ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロと奇妙な隠者-26

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匿名ユーザー

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 魔法学院の門を潜って現れた王女一行は、王家と名乗るに相応しい豪華絢爛な出で立ちだった。整列した生徒達は一斉に杖を掲げれば、杖の音が小気味良く重なった。
 馬車には至る所に金と銀と白金の飾りがあしらわれ、その馬車を引く四頭の馬達もただの馬ではなく純白のユニコーンである。
 その後ろをついて進むもう一台の馬車も、引く馬はユニコーンではなく常識的な馬ではあるものの、馬車は王女の馬車に負けず劣らず……いや、むしろ王女の馬車よりも立派であった。
 後ろの馬車は先帝亡き今、トリステインの外交と内政を一手に担ってきたマザリーニ枢機卿の馬車である。国民には妬みの対象となっているため人気は無いが、しかして馬車の質が如実に現在のトリステインでの権勢を示すものとなっていた。
 お飾りの女王と、実際に国を担う者。その差が現れているという事だ。
 二台の馬車の四方を固める王室直属の近衛隊、魔法衛士隊は漆黒のマントを身にまとい、静々と王女の護衛を相務める。トリステインの誉れを凝縮したかのような一行は、トリステイン国民には貴族平民の別なく歓声の対象となるべき存在であった。
 だがジョセフは、イギリスやアメリカにすら愛国心を持っていない。トリステインに至っては何を言わんや。しかしだからと言って自分の所属している国にいちいち食って掛かったりするほど子供でもないため、周囲に倣って突っ立っているだけだった。
 正門を潜った先には本塔の玄関があり、そこに立って王女の一行を迎えるのは院長であるミスタ・オスマンであった。
 馬車が止まると召使達が駆け寄り、馬車の扉まで紅いフェルトの絨毯を敷き詰めた。
(どの世界でも大体やるこたァ一緒なんじゃのォ)
 イギリス王室の行事にも幾度か参加したことのあるジョセフは、妙な所で感心していた。
 呼び出しの衛士が緊張した顔と声で、王女の登場を告げた。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーーりーーーーーーーっ!」

 しかしその呼び出しと生徒達の期待に反して、馬車の扉から出てきたのはマザリーニ枢機卿だった。露骨なブーイングこそ無いものの、肩透かしを食らった生徒達の鼻白んだ空気が周囲に蔓延した。
 だが続いて馬車から降りてきた王女が、枢機卿に手を取られて姿を現すと、生徒達から挙がった歓声が一気にそれまでの空気を塗り替えていった。
 アンリエッタ王女は当年とって17歳。清楚な気品を漂わせる顔立ちに薄いブルーの瞳、たおやかな雰囲気と、国民の人気を受けるに相応しい美貌を持つ美少女であった。
(ほほー。やっぱり王女様というのはどこの国でも美人じゃのー)
 王家や貴族は美男美女を代々優先的に選り好み出来るから、えてして美貌に恵まれるものである。魔法学院の生徒達もおおよそは美男美女で構成されている。無論例外もあるが。
 王女は薔薇のような微笑を生徒達に惜しげもなく振り撒くと、優雅に手を振った。
「あれがトリステインの王女? あれが王女なら私は間違いなく女王だわ」
 美貌を誉めはやされる王女の姿を一瞥したキュルケは、つまらなさそうに眉を顰めた。
「ねーえ、ダーリンは王女と私、どっちがキレイだと思う?」
 と、横に立っているジョセフの腕に自分の胸を押し付けながら妖艶に問い掛ける。
「んあ? そりゃどっちもキレイじゃよ」
「だーめ、そんな曖昧な答えじゃあ。ちゃんと答えてくれなくちゃ拗ねちゃうんだから」
 普段ならこの辺りでルイズが怒鳴りつけてくるはずだが、珍しくルイズの反応は無かった。
 首を傾げながらジョセフがルイズの方を見やると、彼女は随分と熱心に王女を見つめており、横にいるジョセフとキュルケのやり取りすら耳に入っていないようだった。
 こうやって黙っていれば深窓の美少女という形容詞がよく似合うルイズである。女性の審美眼には厳しいジョセフからしても、上位ランクに格付けされる。高飛車で意地っ張りでワガママなところもあるが、それでもジョセフにとっては可愛らしい孫であることは間違いない。

