそうだ。
 ジョセフは舌打ちの代わりに、軽い溜息をつく。
 ワルドはジョセフの様子を見て、何やら誤解したらしく朗らかな笑みのままジョセフの肩を叩いた。
「どうした? もしかしてアルビオンに行くのが怖いのか? キミはあの『土くれ』のフーケを捕らえたんだろ? その勇気と才覚があれば、姫殿下の任務も容易くこなせるさ!」

 と、豪快に笑うワルドを前にしても、ジョセフの目はあくまで冷淡だった。
(ホリィを掻っ攫ったあの日本人だって、ホリィにあんな目を向けたこたァ一度もないッ)
 だがルイズはそんな彼の目の光に気付く様子もなく、どうにも落ち着きをなくしている。
 ジョセフの口の中に、どうにも苦い味が広がるのを止める事は出来なかった。
 ワルドが口笛を吹くと、朝もやの空からグリフォンが降り立ってきた。
 ワルドはひらりとグリフォンに跨ると、ルイズに手を差し伸べた。
「おいで、ルイズ」
 ルイズはしばらく躊躇いながらも、意を決して差し伸べられた手を取った。
 それを見るジョセフは、口の中に詰め込んだ苦虫を咀嚼して飲み込んでいるような表情を隠そうともしなかったが、それを見ていたのはギーシュだけであった。
「では諸君! いざ行かん、我らが姫殿下の御為に!」
 杖を掲げて叫ぶワルドのグリフォンが駆け出していく。
 グリフォン隊隊長の後ろを付いていくギーシュは感動の面持ちで馬を走らせていき、ジョセフも苛立ちを隠さないまま馬を進ませていく。
 いけすかない、から信用ならない、に警戒レベルを上げた男を見上げながら、ジョセフは深く帽子を被り直した。

 最初の目的地であるラ・ロシェールはトリステインから早馬で二日ほどの距離にある。
 だが学院を出発してからというもの、ワルドはグリフォンをひたすら走り続けさせていた。
 途中の駅で馬を二度ほど交換したが、グリフォンは疲労の欠片すら見せずに当初からの速度を崩さず空を駆け続けている。
「グリフォンっつーのはあんなにタフなモンなんか」
「……いくら幻獣だって行っても、あそこまでタフなのはそうはいないはずだよ」

 馬は交換していてもまだ背筋を伸ばして騎乗しているジョセフと、少々疲労の色が濃くなってきたギーシュは、前方を大きく前に出るグリフォンを見上げて話していた。
 ジョセフは波紋を全身に流している為に疲労も少ないが、ギーシュはそうもいかない。
 ギーシュがへばっているために、駅に着くたびに幾らか波紋を流して疲れを軽減してはいるが、常に波紋を流せないのでちょくちょくへばってしまうのだ。
「つーか、急ぎの任務なのは判るんじゃが……あいつ、どうにもわしらを置いていこうとしてるような気配じゃな」
 ワルドのグリフォンは隙あらばジョセフ達を置いてきぼりにしようとするかのように、速いペースで休みなく駆け続けている。
「……そりゃそうだ、直々に任務を請け負ったルイズと栄えあるグリフォン隊隊長がいれば、使い魔と立ち聞きしてただけの僕なんていてもいなくてもいいだろうからね」
 時折ルイズが後ろを向くと、グリフォンは少々スピードを緩めるが、それも少し時間が経てばまたスピードは元に戻っていく。
「ルイズが心配してくれちゃーおるみたいじゃがな」
 最初はぎこちなく見えたルイズの振る舞いも、段々と親しげなものになっているのが見て判る。
「それにしてもルイズも公爵家の生まれだってことをよく忘れられるけど、まさか婚約者がグリフォン隊の隊長殿だなんてね。やはりヴァリエールは名門だな」
 感心したようなギーシュの言葉に、ジョセフの顔に再び苦味が走る。
 グリフォンの上ではワルドが親しげにルイズと会話するだけではなく、時折馴れ馴れしく肩を抱いたり手を繋いだりしている。
 可愛い孫娘が他の男と親しげにしてるだけでも腹立たしいのに、その男はあまりにも信用ならない雰囲気を漂わせている。
 しかもルイズがそれに微塵も気付いていないというのが怒りに拍車をかける。

