ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのスネイク-3

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匿名ユーザー

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3話



朝である。
窓から差し込む光の量でそれを察知したホワイトスネイクは自分自身を「発動」させた。
言い換えれば「起きた」ということだ。
本来ならスタンド使いがスタンド使いの意思で発動させるものなのだが、
本体の役割を果たすルイズと視覚聴覚の共有はおろかダメージの共有さえ無いという状況である。
スタンド能力に関するあれこれは全てホワイトスネイクに一任されているようだ。

そしてホワイトスネイクは自分のご主人様(ルイズ曰く)たるルイズを見る。
ルイズは実にあどけない面で寝ていた。

「わたしのぉ~、ひっさつまほうで~ぇ・・・」

しかもよく分からない夢を堪能しているようだ。
とりあえず朝だから起こすべきだろう、と考えたホワイトスネイクは、
ぐっすり寝ているルイズの毛布を遠慮のカケラも無くばさりと剥いだ。

「な、なによ! なにごと!」
「朝ダ」
「はえ? そ、そう……って、ひゃあっ! だ、誰よあんた!」

寝ぼけた声で怒鳴るルイズ。
まだ夢から覚めきっていないらしい。
ホワイトスネイクはため息混じりに、

「『ホワイトスネイク』ダ、オ嬢サン」
「ああ……わたしの使い魔の、ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」

ルイズは起き上がるとあくびをして、う~んと伸びをすると、

「ってちょっと待ちなさい! あんた、一体どこから入ってきたの!?
 昨日確か締め出したはずよ!」
「私ニトッテ物理的ナ障害ハ意味ヲ成サナイ。壁ヤドアヲスリ抜ケルグライ、簡単ナモノダ」
「ウソ……あんた、何者なの? 幽霊?」
「幽霊、カ。ソレガ一番近イカモシレナイナ
 背後霊ト言イ換エテモイイ」

背後霊、という言葉にルイズが少し青ざめる。
本当に、こいつは一体何なのだろうか。
昨日は蹴っ飛ばすことができたから実体はある。
人間みたいに話すことも出来る。
昨日脚を触られたときには体温みたいなものも感じた。
でも……壁をすり抜けたりもできる。
空を飛んだりもしていた。
一体、こいつは何なんだろう。
得体の知れないホワイトスネイクに、ルイズはちょっぴり気味の悪いものを感じた。

とそのとき、ルイズはふとあることを思い出した。

「洗濯は? あんたにやらせるつもりで忘れないようにするために書き置きしといたんだけど……」
「昨日ノ晩ノウチニ済マセタ」

へえ、中々優秀じゃない、と気をよくしたルイズ。
さしずめ「使い魔がしっかり言うことを聞くのがとても気分がいいッ!」と言ったところか。
もっとも、ホワイトスネイクがお隣の赤毛の女にその洗濯をやらせていた事実などルイズには知りようも無い。
そして気をよくしたところでルイズは、

「服」

と、ホワイトスネイクに命じた。
つまり服を取って来いということである。
ホワイトスネイクはふわりと空を蹴って移動し、椅子にかかった制服を掴むと、
またふわりと空中を移動して未だベッドの上にいるルイズに戻ってきた。
ルイズはだるそうに着ていたネグリジェを脱ぎ始める。
下着は昨日の晩に脱ぎ捨てたので、ネグリジェが無くなったらルイズは文字通りの全裸である。
健全な男の子が見たら鼻血を出すこと請け合いの光景だったが、ホワイトスネイクはそれを興味なさそうに見ていた。

「下着とって」
「ドコニアルンダ?」
「そこのクローゼットの一番下の引き出し」

またホワイトスネイクは空中を移動して音も無くクローゼットの前に着地する。
そしてクローゼットを開け、適当にその中から下着を選び出すと、
それを持ってまたルイズのところに戻ってきた。
ルイズはホワイトスネイクから受け取った下着を身に着けると、

「服」
「着セロ、トイウコトカ?」
「そうよ」

こんな使い方をされるのは本当に不本意だ、とホワイトスネイクは思った。
どうせなら戦いとか、記憶を奪うとか、そういうことに使って欲しい。
こんな仕事ならヨーヨーマッでも出来るんだから。
だが心の中で愚痴っていても仕方がないので、仕方なくルイズに服を着せる作業をした。
もちろん、その不満を表に表すようなことはしない。

こうして着替えを終えたルイズとホワイトスネイクが部屋から出ようとしたところ、

「あ、あとわたしのことを『お嬢さん』って呼ぶのはやめなさい。
 なんだか見下されてるような感じがしてイヤなのよ。
 それにあたしにはルイズって名前があるんだから。」
「デハ、『ルイズ』ト呼ベバイイノカ?」
「ダメよ、ご主人様に向かって呼び捨てなんて」
「ソウカ。ナラ……『マスター』トデモ?」
「マスター……か。うん、それでいいわ」