 そんなルイズの横顔を見ていると、不意に表情がはっとしたものに変わり、ゆっくりと頬が赤らんでいくのが判った。
 ルイズの視線の先を見てみれば、一人の魔法衛士の姿が目に入る。
 立派な羽帽子を被った凛々しいその貴族は、鷲の頭と翼を持つライオンに跨っている。ありゃグリフォンか、と、コミック好きのジョセフはその幻獣の名を思い出せた。
 ルイズはどこか夢見るような視線で彼を見ているのが判れば、ジョセフはとてもとても不快な気分になった。
 目に入れても痛くないほど可愛がっていた一人娘を取ったばかりか、地球の裏まで連れて行ったあのクソ忌々しい若造のことは今でも許していない。あのせいで日本人の男を心底嫌いになったのだから。ちなみに日本女性は小柄で可愛らしいので大歓迎だ。
 横を見てみれば、ついさっきまで腕にしがみ付いていたキュルケも目をハート形にしてルイズと同じ羽根帽子の貴族を見つめていた。
 あいつは敵だ。紛う事無き敵だ。ジョセフの脳裏では羽根帽子の貴族が仇敵フォルダにばっちりと収められた。カーズやDIOと同ランクである。
 生徒達の騒ぎにも頓着せず、相も変わらず本を読んでいるタバサは、ふと顔を上げて、そんなジョセフの姿を見て……ちょっとだけ溜息をついて、また本の世界に戻った。

 その日の夜。
 食事も終えて後は寝るだけ、という頃合である。
 結局昼間からルイズの様子はおかしくなりっぱなしだった。部屋に帰ってきてからと言うもの、ベッドの上に腰掛けているかと思えば不意に立ち上がって部屋の中をうろうろ歩き回ったりまたベッドに倒れこんで足をばたばたさせたり。
 着替えもしていないので、マントも着けたままである。

 熱病に浮かされたようなルイズの振る舞いに、ジョセフの機嫌は悪くなりっぱなしだった。
(あークソックソッ! ホリイもこうじゃったッ! あンの若造に騙されてた時はこんな感じじゃったッ! ああいうのは大抵ろくでもない男じゃと相場が決まっとるんじゃぞッ!)
 心此処にあらずといったルイズと、憎悪にも似た怒りを纏ったジョセフ。
 剣なのに肝の太いデルフリンガーですら、下手に言葉を端挟むのを躊躇われる空気だった。
(やべえやべえ。こんな修羅場な空気そう滅多にあるもんじゃねーぞ)
 武器屋で買われてからそんなに時間が経ったわけではないが、これは非常事態だというのは馬鹿でも判る。ジョセフもルイズもこんなに普段と違う雰囲気を漂わせていては、軽口を叩いてもろくな結果になることは有り得まい。
 デルフリンガーはそんじょそこらの調子乗りな少年ではないので、自分のウィットに富んだジョークで場の空気を変えようと試みるほどの、チャレンジブルとも向こう見ずとも言える勇気は持ち合わせていなかった。
(よし。俺は寝よう。次に目覚めたらきっと事態が好転してるに違いない。きっとそうだ)
 デルフリンガーは勇気ある撤退を決め、眠りについた。
 それからしばらく、ルイズだけが落ち着き無く動き回っていたが、不意にノックの音が聞こえた。
「む?」
 怒りに染まっていた思考が現実に引き戻される。
 始めに長く二回、続けて短いノックが三回。そのノックを聞いたルイズの意識も現実に戻り、はっとした顔になる。
 急いで立ち上がるとドアを開けた。
 そこに立っていたのは黒いローブにフードをすっぽりと被った少女だった。
 注意深く周囲を伺ってから素早く部屋の中に入ると、後ろ手でドアを閉めた。

