ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

砕けない使い魔-3

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匿名ユーザー

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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「バカな、キュルケ…
 ホントに、なんというおろかなことをしてくれたんだ」

地べたに転がったまま、ギーシュは奥歯がガチガチ噛み合わなかった
鳥の巣頭がチリチリと焼け焦げアフロと化したあの男は
しばらくボーゼンと立ち尽くした直後

ブワァァァッ
ビンッ ビンッ ビンッ

カゲロウのように周囲の空気をゆらめかせ、
髪の毛があおられるように逆立っていく

「アレのことをいうのか? 怒髪天っていうのは…
 あいつはもう止まらない 取り返しがつかないんだぞッ!?」
「ったく、非ッ常識な頭だこと…」
「まっまだ怒らせる気かぁ――ッ」

ヒステリーのようにわめくギーシュを放って
キュルケは考える

(「殺す」のは簡単だと思うけど…
 トライアングルメイジの全力を以てすれば、ね)

「殺し方」はすでにできていた
あの男がこちらに近寄ってくるところへ
火×1の魔法で足下に火を放ち、さえぎる
ムカドタマ真っ最中の男は迂回などせず
ナゾの力で地表をまとめてぶっ飛ばし鎮火するだろう
一瞬だが足は止まる
さすがに生身で炎に突っ込むわけがない
そこへ火×2の魔法で扇状になぎ払い、とどめとなる
火×3は使わない、長い射程は必要ない
どうせ近寄ってくるのだからそのときが最後だ
灼熱の中で窒息しながら焼け死ぬのだ
必要とあらばやる
キュルケはそれができる女だった
だが、それだけでもなかった

「…」

チラリと見る
ルイズとは、先祖代々宿敵同士なのだ
こと、微熱のキュルケの性(さが)において
その因縁はきわめて重大だった

「……」

(この私が本気を出すの?
 ゼロのルイズの使い魔に?
 …却ッ下だわ、そういうのはね…大人げないっていうのよッ)

男がこちらに歩いてくるのが見えた
嵐の前の静けさというやつだった
殺さないなら方針も違う
そのためのギーシュだった

「手伝ってもらうわ、ギーシュ…ちょっとばかりね」
「手伝えだって? 無責任なッ
 アレをああしたのは君じゃあないかッ!?
 ボクは知らないぞ、知らないんだッ」
「大金星を拾えって言ってるのよ、あなたに」
「ああ、口ではなんとでも言えるだろうさ
 人を乗せるのがウマいからな、キミは
 だけどボクはだまされないッ」

キュルケの目がスゥッと細くなった

ビクッ

「な、なんだね、今度は脅そうとでも言うのかい?」
「そ…『あのこと、バラすわよ』」

ズン

ある意味、最悪の魔法だった
ギーシュには身に覚えがありすぎた

「な、何だい?
 あ、『あのこと』とは?」
「『あのこと』よ」(フフフ…)

ザッ!!

戦闘態勢をとるキュルケ
これ以上はさすがにノンビリかまえていられないッ

「あいつが『ぬかるみ』にハマッた瞬間に、錬金で足下を石に変えるのよ、いい?」
「『ぬかるみ』だって?」
  ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ハマッた瞬間でなければ意味がないわ、目をこらしてなさい…」

ボンッ

再び放たれた火球は、今度はまっすぐ男に向かった
避けなければ焼けて死ぬ
これで決まれば世話はない
キュルケは素早く駆け出していた

「あなた、どこのどちら様?
 カッコイイわよその髪型…最初のアレよりずっとねぇ?」(フフ)

走るついでにオチョクッていく
知らない言葉を使っていたようだが
笑われたことに怒っているのなら多分通じているのだろう
そうでなければアレは危険な狂戦士(バーサーカー)だ
殺してしまった方が世のためということ

ダムッ

男は炎を横飛びに回避してからキュルケに向かって飛んでくる
これでふたつわかった

 ・男は炎の直撃に耐えられるとは自分でも思っていない
 ・バカにされていることを理解するだけの脳ミソはある

だが、飛んでくる勢いが大砲のそれだったことだけはわかりたくもなかった

ギャン!!