こうしてルイズは、ホワイトスネイクから「マスター」と呼ばれることになった。

さて、部屋から出たルイズとホワイトスネイク。
いざ食堂へ――向かおうとしたところ、廊下に3つ並んだドアのうちの一つが開いた。
そこから出てきたのは、ホワイトスネイクが昨日洗濯関係で世話になった赤毛の女だった。
女の背はルイズより高く、むせるような色気を放っている。
そして顔の彫りは深く、突き出たバストがなまめかしい。
しかもブラウスのボタンを2番目まで開けているので谷間が丸見えである。
そして昨日は夜だったこともあってホワイトスネイクは気づかなかったが、女の肌は褐色だった。

女はルイズのほうを見ると、にやっと笑って、

「おはよう、ルイズ」

と挨拶した。
それに対してルイズはあからさまに嫌そうな顔をして、

「おはよう、キュルケ」

と返した。

「あなたの使い魔って、それ?」

キュルケはホワイトスネイクを指差して言う。

「そうよ」

そうルイズが返すと、キュルケは値踏みするようにホワイトスネイクをじろじろ見て、

「ふ~ん……本当に亜人なのね。
 それに、昨日は杖も詠唱も無しで空を飛べてたみたいだし。
 エルフの親戚なのかしら。
 ま、『ゼロ』のルイズにしては、上出来じゃないの?」

一応褒めてはいるようだが、それでもかなり見下した口調でそう言った。

「ふーんだ。いいのよ、成功したんだから。それに、そう言うあんたの使い魔は何なのよ?」
「あ~ら、見たいの? 言われなくたって見せてあげるつもりだったけど……フレイム~」

キュルケが自分の使い魔の名前を呼ぶ。
すると彼女の部屋から、のっそりと、真っ赤で馬鹿でかいトカゲが現れた。
いうまでも無く昨日ホワイトスネイクがDISCをぶっ刺したトカゲである。
そしてルイズの部屋の前の廊下がむんとした熱気に包まれる。

「熱ヲ放ッテイルノカ? コノスタンドハ」
「そりゃそうよ。だってフレイムはサラマンダーなんだもの。
 …っていうか、『スタンド』って何よ?」
「イヤ、ナンデモ無イ」

(テッキリスタンドノヴィジョンデハ、ト思ッタガ…ソウイウ生キ物ナノカ。
 私ハトンデモナイ所ヘ来テシマッタノカモシレンナ)

昨日の推測が誤りであったことを理解すると同時に、
この世界のブッ飛び具合を改めて理解したホワイトスネイクであった

「それにフレイムはただのサラマンダーじゃないわ。
 見てよ、この尻尾! 
 ここまで大きくて鮮やかな炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?
 ブランド物よぉー?
 好事家に見せたら、きっと値段なんかつかないわ!」
「そう、それはよかったわね」

得意げに胸を張るキュルケに対し、ルイズも負けじと胸を張り返すべく――

「ホワイトスネイク、あんた何が出来るのよ?」
「何ガ出来ルカ……カ」

ホワイトスネイクは考えた。
昨日は誰も見ていないからこそ堂々と能力を行使したが、今は目の前に赤毛の女がいる。
ルイズに見られるのはいいとして……この女に手の内を晒していいものだろうか?
そんなことを考えた結果――

「別ニ大シタコトガ出来ルワケデハナイ」

あえてウソをついた。

「セイゼイ出来ルノハ、空中ヲ飛ブヨウニ移動シタリスルグライナモノダ」
「なあんだ、じゃあ見かけ倒しって事じゃない。
 やっぱりあなたにお似合いの使い魔だったわね、ルイズ」
「う、うるさいわよ!」

ムキになって言い返すルイズ。
だがキュルケは余裕の表情でそれを見下ろして、

「じゃあ、お先に失礼」

そう言うとフレイムを従えてさっさと行ってしまった。

「くやしー! なんなのよあの女!
 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚できたからってエラソーに!」
「ソノ『火竜山脈のサラマンダー』トヤラガ召喚デキルト何カイイ事デモアルノカ?」
「大有りよ! 使い魔は主人の実力を示すものなの。
 だから火竜山脈のサラマンダーを召喚できたキュルケにはそれだけの実力が……ってああもう!
 考えるだけで腹が立ってくるわ!」
「『使い魔は主人の実力を示す』……カ。ナラ君ノ実力モ捨テタモノデハナイナ」
「どういうことよ!」

ホワイトスネイクの言葉の意味が分からなかったルイズはすぐに聞き返す。
すると、

「私ハ少ナクトモアノ化ケ物トカゲヨリハ強イ」
「…ウソでしょ?」
「本当ダ。機会ガアレバ実力ノ一ツデモ見セテヤル」
「でもあんた、さっき『特別な事は何も出来ない』とか言ってたじゃない」
「アレハ方便ダ」
「方便?」
「私ハサッキ、自分ノ能力ヲ明カサナイタメニ『アエテ』ウソヲツイタ。
 ……アノ女相手ニワザワザ手ノ内ヲ明カス必要ハ無イカラナ」