「……あなたは?」
 ルイズの誰何の声に、黒ずくめの少女は口元に指を立てて「静かに」とジェスチャーをすると、ローブの隙間から杖を取り出してルーンを唱えた。すると部屋に光の粉が舞う。
「ディテクトマジック?」
 部屋に舞った光の粉を見たルイズの質問に、少女が頷く。
「どこに目や耳があるとも判ったものではありませんから」
 部屋に何者かが覗き見したり盗み聞きしたりする魔法の目や耳が無いことを確認してから、彼女はフードを外した。
 フードを外したのはアンリエッタ王女その人である。間近で見た王女の横顔の美しさと言ったら、今まで鬱屈していた怒りを思わずジョセフが手放すほどのものだった。
「姫殿下!」
 と、思わずルイズが膝をついたのを見て、ジョセフも倣って膝をついた。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
 王女はたおやかな微笑と共にルイズの名を呼んだかと思うと、感極まった表情で膝をついたままのルイズを抱きしめた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません、このような下賎な場所に来られるなどと……」
「ああルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい言葉遣いはやめてちょうだい、私達はお友達じゃないの! 私達はただのアンリエッタとただのルイズなのだわ、そうだと言って頂戴!」
 王女のその言葉に、ルイズもまたアンリエッタを強く抱きしめ返した。
「ああ、なんて勿体無いお言葉! 姫殿下にそのようなお言葉を掛けてもらえるだなんて!」
 普段の高飛車さは陰も見せないほどのかしこまった口調で受け答えするルイズと、超のつく美少女が二人固く抱きしめあう光景。

 そう簡単には見れない光景を前にしたジョセフは、ひとまず(いやー、珍しいものが見れたわい。眼福眼福)と、今の光景を目に焼き付けることにした。
 それからしばらく二人の思い出話に花が咲く。蝶を追って泥まみれになっただの菓子を取り合って掴み合いの喧嘩はしょっちゅうだのドレスを取り合って気絶するほどの蹴りがお腹に入っただの、美少女二人の十年前はなかなかバイオレンスだったらしい。
「ああ、おかしい。そうよルイズ、わたくしこんなにおなかが痛くなるほど笑ったのは一体いつぶりのことだったかしら。貴女が変わりなくわたくしのルイズでいてくれて本当に嬉しいわ」
「ええと。王女殿下とご主人様はどういう御関係なのかの」
 毛布に座って所在無さげに二人のやり取りを眺めていたジョセフが、話の腰が折れたタイミングを見計らってルイズに聞いた。
「姫様が御幼少のみぎり、恐れ多くも遊び相手を務めさせていただいてたのよ」
 ヴァリエールが公爵家だと言うのはジョセフは嫌と言うほど聞いていたので、すぐに合点する。公爵ともなれば王家からもかなり近い血筋であるため、同じ年頃のルイズがアンリエッタの遊び相手に選ばれたとしても何の不思議もない。
「でも感激です。姫様がそのような昔のことを覚えてくださっていただなんて……わたしのことなど、もうお忘れになっていてもおかしくないのに」
 アンリエッタは、臣下の礼を弁えたルイズの言葉に溜息をつきつつもベッドに腰掛けた。
「忘れるわけないじゃない。子供の頃は毎日が楽しかったもの……何の悩みとも無関係で。出来ればあの何も分別のなかった頃に戻りたいわ」
 深い憂いばかりで紡がれた言葉が、薔薇の色で彩られた唇から漏れた。
 ジョセフは微妙に嫌な予感を感じ取った。高貴な者が友人とは言え臣下の部屋にただ旧交を暖めに来たのではないような気配が、ひしひしと感じられたのだ。
 そしてジョセフの勘は非常に良く当たった。