 ここでルイズに「あの男は信用ならんから付き合うな」と言っても聞いてくれないことは請け合いである。
 ああいう状態の少女に年長者が何を言っても無駄なのは十分理解している。
 だがそれで諦めがつけられるか、と言われれば付けられる筈がない。ジョセフ・ジョースターは年のワリに若いとよく言われるが、精神年齢は波紋を流さずともかなり若かった。
「おやジョジョ。何やら剣呑な目つきだけれど……やはりあれか。婚約者と言えども敬愛するご主人様を取られるのはやはりシャクかい? それとも目に入れても痛くない孫娘を他の男に持っていかれるのは頭にくるのかい?」
 ジョセフがグリフォンを見上げる視線の質に気付いたギーシュが、にまにまと笑った。
「あん?」
 ぎろり、と睨む視線にも竦む気配さえ見せずに、なおも調子に乗って言葉を続ける。
「もしかして、ヤキモチかい? ご主人様に適わぬ愛を抱いたのかい!? 忠告しておくけれど、身分違いの恋は昔から悲劇の種って相場が決まってるんだぜ?」
「やかましいわい。あんまり過ぎた口叩いとるとお前の彼女にオイタをバラすぞ」
「なんだい、あれから僕はモンモランシーに知られて困るようなことは」
「四日前。夜の中庭。栗毛のポニーテール」
「すまなかったジョジョ、もう二度とそんな口はきかないよ」
 お口にチャックをしたギーシュから視線を外すと、ルイズが自分を見ていることに気付く。
 軽く結んだ唇を開けないまま、ひとまずひらりと手を振って見せた。

 馬を何度も換え、休みなく走り通した一行は出発した夜のうちにラ・ロシェールの入り口へ到達した。
 早馬でも二日かかる距離を一日足らずで踏破したという計算になる。
 だが港町と聞いていたのだが、ここは明らかに海とは無縁な険しい山々に囲まれた山道である。潮の匂いなど微塵も漂ってこない。

 それからまたしばらく険しい岩山の間を進むと、峡谷に囲まれた街が見える。
 街道沿いに岩を穿って建てられた建物が並ぶ、港町と言う単語からは縁遠い街並みだった。
「ああ、やっと着いた! すごい強行軍だった」
 ギーシュの言葉に、ジョセフは怪訝そうにラ・ロシェールを見た。
「ここが港町か? どう見たって山ん中じゃあないか」
「なんだいジョジョ、アルビオンを知らないのかい?」
 休憩のたびに波紋を受けたとは言え、疲れは隠せない。
 しかし有名なアルビオンを知らない、とのたまうジョセフに、ギーシュは一種の優越感めいたものを滲ませながら言葉を掛ける。
「見たことも聞いたこともないからの」
「それはないだろうジョジョ!」
 ジョセフが異世界から来たということを知っているのはルイズとオスマンだけである。
 この世界の常識と非常識の区別さえあまり明確ではないのは仕方のないことだった。
「知らんモンはしょうがないわい」
 と、この旅の恒例行事になりつつある老人と青年と実りのない口論が再び始まろうとしたその時。
 不意にジョセフ達が駆る馬目掛けて、煌々と燃え盛る松明が何本も投げ付けられた。
 峡谷を照らす炎に、馬達は恐れおののいて前足を高々と上げようとしたが、まるで彫像のように馬達はぴたりと足を止めた。
「ギーシュッ! 盾を錬金するんじゃッ!!」
 松明が投げ込まれた瞬間に、ジョセフは自分の馬に波紋を流して動きを止め、続いてギーシュの馬にも地面を這わせたハーミットパープルで波紋を流し込んで動きを止めていた。
 そのため、驚いた馬から振り落とされるという事態を避ける事は出来た。
 ジョセフ自身は素早く馬から降りつつ、反発する波紋を流した馬の陰に隠れ、馬を盾代わりにしていた。