一瞬のうちに2メイル以内にまでカッ飛んできていた
走ったくらいじゃどうにもならない

(何よ、これは…
 風系統の魔法じゃない
 杖がなきゃ魔法は使えない
 地面を殴って、その反動で自分を飛ばしてきたとでも言うの?
 …とにかく、まずいッ!!)

反射的に身をかばい、顔の前で腕をバツの字に組む
今度は威力を知る番だッ

「DORAaa!!」

ズドドバァ

見えない拳が突き刺さる
すれ違いざま五発くらいが飛んできた

ドッ
ミシッ

パキッ ポキ ゴシャア

第七肋骨、亀裂!!
右肩胛骨、亀裂!!
右手骨、粉砕ッ!!
キュルケは全身に疾る鈍い音を聞いた
ゼロのルイズと同じように空中に舞い上がり、落っこちる
目の前が真っ暗になっていたが、おかげで意識はなんとか戻る
馬車に轢かれた気分だった
少しの間、遅れてきた痛みに歯を食いしばって仰向けに空を見上げていたが

「いッ……
 ~~~ ッたいわねぇぇぇぇッ!!」

身を転がして一息に立ち、闘志のメーターが恐怖にふれかかったのを怒鳴り散らして引き戻す
パワーはともかく、速さを読み違えていた
あの男は20メイルをひとっ飛びで駆け抜け
すれ違った相手を五発は殴って反対側に着地できるらしい
あまりうまく着地はできなかったようだ
逃げて端に寄っていたクラスメート達のド真ん中に転がり込んだ男は
草にまみれて肩口を押さえていた
キュルケはすかさず頭の中でメモを付け加えた

 ・最初に考えた「殺し方」はダメだ
  高速で突っ込まれたら対応できない
 ・だがアレは、あの攻撃をやりなれてはいない
  うまくすれば自滅を誘えるかも…

一方、追いついてきたコルベールはツルリ光る頭を抱えたい気分だった
あの男は危険すぎた
放っておけば死人が出るだろう
だからその前に私が殺す
殺さねばならない
そう思っていた
だが

(生徒の中に着地するとは…)

コルベールもまたトライアングルメイジである
火×3の魔法で男の周囲のみに局地的な完全燃焼を起こし
アッという間に窒息死させるつもりだった
どんな能力を持とうが、どんな力で殴れようが関係のない処刑法だった
彼の理念に真っ向から反する行動だが生徒のためならやむをえなかった
だが見ての通り目論見はつぶれた

(これでは皆まで巻き込んでしまうぞッ…!!)

「このぉぉッ、イミフメーな髪型の分際でキレてるんじゃないわよッ」

なんということだ
聞こえてきたあの声を叱りつけねばならない

「やめなさいミス・ツェルプストー
 ここは生徒の出る幕では、ありませんッ」
「…あら、コルベール先生
 先生こそ下がっていて下さいませんこと?
 『火の本質は破壊ではない』んですものね?
 ですが私は微熱のキュルケ
 荒事は好みですのよ」

「どうするつもりなのですか、そのような有様でッ」
「何を言っても遅いんですわよ先生
 …だって、もう、来ますもの」

チッチッチッ

舌を鳴らしながらキュルケは
男に向かって左手の甲を突き出し、人差し指をクイックイッ
万国共通、キット通じる「かかってこい」だッ
右手は使えないから仕方なかった
変形させるフシギなチカラで骨が変な風にくっついたらしかった

「……」

しかし今度は男は来ない
戦闘態勢はとったままだが
キュルケと回りを交互に見て動かない

(…チョットぉッ)

キュルケは苦々しげに舌打ちする

(攻撃をためらうの? なんで今更ッ
 いいわよ、だったらもう一押しすればいいだけッ)

「…ファイヤッ」

ボワン

火×1
魔法の杖から放たれたそれは空高く舞い上がり
男の背中まで回り込んでから落着する
まわりくどい軌道に魔力をとられて威力は落ち込んだが
これでクラスメートを巻き込む問題なしッ 完全(パーフェクト)ッ!!

「さぁ…いらっしゃい、こっちにッ
 今度はツルッパゲにしてやるわ」

ドワッ!!

男の足が、土から、離れたッ!!


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