 そこからの話を要約すれば、アルビオンという国があるがそこでは貴族達が反乱を起こし、王室を今にも打倒しようとしている。
 反乱軍が勝てば次に矛先を向けるのはトリステインであることは明白である。その為、ゲルマニアと同盟を結ぶ為の政略結婚としてアンリエッタがゲルマニアに嫁ぐことになった、と。
(ふうむ。妥当な話っつーところかのう。珍しいコトでもあるまい)
 勉強嫌いのジョセフだが、歴史はエリナお祖母ちゃんから教わっているため非常に詳しい。どこの世界でも大体同じようなもんなんじゃのう、という感想がせいぜいである。本人が望んでいないのは口調と表情が嫌と言うほど主張しているのだが。
 だが本題は此処からだった。
 アルビオンの貴族達はこの結婚を妨げる為、血眼になってあるものを探しているという。
 ジョセフはこんな話の流れになった時点で「ああ、これは致命的な何かがあるんじゃな」と察しが付いていた。だがルイズは、その答えを王女自身の口から聞かなければ信じられないとばかりに、顔を青くしながら問いかけ、アンリエッタは悲しげに頷いた。
「おお、始祖ブリミルよ……この、この不幸な姫をお救い下さい……」
 そして顔を両手で覆い、床に崩れ落ちるアンリエッタ。舞台上での悲劇のヒロインの演技だとしても、少々演技過剰な点は否めない。
 だがルイズはあっさりとそれにつられ、興奮した様子で次の言葉を求める。結婚を妨げるためのあるものとは何か、と。両手で顔を覆ったままのアンリエッタは、搾り出すような声で答えを返した。
 かつて自分がしたためた一通の手紙、それがゲルマニアの皇室に渡ればすぐさま結婚は破棄され、トリステインは一国でアルビオンと立ち向かわなければなるまい、と。
 すっかり興奮してしまったルイズは、自分も空想の舞台に上がって王女の手を取った。
「いったい、その手紙は何処に!? トリステインに危機をもたらすその手紙は!」

「それが……手元にはないのです。あの手紙は、アルビオン……反乱軍達と骨肉の争いを繰り広げているアルビオン王家の、ウェールズ皇太子の手の中にあるのです……」
「プリンス・オブ・ウェールズ? あの、凛々しき王子様が?」
 ルイズの言葉に、アンリエッタは力なくベッドに横たわり、手を顔元に翳した。
 傍から見ているジョセフの感想は(うっわー。三文芝居もいいところじゃのう。さあてそろそろ本題というところか……平穏な生活よさらば! OH MY GOD!)であった。
 ウェールズ皇太子が捕われてしまえばあの手紙が貴族達に渡ってしまう、そうなれば同盟が破棄されてトリステインはあの恥知らずの貴族達とただ一国で立ち向かわなければならない……という意味合いの言葉を、随分と感情たっぷりに比喩も混ぜこぜて語る王女殿下。
 王女の唇から感情たっぷり言葉が紡がれるごとにルイズの頭は前のめりになり、哀れな姫殿下をの忠実な下僕としての立ち位置を明らかにしていた。だが、公爵家三女の使い魔であるはずのジョセフは。どんどんと目が冷ややかなものになっているのを、二人は知る由もない。
「では王女殿下、私が為すべきことというのは……」
「ああ! ダメよ! ムリだわ! わたくしったら何と恐ろしい事を口にしようとしているの! 何を考えているの、貴族と王党派が血みどろの争いを繰り広げているアルビオンに赴くなどという危険なことを、大切なお友達に頼めるはずがないというのに!」
「何をおっしゃいます! たとえ地獄の釜の中だろうが竜のアギトの中だろうが、姫様の御為ならば何処なりとも向かいますわ!」
 そしてルイズは、再び臣下の礼をとるべく膝をつき、恭しく頭を下げた。
 アンリエッタの美しい顔を哀切に塗れさせての切ない言葉は、ルイズならずとも……特に、男ならば無条件で言う事を聞いてしまうであろう力を持っていた。だがそれは、王女という立場の人間が使うべき力ではなかった。