「え、あ!?」
 何が起こったのか判らずあたふたしているだけのギーシュと馬の陰に隠れたジョセフに目掛け、何本もの矢が夜闇を切り裂いて降り注ぐ。
「ギーシュ!!」
 風を引き裂いて降り注ぐ矢を波紋やハーミットパープルでは防ぐには、少し距離が遠い。
 すわ、ギーシュが矢の針鼠になろうかと言うのを救ったのは、突然に現れた小さな竜巻だった。
 竜巻は降り注ぐ矢を全て打ち落とし、呆然と馬に乗ったままのギーシュにワルドが声を投げた。
「大丈夫か!」
 二人に飛ぶ声に、ジョセフは素早く身を走らせてギーシュを馬から引き摺り下ろし、今度はギーシュの馬に波紋を流して即席の盾とした。
「こっちは大丈夫じゃ!」
 チ、と舌打ちしたジョセフは、腰に下げたデルフリンガーを鞘から抜いて構える。
 既に戦闘態勢に入っていたジョセフの手袋の中ではルーンが輝いていたが、不自由な鞘から抜け出してやっと喋れる流れとなったデルフは、安堵したかのような声を漏らした。
「ひでえぜ相棒、たまにゃ鞘から抜いてくれよ。退屈すぎて死ぬかと思ったぜ」
「すまんな、すっかり忘れてたわい」
 軽口に軽口で返しながらも、矢の飛んできた崖を見上げる。
 奇襲が失敗したからか、今は向こうも様子見しているらしく矢が飛んでくる気配は見られない。
「ななななななんだ、夜盗か!? 山賊か!? それともアルビオンの貴族連中か!?」
 錯乱して薔薇の造花を無闇矢鱈に振り回しているギーシュの頭を軽く小突いて「落ち着け」と言うのはジョセフの役目である。
「メイジがおるんなら松明や矢なんてまどろっこしいモン使わんじゃろ。と言うよりこっちの夜盗や山賊はグリフォンに乗ったのを襲うほど肝が据わってるんか?」


 口に出して考えてみて、その可能性は相当に低いと考える。ハルケギニアでメイジと平民の戦力差と言えば、剣や槍だけで戦車と戦おうと言う事と同義語である。
 ただ馬に乗ってるだけなら間違えて襲うかもしれないが、どう見ても見間違えの出来ないグリフォンが月明かりを浴びて空を飛んでいる。
 あれに構わず襲い掛かるとなればよほどの自信があるか、それとも戦力差も理解できない本物の馬鹿か。むしろそれよりは、貴族派の手の者と言う可能性が高いだろう。
「まァあれじゃ、あいつらブッちめんとならんからな! ギーシュ、ワルキューレでまずあの炎を消すぞッ!」
「あ、ああ!」
 ギーシュが慌てて薔薇を振ると、一枚の花弁が両手持ちの盾を掲げたワルキューレになる。
 盾を持ったワルキューレが身を挺し、峡谷を照らし出す松明を消しに行くのを見届けながら、続いてもう一体のワルキューレを錬金する。
 そのワルキューレは数日前にジョセフと相談の上でデザインされた、新たな形態のワルキューレ。
 巨大なボーガンを捧げ持つように構える両腕を持ち、青銅の弾丸として取り外せる一個4キロ前後の球形で形成された胴体を持つワルキューレ。
 ジョセフの求めた性能とギーシュの造詣センスが結実した、芸術的な兵器と称していい一品であった。
 会心の出来とも言えるこのワルキューレを見上げ、ギーシュは満足げに頷いた。
「フフフフフ。名前を考えてきたんだ。このギーシュ・ド・グラモンがゴッドファーザーになってやるッ! そうだな……『トリステインに吹く旋風!』という意味の『ヌーベル・ワルキューレ』というのはどうかな!」
「フランス語かドイツ語かどっちかにせーよ」
 ギーシュ特有の微妙なネーミングセンスに呆れながらも、腰に結わえ付けていた弦を伸ばし、ワルキューレの力を使ってボーガンに装着させる。