余裕のある口ぶりで言うホワイトスネイク。
だが昨日召喚したばかりの使い魔にいきなりそんな事を言われても、ルイズには信じられるわけが無い。
でも、そういえば今朝扉をすり抜けた事はキュルケには言わなかったし……。
本当のところはどうなのだろうか、と悩んだルイズは、

「じゃあ教えてよ。あんたが一体、何が出来るのか」

と聞いた。
実にストレートである。
そしてそれを聞いたホワイトスネイクはニヤリと笑うと、

「一ツハ命令スルコト。
 一ツハ幻ヲ見セルコト。
 そして一ツハ――」

「記憶ヲ奪ウコトダ」

「……どういうことよ? 分かるように説明しなさい」

残念ながら我らがご主人様には理解されなかった。
むしろ混乱しているようである。
ホワイトスネイクはそんな自分の主人を見て、

「分カラナイノナラ……実際ニ私ガ使ウ所ヲ見ルトイイ。近イウチニ3ツ見セヨウ」

そういって、自分を『解除』した。
とは言ってもルイズにとっては初めてみる光景だったので、
ホワイトスネイクが煙のように消えてしまったことにかなり焦った。

「え? ち、ちょっと……え? 消えちゃったの? ……え? どういうこと?」
「落チ着ケ、マスター」

そう言って首から上だけで現れるホワイトスネイク。
ホワイトスネイクからすれば全身を出すのが面倒くさかったからこそなのだが――



「っっっっっっっ!!!!!!!!」



自分の使い魔がいきなり生首になって現れる光景は、
年頃の少女には、ショッキングすぎた。

そして朝食の席にルイズとホワイトスネイクが到着したとき――
ルイズの両目はほんのちょっぴり涙で潤んでおり、
ホワイトスネイクは全身からプスプスと黒い煙を上げていた。
例の爆発を食らったためだ。
もちろんコスチュームもボロボロである。

「……いいこと。今度ご主人様を怖がらせるようなことしたら、またオシオキだからね」
「……了解シタ、マスター」

さて、ここ「アルヴィーズの食堂」には、ゆうに100人は食事を取れるであろう程に長い机と、
その上に所狭しと並べられた豪華な料理と豪華な飾り付けがあった。

「中々豪華ナ食卓ダナ」
「トリステイン魔法学校で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」

食堂の絢爛っぷりに感心したように言うホワイトスネイクに、ルイズは得意げに指を立てて言った。

「メイジはほぼ全員が貴族なの。
 だから私たちが貴族としての教育を受け、貴族としての礼儀作法を学ぶために、
 貴族にとって相応しい食卓がこうして用意されてるってわけ。分かった?」
「ナルホドナ。……デ、ソコニ置イテアルノハ何ダ?」

ホワイトスネイクが床を指し示す。
そこには小さな肉の欠片がぽつんと浮かんだ貧しいスープと、あからさまに硬そうなパンが並べられている。

「あんたが食べるものよ。まさか、貴族と同じ食卓に座れると思ってたの?」

ルイズが呆れたように言う。
それに対してホワイトスネイクはさらに呆れたように、

「私ハ生物デハナイカラ、食事ナンテ取ラナインダガナ……」

こう言った。

「えっ……あんた、生き物じゃないの? っていうか、それってどういうこと?」
「コレハ私ノ推測ダガ、私ハマスターノ精神ニ『寄生』シ、ソコカラ常ニエネルギーヲモラッテイルノダ」
「き、寄生!? そ、それって、何か危なかったりしないの!?」
「ソウイウ心配ハ今ノトコロ見当タラナイカラ安心シテイイ。
 アト…ソウダナ。
 私ハ力の『イメージ』とか『ヴィジョン』ニスギナイカラ、腹ガ減ルコトモナイ。
 ……ソウイエバコノ事ヲ伝エルノヲ忘レテイタ気ガスルガ、
 マスターノ方モコンナ食事ヲ私ニトラセルツモリダッタノダカラ堪エテクレ」

淡々とルイズに説明するホワイトスネイク。
しかしルイズにとってはそれが分かったような分からないような説明であったことと、
「使い魔への教育」の名目で貧相な食事を取らせる目論見が見事に外れたこととで、
ルイズはぽかーんとしていた。

そのとき、そんなルイズをクスクス笑う周囲の生徒達の口から「ゼロ」という単語が出てきたのをホワイトスネイクは聞いた。
確か食堂に来る前に見た女……キュルケもルイズに向かって「ゼロ」とか言っていた。
一体どういう意味なのだろうか、と考えていたところで、
昨日、ルイズが魔法を使えないと推測したことを思い出した。

(魔法ガ使エナイ者ノ事ヲ『ゼロ』ト言ウノカ?
 ソレトモマスター個人ノ事ヲ指シテ『ゼロ』ト呼ブノカ…?
 イズレニシテモ、マスターヘノ侮辱デアルコトニ変ワリハナイダロウナ…)

そんなことを考えながら、ホワイトスネイクは不機嫌そうに食事を取るルイズを見下ろしていた。



To Be Continued...

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