「姫様とトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家三女たるルイズ・フランソワーズが見過ごすわけには参りません。是非、このわたくしめにこの一件をお任せくださいますよう」
 貴族としての忠節を示すルイズの姿勢こそは立派なものである。フーケを捕らえたという自負もあるし、そして使い魔であるジョセフがいるという自信が、無理難題とも言える王女の願いを容易く聞き入れることになったのだ。
「ああ、ルイズ! わたくしのルイズ! このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ! あなたこそ真のお友達だわ!」
「何を仰います姫様! 私の忠誠はあの頃からなんら変わりませんわ!」
 ルイズの両手がアンリエッタの手を強く包み込むように握り締めると、アンリエッタのブルーの両眼から真珠のような涙が次々と零れ落ちていった。
「姫様! このルイズ、いつまでも姫様のお友達で忠実な臣下で御座います! 永久に誓った忠誠を忘れることなど、例え天が引っ繰り返ろうと有り得ませんわ!」
「ああ、忠誠。これが誠の友情と忠誠です! 感激しました、わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れることはないでしょう! わたくしのルイズ・フランソワーズ!」
 感極まった二人は涙に濡れながら固く抱きしめあった。
 しかし、蚊帳の外から二人を見つめ……いや、観察するような目つきで見ていたジョセフの表情には、静かな怒りがありありと浮かんでいた。
 それはかつて食堂で見せた、シエスタを責め立てるギーシュに向けられたものと同一。
 その怒りはルイズではなく、アンリエッタに向けられていた。
「――のうルイズや。友情を確認しあってるところ、水を差すようで悪いんじゃが」
 だが口から出た言葉は、あくまでも平静であった。
「あによ」

「戦争やってるところに行くワケじゃが、危険だという事は判ってるわな?」
「んなこと判ってるわよ。でもね、私がやらなくちゃいけないことだってあるわ! 危険だからって部屋の隅で震えてたら、このトリステインが危険に晒されるのよ!」
 凛とした態度で言い切るルイズの言葉は、迷いがない。ジョセフは主人の揺ぎ無い言葉に、満足したように笑みを浮かべ……しかし、その笑みはすぐに消えていった。
「アルビオンに赴きウェールズ皇太子を捜し出し、手紙を取り戻せばよいのですね?」
 ルイズの言葉に、アンリエッタは静かに頷いた。
「ええ、その通りです。『土くれ』のフーケを捕まえた貴方達なら、きっとこの困難な任務も成し遂げることが出来るでしょう」
「一命にかけても。なれば明日にでも学院を発たねばなりますまい」
「ありがとう、ルイズ。アルビオンの貴族達は既に王党派を国の隅にまで追い詰めていると聞きます。もしやすれば明日にでも敗北するかもしれません……」
 ルイズは真剣な顔で、アンリエッタに頷いて見せた。
「では、明日の早朝。ここを出発致します」
 ルイズの言葉を聞いたアンリエッタはルイズから、毛布に座ったままのジョセフに視線を移した。普段のジョセフならば、超がつく美少女を前にすればだらしなく顔を緩ませるところだ。が、今のジョセフは、何の感情の揺らぎも見せずにアンリエッタを見つめていた。
 肩の上で切り揃えられた栗色の髪は柔らかく揺れ、ブルーの瞳は鮮やかな南海の海の色そのままに輝いている。肌は透き通るように白く、造詣の良いパーツが最良のバランスで配置された、小さくも形の良い顔。
 だが美少女を前にしているはずのジョセフは、嬉しそうな顔をしていない。
 また可愛い女の子にデレデレして、と不機嫌になりかけたルイズは――ジョセフの様子がどこかおかしいことに気付き、戸惑った。
 あれ。ジョセフが怒っているような。どうして?


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