 身を挺してワルキューレが松明の炎を消したのを見届けると、ジョセフはヌーベルワルキューレの胴体から弾丸を一つ取り、ボーガンに装填する。
 人間の手ではとても弦を引くことすら出来ないボーガンも、ワルキューレの腕力を以ってすれば容易く引き絞ることが出来る。
 ジョセフはワルキューレに支えさせたボーガンの狙いを定めると、月明かりの下で僅かに人影が動いた崖目掛けて引き金を引いた。
 記念すべき最初の射撃は、僅かに狙いを逸らして賊の立つ足元の崖に命中したが、とても4キロの砲弾とは思えないほどの破壊力で崖を揺らす。
 あまりの破壊力に、賊達が狼狽している様子が伝わってくるほどだ。
 グリフォンを飛ばせているワルドも、ボーガンの射線からやや離れるように距離をとった。
「ほうほう、さすがは『青銅』のギーシュじゃな。破壊力はバツグンじゃッ!」
「あ、は、はははははっ! そ、そりゃそうさ! 僕の魔法とジョジョのアイディアが結実したヌーベル・ワルキューレならあのくらい出来なくちゃ困るからねっ!」
 自分の予想を遥かに超えた破壊力に呆気にとられていたギーシュが、ジョセフの言葉に慌てて相槌を打つ。
 まともに食らえば人間なら即死する威力を持つボーガンだが、それをガンダールヴであるジョセフが使えば立派な攻城兵器クラスの殺傷能力を持つことになる。
(それに錬金したばかりの金属は魔力の残りカスがこもっとるからなッ! 魔力に波紋を留まらせてブチ込めるから一石二鳥じゃわいッ)
 ギーシュとの決闘を経てから、様々な実験を繰り返して得た知識である。錬金した金属に波紋が留まるだけの魔力が残る時間はさほど長くはないが、短い時間だけでもいちいち油を塗らなくてもいいというのは大きなアドバンテージになる。
「うっしゃッ! んじゃさくさくっとやッちまうかッ!」

 鴨が葱背負って罠にかかったと思っていた賊達も、鴨は自分達を殺しうる狩猟者らしいと気付いたらしく、慌てて一斉に矢を撃ち続けるが、反発する波紋を流され続けている馬は鏃さえ弾くほどの強固な壁としてジョセフとギーシュを保護する。
 照準を修正して放たれた第二射も、賊の足元の崖を揺らすだけに終わった。
 だがまるで大砲から放たれた砲弾のように地響きと土煙を巻き起こす砲弾は、命の危険を警告するには十分すぎる役割を果たした。
 次には直撃するかもしれない、と恐怖を植えつけるのに十分すぎる光景を見た賊達は、命惜しさに一斉に遁走をかけようとした……が。
 上空から大きな羽ばたきが聞こえ、その直後に巻き起こった竜巻の網にかかった賊達は、文字通りの一網打尽となって崖から叩き落された。
 決して低くもない崖から地面に叩き付けられた賊達は今すぐ逃げ出すことも出来ないまま、痛みに呻くことしか出来なかった。
「風の魔法じゃないか」
 グリフォンに跨ったままのワルドが感心したように呟けば、月をバックにして一頭の竜が街道へと降り立ってくる。
 その姿を見たルイズは、驚きの声を上げた。
「シルフィード!」
 ルイズの言う通り、それは確かにタバサの使い魔の風竜だった。
 地面に降りたシルフィードの背から赤毛の少女が飛び降りると、ばさりと髪をかき上げた。
「はーい、お待たせー」
 ルイズもグリフォンから飛び降りてから、キュルケに怒鳴りつけた。
「はーいお待たせーじゃないわよッ! 何しに来てんのよアンタッ!」
「助けに来て上げたんじゃないの。あんな朝早くから馬に乗って出かけようとしてるんだから、これはこの『微熱』のキュルケが助太刀に向かわなくちゃならない場面じゃない?」


