ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-2

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匿名ユーザー

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ギーシュ・ド・グラモンは武門の生まれである
父も、長兄も次兄も三兄も、常に戦の先頭に立って活躍している
「生命を惜しむな、名を惜しめ」とは
幼い頃から父に聞かされてきた家訓であった
そして、今ここで彼は

「…ぐ、ううっ」

腰が引けていた
ために一歩出遅れたのが彼の幸運であったのだろう
召喚したての使い魔、大モグラ(ジャイアント・モール)のヴェルダンテを
あのおかしな平民にけしかけずにすんだのだから
向かっていった使い魔のことごとくがブッ飛ばされたのを見て
彼のファイティングスピリットはさらにくじけていた

(冗談じゃあないぞ…
 なんなんだあれはぁぁぁ~~
 戦列艦が服着て歩いているのかぁぁ~~ッ
 無理、絶対無理ッ
 あんなの勝てない、近寄りたくもないッ)

心の叫びが顔に出る
必死に隠したところでバレバレ
彼はそういう男だった
だが
そっと後ろを見る
おびえ、ふるえる愛しい女子生徒達が告げていた
今こそグラモンの武勇を見せよと

「く、く、くぅッ…」

(くそぉぉ~~ッ
 行くしかないのかぁ~~ッ
 ぼくが一体何をしたっていうんだぁ~~ッ)

彼はナンパ男だった
しかも無類のミエッ張りだった

ドバァッ

しかし、流れる冷汗はやっぱりウソをつかなかった
足下の震えは武者震いだと自分で自分に言い張っていた

「およしなさいな」

後ろから呼ばれて振り向くと、額の汗がボダタァッと芝生に滴った
そこにいたのは褐色肌のボンッキュッバンッ
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
グンバツのボディーを持つ女ッ!!

「ととと止めないでくれたまえよ、ミス・ツェルプストー
 ご婦人には、きッききき危険すぎるッ」
「逃げなかったのはホメてあげるけど、あなたのそれは『無謀』よ、タダの…」
「ぶっ侮辱はやめてもらおうッ!!
 このボクとて武門のはしくれッ 惜しむ生命などッ」
「はいはい、ゴタイソーな前口上はいいから下がってなさい
 …勝ちたいんでしょ?」
「あるのか勝算がッ!?」
「落ち着いて観察なさい」(つーかナンもカンガえてなかったのねアンタやっぱり)

キュルケは鳥の巣頭を指し示す
生徒用の、教鞭状の魔法の杖の先端で

ドッ ガズッ ドバ

ちょっとだけタフな使い魔達が最後の戦いを挑んでいたが
全員コロリと昼寝するのは時間の問題だった

「見てわからない?
 あいつを中心に半径2メイルか3メイル」

キュルケの眼には見えていた
鳥の巣頭を中心とした、キレイな球形のシルエットが
最初にたくさん襲いかかっていったとき すでに観察を終えていたのだ

「アッ!!」

ギーシュにも、今見えた
鳥の巣頭がわざわざ相手に「走り寄った」のをッ

「1(アン)」

人差し指を立て、数字の1を示すキュルケ

「あいつは遠くの敵を殴れない」

次に別方向を示す
まずは衛兵の方向を、続いてルイズの胸元を
衛兵の兜は頬と醜く混ざり合い、ルイズのマント留めもまたオカシな形に変わっていた
キュルケは人差し指に加え中指を立てる

「2(ドゥー)、あいつに殴られたものは変形する」(リクツはゼンゼンサッパリだけど)
「ちょっと待て、ミス・ツェルプストー」

ブワァッ

ギーシュの冷汗はスゴイ勢いで復活していた
改めて鳥の巣頭が恐ろしかった

「それは、つ、つまり……こういうことじゃあ、ないのかい
 『殴られたら終わり』」
「ええ、その通り
 でも、『殴られなければいい』とも言えるわよね」

キュルケも決して恐ろしくないわけではなかった
だが彼女の中で勝算は限りなく100%に近づいていた

「『殴られなければいい』だって?
 キミの目は…フシ穴なのかい?」
「あら、どうして?」

ビシイッ

ギーシュは鳥の巣頭を指さしたッ

「あいつを見ろよ
 怒ってるぞ――ッ
 女王陛下のドレスの裾を踏んづけても気づかないくらい怒ってるぞ――ッ」

ムッ!?

鳥の巣頭は直感的に気がついた
誰か自分を指さした
笑われたような気がする
ムカつく
ぶっ飛ばす!!

ズザザッ

駆け足ッ
ギーシュの目の中で鳥の巣が次第に巨大化してくるッ

「ま…待て、こっちに、こっちに来るぞッ
 あんなのをキミはどうするつもりなんだぁぁ―――ッ」
「いいから落ち着きなさいな、みっともない…」(どうみてもアンタのせいでしょアンタの)
「これが落ち着いていられるかッ
 父上、母上、兄上、ああっ先立つ不孝をお許し下さいッ」

ギュッ

胸元に指を組むギーシュは始祖プリミルの元に予約席を取りに走っていた

ドドドドドドドドド

迫り来る死神
その名は鳥の巣ッ
キュルケは他人事のように赤い髪を掻き上げ、
魔法の杖の先端を右手人差し指でピンピン弾いていた

「あなた、そんなにアレが恐ろしいの」
「恐ろしいさッ 怖いに決まってるだろ――ッ」
「でも安心なさい、もう恐れることはないわ」
「えッ なんでッ!?」

ビククゥッ

思わず縮めた身を伸ばし、キュルケの顔を見るギーシュ
自信満々の表情に今すぐ答えを求めていた

「なぜなら」
「な、なぜなら?」

グワッ

キュルケの杖がピンと跳ねた瞬間に炎の塊が飛んでいく
鳥の巣頭に寸分違わず飛んでいく
「鳥の巣頭」に飛んでいく
そして

ボソァッ
ボロッ
ドザァッ

「…3(トロワ)!!」
   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私がもっと怒らせるからよ、ギーシュ・ド・グラモン」

炎の塊は頭上をそれて飛んでいった
「鳥の巣頭」の前半分が、かすれた炎にえぐり取られて消えていた
今やそれは鳥の巣ではなく、前に飛び出たボンバーヘッドであった

「…う、うう、ウソ、ちょ、マ、マジ、そ、そんな
 ば…ば、ば…バカなぁぁ―――――ッ!?」

呆然とする鳥の巣男を前に、ギーシュの絶叫だけが響いた

「さぁて―――手合わせ願おうかしら?
 この、微熱のキュルケがッ」

ドンッ

決闘の手袋を叩きつけるがよろしく、
キュルケが前に、進み出たッ


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