 シルフィードの上のタバサは、パジャマ姿にナイトキャップという出で立ちだった。
 間違いなく無理矢理起こされて追い掛けさせられたのが明白な彼女は、それでも本に視線を落として読書に耽っていた。
「ツェルプストー、私達はお忍びでここに来てるのよ。そんな大きな竜なんか連れてこられたら意味ないじゃないッ!」
「だったら先にそう言いなさいよ。本当に気が利かないわねヴァリエール」
「言ったらお忍びの意味がないじゃないッ!」
「はいはい、そんなにきゃんきゃん鳴かないの。貴方達を襲った連中を捕まえたんだから、礼の一つや二つ言ってもらいたいものだわね?」
「別にアンタ達が来なくても私達だけで退治出来てたわよッ!」
 二人の口論をよそに、地面に叩きつけられて身動きも取れない男達は一向に罵声を投げかけ続けている。
 ギーシュはワルキューレを新たに用意し、男達に尋問を始めた。
「まあまあ、私達友達じゃない。苦しい時は互いに苦難を分かち合うものよ」
 誰が友達よ、とわめくルイズをよそに、キュルケはグリフォンに跨ったままのワルドにじりじりと歩み寄っていく。
 それからいつものように言い寄ろうとしたキュルケだったが、ワルドにけんもほろろに扱われ、しかもルイズの婚約者だということを知るとすぐさま興味を失って鼻を鳴らした。
(何よ、つまんない男ッ! 美女をあんな氷みたいな目で見るだなんて不躾だわッ!)
 自分は不躾でないと自負するキュルケは、内心の思いをいちいち口に出しはしなかった。
 それからジョセフの方を見ると、彼はすぐに視線に気付いてニカリと普段通りの笑みを見せて手を振った。
 ワルドの冷たい目の後で、ジョセフのにこやかな笑みを受ければ普段の三割増くらいに眩く見える。
 本当のダンディとはジョジョの事を言うのだわ、とキュルケは思い直した。

 体付きだってたくましいしおひげもワイルドだしいい男だし。同じエッセンスだったら人間味のある方がいいに決まってるわッ!
 と、今度はジョセフに駆け寄って抱きついた。
「ああんごめんなさいダーリン、本当はダーリンに会いたくて駆け付けたの!」
「おおそうかそうか、二人とも来てくれて本当に助かったぞ」
 むぎゅ、と豊満な乳房をジョセフの胸板に押し付けながら、横目でちらりとルイズを見る。
 いつもならこの辺りで自分に怒鳴りつけてくるはずだが、ルイズは何か言いたそうな顔はしているものの、ワルドが肩に手を置いて留めている。
 ちら、とジョセフの顔を伺えば、そんな様子の二人を見て実に不愉快そうな顔をしている。
 これはヤキモチというヤツかしら? と思えば、ジョセフが年甲斐もなく漂わせたいじらしい雰囲気に、ときめいた胸に情熱の炎を燃え上がらせた。
 かしましく騒ぐキュルケをよそに、男達を尋問していたギーシュが戻ってくる。
「子爵、あいつらはただの物取りだと言ってます」
「ふうむ。ならば捨て置こう、そんな些事にかかずらっている場合ではない」
 二人のやり取りを聞いたジョセフは、突然腰を抑えて蹲った。
「あ、アイチチチチチッ! こ、腰がッ! やっべ、朝に打ったしさっきのアレで腰やッちまったかもしれんッ!」
「え!? ちょっと、大丈夫なのダーリン!」
「おい、どうしたんだいジョジョ!」
 キュルケとギーシュが蹲ったジョセフに駆け寄るが、ジョセフは脂汗を浮かべながらも心配するなと言うように二人に手を翳した。
「あー、すまんすまん。ちっとここで休憩してから追いつくから、先に行っといてくれんか。なぁに、タバサの風竜に乗ればすぐ追いつくじゃろ」
 シルフィードに乗って読書を続けていたタバサは、ジョセフの言葉にこくりと頷いた。

 ワルドはジョセフの言葉に、ルイズとギーシュを見やる。
「ではラ・ロシェールで宿を取るから、キミは出来るだけ早く追いついてきてくれ。朝一番の便でアルビオンに渡る」
 とジョセフに言い残し、心配げにおろおろするルイズを抱き抱えてグリフォンに乗った。
 そしてギーシュも、やや心配そうにしながらもワルドの後ろについてラ・ロシェールへと走り出した。
 そこに残ったジョセフとキュルケとタバサとシルフィードは、見る見るうちに夜闇に姿を消す一行の背を見送る。
 時間を置かずに一行の姿が見えなくなった頃、ジョセフは何事もなく立ち上がった。
「え? ダーリン、腰はどうしたの?」
「あんなモン仮病じゃよ仮病。まさかあんなわざとらしい仮病に騙されてくれるとは思わんかったがな」
 ジョセフが立ち上がったのを見ると、タバサは本から視線を上げた。
「メイジもいないのにあのように立ち向かう物取りは存在自体が不自然」
 タバサの言葉に、ジョセフは我が意を得たりと頷き、キュルケも「そう言えばそうよね」と納得した。
「ギーシュはまあボンボンじゃからしょうがないかなとも思うんじゃが、ワルドがそれをあっさりと信じるっつーのも大概不自然じゃろ。しかも相手はグリフォンに乗っとるわけじゃからな。せめてグリフォンはスルーせんと死ぬじゃろ、高さのアドバンテージがなくなるしな」
 じろり、と未だ動けないままの男達を眺めたジョセフは、帽子のつばを親指で押し上げる。
「なんか切り札でもあるんかと思ってたんじゃが、二発ほどボーガンをぶちこまれた辺りで逃げ出そうとしよったからな。切り札があるわけでもないのにわしらにケンカ売ってきた連中がただの物取りだなんて信じられるワケがない」

 んんー、と大きく伸びをしたジョセフは、改めてデルフリンガーを抜いた。
「おいおい相棒、せっかくの俺っちをもうちょっと使ってくれよ。いくら温厚で知られる俺っちでもあんまり出番がないとスト起こすぜ?」
 カラカラと笑うデルフリンガーを、ジョセフはニヤリと笑って曲げた指の背で叩いた。
「まあまあそういうな。ボーガンに番えられて空の散歩なんぞしたくないじゃろが」
「そいつぁ全くだな!」
 剣を抜いたまま悠然と歩み寄ってくるジョセフに、男達はありったけの罵詈雑言を投げ付ける。
 いくら武器があるとは言え、魔法のようなボーガンを持っていない図体のでかい老人など傭兵達にとっては脅威の対象に成り得ないのである。
「おっしゃ、もう一度聞くとしようか。お前ら本当に物取りか?」
「何度も同じこと言わせんなクソジジイ、俺達が物取りでなかったら何だって言うんだよ!」
 紋切り型の憎まれ口にジョセフは頓着もせず、ハーミットパープルを一人の男に伸ばす。
 するとデルフリンガーの鞘口から男の言葉が迸る。
「物取りがメイジにケンカ売るわきゃねーだろこのクソ貴族どもがッ!」
 突然聞こえた仲間の告白に、男達が一斉に声の主を見るが、その男は顔面蒼白にして「言ってねェ! 俺はなんにも言ってねェぞ!?」と凄まじい勢いで首を振った。
「なるほど。ではなんでわしらを襲った?」
 男はせめてもの抵抗とばかりに口を閉じるが、それは無駄な足掻きでしかなかった。
「美人の女メイジと仮面の男に依頼されたんだよ、馬に乗ったメイジどもがやってくるから襲って殺せってな!」
「ほーほーほーほー。そいつァ聞き捨てならん話じゃのー。他に何を依頼された? ついでに言っておくが、わしの魔法は人の心を読むことが出来るんじゃ。正直に言ったら命だけは助けてやってもいいかもなッ!」

 そこからは傭兵達の大暴露大会となった。
 この依頼をした女メイジと仮面の男の外見と特徴を逐一聞いた三人は、仮面はともかく女のほうはおそらくフーケだろうと目星を付けた。
 死刑か遠島前提で牢獄に叩き込まれたはずのフーケがこんなに早く脱獄した事と、自分達がここに来ることを知った上で傭兵を雇ったという事は、王宮内に間諜が少なからずいる上、王女に近い筋にも入り込まれているということである。
「ねえダーリン、話には聞いてたけどトリステイン王宮ってかなり腐ってるわね」
「わしに言わんとってくれ、ついこないだここに来たばかりなんじゃから」
 ゲルマニア出身のキュルケとイギリス出身のジョセフは呆れを隠そうともしなかった。
 しかも雇い主は言い値で彼らを雇い、前金だけでもかなりの金額を受け取ったことを知ったジョセフは、迷惑料として傭兵達の有り金を全て分捕った。
 傭兵達からあらかた事情聴取を終えたジョセフとキュルケは、暗澹たる現状に嘆息した。
「ねえダーリン、ここまで向こうに何もかもバレてるのってお忍びって言うの?」
「一般的には言わんよな」
 この分だと、襲撃が失敗したのも向こうには筒抜けだろう。だが相手の心理を考えるに、二重の備えはしていないと踏む。
 この峡谷の襲撃で確実に自分達を殺す為に戦力を集中させていただろう。そして向こうは、こちらを侮っていた。
 メイジ達を襲撃するというのに、傭兵達だけで襲撃させたというのが何よりの証拠だ。
 成功すれば儲けもの、失敗しても被害がない。
 それ以上にジョセフの中では、心に根強く根付いていた疑念が確信の花を咲かせていた。
 峡谷に弓を射掛けさせた依頼主……フーケはジョセフやルイズに怨恨があるのはどうあっても明白だ。
 空を駆けるグリフォンより、峡谷で動きが制限されるジョセフの方が殺しやすいのは確かだ。
 しかもグリフォンに乗っているのは風の魔法に長けたワルドである。傭兵が撃って来た矢など風が軽く撃ち落させるだろう。
 だが矢が多ければ、竜巻を展開し損ねた、ということにして矢を防げなかったとしてもワルドに手落ちがあるということにはならない。平民が平民の矢で殺されたところで、問題になるはずがない。使い魔の力量不足、で終わる話である。
 それがボーガンのあまりの威力で傭兵達が命惜しさに逃げ出そうとしたところを、更なるメイジの乱入でこんな結果になったという訳だ。
 完全な証拠を見出した訳ではないが、ワルドが裏切り者でない可能性は非常に低い、とジョセフは踏んでいた。
 もし自分やギーシュが乗馬に疲れて置いていかれれば、あの峡谷で待ち伏せした傭兵達に針鼠にさせられる計画が透けて見えた。
 早馬で二日もかかる距離を一日で無理矢理踏破させたのは、ジョセフ達を疲れさせて置いてきぼりにしようとしたのではないか。
 しかし二人が懸命についてきたから、傭兵達はグリフォンに乗ったメイジのいる一行を襲う物取りを演じなければならない、間抜けな大根役者になってしまった。
 そう考えると辻褄が合う。
「キュルケ、タバサ。どうやらわしらは首根っこにナイフを突き付けられとるようだぞ」
 ジョセフは肩を竦め、二人に向き直る。その身振りは「大人しくここで帰っとけ、後はわしが何とかする」と雄弁に語っていた。
 だがキュルケもタバサも、帰ろうとする様子は全くなかった。
「何言ってるのよダーリン。こんなことくらいで帰るなら、フーケ討伐になんて付き合ったりしないわよ」
 恐れも何もない目で、殊更妖艶に笑ってみせるキュルケ。
 タバサもページに栞を挟んで、こくりと頷いた。

「それにダーリン、ツェルプストーの女は死地に向かう友人をハンカチ振って見送るだけの薄情者、だなんて醜聞を立てられちゃたまったものじゃないもの。私達は、ただ単に物見遊山でラ・ロシェールに行くだけ。
 ゼロのルイズとそのお仲間が行く先がたまたま一緒だからって、私達が行き先を変える必要なんてどこにもありはしないわ。そうでしょう?」
 ジョセフはキュルケの堂々たる宣言に、ヒュウと口笛を吹いた。
「キュルケもタバサも、二人ともホントーにいい女じゃな」
 緩く腕組みして笑うジョセフに、キュルケは満足げに頷いた。
「それはそうよ、ツェルプストーの女はハルケギニア一の女だもの。タバサも私と同じくらいだけれど。ヴァリエールに飽きたら、いつでも私の胸に飛び込んできていいのよ」
 両腕で両胸を挟み込んで、より胸の谷間を扇情的に主張する。
 ジョセフは当然口元をいやらしく緩ませるが、ごほん、と大きく咳払いした。
「うちの主人が独り立ちするようになったら、考えさせてもらうわい」
「あんまり長くは待てないわよ」
 冗談っぽくめかして、ジョセフとキュルケは馬に乗り、タバサはシルフィードに乗る。
 出発する前にたっぷり波紋を流した馬は、勢いよく駆け出し、まだ身動きの取れない傭兵達の群れに突っ込み、哀れに命乞いする彼らを盛大に踏みにじってラ・ロシェールへ駆ける。
 次に考えられる襲撃に備え、少しでも次に来る手勢を減らそうという腹である。次回の仕事どころか、これから傭兵稼業を再開するのも難しいのかもしれないが。
 馬に乗る二人は必要以上に陽気に馬を走らせ、タバサは月明かりの下で読書を再開する。
 三人の向かう先では、ラ・ロシェールが怪しく街の光を輝かせているように、見えた。


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